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酒類の不当廉売等に対する規制に関する質問主意書
参議院 第177回 第110号
質問本文
公正取引委員会は、昭和五十九年に「不当廉売に関する独占禁止法上の考え方」を公表し、その後、酒類等については「酒類の流通における不当廉売、差別対価等への対応について」(平成十二年十一月二十四日。以下「酒類ガイドライン」という。)等、特別な取引実態に即したガイドラインを順次策定することで、不当廉売規制の考え方を示してきた。
平成二十一年には独占禁止法が改正されて不当廉売が新たに課徴金納付命令の対象になったこと等に伴い、公正取引委員会は平成二十一年十二月十八日に「不当廉売に関する独占禁止法上の考え方」を改定するとともに、酒類ガイドラインについても「不当廉売に関する独占禁止法上の考え方」との整合性を確保するという観点から見直しを行い、改定したところである。
しかし、酒類の販売においては、依然として不当廉売や差別対価等の不公正な取引が横行しており、特に一部のスーパーや量販店などによる不公正な取引は、中小・零細業者の経営を脅かすものとなっている。適正な競争ルールを確立し、公正かつ自由な競争を促進することは喫緊の課題であると考えるが、政府の対策や運用は不十分であり、規制の実効性は乏しいように見受けられる。そこで、以下のとおり質問する。
一 過去十年間で、酒類の不当廉売、差別対価、優越的地位の濫用により独占禁止法の規定に違反する事実があると思われ、公正取引委員会に申告された件数は何件あるのか。また、その結果、公正取引委員会が行った注意、警告、法的措置は何件あるのか。行為類型ごとに件数を明らかにされたい。
二 公正取引委員会から申告者に対する通知なども今回の改正で明示されたが、申告者への通知が行われた割合および通知の内容ごとの内訳を示されたい。
三 公正取引委員会への申告件数は、全業種で、平成十七年度は二千七百三十四件であったが、平成二十一年度には一万千七百七十三件と四倍強になっており、調査を行う公正取引委員会の事務的な作業量が増大していることが推察される。こうした状況に対応するため、調査に必要な人員を十分確保する等、公正取引委員会の体制を強化・拡充する必要があると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。なお、民主党は二〇〇九年総選挙のマニフェストで国家公務員総人件費の二割削減を掲げているが、この制約下でどのように実効的な競争ルールの維持に努めるのか、明示されたい。
四 前述のように平成二十一年には酒類ガイドライン等が改定された。この中では、事業者の予見可能性を高めるため、不当廉売等に関する要件が明確化されるとともに、公正取引委員会の執行体制が強化されることが盛り込まれた。しかし、酒類ガイドラインの改定による効果については疑問が生じる。酒類の販売の独占禁止法違反による注意件数を見てみると、平成二十一年度は七百件と依然として高水準にある一方、注意より厳しい措置である警告および法的措置は一件も行われていない。つまり、公正取引委員会による処分の実態は行政指導であり、かつ事業者名が公表されていない注意が大半を占めている。酒類の不当廉売が横行している現状を踏まえると、悪質な事例については排除措置命令などの法的措置を講じるなどの厳格な対応により、抑止力を高めることが重要であると考える。公正取引委員会による処分の現状に対する政府の見解および政府の考える望ましい競争政策のあり方についての認識を示されたい。
五 公正取引委員会は、不当廉売等を行った事業者に対して警告等を行ったあと、どのようなフォローアップ調査を行っているのか。また、警告等に従わない事業者がいた場合、厳正な措置を講じる必要があると考えるが、これまでにどのような措置を講じてきたのか示されたい。
六 公正取引委員会が申告等に基づいて取締りを行う一方、国税庁は毎年「酒類の取引状況等実態調査」を実施し、適正な取引ルールに違反している件数やフォローアップ調査の結果を公表している。
1 公正取引委員会のいう不当廉売と国税庁のいう不当廉売の定義は同じか。各々の解釈基準を示されたい。
2 国税庁の処分権は独占禁止法違反のときにしか認められない点を考慮すると、国税庁の調査結果を公正取引委員会の調査に活用するなど両者の連携・協力体制を強化すれば、酒類の販売の取引の適正化に向けて効果的な対策を講じることができると考える。現在、両者の間ではどのような連携・協力体制が取られているのか。また、今後その体制を一層強化すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。
七 前述した酒類ガイドラインの改定のほかに、不当廉売、差別対価、優越的地位の濫用に対しては酒類の販売の実態を踏まえた、より実効的な措置を講じる必要があると考えるが、今後の政府の取組方針について明らかにされたい。
八 公正取引委員会は平成二十二年六月に「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」の原案を公表し、パブリックコメントを実施した。酒類の販売においても優越的地位を濫用していると思われる不公正取引が発生しているが、この実態に対してどう対応するつもりか。「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」の今後の見通しを明らかにされたい。
右質問する。
政府答弁書
一について
公正取引委員会は、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号。以下「独占禁止法」という。)に違反する事実があると認められたときは、独占禁止法の規定に基づき排除措置命令又は課徴金納付命令(以下「法的措置」という。)を行っている。また、法的措置をとるに足る証拠が得られなかった場合であっても、独占禁止法違反の疑いがあるときは警告を行い、独占禁止法違反行為の存在を疑うに足る証拠は得られなかったが、独占禁止法違反につながるおそれのある行為がみられた場合には、違反行為の未然防止を図る観点から注意を行っている。
平成十二年度から平成二十一年度までの十年間において、独占禁止法第四十五条第一項の規定に基づき行われた報告(以下単に「報告」という。)のうち、酒類の流通における不当廉売に関するものは一万二千四十六件、差別対価に関するものは八十一件、優越的地位の濫用に関するものは十七件であった。また、同期間において、酒類の流通における不当廉売に関して行われた法的措置は零件、警告は十七件、注意は八千六百九十三件、差別対価に関して行われた法的措置は零件、警告は零件、注意は九件、優越的地位の濫用に関して行われた法的措置は零件、警告は零件、注意は一件であった。
二について
報告が書面で具体的な事実を摘示してされた場合において、当該報告に係る事件について、適当な措置をとり、又は措置をとらないこととしたときは、公正取引委員会は、独占禁止法第四十五条第三項の規定に基づき、速やかに、その旨を当該報告をした者に通知しなければならないとされている。
平成十二年度から平成二十一年度までの十年間において、酒類の流通における不当廉売、差別対価又は優越的地位の濫用に関して行われた報告の数に対する同項の規定に基づき行われた通知の数の割合は約九割であった。また、これらの通知事案のうち、法的措置をとった旨通知したものは零件、警告を行った旨通知したものは八件、注意を行った旨通知したものは八千五百四十七件、措置をとらなかった旨通知したものは二千九百十九件であった。
三について
政府としては、不当廉売、差別対価、優越的地位の濫用等中小事業者に不当に不利益を与える行為に対して、独占禁止法の規定に基づいて厳正かつ的確に対処するため、これまでも公正取引委員会の体制を強化してきたところである。
平成二十三年度予算において公正取引委員会の体制の強化に係る経費を計上しているところ、今後とも厳しい行財政事情を踏まえながら、公正取引委員会について所要の体制の確保に努めるとともに、その事件処理の能力の向上を通じて事務の効率化を図ることにより、独占禁止法違反行為に対して厳正かつ的確に対処してまいる所存である。
四について
酒類の流通における廉売については、複数の酒類販売業者が相互に対抗して廉売を繰り返すなどの特性を有していることから、周辺の酒類販売業者に対する影響が拡大する前に迅速な処理を行うことが極めて重要である。そのため、公正取引委員会では、不当廉売に係る事案(以下「不当廉売事案」という。)について、報告から処理結果を通知するまでの目標処理期間を原則二か月以内とし、多数の事案の迅速な処理に努めているところであり、この運用方針は、酒類の流通における不当廉売事案の特性に照らし、適切なものと考えている。他方、大規模な酒類販売業者による不当廉売事案又は繰り返し行われている不当廉売事案であって、周辺の酒類販売業者に対する影響が大きいと考えられるものについては、周辺の酒類販売業者の事業活動への影響等についても調査を行い、問題のみられる事案については、法的措置も含め厳正に対処することが必要であると考えている。
五について
公正取引委員会は、警告等を行った事業者に対しては、違反行為の未然防止等の観点から、その後の価格動向について情報収集を行っている。また、過去に注意を受けてもなお再び注意を受けるような事業者に対しては、事案に応じて、責任者を招致するなどした上で直接注意を行っているほか、周辺の酒類販売業者に対する影響が大きいと考えられる場合には、周辺の酒類販売業者の事業活動への影響等についても調査を行い、問題のみられる事案については、厳正に対処することとしている。
六の1について
不当廉売とは、事業者間の公正な競争を確保する観点から独占禁止法第十九条で禁止される行為のうち、正当な理由がないのに商品若しくは役務をその供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給し、又は不当に商品若しくは役務を低い対価で供給し、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるものをいう。
なお、国税庁においては、平成十八年八月三十一日に発出・公表した「酒類に関する公正な取引のための指針」の中で、酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律(昭和二十八年法律第七号。以下「酒類業組合法」という。)第八十四条の規定に基づく酒税保全のための勧告又は命令を行うか否かの判断基準にも用いられるものとして、「合理的な価格の設定」についての考え方を示している。
六の2について
公正取引委員会においては独占禁止法を、国税庁においては酒類業組合法を所管し、それぞれ独立して運用しているところであるが、公正取引委員会及び国税庁においては、公正取引委員会の地方事務所等と国税局等との間も含めて、酒類の流通における不当廉売事案等についての相互の連絡体制を確保し、定期的な会議の開催、随時の情報交換等を行うなどして緊密な連携を図っているところである。
また、公正取引委員会においては、国税庁の専門的知見を活用して酒類の流通における不当廉売事案等により的確に対処するため、国税庁から職員の出向を受け入れている。
公正取引委員会及び国税庁としては、今後とも、こうした連携・協力体制の強化を図っていくこととしている。
七について
公正取引委員会においては、酒類の販売の実態を注視するとともに、独占禁止法に違反する不当廉売、差別対価又は優越的地位の濫用に該当する事実が認められた場合には厳正に対処することとしている。
なお、これらの違反行為の抑止を図るため、平成二十一年の独占禁止法の改正により、不当廉売及び差別対価に関しては当該行為を繰り返した事業者について、優越的地位の濫用に関しては当該行為を継続した事業者について、それぞれ課徴金納付命令の対象とされたところであり、公正取引委員会としては、その適切な執行に努めていくこととしている。
八について
公正取引委員会においては、平成二十一年の独占禁止法の改正により、優越的地位の濫用が新たに課徴金納付命令の対象となったことを踏まえ、法運用の透明性を一層確保し、事業者の予見可能性をより向上させるため、「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」(以下「ガイドライン」という。)を策定し、平成二十二年十一月三十日に公表したところである。ガイドラインは、意見公募手続において酒類販売関係の団体を含む関係各方面から提出された意見を踏まえて策定したものである。また、その後、公正取引委員会においては、ガイドラインを広く周知することにより優越的地位濫用行為の未然防止を図るため、各地で説明会を開催する等の対応を行っているところである。今後とも、優越的地位の濫用に該当する行為が認められた場合には、厳正に対処してまいる所存である。
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