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電子版お薬手帳の利用者の権利強化や事業の安定性に関する質問主意書
参議院 第211回 第58号趣旨が明らかではない ×1
質問本文
日本薬剤師会が提供する電子版お薬手帳アプリの「eお薬手帳」のデータ基盤を提供し、同アプリの開発、運営をおこなってきたNTTドコモが、オンライン診療を手がける他の事業者と提携するにあたって「eお薬手帳」の開発から撤退するとの報道(「日本薬剤師会 ドコモがサービス終了を突如宣告 電子版お薬手帳継続へ対応迫られる」日経コンピュータ二〇二二年十一月二十四日号)がなされている。
電子版お薬手帳は、紙のお薬手帳と同様に特定の個人の調剤、医療機関や薬局からの服薬上の注意や服薬した際の体調の変化など、利用者と医療機関・薬局双方の連絡事項などの調剤情報、要指導医薬品や一般用医薬品の服用履歴など医薬品に関わる情報を蓄積し、診療や調剤、服薬指導に役立つ健康サービスとして提供されている。言うまでもなく調剤情報やそれ以外の一般薬等に関わる服薬情報は本人の体調や病歴の推定を可能とする機微な要配慮個人情報である。
電子版お薬手帳は、公的医療保険において活用される機微な要配慮個人情報のデータベースであるにもかかわらず健康保険法など法律やそれに基づく命令によって規制を受けておらず、他の個人情報と同様に個人情報保護法の規制を受けるに留まる。そのため、データの削除や利用停止、自ら提供した個人データを本人が一定の形式で受け取り、他の事業者に移転することや可能ならば事業者間で直接データを移転させることは厚生労働省などのガイドラインで望ましいこととされているが、法令上、これらは権利として保障されていない。また、厚生労働省などのガイドラインではデータの第三者提供について関係者(利用者、医師、薬剤師等)の事前同意を必要としているが、これも法令上、利用者の権利として保障されているわけではない。さらに利用者の同意を得て取得し、電子版お薬手帳に蓄積されたデータを用いるプロファイリングについての規制はなく、事後的にプロファイリングの停止を求めることも法令上の権利として保障されていない。
また、今回の報道で本人の健康情報という機微なデータを長期的に蓄積し、公的医療保険制度において活用される電子版お薬手帳アプリが企業の方針一つで廃止されうることや、その際、集積された情報の移転が保障されていないために利用者が不安定な立場に置かれるということも明らかになった。そもそも電子版お薬手帳の調剤、服薬情報は長期にわたって記録することが前提となっており、蓄積されたデータの削除、利用停止、プロファイリングの停止など蓄積されたデータに関する個人の権利強化とともに、事業を安定的・継続的に行えるか、要配慮個人情報を適正に取り扱う体制があるかなど電子版お薬手帳を提供する事業者自体の規制が必要である。
この観点から以下質問する。
一 電子版お薬手帳については現在のところ個人情報保護法以外に法律やそれに基づく命令による規制は行われていない。すなわち任意の理由によるデータの削除や利用停止、プロファイリングの停止、データの移転などは権利として保障されていない。電子版お薬手帳に蓄積される調剤情報などは機微な要配慮個人情報であり公的医療保険制度で活用するのであれば、少なくともデータの削除や利用停止、プロファイリングの停止などが本人の権利として保障されるように規制をすべきではないか。
二 電子版お薬手帳は、長期的にサービスを提供することが求められる。仮に本人の権利が強化されたとしても事業の停廃止が自由に行われれば利用者やそのデータは不安定な状況に置かれかねずプライバシー保護の観点から問題である。少なくとも公的医療保険制度での利活用を進めるのであれば、事業者の財務状況、事業実施体制などに規制を設ける、簡単に事業を停廃止することができないよう規制を行うなどすべきではないか。
右質問する。
政府答弁書
一について
お尋ねの「データの削除や利用停止、プロファイリングの停止などが本人の権利として保障されるように規制」の意味するところが必ずしも明らかではないが、患者の薬剤服用歴その他の情報を電磁的記録をもって一元的かつ経時的に管理できる手帳(以下「電子版お薬手帳」という。)の利用者は、個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十七号。以下「個人情報保護法」という。)第三十五条の規定により、電子版お薬手帳の運営事業者に対し、当該利用者が識別される保有個人データ(個人情報保護法第十六条第四項に規定する保有個人データをいう。以下同じ。)の取扱いにより当該利用者の権利又は正当な利益が害されるおそれがある場合等には、当該保有個人データの利用の停止若しくは消去又は第三者への提供の停止を請求することができるなど、個人情報保護法により、その権利利益の保護が図られていると考えているところである。個人情報保護法の規定については、個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的として定められたものであるところ、電子版お薬手帳を運営する事業に関し、個人情報保護法の規定に基づくものに加えて利用者の個人情報の保護に関する更なる措置を講ずることについては、利用者の権利利益の更なる保護の必要性と当該措置による電子版お薬手帳を運営する事業への影響を比較衡量し、慎重に検討する必要があると考えている。
二について
電子版お薬手帳については、民間事業者が提供するサービスであるところ、その性質上、中長期にわたり継続的に利用されることが望ましいことから、「電子版お薬手帳ガイドラインについて」(令和五年三月三十一日付け薬生総発〇三三一第一号厚生労働省医薬・生活衛生局総務課長通知)において、電子版お薬手帳の運営事業者が留意すべき事項として、「事業に参入する際には中長期的なサービスの提供を前提とし、やむを得ない事情によりサービスの提供を停止する際には、十分な期間をとって事前に関係者との調整や継続に向けた再検討を行うなど適切な対応をとった後に通知する、停止後の移行先等を準備する、十分なサービスの移行期間を確保する等の対応をとる必要がある」と示しているところである。
一方、御指摘のように「事業者の財務状況、事業実施体制などに規制を設ける、簡単に事業を停廃止することができないよう規制を行う」ことについては、電子版お薬手帳は、公的医療保険制度において活用されるものであっても、あくまで民間事業者が創意工夫を生かして提供するサービスの一つであることを踏まえれば、電子版お薬手帳の運営事業者に対して、事業の安定性や継続性を確保するための規制を設けることについては、慎重に検討する必要があると考えている。
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