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暫定保全措置命令に基づく強制執行を可能とする制度の創設等に関する質問主意書
参議院 第211回 第59号趣旨が明らかではない ×1個別の事案 ×1
質問本文
第二百十一回国会において成立した仲裁法の一部を改正する法律には、暫定保全措置命令に基づく強制執行を可能とする制度の創設や仲裁手続における東京地方裁判所及び大阪地方裁判所の管轄拡大等が含まれており、これらについて以下のとおり質問する。
一 今回の改正では、暫定保全措置命令に基づく強制執行を可能とする制度が創設される。まず、暫定保全措置命令とは何か、そして、その暫定保全措置命令に基づいて強制執行をしようとする際の具体的な仕組みはどのようになっているのか示されたい。
二 通常は正式な仲裁人が選ばれるまで一、二か月かかるため、それまでの対応として仲裁機関が緊急仲裁人を任命し、紛争対象の事業の売却を差し止めるなどの暫定保全措置を行うことがある。この正式な仲裁人の選定前に任命される緊急仲裁人による暫定保全措置の執行を認めるかどうかについて争いがあると承知している。
仲裁地をめぐる国際競争という現状に鑑みると、認めた方が企業にとっては紛争解決に資することになる。現に、仲裁地として人気があるシンガポールや香港は緊急仲裁人の役割の高まりを受け、法改正で緊急仲裁人の保全措置命令に執行力を認めるようにした。米国や欧州諸国も判例などで有効とみられる例が多い。
仲裁地として選ばれているシンガポールや香港が導入している緊急仲裁人による暫定保全措置命令の規定を我が国の仲裁法に設けなかった理由を示されたい。
三 今回の改正では、国際仲裁・国際調停という専門性の高い事件を念頭に裁判所における専門的な事件処理体制を構築し、強制執行を申し立てるために必要な手続等を、東京地裁・大阪地裁にも申し立てることを可能にするとされている。
1 同改正の趣旨を示されたい。
2 東京・大阪地裁以外の裁判所に対して、国際仲裁に関する事案の申立てがされた場合に、対応するための規定としてはどのようなものがあるか。
3 東京地裁・大阪地裁において専門的な事件処理を実現するためには、国際的なビジネス関係の紛争や外国語に精通した裁判官を配置するなど人的体制の整備が必要と考える。これらの裁判所の人的体制の整備について政府としてどのように対応する方針か。
四 今回の改正には「仲裁判断の執行決定を求める申立てにおける仲裁判断書の翻訳文の提出の省略」も規定されている。
1 当事者間での合意や書証の作成の場面では、日本語以外の言語、とりわけ英語が使用されることが多いと思われるが、どの程度の範囲の言語(英語、中国語、フランス語、スペイン語など)まで仲裁判断書の翻訳文提出の省略が認められることを想定しているのか。
2 こういうケースでは翻訳が不要との目安を示すことにより、外国の紛争当事者からの期待を喚起し、日本の国際仲裁サービスの魅力向上に努めるべきではないかと考えるが、政府の見解を示されたい。
右質問する。
政府答弁書
一について
暫定保全措置命令とは、仲裁廷が、仲裁判断があるまでの間、当事者の一方の申立てにより、他方の当事者に対し、仲裁法の一部を改正する法律(令和五年法律第十五号。以下「改正法」という。)による改正後の仲裁法(平成十五年法律第百三十八号。以下「新仲裁法」という。)第二十四条第一項各号に掲げる措置を講ずることを命ずる命令をいう。
暫定保全措置命令のうち新仲裁法第二十四条第一項第三号に掲げる措置を講ずることを命ずるものについては、新仲裁法第四十七条第一項の規定により、当該暫定保全措置命令の申立てをした者は、裁判所に対し、当該暫定保全措置命令に基づく民事執行を許す旨の決定を求める申立てをすることができ、当該決定がある場合に限り、当該暫定保全措置命令に基づく民事執行をすることができる。
暫定保全措置命令のうち新仲裁法第二十四条第一項第一号、第二号、第四号又は第五号に掲げる措置を講ずることを命ずるものについては、新仲裁法第四十七条第一項の規定により、当該暫定保全措置命令の申立てをした者は、裁判所に対し、当該暫定保全措置命令に違反し、又は違反するおそれがあると認めるときに新仲裁法第四十九条第一項の規定による金銭の支払命令を発することを許す旨の決定を求める申立てをすることができ、当該支払命令を債務名義として、民事執行の申立てをすることができる。
二について
国際連合国際商取引法委員会が策定した「国際商事仲裁モデル法」では緊急仲裁人による暫定保全措置命令の規定が設けられていないこと等を踏まえ、改正法においては、御指摘の緊急仲裁人による暫定保全措置命令の規定を設けないこととしたものである。
三の1について
御指摘の改正は、仲裁手続に関して裁判所が行う手続について、裁判所における専門的な事件処理態勢を構築し、その適正かつ迅速な処理を図るためのものである。
三の2について
お尋ねの「国際仲裁に関する事案の申立て」の意味するところが必ずしも明らかではないが、例えば、新仲裁法第五条第五項は、仲裁判断の執行決定を求める申立てに係る事件が東京地方裁判所又は大阪地方裁判所以外の地方裁判所に申し立てられた場合において、当該地方裁判所が相当と認めるときは、当該事件の全部又は一部を東京地方裁判所又は大阪地方裁判所に移送することができることとしている。
三の3について
裁判所の人的体制の整備については、裁判所において、仲裁手続に関して裁判所が行う手続を適正かつ迅速に処理できるよう、適切に対応していくものと考えている。
四について
新仲裁法第四十六条第二項ただし書は、裁判所は、相当と認めるときは、仲裁判断書の全部又は一部について日本語による翻訳文を提出することを要しないものとすることができるものとしているところ、いかなる場合に仲裁判断書の日本語による翻訳文の提出の省略を相当と認めるかについては、裁判所において、個別の事案に応じ、適切に判断されるものと考えている。
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