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FIT・FIP制度による市場のゆがみ及び再エネ賦課金による国民負担に関する質問主意書
参議院 第217回 第242号お答えすることは困難 ×3趣旨が明らかではない ×4
質問本文
再生可能エネルギーの固定価格買取制度(以下「FIT制度」という。)及び市場連動型制度(以下「FIP制度」という。)については、当初設定された高価格や事業者内部収益率(IRR)の水準が、現在に至るまで国民の大きな負担要因となっている。特に、FIT制度導入初期に認定された案件については、高利回りでの長期にわたる固定価格買取が保証されており、再エネ賦課金の総額は令和七年度に過去最高の三・一兆円に達すると見込まれている。また、FIP制度については、効率的な事業運営を前提としてコストと適正な利潤を反映するとされながら、実質的にはFIT制度と同水準の基準価格が適用されており、国民負担軽減や市場競争促進の観点から実効性に疑問が生じている。電気事業連合会「FEPC INFOBASE 二〇二四」(以下「当該資料」という。)や資源エネルギー庁「「法制度」の観点から考える、電力のレジリエンス」においても、FIT制度の課題として、需給調整インセンティブの欠如や事業規律の低下が指摘され、FIP制度導入の目的が「再エネの自立化と市場統合の促進」であると示されている。
こうした背景を踏まえ、再エネ補助政策の目的、運用の妥当性及び国民負担の構造的問題について、以下質問する。
一 再エネ賦課金について、制度開始当初の二〇一二年度には約千三百億円であったが、二〇二五年度には約三・一兆円に達する見込みとなっている。
1 再エネ賦課金の総額の増加推移について、FIT制度設計当初の見込みとの乖離はあるか示されたい。ある場合、どの程度乖離しているか示されたい。
2 再エネ賦課金の増加推移について、FIT制度設計当初から増加することが見込まれていたと思料するが、再エネ賦課金総額の増加は国民負担の増加と同義である。この点について、制度設計当時、政府はどのように評価していたか示されたい。また、FIT制度設計当初から現在に至るまでの再エネ賦課金の実績の推移を踏まえ、再エネ賦課金の国民負担額が経済に及ぼす影響について、政府の評価を示されたい。
3 当該資料においては、FIT制度に起因する累積的な国民負担の増大が課題として示されているが、政府も同様の見解か示されたい。また、当該課題に対する政府の取組について示されたい。
二 FIT制度導入当初、非住宅用太陽光発電の調達価格は十キロワット以上のものについては一キロワット当たり四十円に設定されるなど、極めて高利回りであった。
1 FIT制度導入当初、高利回りとした理由を示されたい。
2 前記二の1について、高利回りとする方針を検討した際に、国民負担が高まることに対する経済的な悪影響などの懸念点について、どのように評価したか示されたい。
三 高利回りであった時代において、多数のメガソーラーを含む発電事業者が一斉に設備認定を受けたことで、結果的に大量の高額案件が制度に残存する構造となっている。発電事業者の設備認定数推移について、制度設計当初の想定どおりか否か示されたい。また、当該実績に対する分析及び評価について、政府の見解を示されたい。
四 FIT制度では、一度認定された価格で十年から二十年間にわたる固定買取が保証されているため、価格が見直されたとしても過去の高利回りであった時代に起因する国民負担が長期にわたり継続することとなっている。当該構造が市場競争に与える影響及びコスト最適化を阻害している可能性について、政府の評価を示されたい。
五 FIT制度導入当初に設定された買取価格の根拠の一つとされるIRRについて、制度創設時から令和六年度までの実績ベースでの年次推移は把握しているか示されたい。把握している場合、IRRの年次推移を全て明らかにされたい。把握していない場合、把握すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。
六 FIP制度における基準価格は、「事業が効率的に行われた場合、通常必要となるコストを基礎に、価格目標や適正な利潤などを勘案して定め」るとされている。にもかかわらず、現行のFIP基準価格がFITの買取価格と実質的に同額に設定されている。
1 市場競争を促すためのFIP制度がFIT制度と同様の補助効果を有することにより、事業者の収益構造が固定化されていると思料するが、政府の見解を示されたい。
2 FIP制度におけるプレミアム単価(補助額)がFIT制度と同様に高価格で長期にわたり支払われ続けることによる国民負担への影響について、政府の評価を示されたい。
3 現行のFIP制度については、発電事業者の投資インセンティブが働いておらず、電力市場への統合につながっていないおそれがあると思料するが、政府の見解を示されたい。
4 電気事業連合会「二〇二二年度からFIP制度開始 再エネの「自立化」を促進」において指摘されているように、バランシング義務やアグリゲーター制度の実効性が低い場合、FIP制度が本来の目的を果たせないと考えるが、政府の見解を示されたい。
5 再エネを電力市場に定着させ競争を促すというFIP制度の目的を達成するために、今後、政府が行うことを予定している取組を全て示されたい。
七 再エネ政策の目的は、本来、技術開発を支援し電力市場に定着させることであるが、現行制度は既に市場競争力を持つ太陽光発電等にも長期的に補助が続いている。
1 再エネ政策において補助されている各エネルギーについて、現在の市場競争力ないし電力市場への定着状況について、政府の評価をそれぞれ示されたい。
2 前記七の1について、電力市場に定着していないと評価されるエネルギーについて、定着する時期の見込み及び補助を行う時期について、政府の見解を示されたい。
八 令和五年度においては、電気料金高騰対策として再エネ賦課金の一部を国費により肩代わりする措置が講じられ、国民負担は一時的に軽減された。このような一時的補助の是非と今後の財政支出との関係について、政府の見解を示されたい。
九 令和七年度の再エネ賦課金総額が過去最大の三・一兆円とされる中、現行のFIT制度及びFIP制度の構造的な見直しが必要との意見もある。
1 制度全体の見直しや段階的縮小の必要性について、政府の検討状況を示されたい。
2 再エネ賦課金の総額が増加することによる国民負担の増加が懸念されるが、国民負担増加に対し、政府は何らかの対応を採る考えはあるか示されたい。ある場合は、当該対応について、具体的に示されたい。
質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内の答弁となっても私としては差し支えない。
右質問する。
政府答弁書
一の1について
お尋ねの「見込み」については、令和七年四月二十三日の衆議院経済産業委員会において、武藤経済産業大臣が「賦課金の水準の想定につきまして、二〇一二年の制度の導入時点では、FIT制度によって再エネがどの程度増えるか予測が困難だったということ、これは定量的な将来見通しは持っていなかったものと承知をしているところです。」と述べているとおりである。
一の2及び3並びに九の2について
お尋ねの「制度設計当時、政府はどのように評価していたか」については、電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法等の一部を改正する法律(平成二十八年法律第五十九号)による改正前の電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(平成二十三年法律第百八号。以下「旧法」という。)第三条第四項において規定されていたとおり、経済産業大臣が同条第一項に規定する調達価格等を定めるに当たっては、旧法第十六条第一項に規定する賦課金の負担が電気の使用者に対して過重なものとならないよう配慮しなければならないものと認識していたところである。
また、再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法(平成二十三年法律第百八号。以下「法」という。)第三十六条第一項に規定する賦課金(以下「賦課金」という。)が、再生可能エネルギーの導入拡大を促進するため、法に基づき、再生可能エネルギーの導入拡大のメリットを受ける電気の使用者に御負担いただいているものであるところ、お尋ねの「経済に及ぼす影響」及び「国民負担の増大」については、抑制を図るべきものであると認識しており、法に基づく入札制度の導入、法第八条の九第一項に規定する価格目標(以下「価格目標」という。)の設定等の再生可能エネルギー発電設備の効率的な導入を促す仕組みの活用等を通じ、引き続き、国民負担の抑制を図りながら、再生可能エネルギーの導入拡大を促進してまいりたい。
二及び四について
お尋ねの「当該構造が市場競争に与える影響及びコスト最適化を阻害している可能性」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、お尋ねの「理由」については、旧法附則第七条の規定に基づき、旧法の施行の日から起算して三年間は、旧法第三条第二項に規定する特定供給者が受けるべき利潤に特に配慮して同条第一項に規定する調達価格を定めていたためであり、また、お尋ねの「国民負担が高まることに対する経済的な悪影響などの懸念点」についての考えについては、一の2及び3並びに九の2についてでお答えしたとおりである。
なお、例えば、法第十四条は、法第二条第五項に規定する認定事業者(以下「認定事業者」という。)が法第九条第四項の認定(法第十条第一項の変更又は追加の認定を含む。以下「認定」という。)を受けた日から起算して一定の期間内に再生可能エネルギー発電事業を開始しなかったときは、当該認定は、その効力を失う旨を規定しており、政府としては、国民負担の抑制を図るため、当該規定に基づき厳格に対応しているところである。
三について
お尋ねの「制度設計当初の想定」については、定量的な「設備認定数」を設定していたものではないが、「実績に対する分析及び評価」については、例えば、令和七年二月二十七日の衆議院予算委員会第七分科会において、武藤経済産業大臣が「FIT制度が導入された二〇一二年度からこれまで約十年で再エネ発電量を倍増させており、平地面積当たりの太陽光発電の導入量は既にドイツやイギリスよりも大きく、主要国最大となっております。」と答弁しているとおりである。
五について
経済産業大臣において、再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法施行規則(平成二十四年経済産業省令第四十六号)第五条第一項第六号及び第七号の規定に基づき、認定事業者から、再生可能エネルギー発電設備の設置に要した費用に関する情報等について提供を受けているところであり、現時点において、お尋ねの「IRR」の「制度創設時から令和六年度までの実績ベースでの年次推移」について把握すべきとは考えていない。
六について
お尋ねの「事業者の収益構造が固定化されている」、「発電事業者の投資インセンティブが働いておらず、電力市場への統合につながっていないおそれがある」及び「バランシング義務やアグリゲーター制度の実効性が低い場合」の意味するところが必ずしも明らかではないが、「FIP制度」においては、一の2及び3並びに九の2についてで述べた「FIT制度」と同様に、賦課金が、再生可能エネルギーの導入拡大を促進するため、法に基づき、再生可能エネルギーの導入拡大のメリットを受ける電気の使用者に御負担いただいているものであるところ、「国民負担への影響」については、抑制を図るべきものであると認識しており、法に基づく入札制度の導入、価格目標の設定等の再生可能エネルギー発電設備の効率的な導入を促す仕組みの活用等を通じ、引き続き、国民負担の抑制を図りながら、再生可能エネルギーの導入拡大を促進していくことが重要であると考えている。
その上で、お尋ねの「今後、政府が行うことを予定している取組」については、現在、具体的な検討を進めているところであり、網羅的にお示しすることは困難であるが、政府として、引き続き、電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)第二条第一項第十五号の三に規定する特定卸供給事業の促進等を通じ、必要な事業環境の整備に取り組んでまいりたい。
七の1について
お尋ねの「電力市場への定着状況」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、例えば、政府として、各電源の発電コストについては、令和七年二月に総合資源エネルギー調査会基本政策分科会発電コスト検証ワーキンググループが取りまとめた「発電コスト検証に関するとりまとめ」において試算を行っている。この中で、令和五年における各電源のキロワットアワー当たりの発電コストは、「政策経費あり」において、事業用太陽光発電は十・九円、住宅用太陽光発電は十四・五円、陸上風力発電は十六・三円、着床式洋上風力発電は三十・九円、地熱発電は十六・一円から十六・八円まで、中水力発電は十三・〇円、小水力発電は二十六・六円、バイオマス発電は三十二・九円、原子力発電は十二・六円以上、LNG火力発電は十九・一円、石炭火力発電は二十四・八円、石油火力発電は四十三・八円、天然ガスコージェネレーションは十五・八円から十六・九円まで等と試算している。
また、令和六年十二月末時点における、認定を受けた再生可能エネルギー発電事業計画のうち、当該再生可能エネルギー発電事業計画に係る再生可能エネルギー発電設備が法第二条の二第一項に規定する交付対象区分等に該当するものの件数については、太陽光発電は千五百六十三件、風力発電は五十四件、地熱発電は零件、水力発電は四十四件及びバイオマス発電は四十件である。
七の2について
お尋ねの「電力市場に定着していないと評価されるエネルギー」の具体的に意味するところが明らかではなく、「定着する時期の見込み及び補助を行う時期」をお答えすることは困難である。
八について
政府として、御指摘の「電気料金高騰対策として再エネ賦課金の一部を国費により肩代わりする措置」は講じておらず、これを前提としたお尋ねについてお答えすることは困難である。
九の1について
お尋ねの「制度全体の見直しや段階的縮小の必要性」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「FIT制度及びFIP制度」の在り方については、例えば、関係審議会において、再生可能エネルギーの発電コスト等を踏まえ、法に基づく支援の在り方を検討するなどしているところであり、引き続き、必要な検討を行っていく考えである。