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戸籍法第五十条に関する質問主意書

衆議院 第102回 第23号

提出者
衆議院
提出日
1985年4月2日
内閣転送 1985年4月6日
答弁書受領日
1985年4月12日
提出から10日
答弁の項目数
3
質問 1,453字/答弁 768字

質問本文

衆議院議長 坂田道太 殿

戸籍法第五十条に関する質問主意書

父母がその子の出生に当たり、子の健康な成長と生涯の幸福を念じ、よりよい名を選び与えようと力めることは、東西古今を通じて変りのない、父母の愛情である。

我が国においては、父母、兄姉、祖父母、祖先、もしくは先人賢哲の名の一字または全部を借用する風習や、姓名の字の画数や、発声、平仄または陰陽などを考究して吉凶を案ずる伝習は、その人その家により深浅の差はあれ、無視し得ないものがある。或いは襲名の事実も存在する。

これらのことは、我が国には古来きわめて豊かな漢字文化が発達し、高度な表現と深遠な哲学があまねく国民の中に定着した結果であり、教育の成果でもある。これは喜ぶべく誇るべきことである。

しかるに政府は、戸籍法第五十条に、名の届出に当たり「常用平易な文字」を使用すべしと定め、同施行規則第六十条に、具体的には文部省が定めた常用漢字表一千九百四十五字、及び特に指定する別表第二の百六十六字及びかな文字の範囲を越えることを禁じている。

これにより、すでにこの制限を了知している者にあつては、始めより、この範囲内での選名を余儀なくされ、あらかじめ了知しなかつた者においては、出生届出の市町村等の窓口において受理を拒否され、あわただしく変更させられているのが実体である。

このことは、前述の如き父母兄姉の愛情、信仰、もしくは信条、思想、学識、或いは系類の伝統等に由来して、自由かつ自主的に選んだ名の登録を拒否し、名を通じての思想・良心、及び信教並びに表現の自由を侵すものであり、憲法第十九条及び第二十条並びに第二十一条に違反している。

しかも、この法規の趣旨が、複雑難解な名のため子に無用の苦痛を与え社会生活を不合理にすることをさけるためとするならば、すでに生存している人、或いは死亡した人の名は改めることが出来ず、且つ姓氏の類は無慮数万といわれ、きわめて難読難書なものも現存しているにかかわらず、これを変更することは出来ず、又、すべきでないことを思えば、この法的規制は実益を生じ得ないものと云うべきである。

よつて政府は、すべからく、この法の条文並びに施行規則を改正し、憲法の精神を具現すべきである。

しかもこのことは極めて緊急を要するのでここに次の事項について質問する。

一 戸籍法第五十条並びに同施行規則第六十条は憲法第十九条、第二十条、及び第二十一条の思想・良心、及び信教並びに表現の自由を侵すものであるから速やかに改正する考えはないか。

二 文部省は常用漢字表は国民生活の目安であり強制はしないと表明しているにかかわらず、法務省が戸籍法によつて強制していることは不統一であり整合性を欠くが故に戸籍法の制限を撤廃すべきではないか。

三 父母等が故意に難読難書の名を子に与えて、その生活を不便にしようとすることは常識としてあり得ないし、万一あつた場合は裁判による名の変更の道があるから、この戸籍法の名の文字の制限は廃止すべきと思うがどうか。

四 襲名は我が国においては古くより広く行われている。しかしその文字が戸籍法、同施行規則の指定に属しない場合襲名し得ないこととなり、きわめて非実際的であるからこの制限を廃止すべきではないか。

五 前文記述の如く姓氏は統制々限し得ず変更も出来ない。また、この制限以前に名を得て生存し、もしくは死亡している者の名も変更し得ない以上、この制限は所詮実効をあげ得ないものであるから廃止すべきではないか。

右質問する。

衆議院の原文・経過

政府答弁書

一について

戸籍法第五十条及び戸籍法施行規則第六十条は、子の名に難解な文字を用いることによつて生ずる本人及び社会一般の不便を避けるため、戸籍上の名に用いる文字につき合理的な制限を設けたものであり、かつ、戸籍制度との関係以外における社会生活一般において、戸籍上の名と異なる名を使用することまでを禁止する趣旨ではないから、憲法のいかなる規定にも反するものではないと考える(昭和五十八年十月十三日最高裁判所第一小法廷決定参照)。したがつて、戸籍法第五十条の規定を改正する考えはない。

二について

戸籍法が子の名に用いることのできる漢字の範囲を制限しているのは、一についてにおいて述べた理由によるものであり、他方、「常用漢字表」の制度は、一般の社会生活において現代の国語を書き表すための漢字使用の目安として設けられたもので、強制力を有するものではないが、このような差異は、制度の趣旨及び目的を異にするためであり、戸籍法による制限を撤廃する考えはない。

三から五までについて

現行戸籍法施行前においては、子の名に用いられた漢字には極めて難解なものがみられ、これにより本人及び第三者に与えた社会生活上の不便は少なくなかつた。このため、昭和二十二年に制定された現行戸籍法において、名に難解な文字を用いることによつて生ずる本人及び社会一般の不便を避けるため同法第五十条が設けられたものであり、以来約四十年が経過し、子の名に用いる文字の制限は、広く社会一般に受け入れられたものと考える。

また、同条は、一についてにおいて述べたように、戸籍制度との関係以外の社会生活一般において戸籍上の名と異なる名を使用することまでを禁止するものではないので、いわゆる襲名の慣習を否定するものではない。

したがつて、戸籍法第五十条の規定を改正する考えはない。

右答弁する。

衆議院の原文

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