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日本国憲法制定に関する質問主意書
衆議院 第102回 第46号
質問本文
衆議院議長 坂田道太 殿
日本国憲法制定に関する質問主意書
一 日本国憲法(以下「新憲法」という。)は、形式的には大日本帝国憲法(以下「明治憲法」という。)の改正手続によつて、明治憲法の改正として成立したものであるが、
(一) 明治憲法の根幹は「天皇統治」であり、新憲法は、「国民主権」となつている。このように、憲法体制の根幹の改変は、その憲法の改正手続によつてはできないのではないか。
(二) 明治憲法の「憲法発布勅語」には、「将来若此ノ憲法ノ或ル条章ヲ改定スルノ必要ナル時宜ヲ見ルニ至ラハ朕及朕カ継統ノ子孫ハ発議ノ権ヲ執リ之ヲ議会ニ付シ議会ハ此ノ憲法ニ定メタル要件ニ依リ之ヲ議決スルノ外朕カ子孫及臣民ハ敢テ之カ紛更ヲ試ミルコトヲ得サルヘシ」とあるが、昭和二十年十二月、帝国議会において憲法改正の論議を行い、十月、政府に憲法調査会を設けて改正を検討し、昭和二十一年二月占領軍より手交された憲法草案を基に改正案を作成するなどの行為は、まさに上記勅語にいわれる「紛更」を行つたことになり、憲法違反であると考えるが如何。
昭和二十一年三月五日、幣原総理が改正案につき内奏を行い、勅語を賜つたといわれるが、事実であるかどうか。
勅語を賜つていたとしても、それ以前の政府及び帝国議会の行為は、憲法違反ではないか。
(三) 憲法改正案は、帝国議会において修正しているが、明治憲法においては、憲法改正案は、帝国議会において修正することは許されないので、この修正は憲法違反ではないか。
もし、違反でないとすれば、その根拠を示されたい。
二 憲法改正が違憲の手続によつていると考えるが、それが有効に成立しているのは、我が国が連合国に降伏し、超憲法的権力をもつ占領軍総司令官の指示及び承認によるものであると解するほかないが如何。即ち、降伏文書(昭和二十年九月二日)には、「天皇および日本国政府の国家統治の権能は、本条項を実施するため適当と認める措置をとる、連合国最高司令官に隷属する。」とあるが、このように我が国の統治権は、最高司令官に隷属したのであり、主権がない状態であつたから、憲法その他国内法の如何にかかわらず、主権を行使している最高司令官の権限において有効性が保障されているのではないか。
三 陸戦の法規慣例に関する条約(ハーグ条約)第四三条は、次の如く規定している。
「国の権力が事実上占領者の手に移りたる上は、占領者は、絶対的の支障なき限り、占領地の現行法規を尊重して、成るべく公共の秩序及び生活を回復確保する為、施し得べき一切の手段を盡すべし。」
憲法改正について占領軍総司令官のとつた行為は、この条項に違反しているのではないか。
この点につき、政府は、次の何れの見解をとるか。また、これ以外の見解があれば示されたい。
(一) 違反している。
(二) 違反していない。その理由は、
(1) この条項は、第二次大戦以後は、空文である。
(2) 我が国が占領された状態のように、全面的占領には適用がない。
(3) 交戦中には適用になるが、降伏後の占領には適用がない。
(4) 我が国は、ポツダム宣言を受諾し、降伏文書に調印した以上、その実現を図るものであるから、占領軍がそれを強制しても違反ではない。
(5) 占領行政は、間接統治であつたので、占領軍の指示によるものでも、国内的には合法的に行つたものである。
(6) 条章の趣旨には反するが、違反ではない。
(7) 憲法改正は、我が国が自主的に行つたのであるから、違反という問題は起こらない。
四 憲法前文には、「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、……この憲法を確定する。」とあるが、
(1) 明治憲法では、「天皇ハ帝国議会ノ協賛ヲ以テ立法権ヲ行フ」(第五条)、「天皇ハ法律ヲ裁可シ其ノ公布及執行ヲ命ス」(第六条)のであり、日本国民が憲法改正を確定することはできないにもかかわらず、「国民は、……この憲法を確定する。」とあるのは間違いではないか。現に憲法公布の際の勅語には、「朕ハ……帝国憲法の改正を裁可し、ここにこれを公布せしめる。」とあるが、この勅語と憲法前文は矛盾しているのではないか。
(2) 憲法改正案は、帝国議会の議決を得ているが、貴族院は、「皇族華族及勅任セラレタル議員ヲ以テ組織ス」(明治憲法第三四条)であり、「正当に選挙された国会における代表者」ではない。にもかかわらず、このように表現することは間違いではないか。
五 憲法をその制定権が何れにあるかによつて分類すれば、欽定憲法、民定憲法、協約憲法の三分類であるが、政府は、日本国憲法は、その何れであると考えるか。何れでもないならば、それはどのように分類される憲法であるか。勅語は欽定憲法であることを示し、憲法前文は民定憲法であると書いてあるが、その何れであるか。
右質問する。
政府答弁書
一について
日本国憲法は、大日本帝国憲法の改正手続によつて有効に成立したものであつて、その間の経緯については、法理的に何ら問題はないものと考える。
二について
一についてにおいて述べたとおり日本国憲法は大日本帝国憲法の改正手続によつて有効に成立したものであつて、御指摘のように連合国最高司令官の権限においてその有効性が保障されているものではない。
三について
陸戦ノ法規慣例ニ関スル規則中の占領に関する規定は、本来交戦国の一方が戦闘継続中他方の領土を事実上占領した場合のことを予想しているものであつて、連合国による我が国の占領のような場合について定めたものではないと解される。
四について
日本国憲法が大日本帝国憲法の改正手続によつて有効に成立したものであることは、一についてにおいて述べたとおりであり、日本国憲法の前文における「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、…この憲法を確定する」との文言は、日本国憲法が正当に選挙された国民の代表者によつて構成されていた衆議院の議決を経たものであることを表したものと解される。したがつて、御指摘のような問題はないものと考える。
五について
日本国憲法が御指摘の分類のいずれに属するかは、講学上の問題であつて、政府として断定することは、差し控えたい。
右答弁する。
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