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米兵等による日本人殺害事件などの不法行為と在日米軍地位協定に関する質問主意書

衆議院 第102回 第25号

提出者
衆議院
提出日
1985年4月5日
内閣転送 1985年4月10日
答弁書受領日
1985年4月23日
提出から18日
答弁の項目数
4
質問 3,996字/答弁 1,429字

質問本文

衆議院議長 坂田道太 殿

米兵等による日本人殺害事件などの不法行為と在日米軍地位協定に関する質問主意書

本年一月十六日未明、沖縄県金武町で、前泊寛一さんが就寝中に米海兵隊員に包丁で刺殺され、現金、時計などが強奪された。

那覇地方検察庁は、二月二十二日、沖縄海兵隊基地、キャンプ・ハンセン所属の海兵隊員、ケルビン・L・ルイス一等兵を強盗殺人、住居侵入の罪で起訴した。実に、事件発生後三十八日間経過してのことである。

この間日本側捜査当局は、一月十七日同一等兵の逮捕状を取り、身柄の拘束を図つたところ、米軍当局が身柄の引き渡しを拒絶したため、日本側は同一等兵の任意の出頭による取調べしか行えなかつた。こうした背景には、極めて屈辱的な取り決めである在日米軍地位協定がある。沖縄県民をはじめ広範な国民は、事件をはじめこれらの問題に対する激しい怒りを感じている。

日米地位協定第十七条五項の関連諸条項に基づく本事件の取り扱いは、日本政府の対米従属的本質を最も端的に示すものとなつた。

沖縄駐留の米兵による日本人殺害事件は、復帰後今回で八件も発生している。我々は、日本政府に対し、かかる事態から国民の生命と安全を守るための万全の措置を取るよう再三にわたつて要請してきた。にもかかわらずこのような事件が繰り返されていることは誠に遺憾であり、政府の責任が極めて重大であると言わざるを得ない。

私は三月八日、衆議院予算委員会第二分科会(以下「衆議院予算分科会」という。)において、米兵による殺害事件と日米地位協定の屈辱的実態について質問したが、改めて以下の点について質問する。

一 前泊寛一さんの殺害事件について

1 今回の事件は、事件二日後に米海兵隊基地司令部が沖縄県当局に陳謝を表明したように、犯人及び事件に関する事実関係が明瞭であるにもかかわらず、犯人を起訴するまでに三十八日間も要しているが、これはどういう理由によるものか。

2 日米地位協定第十七条に関する日米合同委員会合意(以下「合同委員会合意」という。)第八項(一)では、「日本の当局が特に当該被疑者の身柄を確保する必要があると認めて要請した場合には、その者の身柄は日本国の当局に引き渡される」と述べている。

ところが、日本側からの身柄引き渡し要請に対しては、米側は、「日米地位協定第十七条五項(c)の規定に基づき引き続き被疑者の拘束を行う旨回答してきた。」(参議院、喜屋武眞榮議員の質問主意書に対する答弁書)

(一) 日本側の身柄引き渡し要請は、合同委員会合意第八項(一)に基づき要請したのではないのか、にもかかわらず、米側が被疑者の身柄を引き続き拘束するとしたのはどういうことか。

(二) 米側の引き渡し拒否は、合同委員会合意第八項(一)の主旨に反するものと考えるが政府の見解はどうか。

3 「合衆国軍隊等の行為等による被害者等に対する賠償金の支給等に関する総理府令(昭和三十七年総理府令第四十二号 ― 以下「総理府令」という。)第三条によると、「防衛施設局長は、合衆国軍隊等による事故の発生を知つたときは、関係行政機関の協力を得て直ちに当該事故の調査を行なわなければならない」とされているが、その目的、方法、内容について具体的に説明されたい。また、今回の事件についてはどのような調査を行つたのか、その内容と結果について合わせて報告されたい。

二 米兵等の不法行為に対する日本側捜査について

合同委員会合意の第十一項では、日本側が当該事件の第一次裁判権を行使するか否かを通告する期間として、�@六ヵ月以下の懲役にあたる罪および住居侵入罪、暴行罪、傷害罪、窃盗等財産に関する罪等で被害額五千円以下の罪及び未遂罪については、最初の通知の翌日から起算して十日以内、�A右以外の罪については二十日以内とし、特別な理由がある場合には、さらに�@は五日、�Aは十日を延長できる旨規定されており、この期間内に裁判権の行使を通告しないと裁判権が米側に移ることになつている。

先の衆議院予算分科会で、「起訴するまで犯人を渡せないという規則の上にさらに二十日以内に起訴しなければ裁判権は米側に移るという合意をなぜしたのか」という主旨の私の質問に対し、政府は「当時の合意をした経緯について調べて後日報告する」(栗山北米局長)旨約束した。

そこで伺いたい。

1 日米合同委員会において、日本側が裁判権を行使するか否かを通告する期間を決めた経緯とその理由は何か、またその期間を十日及び二十日間(延長の場合十五日間及び三十日間)とした根拠は何か、それぞれ具体的に説明されたい。

2 合同委員会合意の第八項(二)では、日本が第一次裁判権を有する事件で、日本国の当局は、「当該被疑者の身柄を拘束する正当な理由及び必要がないときはその者を合衆国当局による拘禁に委ねる」旨決められている。

このように米側が身柄を拘束しておいて、なおかつ捜査期間を制限していることは、日本側の捜査に支障をきたし、強いては裁判権を行使するか否かの判断の制約になるのではないか、この点で政府の見解はどうか。

三 損害賠償請求について

1 合衆国軍隊構成員、軍属及びそれらの家族(以下「米兵等」という。)による不法行為は、これまでの統計によると四分の三以上が公務外で起こつたとする事件であり、公務上の事件に比べ公務外事件が圧倒的に多い。

公務外事件の損害補償については、日米地位協定第十八条六項(a) 及び「総理府令」第十二条で、政府が米国に提出する報告書作成に際し、被害者からの損害補償請求を「公平かつ公正に審査し、補償金を査定する」旨述べている。この規定は、当然米国政府からの補償金(慰謝料)が支払われるために適用、運用されるものであり、被害者を補償するための政府の責任を明確にしたものである。

しかるに公務外の不法行為に対する損害補償は、「米国政府は本来賠償を行なう法的義務はない」(昭和五十年三月二十八日、衆院内閣委員会)として極めて不当な扱いをうけており、補償金額も公務上の事件に比べて低いのが実態である。

(一) 同条項でいう「審査し、補償金を査定する」うえでの算出基準や計算方法などその内容を明らかにされたい。

(二) 「公平かつ公正に審査し、補償金を査定する」ためには、その前提として被害者に損害賠償請求の手続きの内容等について説明することは当然と考える。

しかしながら政府は、公務外事件のすべての被害者に損害賠償請求手続きのあることを教えることをしていない。これはどういう理由によるのか。

(三) 損害賠償請求の期限として、公務上の事件は三年、公務外の事件は二年と言われているが、それぞれの法的根拠とその理由を説明されたい。

沖縄復帰以後公務外の事件で、これまでに期限切れとなり請求できなくなつた事件の件数とそれらの事件名、発生年月日、被害者名を明らかにされたい。

(四) 先の衆議院予算分科会で、私は、沖縄復帰以後の米兵による殺害事件(沖縄七件、本土六件)について、それぞれの補償金額を明らかにすることを求めた。

これに対し政府は、「個人のプライバシー等に関する問題で公表していない」旨答弁した。そこで改めて伺いたい。

これら十三件の事件について、被害者名、事件名を特定しないで、個人のプライバシーに関係なく�@補償金請求額�A政府の査定額�B米側の支払い額をそれぞれ明らかにされたい。

2 先の衆議院予算分科会で、私は、昭和五十七年三月八日の米兵による殺害事件に関連し、米軍当局が補償金を支払う際に被害者に署名、捺印を求めた“示談書”を示し、その内容について�@米軍当局が事件に関する日本政府の免責を求めていることは不当であり認められないこと、�A支払い額が請求額と比べ極めて不当な低額であることを指摘した。

これに対し政府は、「慰謝料を被害者の方に受け取つていただく限りにおきましては、アメリカ政府は免責してもらう。日本政府云々の点につきましては、経緯がつまびらかでないので説明できかねる」(栗山北米局長)旨答弁した。

また補償金の問題では、「示談の金額が不満足であれば、当然地位協定の規定により裁判に訴える道もある」(栗山北米局長)旨答弁した。そこで改めて伺いたい。

(一) 米軍当局が、私が指摘した“示談書”において日本政府の免責を求めた経緯及びその理由について明らかにされたい。

(二) 米軍当局が日本政府の免責を求めるなどということは、不当であり絶対に許されるものでないと考えるがどうか、政府の見解を明確にされたい。

(三) 沖縄復帰以後これまでに発生した公務外の事件で、被害者が示談の金額が不満足だと拒否し、通常の司法手続きによる救済手段に訴えた事件の件数及び事件名を明らかにされたい。

(四) 米軍当局が現に使用しているとして、私が指摘した“示談書”(「遺族に対して条件付きでなければ金を渡さぬ」という脅迫的な内容のもの)を他の公務外事件においても使用しているのかどうか。

こうした不当な内容をもつた示談書は即刻改めるべきと考えるがどうか。

四 米兵等による犯罪について

1 沖縄復帰以後、これまでに我が国で起こつた米兵等による犯罪総数はどれだけか、次の項目について�@年度別�A公務上、公務外別に明らかにされたい。

(一) 犯罪の認知件数と起訴件数及び日本側が第一次裁判権を有する件数。

(二) 損害賠償金(慰謝料)の総額及び犯罪総数における死亡者総数とその賠償金総額。

(三) 殺人、強盗、強姦、傷害、業務上過失致死傷、道交法違反などの罪名別件数。

2 右の(一)(二)(三)の内容について沖縄県内における犯罪ではどうか、それぞれ明らかにされたい。

右質問する。

衆議院の原文・経過

政府答弁書

一について

1 本件は、昭和六十年一月十六日発生したものであるが、同年二月二十二日、住居侵入・強盗殺人罪で米海兵隊員ケルベン・L・ルイスを起訴した。事件発生から起訴まで三十八日間を経過しているのは、その間、所要の捜査なかんずく物的証拠に関する鑑定に若干の期間を要したことによる。

2 御指摘の日米合同委員会合意は、日米両国の法律執行員が犯罪の現場にある場合に関するものであり、本件の場合には該当しない。

本件において米側が被疑者の身柄を拘禁することとしたのは、日米地位協定第十七条5(c)に基づくものである。

3 御指摘の総理府令に基づく調査は、防衛施設局長が合衆国軍隊等の行為等による事故の発生を知つたときに被害者又はその遺族に対する適正な賠償等を行うため必要な範囲において、関係機関及び関係者からの事情聴取、被害状況の調査、現場確認等を行うものである。

本件についても、これらの調査を行つている。

二について

御指摘の日米合同委員会合意は、裁判権が競合する場合にその合理的調整を図るものとして、昭和二十八年の日米合同委員会において合意され(昭和三十六年に一部改正)、現在に至つているものであるが、我が国の捜査に支障を来すものではなく、また、我が国が第一次裁判権を行使するか否かの判断をするに当たつて制約となるものではない。

三について

1(一)及び(二) いわゆる公務外の事故に係る補償請求の審査及び補償金の査定は、いわゆる公務上の事故に係る賠償請求の場合と同様に行つている。

また、一についての3の総理府令に基づく調査を行つた事故については、被害者又はその遺族に対して補償請求手続についての説明を行つている。

(三) 公務上の事故に係る損害賠償については、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う民事特別法(昭和二十七年法律第二十一号)第一条及び第二条の規定に基づき国がその損害を賠償する責めに任ずることとなるので、その請求権の消滅時効については、国家賠償法(昭和二十二年法律第百二十五号)第四条により民法(明治二十九年法律第八十九号)第七百二十四条の規定が適用される。

また、公務外の事故で日米地位協定第十八条6の規定に基づき合衆国の当局に対して補償を求めることができる期限については、合衆国法典第十編第二千七百三十四条(b)(1)の規定が適用される。

沖縄の復帰後発生した公務外の事故で防衛施設局長が一についての3の総理府令に基づく調査を行つたものについては、右の期限が過ぎたことを理由として補償がされなかつた事例はない。

(四) 個人のプライバシーにかかわることにならざるを得ないので、公表することはできない。

2 御指摘の示談書における日本政府を免責する旨の記述は、公務外の事故についての賠償責任が本来日本政府にはないことを確認するためのものであると承知している。

また、沖縄の復帰後発生した公務外の事故につき合衆国の当局が申し出た金額を不満として示談が成立せず、請求者が受領しなかつた事例はない。

四について

別表に掲げるとおりである。

右答弁する。

別表1 (四の1の(一)関係)

別表2 (四の1の(二)関係)

別表3 (四の1の(三)関係)

別表4 (四の2の(一)関係)

別表5 (四の2の(二)関係)

別表6 (四の2の(三)関係)

衆議院の原文

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