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定年延長促進に関する質問主意書
衆議院 第112回 第12号
質問本文
衆議院議長 原 健三郎 殿
定年延長促進に関する質問主意書
現在我が国では、平均寿命が大幅に伸び「人生八十年時代」が到来したといわれ、一方で出生率が低水準で推移しているため、我が国の人口構成は急速に高齢化しつつある。
我が国の人口高齢化は、欧米諸国が経験したことのない急速なスピードで進行し、二十一世紀初頭には世界的にみても極めて高齢者の割合の高い社会に到達すると見込まれている。
我が国では、社会保障制度が欧米主要諸国に比べて低い水準にあること等の事情から、高年齢労働者の就業意欲は極めて高く、労働省によれば昭和六十五年には全労働力人口六、二三〇万人のうち五十五歳以上の高年齢者層は一、二五〇万人に達すると推計されている。これは全労働力人口の二〇パーセントに相当する。
このような高齢化社会の急速な到来を控えているなかで、先般の総務庁の発表によれば昭和六十二年の完全失業者は戦後の最高水準とほぼ同水準にあり、五十五歳以上の高年齢層の失業率は特に高く、高年齢者の再就職は極めて厳しい状況にある。
労働省の「雇用管理調査」(昭和六十一年一月)は、「昭和六十一年においては六十歳以上定年制の割合が、五六・六パーセントと五十五歳定年制の二六・七パーセントを大きく上回つています。しかも今後の改定予定を含めますと五十五歳定年制の一六・三パーセントに対し、六十歳以上定年制は六九・八パーセントと主流を占めるに至るものと見込まれています」と述べている。
そこで定年制に関して以下のとおり質問する。
一 昭和六十一年十月一日に「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」が施行されて以降今日まで「六十歳定年制」はどの程度促進されたか、産業別、企業規模別の実態を明らかにされたい。
二 「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」の第四条で、「事業主は、その雇用する労働者の定年の定めをする場合には、当該定年が六十歳を下回らないように努めるものとする」と規定し、第四条の二で、「労働大臣は六十歳を下回る定年を定めている事業主であつて政令で定める基準に従い、六十歳を下回る定年を定めることについて特段の事情がないものと認めるものに対し、当該定年を六十歳以上に引き上げるよう要請することができる」としている。
しかるに労働省通達「職発第五五五号」によれば、「当分の間要請を行わない場合」として、「令第一条各号のいずれにも該当せず、したがつて、六十歳を下回る定年を定めることについて特段の事情がないものと認められる事業主であつても、次の場合には当分の間要請を行わないこととする」として、「イ.既に六十歳以上に定年を引き上げることを決定し、これを就業規則又は労働協約に明記している事業主 これについては、六十歳以上への定年の引き上げが明確に決まつているものであり、これに加えて更に要請を行うことは適当でないことによるものであること。」としている。
本法の施行以前に、このような労使協定が結ばれ、六十歳定年制への到達が数年先となつている場合もあるが、本法制定の趣旨からいつて、たんに労使協定があることのみを理由として、全く「要請」を行わないとすれば、その労使協定が六十歳定年制への移行を遅らせるものとなりかねない。この点についての政府の見解はどうか、
三 例えば、エスエス製薬株式会社荏原工場(品川区小山台二丁目二番地二十二号)で、昭和六十年三月六日に労使間で協定された定年延長スケジュールは、六十歳定年制への移行完了は昭和六十六年三月十六日となつている。同協定の附属覚書では「定年延長に関する協定については昭和六十二年十月以降、見直しの機会をもつこととする」としているが、事業主は好況業種であるにもかかわらず、労働省・職業安定所から「要請」のないことを奇貨として、「現状としては繰り上げることはできない」という態度をとつているとのことである。
このような事例は、他の事業所でも数多く存在すると思われる。定年延長について労使間の交渉が尊重されるべきことは当然であるが、高齢者の雇用の安定を図るという本法制定の趣旨からみるならば、このような事例においても労働省として積極的な役割を果たすべきではないかと考えるが、どうか。
四 前記の事業所では、本年三月十五日以前に満五十七歳となる高年齢者は、継続雇用の意欲と能力があるにもかかわらず、「定年解雇」を適用され失業状態となつている。六十歳定年制への移行の段階で、本人が継続雇用を希望しているにもかかわらず、再雇用制度もないため定年解雇される労働者に対して、継続雇用へ道を開くため、労働省としてなんらかの指導、助言をすべきであると考えるが、どうか。
五 また、前記事業所には、一年契約の嘱託員が再契約を重ね二十年以上にわたつて継続雇用されている労働者がいる。このような場合、期間の定めのない雇用とみなすことは、いくつかの判例も認めているところであるが、同事業所では嘱託員は五十五歳で「定年解雇」をされることとなつている。
期限の定めのある労働者であつても、二十年間にもわたつて同一事業所で働いている労働者に対して、実質的に六十歳定年制に移行するような措置がとられるべきであると考えるが、どうか。
右質問する。
政府答弁書
一について
定年制の状況を労働省「雇用管理調査」によりみると、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(昭和四十六年法律第六十八号。以下「高齢法」という。)施行後の昭和六十二年一月現在で、一律定年制を定めている企業のうち定年年齢を六十歳以上に定めている企業の割合は五十八・七パーセント(昭和六十一年一月五十六・六パーセント)、定年年齢を六十歳以上に改定することを既に決定しているか、又は改定の予定がある企業を含めると七十四・五パーセント(同六十九・八パーセント)に達している。
また、定年年齢を六十歳以上に定めている企業の割合を産業別にみると、鉱業四十八・六パーセント、建設業八十七・七パーセント、製造業五十七・一パーセント、電気・ガス・熱供給・水道業五十九・八パーセント、運輸・通信業五十四・八パーセント、卸売・小売業、飲食店四十四・三パーセント、金融・保険業五十二・八パーセント、不動産業六十六・七パーセント、サービス業六十五・三パーセントとなつており、さらに、企業規模別にみると、五千人以上八十四.九パーセント、千人以上五千人未満七十一・ニパーセント、三百人以上千人未満五十五・〇パーセント、百人以上三百人未満五十四・八パーセント、三十人以上百人未満五十九・六パーセントとなつている。
二から四までについて
高齢法においては、定年の引上げに関する事業主の計画的な取組を促すため、一定の行政措置を講ずることができることとされているところであるが、既に六十歳以上に定年を引き上げることを決定し、これを就業規則又は労働協約に明記している事業主については、六十歳以上への定年の引上げが明確に決まつているものであり、このような取組を行つている事業主に対して高齢法に定める定年の引上げの要請等の行政措置を講ずることは適当ではないと考える。
また、六十歳定年の実施時期について労使で合意の上決定している場合には、それを尊重することとしているところであり、六十歳定年への移行過程における具体的な方策等も含め、労使双方が十分協議を尽くし、それぞれの企業の実情に応じた計画的な取組を進めることが必要と考える。
五について
嘱託員の雇用の在り方については、個別の労働契約の内容にかかわることであり、当該事業所の当事者間で十分協議の上適切な対応が図られることが望ましいと考える。
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