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特別養護老人ホームの拡充に関する質問主意書

衆議院 第112回 第31号

提出者
衆議院
提出日
1988年5月20日
内閣転送 1988年5月25日
答弁書受領日
1988年5月31日
提出から11日
答弁の項目数
4
質問 3,161字/答弁 472字

質問本文

衆議院議長 原 健三郎 殿

特別養護老人ホームの拡充に関する質問主意書

近年、人口の高齢化が社会的問題になり、将来を展望した福祉の拡充が求められているところであるが、政府は逆に老人医療費の有料化や、今国会における国民健康保険制度の改悪にみられるように、老人の長期入院からの締め出しなど、憲法のかかげる「健康で文化的な最低限度の生活」を保障しているとはいいがたい。

老人福祉法は、「老人は、多年にわたり社会の進展に寄与してきた者として敬愛され、かつ、健全で安らかな生活を保障される」とうたい、「国及び地方公共団体は、老人の福祉を増進する責務を有する」と規定している。

ところが現状は、「特別養護老人ホームに入所できず、介護者も不在のまま死亡した老人」や、「医療費逓減制のために病院を転院し、まもなく死亡した老人」など福祉、医療の手が及ばず不幸な死を遂げる老人が跡を断たない。

政府は、こうした事態を直視し、老人福祉の切り捨てでなく拡充をこそ進めるべきである。

そこで、特別養護老人ホームの拡充に関する政府の見解をただしたい。

一 特別養護老人ホームの施設を増やすこと

政府は「中間施設」と呼ばれる「老人保健施設」を推進することで、特別養護老人ホームなどの措置費制度を後退させようとしているが、今日、国の措置費で特別養護老人ホームを拡充することこそ切実に求められている。

たとえば、奈良県について調べてみると、昭和五十八年から五年間で老年人口は一一三%の伸びを示し、そのうち、寝たきり老人は一二〇%、一人暮らし老人は一六五%と老年人口全体の伸びを上まわり、老人医療、在宅ケア、施設ケア等の拡充が切実に求められている。

ことに六十五歳以上の老人をかかえる世帯のうち、老人のみの世帯は昭和五十五年の一八%から六十年の二一%へと増加傾向を示し、一方で共働らき世帯の増加など、在宅介護能力は全体として低下している。

さらに老年人口が二割以上を占める村が、奈良県でも下北山村をはじめ六村もあり、全世帯が六十歳以上という集落もあるなど、こうした地域では老人介護の問題は地方自治体の大きな問題ともなつている。

都市部でも深刻な事態が広がつており、奈良市内のY氏は四十歳で脳卒中による片マヒとなり、以後寝たきりで入退院を繰り返し、七十六歳で死亡したが、その介護を受け持つていた嫁は働らいて生計を維持しているため、午前七時から午後七時までの十二時間は寝たきりの病人が独居状態となり、食事はベッドから手を伸ばせる範囲におかれたおにぎりや、牛乳、パンという状況で、オムツ交換もできず、便座つきの特殊ベッドを使用しており、巨大褥瘡に苦しみながらの悲惨な最後であつた。介護者であり、生計維持者である嫁は自らの高血圧の受診や治療もできず、仕事と家事、介護と子育てで文字どおり休む間もない生活を余儀なくされており、不幸な最後を遂げた老人だけでなく、家族もまた非常な苦労を共にした日々であつた。

なお、昭和六十二年十二月現在、奈良県高齢福祉課の調査によれば、特別養護老人ホームの入所待機者は五十八名とされているが、あるケースワーカーが直接施設に問い合わせて調査したところによると、昭和六十三年二月時点で約百二十名から百三十名もの入所待機者があり、半年以上待たされて入所できればよい方だという事態となつている。

そこで、政府に以下の点について質問する。

�@ 特別養護老人ホームを増やすための政府の当面の計画を明らかにされたい。

�A また、そのための政府の助成措置の拡大について、どのような考えを持つておられるのか明らかにされたい。

�B 入所を待つておられる多数の方々の切実な要望を政府はどのように受けとめておられるのか。

二 措置費の引上げ、職員の定数増について

奈良県の特別養護老人ホームをいくつか調査したところによると、入所者は全体として高齢化し、入所者の六五%以上は八十歳以上であり、俳徊を含む痴呆性老人も三〇%に達している。

ところが、政府が決めている痴呆性加算は重度の痴呆性老人の入所率三〇%を基準としており、「重度」の規定についても、「他人に暴力をふるう」「自殺をはかる」「火を常にもてあそぶ」「糞尿をもてあそぶ」などとされている。施設ではそのような事態を避けるために努力しているのに、こういう事態が七項目中三項目以上該当し、常態化していることを痴呆性加算の要件とすることは、事実上この制度の適用申請を困難なものとしている。

また、職員の定数配置についても、二十四時間収容施設の実情を無視した低い基準となつており、問題である。

定数八十名の施設の場合、寮母は十八名であるが、三交代時差勤務と月六回の宿直勤務の中で午前八時三十分から夕方四時の間は九人しか勤務につけず、施設長らは「せめてあと四人定数をふやしてほしい」と切実に訴えている。入浴介護は七人の寮母の手を必要とし、食事時間は一時間二十分も必要とするなど、十分な介護を保障しようとすれば定員増は避けてとおることのできない課題である。

さらに措置費の増額も重要である。ある施設経営者によると、「開所五年は黒字、あとの五年でこれを食いつぶし、十一年目からは確実に赤字」というのが施設運営の通常だといわれている。なぜなら、措置費の人件費は職員の経験や年齢を加味しておらず、施設の年数がたち、職員が経験年数をつんできて若干の給与引上げを行つたり、施設のメンテナンスに費用がかかるようになつてきても、こうしたものへの裏付けがないためである。

また、暖房費は一人千六百円で五ヵ月分とされているが、これでは全く実情に合つていない。八十人定員の場合、一冬の暖房費は措置費では六十四万円とされているが、実際は重油暖房のところで一ヵ月で五十万円、電気暖房のところで一ヵ月百万円となつており、その不足は明白である。

そこで、以下の点について政府に質問する。

�@ 痴呆性加算の基準緩和を図り、施設が安心して痴呆性老人の受入れができるようにする必要があると考えるが、政府の見解を伺いたい。

�A 全国の施設の実態をより深く調査し、職員の定数増を積極的に進める必要があると考えるが、政府の見解を伺いたい。

�B 円滑な施設運営を保障するため、措置費の抜本的引上げに取り組む必要があると考えるが、政府の見解を伺いたい。

三 低肺機能者の救済について

風邪が命取りにさえなる低肺機能者への対策は、今日大きな社会問題となつているが、在宅者への酸素療法に健保適用など、この分野での若干の前進もみている。

全国で十五万人ともいわれる低肺患者は、戦中・戦後の混乱期に結核にかかつた人で、今日高齢化して低肺患者となるなど、いわば戦争の後遺症ともいわれる人々で、その社会的救済は政府の責任となつている。そのために、特別養護老人ホームに低肺患者が入所できるようにする必要がある。

奈良市内のA氏は慢性肺気腫で、養護ホームから大阪府内の病院に入院し、七十五歳で死亡したが、この患者の場合は養護ホームから病院への入退院を繰り返しており、養護ホームでのふとんの上げ下ろし、掃除など、身のまわりの日常生活に耐えられず、呼吸困難を繰り返し、数度の入院の後死に至つている。特別養護老人ホームに入所できていたら……と関係者は訴えている。

また、一人暮らしで施設入所の要件を満たさず、入院加療も必要としない低肺者の場合は、在宅酸素も使えず事実上放置されている。こういう場合は、特例的に施設に入所させることが必要である。

そこで、特別養護老人ホームに低肺患者が入所できるよう特別措置を検討する必要があると考えるが、政府の見解を伺いたい。

右質問する。

衆議院の原文・経過

政府答弁書

一について

特別養護老人ホームについては、これまで社会福祉施設の中でも特に重点的に整備を行つてきているところであり、今後とも、地域的な適正配置、入所待機者の状況等に配慮しつつ、着実に整備を行つていくこととしている。

また、特別養護老人ホームの施設整備に要する費用については、その二分の一の国庫助成を行つているところであり、今後とも所要額の確保に努めてまいりたい。

二の�@について

特別養護老人ホームの痴呆性老人介護加算については、その要件の緩和を行う必要はないものと考えている。

二の�A及び�Bについて

特別養護老人ホームの職員配置及び措置費の水準については、従来から、適正な職員体制の確保及び入所者処遇の向上を図る観点から、その充実を図つてきているところである。

三について

特別養護老人ホームは、身体上又は精神上著しい障害があるために常時の介護を必要とし、かつ、居宅においてこれを受けることが困難な六十五歳以上の者を入所させ、養護することを目的とする施設であり、低肺機能という特定の障害についてのみ入所要件を緩和することは考えていない。

衆議院の原文

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