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パレスチナ問題に関する質問主意書

衆議院 第113回 第32号

提出者
衆議院
提出日
1988年12月21日
内閣転送 1988年12月24日
答弁書受領日
1989年1月13日
提出から23日
答弁の項目数
4
質問 1,797字/答弁 1,460字

質問本文

衆議院議長 原 健三郎 殿

パレスチナ問題に関する質問主意書

十二月十四日、アラファト・パレスチナ解放機構(PLO)議長が行つた声明で、PLOが、国連決議一八一、二四二、三三八の三つを受け入れたこと、あらゆる形のテロを拒否すること、すべての問題を中東和平国際会議で討議すべきことを明らかにし、「我々の生存はイスラエルの生存を奪うものではない」ことを強調した。これに対して、レーガン米大統領は同日、「PLO代表との間で実質対話」に入ることを米国務省に指示した、と声明した。シュルツ国務長官はこの声明を受けての記者会見で、「米国は独立パレスチナ国家の宣言を承認しない」との立場を繰り返したが、大統領声明は、レーガン米政権が過去八年間パレスチナの正当な代表であるPLOを排除した中東政策を追及して、何等の成果も上げ得なかつたばかりか、最近では国際的な孤立が明らかになつてきたことによる一定の修正を余儀なくされた結果である。他方で、PLOの側も、先にアルジェで開かれた最高意思決定機関であるパレスチナ民族評議会(PNC)で、国際世論の共感を広げることができるような方針を一層鮮明にしたという要因もある。

日本共産党は、これまで�@イスラエル軍のアラブ占領地域からの全面撤退、�Aパレスチナ・アラブ人の独立国家樹立を含む民族自決権を承認し保障することが中東問題解決の基本と主張しつつ、PLOの側もイスラエルの国家的存在の承認を明確にしてこそ侵略に反対しパレスチナ人民の自決権を擁護するその闘争に国際的な道理と妥当性をより一貫して与えると指摘し、同時に一般市民を対象としたテロ行為に賛成しない立場を表明してきた。

以下パレスチナ問題について質問する。

一 十一月十五日、PNCはパレスチナ国家樹立宣言を行つた。現在、世界の五十九ヵ国が国家を、五ヵ国が宣言を承認し、また、これまで国連で用いられてきた「PLO」の呼称を今後「パレスチナ」と変更するなどを内容とする国連総会決議案が、十二月十五日ジュネーブで百四力国の賛成で採択された。これは「パレスチナ独立国家」が国際社会において認知されたことを意味している。今やPLOは国際的支持を受けつつある。政府は、これまで独立国家を含むパレスチナ人の民族自決権尊重を政策にしてきたが、今回のアラファトPLO議長の声明によつてPLOの独立国家として承認する上での障害は取り除かれたはずである。今こそ政府はパレスチナ国家を承認する時期だと考えるが、その意思があるか明らかにされたい。

二 右の国連総会決議に対し日本政府は棄権の態度をとつた。その理由を明確にされたい。

三 十一月八日行われた日本パレスチナ議員連盟主催のPLOカドウミ政治局長歓迎昼食会の席で、同局長並びに伊東正義同議連会長は、竹下首相がPLOに対し「政治的、文化的、経済的に支援する」ことを約束した、と述べたが、政府は具体的にどのような支援策を講じようとしているのか明らかにされたい。

四 PLOの東京事務所は一九七七年に開設されて以後、外国企業の東京事務所と同様の扱いのままいまだに外交特権などを供与されていない。十五日には宇野外相がPLOのモネム東京事務所代表と初めて会談した。PLOを独立国家として承認しない限り現在も今後も「外交関係に関するウィーン条約」に基づく種々の外交特権の一切を供与しないつもりか。それとも準外交特権というようなことを考えているのかどうか、明らかにされたい。

五 イスラエルのかたくなな態度が目立つており、国際世論の非難を浴びているが、宇野外相は日本の閣僚として初めて今年六月、イスラエルを訪問した。イスラエル側としては、「国際社会で認知されている」ことを印象づけ、孤立した態度を立て直し、日本との経済交流強化を図りたいとの思惑があつたはずである。宇野外相は、シャミル首相、ペレス外相と会談したが、そこで�@イスラエルのパレスチナ人に対する行為は国際法と人道にもとるもので直ちに停止すること、�A占領地からの速やかな撤退、�Bパレスチナ人の民族自決権の尊重、その唯一の合法的代表として国際的に承認されているPLOを認めること、などを明確に述べたのか明らかにされたい。また経済交流強化について話し合われたのか、話し合われたのならば、その内容をつまびらかにされたい。

右質問する。

衆議院の原文・経過

政府答弁書

一及び二について

我が国は、中東和平問題の解決には独立国家樹立の権利を含むパレスチナ人の民族自決権の承認が必要であるとの立場をとっており、昨年十一月にアルジェで開催されたパレスチナ民族評議会におけるパレスチナ国家樹立宣言の採択はパレスチナ人の長年の民族的悲願の意志表明として重要な意義を有するとの認識をもっている。

他方、国家承認が行われるには、国家としての要件を充足していること、具体的には、一定の領域においてその領域に在る住民を統治するための実効的政治権力が確立していることが最低限必要であるが、政府としては現状では本件宣言が言及するいわゆる「パレスチナ国家」がかかる国家の要件を充足しているものとは考えていない。

御指摘の国連総会におけるパレスチナ問題に関する決議案の採択においても、我が国はこのような考えに基づき棄権した。

三について

昨年十一月八日カッドゥーミ・パレスチナ解放機構(PLO)政治局長との会談において竹下総理は、我が国として国際協力構想の下で平和維持、経済協力、文化交流の三分野に重点を置いて世界に貢献していくとの方針を伝えた。

我が国は、パレスチナ問題が中東和平問題の核と認識し、中東和平はイスラエルが一九六七年戦争の結果占領したすべての地域からの撤退、独立国家樹立の権利を含むパレスチナ人の民族自決権の承認及びイスラエルの生存権の承認により達成されねばならず、さらにパレスチナ人を代表するPLOが何らかの形で和平交渉に参加することが必要である、との立場をとっており、これまでかかる立場から関係国への働きかけを行ってきており、今後とも和平実現への関係当事者の和平努力に対し積極的に貢献していく所存である。

また、我が国は、これまで国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)を通じパレスチナ難民を対象とする現金拠出、食糧援助及びUNRWA職業訓練センターへの技術協力を実施し、パレスチナ人の民生安定に貢献しており、さらに従来のUNRWAを通ずる難民を対象とする援助に加え、本年度、西岸・ガザ地区のパレスチナ人の民生向上に資すべく、国連開発計画(UNDP)に日本・パレスチナ開発基金を設立し、右基金により西岸・ガザ地区の経済・社会開発プロジェクトの実現のため、現在具体的プロジェクト選定作業を進めているところである。

四について

PLOを国家として認め得ない現状において、PLO東京事務所への外交上の特権及び免除を付与する考えはない。

五について

宇野外務大臣は、昨年六月のイスラエル訪問の際に会談したシャミール首相及びペレス外相に対し、イスラエル政府が西岸・ガザにおけるパレスチナ人の蜂起については国際法及び人道にもとるような行為はとらぬよう申入れを行うとともに、中東和平はイスラエルが一九六七年戦争の結果占領したすべての地域からの撤退、独立国家樹立の権利を含むパレスチナ人の民族自決権の承認及びイスラエルの生存権の承認により達成されねばならず、さらにパレスチナ人を代表するPLOが何らかの形で和平交渉に参加することが必要である、との我が国の立場を先方に明確に伝えるとともに、和平実現のためにイスラエルが柔軟な政策をとるよう勧奨した。

同会談の中心テーマは、中東和平問題であり、経済関係については、一般的な形での言及にとどまったが、宇野外務大臣からは、今後アラブの隣人との平和裡の共存の道が開かれればイスラエルの発展も疑いなく、我が国との経済交流も拡大して行くであろう旨の一般的指摘が行われた。

衆議院の原文

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