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文化財防災対策及び文化財保存対策の充実に関する質問主意書
衆議院 第114回 第27号
質問本文
衆議院議長 田村 元 殿
文化財防災対策及び文化財保存対策の充実に関する質問主意書
祖先が長い歴史のなかでつくり出し、引き継いできた文化的遺産を大切に保存し、その活用を図っていくことは、国民全体の課題である。
文化財保護にとって適切な保存修理とともに消防防災の観点も極めて重要である。ところが今年度予算では若干増額したというものの、この一〇年間で保存修理は一一四・五%と、この間の経済変動をみるならば実質マイナスであり、防災施設は同じく七三・六%と大幅に減少している。
一方、山間部にある寺院は、山林火災がいつ起きるかわからない状態の中にあり、市街地では人家と隣接する寺院も多く、地価高騰のおりから火除地を設けることも事実上困難であり、類焼の危険にさらされている。こうした中で総合防災の必要性は益々高まっている。にもかかわらずその整備進捗状況はまだまだの状態であり、総ての指定文化財に総合防災が満足に設置されるためには、補助予算の増額と補助率の引上げが急務である。
文化財保護法ではその第三条で「政府及び地方公共団体は、文化財がわが国の歴史、文化等の正しい理解のため欠くことのできないものであり、且つ、将来の文化の向上発展の基礎をなすものであることを認識し、その保存が適切に行われるように、周到の注意をもつてこの法律の趣旨の徹底に努めなければならない」と定めている。
そこで次の通り質問する。
一 文化財の防災体制確立について
1 公的融資制度の確立について
政府は指定文化財の総合防災設備に総額の五〇〜八五%を国庫補助しているが、文化財への総合防災設備の設置は必ずしも十分とはいえない。何故なら来年度から防災設備の充実に着手する東大寺の場合も、消防当局との協議で必要な設備を行おうとすれば二三億三、二〇〇万円もの工事費になり、相当の国庫及び県費補助が出るものの寺側の負担は膨大である。もちろん寺院の経営状態によって補助率は変わるものの、特に弱小寺院の場合は、その経済能力から文化財保護上必要な防災施設の設置が困難だという事態も生じかねない。
寺院負担分を借入れで賄うにも、宗教法人は担保物件をもたない場合が一般的で、融資制度の確立は寺院共通の要求である。従って、政府が低利、長期、無担保の公的融資制度や利子補給制度を確立すべきであると考えるが、どうか。
2 防災設備の人的措置に補助制度の確立について
消防署の専門官の意見では火災の初期発見、初期消火を保障するためには、夜間を含むパトロールなど人的配置が不可欠だといわれている。たとえば東大寺の場合は現在、昼間二人、夜間六人の職員が主に防災関係の仕事に携わっており、今計画中の二四時間体制の総合防災センターを設置した場合は更に四名の配置がいる。
現在防災センターや人的体制は補助対象外であり、専ら設置者負担である。人的体制への補助は、ある意味では防災体制の根幹をなすものであり、補助対象になっていないのは、大きな欠陥である。
防災設備の人的措置に対する補助制度を確立すべきであるが、どうか。
3 非常通報装置の設置の促進と正確な機器の開発について
文化財に対する非常通報装置については、その設置が消防法の義務事項でないことから設置が極めて遅れている。ところが万一の事態が生じたときは、消防署に対する正確かつ迅速な通報で初期消火を確実なものにするために、非常通報装置の設置は極めて有効であり、その設置を促進すべきであるが、どうか。
また、非常通報装置と自動火災報知器を連動させ、自動通報をするのが最も有効であるが、奈良市消防本部によれば、設置されている機器の二%、一ヵ月三・六件の誤作動を経験しているという。
誤作動を最小限にくいとめる機器の研究と開発に特別の努力を払うべきであるが、どうか。
二 文化財の保存修理の制度の充実について
1 景観や雰囲気に合致した収蔵庫の設置について
仏像など美術工芸品の防災を目的として、収蔵庫の建設が進められており、この事業にも補助制度がしかれている。しかし、近年内装は木造になり、自然空調などの工夫もされ徐々に良くなっているが、ガラス製防護柵等国庫補助として認められないものもある。
この際景観や雰囲気に合致した収蔵庫など補助制度を実状に合わせて拡大するとともに、収蔵庫の設置を促進すべきであると思うが、どうか。
2 無住寺の美術工芸品の保存促進について
近年、過疎地域等で無住寺が増える傾向にある。ところが無住寺にも貴重な文化財があり、荒廃にまかされている。こうした美術品の公的な収蔵庫や博物館での保存を促進すべきではないか。
3 保存修理に必要な木材の保護育成と宮大工の後継者の養成について
近年、林業の不振のなかで良質な内地材が不足している。また樹齢何千年というような大木も、極めて入手しがたい状況にある。こうした事情から塔の建立や建造物の修理に外材が用いられている例も多い。
日本古来の古文化財の保存に必要な木材の育成に特段の配慮をするとともに、宮大工の後継者の育成に特別の措置を講じるべきではないか。
右質問する。
政府答弁書
一の1について
文化財保護法(昭和二十五年法律第二百十四号)に基づく文部大臣指定の重要文化財である建造物(以下「重要文化財建造物」という。)の防災に要する経費については、国庫補助を行ってきており、さらに、地方公共団体においても補助を行っているところと承知している。特に、国庫補助については、補助事業者の財政状況等に応じ補助率の加算を行うこととしているところであり、現在のところ、これに加えて御指摘のような公的融資制度等を設けることは考えていない。
一の2について
重要文化財建造物の防災対策については、当面、警報設備等の防災設備の設置促進に努めてまいりたいと考えている。
なお、重要文化財建造物等について、その管理状況を定期的に巡視するため都道府県が実施している文化財保護管理指導事業に対しては、国庫補助の対象としているところである。
一の3について
火災が発生した際、直ちに最寄りの消防署等に通報する非常通報装置を重要文化財建造物等に設置する場合については、国庫補助の対象とし、その設置促進に努めているところである。
自動火災報知設備に係る非火災報の防止対策については、設置場所の環境に適応した感知器の設置の推進、非火災報防止に有効な措置を講じた機器の開発及び普及等に努めてきたところであるが、今後ともこれらの対策の一層の推進を図ってまいりたい。
二の1について
文化財保護法に基づく文部大臣指定の重要文化財である美術工芸品(以下「重要文化財美術工芸品」という。)の収蔵庫は、周囲の景観や雰囲気に合致したものであることが望ましいと考えており、国庫補助を行うに当たっては、今後ともこうした点に留意してまいりたい。
二の2について
無住寺における重要文化財美術工芸品の保存管理については、それぞれの実情に応じ、地方公共団体等を管理団体に指定し、また、収蔵庫の建設に対し国庫補助を行っているほか、国又は地方公共団体の設置する博物館、美術館等への寄託を指導しているところである。
二の3について
文化財の修理にも資する大径優良材に対する需要に対応できるよう、国有林野事業において、長伐期の森林の育成に努めているところである。
宮大工の後継者の養成については、文化財保護法に基づき、建造物木工を選定保存技術に選定し、その保持者及び保存団体が行う宮大工の後継者の養成に対し国庫補助を行っているところである。
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