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高層建築物の消防防災対策に関する質問主意書

衆議院 第116回 第17号検討してまいりたい ×1

提出者
衆議院
提出日
1989年12月13日
内閣転送 1989年12月16日
答弁書受領日
1989年12月26日
提出から13日
答弁の項目数
11
質問 2,660字/答弁 1,976字

質問本文

衆議院議長 田村 元 殿

高層建築物の消防防災対策に関する質問主意書

「建築計画・システムともに防災上安全性の高い建物」と言われた東京江東区の超高層マンション「スカイシティ南砂」の二四階から八月二十四日、火災が発生した。幸いにも数名の負傷者と一室の焼失だけで大惨事にはいたらなかった。しかし、この事故は、高層マンションの防災対策上でいくつかの問題点を浮き彫りにした。それは、�@初期消火活動や排煙設備の作動が遅れた、�A百平方メートルの防火区画が突破され、玄関や附室の防火扉が区画として機能しなかった、�B防火扉が機能せず、廊下やエレベーター附室に煙が侵入した、�C複雑な建築構造から消防隊の有効な消火活動が遅れた等が指摘されている。

自治省消防庁の資料によると、一一階以上の高層建築物は全国で九、二九八棟あり、うち共同住宅は五、二八八棟となっている。また、建設省の資料によると、一一階以上の住都公団の高層住宅は全国で九七〇棟となっている。これら一一階以上の高層建築物からの出火件数は、八七年の一年間で五〇〇件にのぼっている。

今日、国民の生命と財産を大規模災害や高層マンション火災などの危険にさらしている原因は、国民の生命と財産に対して消防防災上の十分な安全性を担保しないまま、規制緩和と大都市集中政策を推し進めたところにある。

消防審議会は十月二十四日、消防庁長官に対し、東京都の高層マンション火災、米国サンフランシスコのロマブリータ地震などが相次いで発生していることから、科学消防力や震災対策の強化などに取り組むよう意見具申した。この意見の中で特に、「国においても、消防補助金の拡充に努めるなど、積極的な財政上の支援措置を講ずる必要がある」としたうえで、「高層建築物の増加等に対応するため、全国的に整備水準の低いはしご付消防自動車、化学消防自動車及び救助工作車の増強を図る」、「高層ビル火災等で極めて有効である、消防ヘリコプターの整備と活用を積極的に進める」ことなどを提起している。

高層建築物の火災などから国民の生命と財産を守るための抜本的な消防防災対策は、緊急を要すると考える。

従って、次の事項について質問する。

一 消防力の基準との対比における消防施設等の整備状況は八七年四月一日現在、はしご自動車六一・一%、化学消防ポンプ自動車五六・八%となっており、高層建築物の増加等に対応するためこれら整備の遅れた消防施設の増強を図るべきではないか。

さらに、リゾート地域での高層建築物に対する消防体制が非常に遅れている。例えば、京都の宮津・与謝地方では、リゾート構想のなかで二〇階建ホテルなどが計画されているが、宮津・与謝消防事務組合にははしご自動車が一台もないという状況であり、リゾート地域での早急な整備を図る必要があるのではないか。

二 大規模災害や高層建築物火災などで救助活動に効果を発揮した消防ヘリコプターの増設を積極的に進めるとともに、今後ますます増加する超高層建築物に対して、ヘリポート設置を法的に義務付けるべきではないか。

三 「スカイシティ南砂」の火災のように、玄関扉や防火扉が防火区画としての信頼性が低かったことから、延焼遅延の機能をもった住宅用スプリンクラーの開発と普及が必要ではないか。当面、超高層住宅や高齢者住宅など危険性の高いところの設置を義務化すべきではないか。

四 「スカイシティ南砂」の連結送水管には常時水が入っておらず、消防車の到着と同時にブースターポンプ(加圧送水装置)で二四階まで水を押し上げた。送水時間が少なくてすむように、常時連結送水管に水を入れておくとともに、「高さ七〇メートル以上」の建築物に設置義務化されているブースターポンプの設置基準を厳しくし、高さ七〇メートル未満の建築物でも設置するようにすべきではないか。

五 ロマブリータ地震では、液状化等によって水道管も破裂し、地震対策用消防専用消火栓から水が出なかったと聞いている。我が国の消火栓は「つなぎの部分が不安」という消防関係者の指摘もあり、液状化危険地域での耐震性防火水槽の整備も遅れている。液状化に耐えうるような消火栓の補強、液状化危険地域での耐震性防火水槽の早急な整備が必要ではないか。

六 「スカイシティ南砂」の火災の場合、バルコニーが上階への延焼防止帯としての重要な役割を果たすとともに、ガラス類の落下防止や避難経路としての役割が明らかになった。しかし、高層住宅には、スパンドレル(腰壁)だけの棟もあり、今後高層住宅でのバルコニーの設置を義務化する必要があるのではないか。

七 「スカイシティ南砂」の火災では、防火扉が機能せず、廊下やエレベーター附室に煙が侵入したが、風圧には開かず、人間の力では開くというような防火扉の機能を改善する必要があるのではないか。

八 障害者、高齢者などの「災害弱者」の安全を確保するためには、これら「災害弱者」世帯の状況を十分把握して、緊急時に備えるとともに、共同住宅ではできるだけ低層階に入居できるよう指導すべきではないか。また、「災害弱者」のための通報、避難システムの設備や機器の開発や普及が必要ではないか。

九 超高層住宅になればなるほど、建築構造が複雑化し、消防消火活動が困難になっている。居住者に対して、バルコニーに避難の障害になる物を置かないなどの高層住宅の構造に相応した防災の周知徹底を図る必要があるのではないか。また、消防署に対しても、消防隊が迅速にアクセスできるように、管内の高層建築物について立入り調査等を行って、その構造や防火システムを十分に把握しておくとともに、複雑な高層建築物の消火訓練を十分に行えるような施設等を措置すべきではないか。

十 超高層建築物では、防災装備もより複雑化し、防火管理者が高度な専門性や判断力が求められる。現行の防火管理者教育や資格制度では不十分になってきており、より高度な専門性をもつ制度に見直すべきではないか。

十一 消防審議会の意見では「国においても、消防補助金の充実に努めるなど、積極的な財政上の支援措置を講ずる必要がある」と指摘されている。消防庁の予算は、八一年度予算をピークに毎年度削減され、八九年度には八一年度比で二九・八%減と落ち込み、最近の災害状況を踏まえた予算に程遠いものとなっている。大規模災害や都市化に対応できる消防体制・消防力を早急に整備するため、大幅な予算を確保すべきではないか。

右質問する。

衆議院の原文・経過

政府答弁書

一について

近年における高層建築物の増加や危険物施設の多様化、複雑化等の都市構造の変化に対応し、はしご自動車、化学消防車の整備を充実するなど消防力の科学化を推進することが重要であると考えており、今後ともその整備の促進に努めてまいりたい。

高層建築物の増加しているリゾート地域については、はしご自動車を計画的に整備する必要があるので、地域の実情を十分勘案し、その整備の促進に努めてまいりたい。

二について

消防ヘリコプターについては、消火、救急、救助等の消防活動において非常に有効であるため、その全国的な整備を図る観点から、現在、広域的整備運用を図るための調査研究を進めているところである。

ヘリポートについては、現時点では、高層建築物にその設置を義務付けることは考えていないが、現在、ヘリコプターの屋上緊急離着陸場の設置に関する指針を作成中であり、今後、当該指針に基づき高層建築物の建築主等に対しその設置を指導してまいりたい。

三について

住宅向けのスプリンクラー設備については、設置・維持経費や水損被害等の問題にも配慮しつつ、その研究開発を推進しているところである。

また、現在、高齢化の進展を踏まえた住宅防火対策の一環として、スプリンクラー設備も含めた住宅用防災機器等の在り方について調査研究を進めているところであり、今後その結果をも踏まえ、これらの機器の普及の促進に努めてまいりたい。

四について

高層建築物に設置される連結送水管については、常時充水されている湿式のものとするよう指導してきたところであり、今後ともその徹底に努めてまいりたい。

高さ七十メートル以下の建築物については、現在の消防ポンプ自動車の性能からみて、ブースターポンプが設置されていなくても十分送水可能であると考えている。

五について

地震時における消防水利の確保については、防火水槽と消火栓との適切な組合せによる水利の多元化が要請されており、耐震性貯水槽等の震災対策施設の整備を促進してきたところであり、また、消火栓を含む水道施設全体の耐震化を進めるよう指導してきたところである。今後ともこれらの施策の充実に努めてまいりたい。

六について

バルコニーについては、現時点では、高層住宅にその設置を義務付けることは考えていないが、高層住宅の火災に対するより一層の安全性を確保するために必要と認められる場合には、高層住宅の建築主から提出された防災計画書の審査等を通じて、バルコニーの設置を指導しているところであり、今後ともその推進に努めてまいりたい。

七について

防火戸については、高層住宅の火災に対するより一層の安全性を確保するため、防火上、避難上及び遮煙上更に有効なものとするための措置について検討してまいりたい。

また、本件火災のような煙の拡散を防止するためには、火災時に住戸の常時閉鎖式防火戸が閉鎖されていることが必要であり、高層住宅の居住者に対し、この旨の周知徹底を図ってまいりたい。

八について

身体障害者、高齢者等のいわゆる「災害弱者」の防火安全対策については、全国火災予防運動の機会等を通じ、災害弱者家庭に対する防火訪問の実施、避難・救助の容易な場所での就寝の促進等について指導しているところであり、今後ともその徹底に努めてまいりたい。

災害弱者のための各種設備機器の開発・普及については、病院、社会福祉施設等を中心として非常通報装置の普及の促進を図っているほか、視聴覚障害者等を対象とする火災覚知、避難誘導等に係る機器についての研究を行っており、今後ともこれらの施策の充実に努めてまいりたい。

九について

高層住宅の居住者に対しては、消防用設備、防火戸、バルコニー等の適切な管理の重要性の認識を高めるとともに、各住戸ごとの避難路の確認の徹底を図るよう指導しているところであり、今後ともその推進に努めてまいりたい。

また、各消防機関においては、高層建築物の立入調査を計画的に行っているほか、消防学校及び消防本部に設置した訓練塔を活用して高層建築物の消防活動訓練を実施しているが、今後ともその充実を図るよう指導してまいりたい。

十について

高層建築物等における防火管理については、防火管理者等に当該防火対象物の構造、設備に即した知識及び技能の習熟に努めさせるよう指導しているところであり、今後ともその徹底に努めてまいりたい。

十一について

消防補助金については、消防施設の整備水準が消防力の基準に比べいまだ低い状況にあること、近年における都市災害、自然災害等の多様化、大規模化に適切に対処する必要があること等から、消防防災施設の整備を一層促進しなければならないと考えており、今後ともそのための特定財源として重要な役割を果たしている消防補助金の確保に努めてまいりたい。

衆議院の原文

この答弁書に出てくる定型句

検討してまいりたい ×1

語の一致で数えたものです。答弁の評価ではありません。同じ型の答弁が過去にどれだけあるかは、型を押すと出ます。

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