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歯科医療に関する質問主意書
衆議院 第131回 第3号検討してまいりたい ×1
質問本文
「保険の入れ歯でも、良く噛めて、話せるようにしてはしい」との患者・国民の切実な願いを反映して、本年四月の診療報酬改定では、総義歯の製作料などが一定程度引き上げられた。しかし、今回の改定では義歯の中でも頻度の少ない総義歯や多数歯欠損義歯の製作料を引き上げたものの、入れ歯の大半を占める少数歯欠損義歯の製作料や歯科医師の診断・型取り・かみ合わせなどの技術料はすべて据え置かれた。また義歯調整料が復活はしたが、それと引き換えに有床義歯指導料や関連検査の一部が突如廃止された。
さらに重大な問題は、本来であれば条件を整えて全額保険導入すべき金属床義歯が特定療養費制度に組み込まれ、ごく一部分しか保険給付されなかったことである。
また、かねてより歯科技工士より要望されていた、歯科技工士の技術と労働を保険点数のなかで独立して評価するという課題も放置されたままである。高齢化社会を迎えて、義歯の保険診療の改善が重要になっていることは、中央社会医療協議会の基本問題小委員会報告、同歯科小委員会報告でも指摘されていることであり、引き続き改善が必要である。
そこで、本年四月の診療報酬に関する疑問点と、厚生省が積極的に推進している八〇二〇(八十歳で二十本の歯を保つ)運動にかかわる問題について以下質問する。
一 四月診療報酬改定について
1 本年四月の診療報酬改定で、総義歯、及び多数歯欠損義歯の製作料を引き上げながら、義歯の内頻度の高い少数歯欠損義歯の製作料を据え置いたため、多数歯欠損義歯と少数歯欠損義歯とのあいだに著しい不均衡が生じた。なぜ少数歯欠損義歯の製作料を据え置いたのか。
2 歯科医師の技術料である、診断、型取り(印象採得)、かみ合わせ(咬合採得)などの基礎的技術料をなぜ据え置いたのか。
3 有床義歯指導料を廃止した理由を明らかにされたい。
二 歯科技工士の評価について
1 厚生省は、従来より義歯の製作に重要な役割を担っている歯科技工士の保険点数上の独立した評価について、「義歯に関する製作管理及び製作技工は一連の行為であるため診療報酬において歯冠修復及び欠損補綴料として一体的に評価している」との見解を示し、歯科技工士の技術と労働の独立した評価の必要性を認めていない。しかし実際の義歯の臨床では、歯科医師による診断と印象採得をもとに義歯が設計され、その設計に沿って歯科技工士がろう義歯を作成し、歯科医師がそのろう義歯を基に咬合採得を行い、人口歯を配列し、再度歯科技工士の手で義歯が製作されるなどその過程は判然としている。事実、厚生省は昭和六十年の大臣告示によって義歯の製作料には義歯の製作管理と製作技工という二つの要素があり、その配分は概ね三対七であると示している。こうした配分に合理的な根拠があるとするなら、保険点数の中で歯科医師と歯科技工士の行為をそれぞれ独立して評価することは何ら問題はないと考えるがどうか。
2 義歯製作の実態からいえば、近年は外注技工の割合が増大しており、少なくとも外注化されている義歯製作についての評価は行いうると考えるがどうか。
三 特定療養費について
1 本年四月から金属床総義歯が特定療養費の対象となったが、その具体的な請求方法は金属床総義歯の自由料金から該当する保険点数を差し引いて患者より請求するという方法になっている。保険医療機関が金属床総義歯を行った場合に保険請求を行う点数には、初診料、再診料、補綴時診断料、印象採得、咬合採得など歯科医師の技術料が含まれている。また当然ながらこれを差し引くべき自由料金にも技術料が含まれている。そうするとこの方式は技術料差額と理解すべきものと考えるがどうか。
2 昭和五十一年、厚生省保険局長名で「従来の歯科領域における差額徴収に係る通知を本年七月三十一日に限りすべて廃止することとした」との通知を出している。
これは、歯科の差額徴収に対する国民の批判が高まるなかで、中央社会医療協議会の「歯科の差額徴収は歯科材料費のみに限ること。このため、従来の差額徴収に関する局長、課長通達は廃止し、新たな取り扱いを通達する」との答申を受けて出されたものである。
その後この保険局長通知が廃止され、また改変されたことはあるか。もし廃止あるいは改変されていないとすれば、今回の金属床総義歯の扱いはこの通知と矛盾すると考えるがどうか。
3 昭和五十九年五月十日の健康保険法改正にかかわる衆院社会労働委員会での質疑において、当時の吉村保険局長は、「現在のところ、差額徴収の方式を利用して技術料にかかわる差額徴収をやろう、こういう考えはございません」と述べている。今回の金属床総義歯の特定療養費への導入は、国会答弁を一方的に反故したこととなり、国会軽視も甚だしいと考えるがどうか。
四 八〇二〇(ハチマルニイマル)運動について
1 平成元年に出された「成人歯科保健対策検討会中間報告」において、八〇二〇運動が提唱されて以来、すでに五年が経過している。この八〇二〇を実現する上では、歯科疾患の早期発見、早期治療と予防活動が大きな意義を持っていることは当該報告においても指摘されている。
また、老人保健法の附帯決議において「老人保健法に基づく歯科の保健事業の確立、特に歯槽膿漏等に対する歯科健診の導入に努めること」(昭和五十七年八月三日参院社会労働委員会)と歯科の保健事業を早期に実施することが盛り込まれながら、未だに歯科検診が基本検診に盛られていないことは厚生省の怠慢と言わざるをえない。老人保健法に基づく基本検診に、歯科検診を追加するべきと考えるがどうか。
2 厚生省は来年度概算要求に、総合検診と合わせて歯周疾患チェックという項目をあげているが、これは基本検診の検診項目として実施する予定か。もし基本検診の検診項目でない場合は、どの様な方法で実施する予定であるのか明らかにされたい。
3 昨年提出された、中央社会保険医療協議会診療報酬基本問題小委員会報告書では「小児期の予防や治療がその後の歯の健康に大きな影響を及ぼすと言われている」として診療報酬のあり方を検討していくと述べている。
予防については、まず老人保健法に基づく基本検診の必須項目に歯科検診を追加し、健康教育など拡充するべきであって、安易に医療保険に予防を組み込むことは国の責任が曖昧になるなど問題が多いと考えるがどうか。
右質問する。
政府答弁書
一の1について
平成六年四月の診療報酬改定においては、中央社会保険医療協議会(以下「中医協」という。)の議論を踏まえ、有床義歯の製作料については、高齢化の進展に伴い、多数歯欠損に係る有床義歯を必要とする人が増加していること及び平成四年四月の診療報酬改定において少数歯欠損に係る有床義歯の製作料を重点的に引き上げたことを勘案し、少数歯欠損に係る有床義歯の製作料を据え置き、多数歯欠損に係る有床義歯の製作料を引き上げたところである。
一の2について
診療行為の診療報酬上の評価については、診療報酬の改定の都度、医療の実態を勘案し、中医協の議論を踏まえ、適切な評価が行われてきているところである。平成六年四月の診療報酬改定においても、医療の実態を勘案し、補綴時の診断及び咬合採得に係る技術料を据え置くとともに、印象採得、装着等に係る技術料を引き上げ、全体として良質な義歯が作成できるよう技術料について適切な評価を行ったものである。
一の3について
平成六年四月の診療報酬改訂においては、中医協の議論を踏まえ、有床義歯の係る調整及び指導について、その評価する診療行為の内容を明確にする観点から、有床義歯指導料に代えて新製義歯調整指導料及び有床義歯調整指導料を創設したところである。
二について
義歯等に関する製作管理及び製作技工は一連の行為であるため、保険医療機関が歯科技工所に義歯製作等を委託しているか否かにかかわらず、診療報酬において歯冠修復及び欠損補綴料として一体的に評価することが適切であるとの考え方から、これを細分化せず評価しているところである。なお、昭和六十三年五月厚生省告示第百六十五号により歯冠修復及び欠損補綴料の配分について告示した趣旨は、保険医療機関が歯科技工所に義歯製作等を委託する場合の技工料金の標準を周知することを通じて歯科技工委託の円滑な実施に資することを目指したものであり、これが直ちに個々の義歯等の製作料金について製作管理に要する費用及び製作技工に要する費用へ配分する根拠となるものではない。
三について
金属床による総義歯の提供については、中医協の議論を踏まえ、特定療養費を支給する療養として認められており、保険医療機関は患者から法令の規定により算定される費用の額を超える料金を徴収することができることとなった。これは材料料に係る特別の料金のみを徴収するものではないが、特別な材料の使用に起因する特別の料金を徴収するものであり、一般的な技術料に係る特別の料金の徴収を認める趣旨ではない。
御指摘の通知は、同通知の発出以前の歯科領域の差額徴収に係る通知を廃止するものであり、また、御指摘の国会答弁は、一般的な技術料に係る特別の料金の徴収を認める考えはない旨述べたものであって、今回の措置がこれらと矛盾するとは考えていない。なお、御指摘の通知自体は改廃されていない。
四について
老人保健法(昭和五十七年法律第八十号)に基づき実施している基本健康診査は、心臓病、脳卒中等の循環器疾患及び肝疾患を早期に発見し、栄養、運動等に関する生活指導及び適切な治療と結びつけることによって、これらの疾患を予防することを目的としたものであり、歯科検診については、平成七年度予算案において、四十歳及び五十歳の者に対して実施している総合健康診査の検診項目として歯周疾患検診を追加したところである。
また、老人保健法の保健事業においては、壮年期からの歯の健康づくりとして歯の健康教育、歯の健康相談及び家庭において寝たきりの状態にある者等に対する訪問口腔衛生指導を実施している。
なお、中医協診療報酬基本問題小委員会報告書は、診療報酬に関する様々な問題について中長期的観点から論点の整理を行ったものであり、こうした問題の一つとして、歯科診療の特性を踏まえた診療報酬の在り方の検討の必要性を指摘したものであり、この報告書において指摘された点については、今後検討してまいりたい。
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