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クロイツフェルト・ヤコブ病問題に関する質問主意書
衆議院 第144回 第7号承知していない ×2
質問本文
病気を治すために受けた治療や手術によって、新たな、それも人を死に至らしめるほどの深刻な病気を引き起こすことがあることは、サリドマイド、スモン、クロロキン、ソリブジン等々の薬害の歴史が証明している。
人の死体から作った「ライオデュラ」というヒト乾燥硬膜の移植により感染したクロイツフェルト・ヤコブ病もまた悲惨な薬害である。
厚生省は、一九九七年三月二十八日にヒト乾燥硬膜の使用禁止、回収の緊急命令を出した。しかし、その十年前の一九八七年二月に米国疾病対策センター(以下「CDC」という)は、ヒト乾燥硬膜の移植によるクロイツフェルト・ヤコブ病に関する世界で最初の症例をCDCの週報(以下『MMWR』という)で報告している。そしてその二ヵ月後の四月に米国食品医薬品局(以下「FDA」という)は米国の医療機関に警告を出し、CDCが『MMWR』の六月号にFDAが警告を出したことを載せている。
一九九八年四月二日提出質問第二十二号の寺前巖議員のヤコブ病問題に関する質問主意書で、厚生省の関係者がCDC報告等を知っていたかという趣旨の質問に対し、その答弁書で、「厚生省の保健医療局において疾病対策を担当していた職員及び感染症対策を担当していた職員並びに薬務局において医療用具の審査を担当していた職員及び安全対策を担当していた職員に対する調査を行ったが、当該職員の中で当時何らかの認識を有していた者は確認されていない」と答えている。もし危険性の認識がなかったことが事実であるなら、繰り返された薬害への反省と教訓は全くいかされなかったどころか、今後も薬害発生の可能性がありうることになる。
クロイツフェルト・ヤコブ病患者感染者、そして家族の方々の苦悩を考えると、一九九七年まで何ら対策をとらなかった厚生省の責任の所在は明らかにされるべきであると考える。
従って、次の事項について質問する。
一 一九九八年九月二十五日の朝日新聞によると「米国政府が一九八七年四月二十八日付けで米国内の医療機関に廃棄を求める安全警告を出してから、九年余りもたって、厚生省は警告の有無を米国側に照会していた」とあるが、事実か。また米国以外に照会したことがあるか。
二 「照会文書は、一九九六年七月十日付で当時の厚生省薬務局医薬品適正使用推進室長名でFDA医療具.放射線保健センター(以下「CDRH」という)に「緊急課題」としてファックスされた」とあるが、事実か。
三 「CDC週報や米国医学雑誌が関係課に送付され、講読していたようだが、職員が情報を認識したことは確認されていない」とあるが、CDC週報『MMWR』や米国医学会雑誌『JAMA』、『JAMA〈日本語版〉』、『臨床とウイルス』、国立予防衛生研究所の月報『病原微生物検出情報』のそれぞれが、硬膜移植によるクロイツフェルト・ヤコブ病発生の情報を掲載している。医療行政、感染症対策にかかわる者がこれらを講読して情報を認識していないということは考えられないが、どうか。
それぞれの紹介者が厚生省と何らかの関係があったか、それとも全く無かったかどうか。関係があればどのような関係か。
また、『病原微生物検出情報』は、国立予防衛生研究所と厚生省のエイズ結核感染症課が発行者になっているというのは事実か。
四 「CDRHが英国保健省に英国側の対応をただした電話記録によると、英国保健省はCDC週報の最初の症例報告で調査を開始し、FDA安全警告を紹介した週報を受けて二ヵ月足らずの一九八九年三月十七日に自国の安全警告を出している」という事実を、厚生省は知っているか。
五 一九九七年九月二十二日に大津地裁に新たに提出した準備書面で、国は「世界で一例のみの報告がされた時点では、ヒト乾燥硬膜をクロイツフェルト・ヤコブ病との関係が予見可能であったとすることは適当でなく」とし、責任を回避しているが、英国保健省のように最初の症例報告でいち早く処置をとっていれば被害の拡大を防げたはずだが、厚生省は責任を感じないのか。
六 FDAが情報公開した厚生省からの照会文書を、厚生省が非公開としているのは事実か。
七 平成十年十二月七日付厚生省大臣官房総務課行政相談室からの回答で、非公開の理由として「他国への照会、他国企業への照会及びその回答については、公開することにより関係国等に不当に不利益を与えるおそれや、直接不利益を与えなくても、公開することで、関係国等がわが国に寄せる信頼を傷つけ我が国と関係国等との関係に悪影響を及ぼすおそれが考えられること。当該文書は、現在国等を被告とする民事訴訟において係属中の件に係る文書であり、民事訴訟への影響を考えると非公開とすることが適当であると考えられること」としている。
1 ここでいう「関係国等に不当に不利益を与えるおそれ」とは具体的にどういうことを指すのか。
2 公開することで、「関係国等がわが国に寄せる信頼を傷つけ我が国と関係国等との関係に悪影響を及ぼすおそれが考えられる」としているが、FDAがすでに出している情報を、厚生省が改めて出すことでわが国に対して信頼を傷つけるとは到底考えられないが、どうか。また、情報を出さないことで、薬害を繰り返した厚生省に対する国民からの信頼をますます傷つける可能性があることについてどう考えるか。
3 「現在国等を被告とする民事訴訟において係属中の件に係る文書であり、民事訴訟への影響を考えると非公開とすることが適当」としているが、公開することでどのような影響が考えられるか。
また、情報を隠したことで、被害を拡大させ、解決を遅らせた薬害エイズを教訓にし、情報を速やかに公開すべきと考えるが、どうか。当時の菅厚生大臣が隠された情報を公開したのは訴訟の係属中ではなかったのか。
右質問する。
政府答弁書
一及び二について
御指摘の点については、御指摘の日付で厚生省薬務局医薬品適正使用推進室から、同室長名をもって米国食品医薬品局(以下「FDA」という。)医療機器・放射線保健センター(以下「CDRH」という。)長に対し、御指摘のライオデュラに関するFDAの安全警告の発出の有無等について、ファクシミリを用いて照会しており、当該照会文書には、「本件は緊急課題であるので、ファクシミリによる迅速な返答を期待している」旨記載している。
また、同日付けで、カナダ保健省及びドイツ連邦医薬品・医療機器庁に対し、ヒト乾燥硬膜に関する回収の指示の有無等について照会している。
三について
厚生省において、御指摘の米国疾病予防センターの週報(以下「MMWR」という。)等の刊行物において硬膜移植によるクロイツフェルト・ヤコブ病(以下「CJD」という。)発生の情報が掲載された当時厚生省保健医療局において疾病対策又は感染症対策を担当していた職員及び薬務局において医療用具の審査又は安全対策を担当していた職員に対する調査を行ったが、当該調査によれば、当該情報について当時何らかの認識を有していた者は確認されていない。
昭和六十二年に御指摘のMMWRにCJDの症例報告を紹介し、及び当該報告を御指摘の「米国医師会雑誌」(以下「JAMA」という。)に転載した者は、米国工ール大学のプリチャード医師外四名の米国の医師であり、これらの者は厚生省とは関係がない。御指摘の「JAMA日本語版」においてJAMAの当該症例報告を邦訳して紹介した者は、帝京大学医学部脳神経外科の佐野圭司教授及び北條俊太郎助教授(いずれも当時)であり、これらの者も厚生省と本件に関して特段の関係はない。御指摘の「臨床とウイルス」においてMMWRの当該症例報告を抄訳して紹介した北村敬氏は、厚生省の施設等機関である当時の国立予防衛生研究所の腸内ウイルス部長であった。
平成元年に「病原微生物検出情報」にCDJの第一症例及び第二症例に関する記事が掲載されたが、当時の発行者は、国立予防衛生研究所及び厚生省保健医療局疾病対策課結核・感染症対策室であり、当該記事の紹介者名については、その記載はないが、同研究所の職員によるものである。
四について
厚生省においては、英国保健省が御指摘のような対応を行ったか否かについては、承知していない。
五について
現在、ヒト乾燥硬膜の移植によってCJDを発症したと主張する患者、遺族等から国、輸入販売業者等に対し損害賠償を求める訴訟が、東京地方裁判所及び大津地方裁判所に七件提訴されているところであり、御指摘の厚生省の責任については、これらの訴訟において裁判所の判断を仰ぐべき問題と考えている。なお、これらの訴訟の中でそれぞれの裁判所に最も早い時期に提訴された事案において、被告である国は、当該事案に係るヒト乾燥硬膜移植手術までに厚生大臣がヒト乾燥硬膜について薬事法(昭和三十五年法律第百四十五号)第六十九条の二の規定に基づく使用禁止等の措置を講じなかったことが、国家賠償法(昭和二十二年法律第百二十五号)第一条第一項の適用上違法ということはできない旨の主張を行っているところである。
六について
厚生省においては、現在までのところ、御指摘の照会文書を公開していない。
七について
国民一般に対する行政文書の公開又は非公開の判断は、各省庁の文書課長等により構成される情報公開問題に関する連絡会議の平成三年十二月十一日の申合せにおいて、行政に対する国民の信頼の確保及び行政情報の有効利用の観点から、「行政情報公開基準」(以下「公開基準」という。)を定め、これに基づいて行うこととしている。公開基準においては、国を一方の当事者とする訴訟事件に関する文書については、「公開することにより、当事者として不利益となるおそれがあるもの又は今後の訴訟事務の遂行に支障を及ぼすおそれがある」場合には、一般に非公開とすることができるとしている。厚生省においては、御指摘の文書を最終的に公開するかどうかについては、五についてで述べた損害賠償請求訴訟の審理を更に見極めた上で判断する必要があり、現時点においては、御指摘の文書を公開することは、当事者として不利益となるおそれ、あるいは今後の訴訟事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあると考えている。
また、御指摘の文書において「関係国等に不当に不利益を与えるおそれや、直接不利益を与えなくても、公開することで関係国等が我が国に寄せる信頼を傷つけ我が国と関係国等との関係に悪影響を及ぼすおそれが考えられる」と述べているのは、公開基準において対外関係に関する文書については、「公開することにより、他国との信頼関係が損なわれるおそれがあるもの」である場合には非公開とすることができることとしていることから、当該文書がこれに該当することを述べたものである。厚生省においては、御指摘の文書をFDAが公開したのかどうか、また、公開したとするとどのような範囲で公開したのか等については承知しておらず、相手国の了承なく御指摘の文書を公開することは、一般に、規制当局間の信頼関係を揺るがし、必要な情報を円滑、迅速に入手し又は提供することに支障が生じかねないと考えている。
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