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児童虐待防止法の運用に関する質問主意書
衆議院 第151回 第119号
質問本文
昨年十一月に、本法の施行により、国民の間に、児童虐待への問題意識が喚起され、児童相談所への通告、警察への通報も大幅に増加しているという。半年間の運用を踏まえて、現場の苦悩を踏まえて、三年後の改正まで、より実効性のある運用と対策を求める立場から質問するものである。
一 児童相談所が県下に一箇所しかないような地域では、さきに警察に通報される場合もある。
各警察によって、対応はさまざまであるが、ある県においては、児童虐待が警察に通報され直後に親を現行犯逮捕し、その後、子どもを児童相談所に引渡し、児童相談所の関与が警察の後となったケースでは、保護者は、児童相談所にも不信感をもち、児童相談所によるケースワークに困難を来たしたとの声がある。地方自治体によっては、警察との協力関係が順調なところもあり、またところによっては、介入の立会いにも消極的な地域もあるという。
児童相談所が、ケアワーク中である保護者を児童相談所への相談なしに逮捕したケースでは、それまで児童相談所と保護者が築いた信頼関係を一気に破壊してしまい、マイナスからやり直すことになったという。
子どもの命に関わるような、緊急性を要する場合は現行犯逮捕も必要であるが、本法の趣旨である家族の再統合を目指すとすれば、警察は児童相談所の方針を尊重、協力関係のもとに、行動すべきと考えるが如何。
二 警察庁は、厚生労働省と児童虐待対応について、対応方法を定め、また協力関係を推進する協議を持っているか如何。
三 今後、子どもに対応する事例が増えるに従い、警察においても専門性がなお一層要求される。全国的に統一した研修カリキュラムを設ける必要があるのではないか。
四 ある虐待事件では、警察の保護者逮捕後、児童相談所に保護された子どもの事情聴取で、児童相談所所長の立会いも認めなかった事例があるという。また、知的障害児への性的被害の聴取では、「きもちよかったか」などという、質問を発する捜査員がいたという。捜査上、被害者たる子どもから事情を聞く義務があるが、専門研修を経た専門担当者が行うべきだが、経過措置として婦人警官が、子どもへの聴取を行うことが、子どもの心の安定上からも適当ではないか。
五 児童相談所の介入まえに、警察が逮捕した事例を承知するか。それは何件か。また、児童相談所の対応中に、警察が介入した事例を承知するか。それは何件か。
六 警察が、保護者を逮捕した場合児童相談所所長に保護者を告発するように働きかける例もあるというが、警察庁の対応ガイドライン、指導等があるのか。
七 子どもの身体の安全、命の危険に関わる場合、警察の介入、児童相談所の調査への同行協力など、躊躇されてはならないが、警察の取るべき対応をどのように考えるか。
八 被虐待児を預かっていた里親が、保護者の強引な引き取りに対抗するため、家裁に「監護権」の申し立てを行い受理されたが、保護者側が地裁に上告したところ、地裁は「監護権は保護者にのみ認められる」ものとして、保護者側の訴えをみとめ、子どもが保護者に返されてしまった事例がある。この場合、地裁の判断は法解釈上妥当なものと認めざるを得ないが、関係者に疑問を残す形となった。一時保護の場合、施設においても強引な引き取りに対して、やむなく引取らせてしまうケースが存在する。里親制度の活用が、推進されているが、このような状態では、里親の負担も未知数であり、子どもの安定にもマイナスである。本法では、親権喪失と回復の積極的な運用によって対応するとしているが、親権喪失は、戸籍にも記載され、現場での運用が躊躇され活用されているとは言えない。
子どもの命と身の安全に関わる問題であり、司法判断の選択肢の不備といわざるを得ない。
児童福祉関係者は、親権を一時停止するなどの制度の創設を要望しており、親権の一時停止が可能ならば、強引な引取りも防ぐことができ、この間に、親に対するカウンセリングを義務付けるなど活用が構想されている。
このような制度があれば、幼い命が、いくつとなく助かり、傷の浅いうちに回復の道に載せることが可能と信ずるものであるが、現場で要望されるように三年後の改正に向けて「親権の一時停止」の創設が必要ではないか。
九 現在日本でも、被虐待児を里親が預かるケースが増えているが、現在(昨年度)は全体の何割、何件であるか。
十 児童相談所で扱う子どもの多くが、被虐待児で占めるようになり、また民間施設も同様であり、50人以上の施設では、心理専門家の配置が義務付けられたといっても、専門家自体が虐待ケースに習熟していないという声がある。
職員一に対して、子ども六など、実質は勤務時間の短縮により、八から十人の子どもを扱っているという。イギリスでは、一対一か、職員数の方が多いときく。
心に傷を負った子どもたちの対応が必要とされている現在、これまで数十年続けてきた「育成」を軸とした処遇は、生活困窮家庭の子どもや、遺棄児童などを前提としており、対応が困難と言わざるを得ない。
また、相次ぐ民間児童福祉施設での、体罰事件や不祥事は、心に傷のある子どもに人的体制が対応していないことが理由との見方もある。
二一世紀を迎えて、わが国の被虐待児、心に傷を負った子どもに対する対応も、セラピュイック(治療的)手法に転換すべきではないか。
十一 米国では、治療的里親という報酬を伴う、専門トレーニングを受けた里親制度がある。わが国でも、導入を検討すべきではないか。
十二 現在、児童虐待に関する通告対応は、児童相談所に集中しており、去年の実数の倍のケースを担当する例もあるという。対応件数が多いがために、介入の機会を逸し、子どもを死亡させてしまった例も報告されている。今後、対応窓口を、子どものケア、親への対応など、地方自治体福祉担当、NGOなどに、緊急対応の迅速さが損なわれないよう、分散を推進、検討すべきではないか。
右質問する。
政府答弁書
一について
各都道府県警察においては、児童虐待の防止等に関する法律(平成十二年法律第八十二号。以下「児童虐待防止法」という。)の趣旨を踏まえ、児童虐待への対応に関し、児童相談所等の関係機関との間で緊密な連携を図っているものと承知している。
二について
警察庁においては、厚生労働省と、児童虐待への対応や都道府県警察と児童相談所等の関係機関との協力について、必要に応じ協議を行っている。
三について
警察においては、全国の警察学校において、警察庁が定めた基準により、新たに採用された警察職員や昇任した警察職員に対し、児童虐待への対応に関する教育を実施しているほか、虐待を受けた児童の保護等に従事している警察職員に対し、必要な専門的知識及び技能を習得させるための教育を実施している。
四について
各都道府県警察においては、児童虐待に係る事件の捜査において、必要に応じ女性警察官が事情聴取を行うなど被害者である児童の心情に配慮した措置を講じているものと承知している。
五について
お尋ねの点については、児童虐待防止法が施行された平成十二年十一月二十日から本年六月三十日までの間に発生し、都道府県警察から報告があった児童虐待の事例の範囲では、児童相談所が認知する前に警察が被疑者を逮捕したと認められるものを二十七件、児童相談所が認知した後に警察が被疑者を逮捕したと認められるものを二十二件、それぞれ承知している。
六について
警察庁においては、児童虐待防止法の趣旨を踏まえ、各都道府県警察に対し、児童虐待への対応に関し通達等により指導をしているところであるが、御指摘のような働き掛けについての指導は行っていない。
七について
各都道府県警察においては、児童虐待防止法の趣旨を踏まえ、必要に応じ児童相談所等の関係機関と連携して、児童虐待の早期発見に努めるとともに、迅速かつ的確に必要な保護等の措置を講じているものと承知している。
八について
児童虐待防止法においては、親権者等による親権の適切な行使及び親権の喪失の制度の適切な運用が図られるよう、所要の規定が整備され、また、保護者から虐待を受けたこと等により、児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第二十八条の規定による同法第二十七条第一項第三号の児童養護施設等への入所措置が採られた場合には、児童相談所長又は同号に規定する施設の長は、当該保護者について児童との面会又は通信を制限することができる旨が規定されたところである。御指摘の強引な児童の引取りについても、政府としては、これらの規定等の適切な運用で対応することが肝要であると考えている。お尋ねの「親権の一時停止」の制度の創設については、こうした規定の運用状況等を踏まえつつ、慎重に対処すべき問題と考える。
九について
旧厚生省が行った平成十年の養護施設入所児童等調査によれば、同年二月一日現在において、里親に委託されている児童(以下「里親委託児」という。)のうち虐待を理由に委託されたものの人数は八百五十一人であり、里親委託児全体(二千百七十五人)の三十九・一パーセントである。
十について
お尋ねの「セラピュイック(治療的)手法」が何を指すのか明らかではないが、児童虐待は、児童の心身の成長及び人格の形成に重大な影響を与えるおそれもあり、虐待を受けた児童については、心理的なケアを含めた適切な保護を図ることが重要と認識している。このため、平成十三年度においては、児童相談所の一時保護所、児童養護施設等に児童の心理的なケアを行うことができる専門的な職員を配置するとともに、児童養護施設に創作活動及び日常生活における一対一での対応等を行う職員を配置することにより、虐待を受けた児童に対する心理的なケアの充実が図られるよう、必要な措置を講じているところである。
十一について
児童虐待の増加等、児童を取り巻く問題が深刻化する中で、家庭において十分な養育を受けられない児童を温かい愛情と正しい理解をもった別の家庭の中で養育する里親制度は、一層その意義を増していると認識している。政府としては、現行の里親制度の一層の普及に努めるとともに、心理的なケアを行うことができる専門的な知識又は経験を有する里親による里親制度についても、研究及び検討を行っているところである。
十二について
児童相談所における児童虐待に関する相談件数が急激に増加している中で、児童虐待の通告を受けた場合には迅速かつ適切に対応するよう、都道府県等に対し要請するとともに、児童相談所の人員配置の充実、児童家庭支援センターの整備等による相談体制の強化を促進しているところである。また、児童虐待への対応に当たっては、児童相談所を中心としつつ、福祉、保健、医療、警察、教育等の関係行政機関、民間団体等が緊密に連携し、対応することが重要と認識しており、都道府県及び市町村の地域における関係機関によるネットワークの構築を推進しているところである。
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