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電磁波の人体への影響防止と携帯電話の中継鉄塔建設紛争解決に関する質問主意書
衆議院 第154回 第44号お答えすることは困難 ×1趣旨が明らかではない ×1承知していない ×1
質問本文
小沢和秋 赤嶺政賢
電磁波の人体への影響防止と携帯電話の中継鉄塔建設紛争解決に関する質問主意書
ここ数年、携帯電話の急速な普及とともに、全国各地でその中継鉄塔建設をめぐる地域住民と電話会社の紛争が続発している。その原因は、第一に電磁波の人体への影響に対する不安であり、第二に住民にほとんど説明もなく、建設を強行しようとする会社のやり方にある。
よって次のとおり質問する。
(一) WHO(世界保健機関)傘下のIARC(国際がん研究機関)は昨年六月、高圧送電線や電化製品など、「超低周波の磁界は『ヒトに発がん性の可能性あり』」と全会一致でランク付けをした。
国内でも、昨年十月、国立環境研究所が、高圧送電線や家電製品などから出る電磁波の影響について、細胞を使った実験を行い、「がん抑制作用をもつホルモン『メラトニン』が磁界によって働きが阻害される」と発表した。
これらの発表は、「電波はX線や紫外線にくらべて、周波数が低いので細胞などに傷を起こす力がない」などという政府や企業のそれまでの説明とは異なるもので、住民が不安になるのも当然ではないのか。
電磁波の人体への影響は未だ充分に解明されていない。したがって電磁波の安全性については極めて慎重な対応が求められていると思うが、政府の基本的な認識はどうか。
(二) WHOでは、問(一)のIARCの報告のなかで、電磁波の被曝(ひばく)を減らす安全で低コストの方法を提供するなど、各国政府や電力会社に「予防対策」をとるよう求めている。
携帯電話についても、電磁波の安全性が確立されるまで、「予防対策」をとるべきではないのか。
イギリスでは、二〇〇〇年五月の政府諮問の専門委員会の提言(スチュワート報告)を受けて、健康省が携帯電話と健康被害に関するリーフレットを作成し、「脳の発達段階の子どもは電磁波の影響をうけやすい」といい、十六歳以下の携帯電話の使用制限を促すことなど、業界の協力のもと、全使用者向けの請求書に同封し、通知を徹底していると聞く。教育省も十六歳以下については、緊急時以外は携帯電話を使用しないよう、各学校に通知したと聞く。
携帯電話について、WHOの推奨にある「幼稚園や学校、遊び場近くに基地局を選ぶ際には特別に配慮する」ことなど、子どもに対して、何らかの「予防対策」をとる考えはないのか。
(三) 携帯電話について、人体への電磁波の吸収率を示すSAR基準値は、日本はアメリカよりも甘くなっている。日本は大人も子どもも同じ基準値とも聞く。これらは事実なのか。数字をあげ、なぜアメリカより日本が甘くてよいと考えているのか説明をされたい。またアメリカはどういう経過でSAR基準値をきびしくしているのか説明をされたい。
(四) 総務省は昨年五月、市販携帯電話の機種ごとの電磁波量(SAR値)のデータを公表した。今後新たな機種など、定期的に公表すべきだと考えるがどうか。
アメリカではメーカー大手のモトローラ社などがホームページで自社製品について、SAR値が検索できるサービスをはじめていると聞く。情報の不足が電磁波への不安をかきたてているのではないか。メーカーに対して、SAR値のデータ公表や表示を義務付けるべきだと考えるがどうか。
(五) わが党の吉川春子参議院議員は、一九九七年三月十八日の参議院労働委員会で、男性が出勤途中に電車の中で急死した事例をあげて、携帯電話が出す電磁波がペースメーカーに及ぼす影響について質問をした。当時の滝澤・厚生省薬務局医療機器開発課長は、「留意事項でございますが、ペースメーカー装着部位から二十二センチ以上離して使用した方がいい」と答弁し、郵政省もその後の指針にしている。
最近では、昨年六月に図書館内の盗難防止装置の電磁波によって八十歳の女性のペースメーカーの設定がリセットされる事態がおこり、厚生労働省も注意を喚起したと聞く。どのように注意を喚起したのか説明をされたい。
医療機器に影響があるものが、人体に全く影響がないなどといえるのか。やはり、政府の電磁波対策は万全といいきれないのではないか。
(六) わが国では電磁波の人体への安全性の問題は総務省が所管している。しかし、総務省は本来、携帯電話を普及する行政機関である。そういうところが所管して、電磁波の安全性について、充分な対応ができるかはなはだ疑問である。人の健康を守る立場にある厚生労働省が所管するのが当然ではないのか。この際、所管を改めるべきだと思うがどうか。
(七) いま、大きな問題になっているのは、携帯電話会社が住民によく説明もせず、抜き打ち的なやり方で中継塔を建設しようとしていることである。
熊本市楡木(にれのき)地区では、NTTドコモ九州が「事前の住民説明を済ませた」と市から建設確認をとったあとに、同意をしていない住民が同意をしたことになっていることが明らかになった。さらに、住民が説明会を続けるよう要求すると、NTTドコモ九州は工事再開が説明会の条件と言い、ついに強引に工事を着工。それへ整然と抗議した住民を工事妨害で裁判に訴えた。
福岡県三潴町(みずままち)でも、NTTドコモ九州の条件を認めて、地域住民が代替地をいくつも示すなど対案を示していたにもかかわらず、地域住民に次々無理難題をもちかけて、説明会を一方的に打ち切って工事を強行し、ここでもドコモが工事妨害で住民を裁判で訴えている。
こうした住民無視のやり方こそ、事態を混乱させる原因と考えるがどうか。
(八) 「中継塔問題を考える九州ネットワーク」が把握しているだけでも、九州では、こうしたトラブルが現在四十個所以上で発生している。その多くがドコモ九州である。
ドコモの担当部長は「地権者と契約する前に打診でもしたら、計画は必ずつぶされる」と、露骨に住民敵視の態度を示している。
問(七)にある三潴の問題では、当時の九州総合通信局がNTTドコモ九州に「地域住民との話し合いをするように」と伝えたら、NTTドコモ九州が、平成十三年四月二十日付けで、九州総合通信局無線通信部地濃公共課長宛に、「貴職を含む行政がこれ以上に『移転要望の会』の意見を聞き入れて、基地局移転問題に介入されるということになれば、『行政の民事介入』であるとの判断をせざるを得ません」と、逆に抗議の文書を送りつけたことも聞いている。
このような悪質な携帯電話事業者に対して、もっと断固たる姿勢で指導をつらぬくべきではないのか。
右質問する。
政府答弁書
(一)について
お尋ねの「電磁波」が何を指すのか必ずしも明らかではないが、無線通信に用いられる電波については、従来、継続的な研究、国内外の関連情報の収集及びその検討を行い、それが人体に好ましくない影響を与えないための適切な基準を策定するなどしてきたところであり、国民の健康にかかわる重要な問題であることから、今後とも適切な対処に努めてまいりたい。
なお、御指摘の国際がん研究機関による超低周波電磁界に関する報告(以下「IARC報告」という。)及び国立環境研究所による超低周波電磁界に関する報告については承知しているが、無線通信に用いられる電波の電磁界と超低周波電磁界とではその性質が大きく異なるため、右の報告の内容は無線通信に用いられる電波には当てはまらないと考える。世界保健機関(以下「WHO」という。)も、IARC報告の内容が無線通信に用いられる電波には当てはまらない旨の発表をしているものと承知している。
(二)について
無線通信に用いられる電波については、それが人体に好ましくない影響を与えないよう、電波の電界強度、磁界強度及び電力束密度(以下「電波の強度」という。)の基準が電波法施行規則(昭和二十五年電波監理委員会規則第十四号)第二十一条の三及び別表第二号の二の二で定められており、また、携帯電話端末等の一般環境における局所比吸収率(以下「局所SAR」という。)の基準が無線設備規則(昭和二十五年電波監理委員会規則第十八号)第十四条の二で定められているところである。
我が国の電波の強度の基準及び局所SARの基準(以下「我が国の基準」という。)は、科学的根拠に基づくものであり、適切なものと考える。このため、我が国の電波の強度の基準を満たす携帯電話用基地局又は我が国の局所SARの基準を満たす携帯電話端末については、それらから発射される電波をばく露される者の年齢にかかわらず、人体に好ましくない影響を与えることはないと考えており、現時点において、更なる規制を行う必要はないものと考える。
なお、WHOが、各国政府等において、超低周波電磁界に対する具体的対策及び学校等の近辺における携帯電話用基地局の設置等に対する具体的対策をとるよう勧告したとの事実もないものと承知している。
(三)について
我が国の局所SARの基準は毎キログラム当たり二ワットであり、米国の局所SARの基準は毎キログラム当たり一・六ワットであって、いずれも携帯電話端末から発射された電波をばく露された者の年齢によって異なる基準を定めるものではない。
我が国の局所SARの基準は、米国の局所SARの基準とは異なっているが、科学的根拠に基づくものであり、適切なものと考える。
なお、我が国の局所SARの基準は、WHOと連携して活動している国際非電離放射線防護委員会が平成十年四月に定めて、WHOがその安全性を認めている「時間変化する電界、磁界及び電磁界へのばく露制限のためのガイドライン」(以下「国際ガイドライン」という。)における局所SARの基準と同一であり、また、欧州委員会に加盟する国を始め多くの国は、我が国と同様に国際ガイドラインにおける局所SARの基準を採用しているところである。
また、米国の局所SARの基準は、米国電子電気学会における検討結果を踏まえ米国規格協会により策定されたものであるが、その具体的な根拠等の詳細については承知していない。
(四)について
我が国の局所SARの基準を定める無線設備規則第十四条の二の規定が昨年六月一日に設けられ、本年六月一日から施行されることから、それ以降、我が国において使用される携帯電話端末は、我が国の局所SARの基準に適合したものでなければならず、また、このことは、電波法(昭和二十五年法律第百三十一号)第三十八条の二の規定に基づき総務大臣又はその指定する者によって審査されることとなっている。
我が国の局所SARの基準に適合する携帯電話端末であれば、それが人体に好ましくない影響を及ぼすことがないから、そのような携帯電話端末について、政府がそれぞれの局所SARの数値を公表する必要はないものと考える。
なお、総務省は、昨年五月、七十六機種の携帯電話端末の局所SARの数値を調査し、それらのすべてが毎キログラム当たり二ワットを超えるものではないことを確認したところである。
携帯電話端末を製造する事業者等による局所SARの数値の公表及び表示は、それぞれの事業者等の自主的な判断により行われるべきものと考える。
(五)について
厚生労働省は、従来、医薬品、医療用具等のより安全な使用に資するよう、「医薬品・医療用具等安全性情報」と題する刊行物を定期的に発行し、また、これと同じ内容を同省のホームページに掲載するなどして、広範囲の医療関係者、患者等に対して、医薬品、医療用具等の利用に関する注意事項等の情報を提供してきたところである。
御指摘の女性の事故を受けて、厚生労働省は、本年一月十七日に発行した「医薬品・医療用具等安全性情報」において、植込み型心臓ペースメーカ等を使用している患者に対して盗難防止装置や金属探知器のそばに必要以上に長く留まらないこと等を注意喚起し、医療機関に対して患者への一層の指導を要請するとともに、盗難防止装置を取り扱う事業者に対して盗難防止装置の設置場所の明示等の協力を求めたところである。
電磁波が人体に与える影響については、電磁波の性質が周波数により異なること等から一概にお答えすることは困難であるが、今後とも研究等を継続して行い、適切な対処に努めてまいりたい。
なお、携帯電話端末が一部の機種の植込み型心臓ペースメーカに極めて近接した位置で使用された場合、携帯電話端末から発射された電波が植込み型心臓ペースメーカの誤動作を引き起こすことがあると承知している。このため、総務省、厚生労働省等においては、携帯電話端末を植込み型心臓ペースメーカから二十二センチメートル以上離して使用するよう関係者に注意喚起しているところであるが、仮に、携帯電話端末によって植込み型心臓ペースメーカの誤動作が生じたとしても、携帯電話端末を植込み型心臓ペースメーカから離すことによって植込み型心臓ペースメーカの機能は直ちに正常に復することから、実際に植込み型心臓ペースメーカ装着者の健康に好ましくない影響を及ぼす危険性は極めて少ないものと考えている。
また、無線通信に用いられる電波で非常に強いものを人体にばく露した場合、ばく露された部位に温度上昇が生ずるという熱作用等が知られているが、(二)についてで述べたとおり、無線通信に用いられる電波が人体に好ましくない影響を与えないよう適切な基準が策定されているところである。
(六)について
総務省において、厚生労働省等の関係省庁と十分に連携して無線通信に用いられる電波の安全性を適切に確保してきたところであり、御指摘は当たらないものと考える。
なお、総務省においては、今後とも、無線通信に用いられる電波の安全性に関する研究等を継続し、我が国の基準の根拠となる科学的データの信頼性向上を図るとともに、研究成果を正確に公表することにより、安心して安全に電波を利用できる環境の更なる整備を推進していく所存である。
(七)について
御指摘のとおり、株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ九州が工事妨害禁止の仮処分を福岡地方裁判所久留米支部及び熊本地方裁判所に申し立てたことについては承知している。御指摘のような携帯電話用基地局の建設に係る紛争は、当事者である携帯電話事業者と周辺地域の住民との間におけるものであり、当事者間の話合いによって解決されるべきものであるため、お尋ねについて、政府としてお答えする立場にない。
(八)について
総務省においては、御指摘のような携帯電話用基地局の建設に係る紛争について、周辺地域の住民から要望が寄せられた場合には、その内容を関係の携帯電話事業者に連絡し、周辺地域の住民との話合いに努めるよう要請しているところであり、引き続きそのような対応に努めてまいりたい。
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