ことばで探す › 衆議院 第154回
諫早湾干拓事業の開門調査に関する質問主意書
衆議院 第154回 第59号
質問本文
小沢和秋 赤嶺政賢
諫早湾干拓事業の開門調査に関する質問主意書
諫早湾干拓事業が有明海に及ぼす影響を調べるため、潮受堤防の排水門を開け調整池に海水を入れる開門調査について、四月十五日、農水大臣は長崎県知事らと協議した結果、同県知事の同意を得たことにより、短期の調査が行われることが決まった。しかし、ノリ不作等対策関係調査検討委員会(第三者委員会)が要請している、その後の中・長期の調査が行われるかどうかはいまだ不透明なままである。それどころか、農水大臣と同県知事は二〇〇六年度の事業完了をめざすことで一致し、数年間必要な長期調査はもちろん、数ヶ月の中期調査すら見送られる見通しになったとも伝えられている。
よって、次のとおり質問する。
(一) これまで農水省は中・長期の開門調査は、短期調査の結果を見てから判断すると説明をしてきたが、報道によれば農水大臣は「短期調査の実施と二〇〇六年度完成という農水省案を条件に、長崎県に開門調査の実施を理解」してもらったと語っている。二〇〇六年度まであと四年であり、この発言は中期調査と数年の期間を必要とする長期調査は行わないという意味ではないか。また、これでは「短期調査の結果を踏まえて今後のことを考える」というこれまでの農水省の見解とも異なるが、どういう過程で見解が変わったのか。詳細を明らかにされたい。
(二) 九州農政局は四月一日付けの発注予定工事情報で、今年度の諫早湾干拓事業の工事予定を公表した。この中には現在の西工区と東工区との間に、長さ四・三キロメートル、高さ三・五メートルの前面堤防工事入札を第二四半期に行い、九〜十ヶ月の工期で実施することが記載されている。第二四半期とは今年の七月以降、短期開門調査終了直後であり、これは中・長期の開門調査の実施を全く考慮していないということではないか。
さらに重大な点は、仮にこの前面堤防が完成すれば、第三者委員会の見解どおり中・長期の調査で調整池の中にマイナス一メートルを超えて海水を入れることになっても、かつての干潟だった西工区に海水が入ることは全くなく、干潟の再生の道が最終的に断たれることである。長崎県知事らとの協議は、中・長期の開門調査を行わないことを前提に行ったものなのか。
(三) 第三者委員会の意見を最大限尊重するとしながら、「調査と事業は切り離す」、「委員会の意見や見解と農水省の判断とは別」など、同委員会が出した見解を完全に無視する農水省の横暴な態度は目に余るものがある。一月に再開を強行した陸上工事を続け、さらに四月十八日には北部承水路掘削工事を開始した。これらが調整池や有明海に影響を与えないはずがない。少なくとも開門調査の間は、一切の工事を中止すべきではないか。
(四) 昨季の記録的なノリの不作は有明海漁業不振のごく一端で、潮受堤防工事着工直後から始まったタイラギを始めとする魚介類の不漁は有明海全域に広がっている。特に工事が本格化した一九九〇年以降の貝類の漁獲量は十年間に三十三パーセントにまで激減し、深刻さを増している。この直接的要因は、潮止による広大な諫早干潟の消失と、潮受堤防工事の進捗とともに進んだ潮汐と潮流の減少にある。瀕死の有明海をよみがえらせるには、諫早湾干拓が及ぼす影響を長期にわたって調べ、有明海の浄化機能と生物再生産の場であった干潟を再生させなければ不可能である。海洋物理学者・宇野木早苗氏の分析によれば、南北両排水門を常時全開しておくだけでも、潮汐は半分以上回復するという。
四月十六日、農水大臣は上京した森文義氏ら有明海漁民代表の要請に応え、「有明海の再生は農水大臣の責任」と発言した。この責任を果たすため、もう一度第三者委員会の見解を真摯に受け止めて、短期調査だけに終わらせず長期の調査にまでつなげるべきではないか。
右質問する。
政府答弁書
(一)について
農林水産省においては、農林水産省有明海ノリ不作等対策関係調査検討委員会から昨年十二月十九日に発表された「諫早湾干拓地排水門の開門調査に関する見解」の趣旨等を踏まえ、有明海の再生に向けた総合的な調査の一環として、短期の開門調査を含む開門総合調査を行っているところであり、これにより国営諫早湾土地改良事業(以下「本事業」という。)による有明海の環境への影響をできる限り量的に把握することとしている。
一方で、本事業については、環境への一層の配慮を盛り込んだ見直し後の事業計画に沿って、工事を円滑に実施することにより、平成十八年度中に完了するよう、その推進を図ることとしている。
お尋ねの中・長期の開門調査の実施については、既に潮受堤防によって背後地で期待された防災機能が発揮されていること、潮受堤防の周辺地域で多くの住民が生活し農業、漁業等を営んでいること、本事業については早期完了を強く求められていること等の観点に加え、現在進められている有明海を再生するための新法制定の動き、短期の開門調査で得られた成果及び当該調査自体による影響、その他の有明海の環境改善のための各種調査の動向、ノリ作期との関係等の観点をも踏まえ総合的な検討を行った上で、新たに平成十四年度中に設ける有明海の再生方策を総合的に検討する場での議論を経て、農林水産省において判断することとしており、このことについては従来から変わりはない。
(二)及び(四)について
中・長期の開門調査の実施については、(一)についてで述べたとおり、新たに平成十四年度中に設ける有明海の再生方策を総合的に検討する場での議論を経て、農林水産省において判断することとしている。
なお、調整池に海水を導入して西工区を干潟に戻すことは、既に干陸し整備されつつある土地の農地としての効用を無に帰するだけでなく、既に高潮や洪水等の災害から生命、財産等を守る役割を果たしている潮受堤防や調整池の機能を失わせることとなることから、干陸した西工区を元の干潟に戻すことは考えていない。
また、有明海の再生については、政府全体として取り組むべき重要な課題と認識しており、農林水産省においても、(一)についてで述べたとおり、開門総合調査を行っているところであり、これにより本事業による有明海の環境への影響をできる限り量的に把握することとしている。
(三)について
本事業については、短期の開門調査の実施と併せて、本事業見直し後の陸上での前面堤防工事及び水中での承水路掘削工事を含む工事の円滑な実施を通じて、平成十八年度中に完了するよう、その推進を図ることとしている。陸上での工事は、基本的には調整池の水質に影響を及ぼす可能性はないが、万一の調整池の水質への悪影響を防ぐため、今後ともその施工に伴う排水の水質を監視しつつ、必要に応じ適正な処理を行うこととしている。また、水中での承水路掘削工事は、今後とも掘削土とともに濁りもポンプにより吸い込みつつ掘削するポンプ浚渫船等により行うこととしている。このように、これらの工事は、調整池の水質への悪影響を防ぐための対策を講じつつ実施することとしている。
似た質問主意書
件名と質問本文の冒頭の意味が近いものを、前もって計算しておいた表から近い順に8件並べました(multilingual-e5-large)。同じ言葉を使っていなくても出ます。論点が少しずれていることもあります。