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八ツ場ダム建設に関する質問主意書

衆議院 第161回 第58号検討してまいりたい ×1

提出者
日本共産党
提出日
2004年11月30日
内閣転送 2004年12月3日
答弁書受領日
2004年12月10日
提出から10日
答弁の項目数
8
質問 2,693字/答弁 2,975字

質問本文

群馬県長野原町に建設する八ツ場ダムは、一九五二年から調査を始め、一九六七年には実施計画調査に着手し一九七〇年から建設に移行した。調査着手以来五十年以上が経過し、平成十五年度までに一千九百十億円もの巨費が注ぎ込まれたが、ダム本体の工事はまだ先のこととなっており、二〇一〇年とされている完成予定は大幅に遅れることが予想されている。関係住民の苦労は計り知れないものがある。

そもそも、八ツ場ダム建設予定地一帯に生い茂る森林は、幾百千年にわたり育成され今や岩塊や火山灰を覆い、土砂流出を防止する国土保全機能をもち、大雨の際は流量を抑える洪水調節機能や水源涵養機能をもっており、川の濁りを抑え浄化する役割をも果たしている。また、この地は、風光明媚な、景勝地・吾妻渓谷を形成し、生態系の頂点に立つ猛きん類の、オオタカやイヌワシの営巣地ともなっている。

一方、この建設予定地は、一帯が火山性堆積物でできており、変質帯や断層なども多く、脆弱地質である。浅間山が噴火した際に巨大な山崩れ(応桑岩層なだれ)の未固結の堆積物が緩斜面を形成しており、地滑りが起きやすい地盤である。

ここに、ダムが建設されそれに伴う道路、鉄道、学校、旅館や民家の移転などの工事で森林が破壊され、さらにダムへの貯水が行われるなら、地滑りがおきて、周辺も支えを失い崩落することが危惧されている。むしろダムが新たな災害を招く危険性が増すと専門家も指摘している。

八ツ場ダム建設の主要な目的とされてきた水道用水と工業用水の確保は、関東地域一都五県では八ツ場ダムから給水を得なくても、需要は基本的に充足される状況になってきており、将来の人口動向や水需要予測からも十分対処出来る状況にある。五十余年前の計画にしがみつき「建設先にありき」で、社会の変化や実状を見ずに不必要になったダム建設が強行されれば、自治体や住民の負担は益々耐え難いものとならざるをえない。

このような中で、九月十日、群馬、栃木、茨城、埼玉、千葉、東京の一都五県それぞれに対して、各都県の住民五千三百人以上が八ツ場ダム事業にかかわる負担金の支出と、参加取りやめを求めて住民監査請求を行った。これが棄却または却下された後にはそれぞれ県知事などを相手どり、八ツ場ダム建設事業への公金支出差し止めの住民訴訟を起こしている。

いま、日本一のダム事業費に膨れあがった八ツ場ダム建設をストップし、原点から問い直せとの世論が大きく広がっている。

従って、次の事項について質問する。

一 ダム建設や河川の整備に関しては、改正河川法により河川整備基本方針及び河川整備計画を「定めておかなければならない」とされているが、八ツ場ダムを含む利根川水系にかかる河川整備基本方針及び河川整備計画の策定の進捗状況はどうなっているのか。

改正河川法では、学識経験者の意見、住民の意見などを整備計画に反映することとしている。学識経験者の意見、住民の意見などを反映するための作業をしないまま、五十年以上も前につくられた八ツ場ダム建設計画を推し進めることは、改正河川法の趣旨に反すると思うがどうか。

二 八ツ場ダムの総事業費は、約二・二倍の四千六百億円に増額されたが、これはいかなる理由によるものか。事業計画と予算が「有って無きがごとし」と言わざるを得ない。

さらに、国土交通省は五月十七日の市民団体との意見交換会で「これ以上総事業費が増えることはないのか」との質問に対して、「できるだけコスト縮減に努めると言う事であって、四千六百億円は最終目標を示したものではない」と回答している。総事業費が四千六百億円を上回る場合もあり得るのか、明らかにされたい。また、事務費は、想定基準からの算出ではなく、実施所要額を綿密に計算し計上すべきと思うがどうか。

今回の総事業費の大幅引き上げによる各家庭の水道料金や工場など産業界に与える影響はどうか。費用対効果はどうなるのか。

三 会計検査院は、一九七七年と一九八三年、一九九四年に検査を実施した。事業が本格化してからは行われていないがこれはなぜか。検査を毎年行い公表すべきと思うが政府としてはどう考えるか。

四 長野原町立第一小学校の移転建設地は、崖に面した危険な場所で、のり面には幾重もの地滑り防止工事を、裏の沢には幾重もの砂防ダムを設置したが、このような危険地域に学校を作ったことはどのような根拠に基づくものか。また、学校用地の中で校舎や運動場の地代は支払われたが、崖ののり面など一ヘクタール余の土地については地代が支払われていないが、なぜか、ただちに支払うべきと思うがどうか。

また、民家や旅館の移転地は安全対策上問題はないか。単位面積当たりの工事費も示されたい。

五 川原湯温泉は、長い歴史があり湯量も豊富で医学的にも希有な温泉と聞くが、温泉街と共に源泉も水没する。新たな源泉をみると温泉街が成り立つような湯量とは思えないが、現在の湯量と川原湯温泉の移転後の湯量の比較を示されたい。

六 ダム建設地域は、地域産業の振興や生活基盤、公共施設の老朽化や整備も遅れ、堤防の補強や河川改修も後回しである。住民がくらし続けられるよう、直ちに地域の振興と再生を行うこと。経営相談員や生活相談員を増員し、関係住民の要望や意向を聴取すること。営業上不利益を被る方々には、税制の優遇措置も図ること等がつよく要望されているが、どのような対策を取られる計画か具体的に示されたい。

七 吾妻川流域の東電が持つ水力発電用水利権の中でも、八ツ場ダム予定地付近では白砂川取水堰七・五トン,須川取水堰四・五トン、長野原取水堰十八・五トン、合計約三十トン(いずれも毎秒)もの水が、発電用の送水管の中を通って迂回している。ダムの利水権は毎秒十四・七トンであり、まともに水が得られるのか。水確保について東電との協議内容を明らかにされたい。

また、東電に対する減電補償費については、総事業費四千六百億円の中に含まれていると説明しているが、積算根拠と額を示されたい。特別補償枠は二百十七億円が計上されているが、この殆どは送水路の補強工事費や工事期間の減電補償費と考えざるをえないが内容を示されたい。特別補償枠の中にダム完成後の減電補償が含まれているのかいないのか、を明らかにされたい。

八 現計画のダムサイト位置は、政府が「地質的にダムサイトには適当ではない」旨答弁(昭和四十六年二月二十二日、衆院予算委第五分科会)してきた場所だが、この見解がいつ、どのような理由で変更されたのか示されたい。

右質問する。

衆議院の原文・経過

政府答弁書

一について

利根川水系に係る河川法(昭和三十九年法律第百六十七号。以下「法」という。)第十六条第一項に規定する河川整備基本方針(以下「河川整備基本方針」という。)及び法第十六条の二第一項に規定する河川整備計画(以下「河川整備計画」という。)については、これまで、その策定に必要な調査、調査結果の分析等を行ってきたところであり、今後とも、河川法施行令(昭和四十年政令第十四号)第十条に規定する準則にのっとって、引き続き、その策定に向けて取り組んでまいりたい。

また、河川法の一部を改正する法律(平成九年法律第六十九号。以下「平成九年改正法」という。)附則第二条の規定により、平成九年改正法の施行の際現に平成九年改正法による改正前の法第十六条第一項の規定に基づいて定められている利根川水系工事実施基本計画は、平成九年改正法による改正後の法第十六条第一項の規定に基づき利根川水系について定められた河川整備基本方針及び平成九年改正法による改正後の法第十六条の二第一項の規定に基づき利根川水系に係る河川の区間について定められた河川整備計画とみなすこととされており、八ツ場ダムは、利根川水系工事実施基本計画において利根川の洪水調節等のために必要な施設であると位置付けられている。

二について

八ツ場ダムの建設に要する費用(以下「事業費」という。)については、昭和六十一年七月十日に作成した「八ツ場ダムの建設に関する基本計画」(建設省告示第千二百八十四号。以下「基本計画」という。)において約二千百十億円としていたところであるが、平成十六年九月二十八日に基本計画の変更を行い、約四千六百億円としたところである。

今回の事業費の変更は、水没関係者の生活再建対策の見直し、物価の上昇、消費税の導入、設計・施工計画の精査等に伴うものであり、現時点において見込まれる費用を詳細に検討して行ったものであるが、その際には、約五百六十億円のコスト縮減を実施したところである。今後とも、八ツ場ダムの事業執行に当たっては、ダム技術の専門家からなる委員会による技術的検討、民間の技術力を積極的に活用する入札契約方式の導入等により、一層のコスト縮減に努めていくこととしている。

また、事務費については、過去の実績に今後の業務効率化を加味した費用を計上しているものである。

さらに、今回の事業費の変更に伴う水道又は工業用水道の料金やこれらの事業の費用対効果への影響については、各利水者において許容できるものと判断し、基本計画の変更に際して異議がない旨回答したものと承知している。

三について

会計検査院において会計検査をどのように行うかについては、会計検査院において判断される事項である。会計検査院は、予算の執行状況について従来から適時適切に検査を行い、その結果については決算検査報告等で公表されていると承知している。

四について

長野原町立第一小学校の設置場所については、設置者たる長野原町が住民の意向も踏まえて最終的に判断したものと承知している。御指摘の「地代が支払われていない」土地は、学校用地ではなく、起工承諾を得てのり面工事等を実施した箇所のことを指すものと思われるが、現在、当該土地については地権者と用地交渉を進めているところであり、土地売買契約の締結後、補償金を支払うことになる。

八ツ場ダムの建設に伴う民家、旅館等の代替地については、当該代替地の上部の全渓流を対象として地質等の調査を行った上で、当該渓流の土砂流出を抑制して安全確保が図られるよう、必要に応じて堰堤や堰堤下流部の流路工を整備することとしている。また、地滑りに関する対策としては、平成八年度から、地質や地滑りの専門家からなる「八ツ場ダム貯水池周辺地盤安定検討委員会」を設けて、当該代替地を含む八ツ場ダム貯水池(以下「貯水池」という。)周辺の地滑りや地質についての調査検討を実施した結果、当該代替地のうち三か所について地滑り対策が必要と判断され、今後対策を実施することとしている。

代替地の地滑り対策等の安全対策の費用は、一ヘクタール当たりおおむね一億八千万円である。

五について

川原湯温泉の源泉は二か所あり、近年におけるこれら二か所の源泉の流量の合計は、毎分おおむね二百八十リットルであると承知している。八ツ場ダムの完成後において、これら二か所の源泉のうち一か所は水没しないため継続して利用することが可能であり、他の一か所については、水没することとなるが、引き続き源泉として利用できるよう対策を検討中である。

六について

八ツ場ダムの建設によりその基礎条件が著しく変化する地域については、水源地域対策特別措置法(昭和四十八年法律第百十八号)に基づき、水源地域として指定されており、当該地域における生活環境、産業基盤等を整備するため、水源地域整備計画が策定され、当該計画に基づく事業が実施されているところである。

また、関係住民の生活再建については、これまでも地元地方公共団体と協力しつつ生活相談員を配置して対応してきているが、その増員の必要性については、関係機関とも協議の上、判断してまいりたい。

さらに、税制上の特例措置については、右の水源地域に立地する製造業及び旅館業の用に供する機械、建物等に係る所得税及び法人税の特別償却制度が設けられているところである。

七について

お尋ねの水力発電は、株式会社東京電力(以下「東電」という。)が、貯水池の上流の吾妻川及び白砂川等から最大毎秒三十・一四八立方メートルの河川水を取水し、それを発電用導水管を通すことによって行っているものであるが、八ツ場ダムによる流水の正常な機能の維持並びに水道用水及び工業用水の開発に必要な水量を確保するため、東電に対して減電補償を行い、これまで水力発電に使用されてきている吾妻川及び白砂川等の河川水の一部を貯水池に流入させることとしている。

右に述べた水量の確保に関しては、平成四年に建設省関東地方建設局八ツ場ダム工事事務所長から東電に対し、諸調査の協力依頼を行い、それ以降、継続的に東電と協議してきているところである。

お尋ねの東電に対する減電補償の額については、「公共事業の施行に伴う公共補償基準要綱」(昭和四十二年二月二十一日閣議決定)等に基づいて算出するものとされているが、その見込み額については、今後、任意による交渉を経て契約に至らなければならないものであるとともに、個別企業の経営上の問題にかかわるものでもあることから、具体的な数値をお示しすることは差し控えたい。

また、事業費の内訳として公表している「特殊補償」の額には、東電に対する減電補償の見込み額も含まれている。

八について

八ツ場ダムについては、昭和四十五年度までの調査結果により、上流側及び下流側の二つのダムサイトの候補地のうち上流側の候補地でのダム建設は技術的な問題があるとしていたところであるが、文化庁と協議した結果、名勝吾妻峡を保全するために、基本計画において、ダムサイトの位置を上流側と決定したものである。

なお、詳細な地質調査結果に基づいて堤体の建設位置を決定しており、上流側のダムサイトに関する技術的な問題については対応可能であると考えている。

衆議院の原文

この答弁書に出てくる定型句

検討してまいりたい ×1

語の一致で数えたものです。答弁の評価ではありません。同じ型の答弁が過去にどれだけあるかは、型を押すと出ます。

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