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在日米軍基地の駐留軍労働者のアスベスト(石綿)による健康被害実態調査等に関する質問主意書
衆議院 第163回 第24号
質問本文
アスベストが原因で発症する可能性のある肺がんや中皮腫などで死亡した企業の従業員や周辺住民の健康被害が次々と明るみに出されて被害実態が拡大されている。
被害は、アスベスト製品製造メーカーに止まらず、建設、造船業界などアスベスト製品を使用していた企業においても被害が生じている。
政府は、こうした事態を受け、業界団体、地方自治体等の協力のもとに、アスベスト健康被害状況の実態把握と当面の対応について検討を始めたところである。
欧米諸国が、一九八〇年代から、アスベストに関する法規制を行ってきたのに対して、日本政府は、法規制を含めた適切な対応を怠ってきたところに、このような事態を招いた原因があると指摘せざるを得ない。政府の責任は重大である。
在日米軍基地で働いている駐留軍労働者のアスベストによる健康被害も明るみに出されつつある。
十月十三日、那覇労働基準監督署に、在沖米軍基地キャンプ・キンザー(以下「キャンプ・キンザー」という。)で働いていた元駐留軍労働者(肺がんで死亡)の遺族は、死亡原因がアスベストにあるとして労災認定の申請を行った。
社団法人神奈川労災職業病センター(横浜市鶴見区豊岡町)は、米海軍横須賀基地で働いていた駐留軍労働者のアスベストによる健康被害は、一九九九年以降、九八人、このうち一一人が肺がん、中皮腫で二人が亡くなっていることを公表している。
在日米軍基地で働いている駐留軍労働者はもとより退職された労働者の中には、アスベストが原因で発症する肺がん、中皮腫などの健康被害者が、表面化していないものの、多く存在するのではないかと思われる。
在日米軍基地における駐留軍労働者のアスベストによる健康被害の実態調査と曝露防止・安全対策は緊急を要すると考える。
従って、以下の事項について質問する。
一 在日米軍基地の駐留軍労働者のアスベスト健康被害の実態の調査について
1 防衛施設庁は、駐留軍労働者に対しては、毎年、労働安全衛生法等による健康診断を実施し、八月五日には、防衛施設庁、防衛施設局、防衛施設事務所に「健康相談窓口」を開設したが、現在のところ、アスベストによる健康被害を確認できないとしている。
そこで十月現在の時点で、確認されたケースがあれば、その件数と概要を明らかにされたい。
また、防衛施設庁のみならず、他の行政機関、地方公共団体、民間の機関等が把握している駐留軍労働者の健康被害について掌握していたら、それを明らかにされたい。
2 毎年、どのような健康診断を行っているのか、その内容を伺いたい。
3 アスベストを原因とする疾患かどうかは、健康診断によるX線撮影だけでは難しいとされており、CTスキャン等による判断を求められるとされている。それによったとしても、この疾患は、医学的専門的な知見を持った医師の判断が必要だとも言われている。
防衛施設庁が実施している健康診断で、一定の所見、すなわち石綿による不整形陰影、胸膜肥厚斑等やアスベストによる疾患の発症について、適確な判断をすることが可能なのかどうか伺いたい。
4 「健康相談窓口」に、相談にこられた駐留軍労働者六二件のうち、「石綿による健康被害への不安に関する」相談者について、アスベストによる健康被害でないと判断した根拠と理由について明らかにされたい。
5 退職された駐留軍労働者の中には、すでに亡くなられた方がおられると思うので、「健康相談窓口」によるだけでなく、防衛施設庁としても、駐留軍労働者の退職者名簿等に基づき追跡調査をするなど、健康被害の実態調査のために積極的な対策を講ずるべきと考えるがどうか。
6 防衛施設庁は、現在のところ、駐留軍労働者の「石綿による健康被害を確認していない」としている。しかし、本年七月には、社団法人神奈川労災職業病センターは、米海軍横須賀基地で働く駐留軍労働者のアスベストによる健康被害を明らかにしているが、承知しているのか。
同センターによれば、アスベストによる被害は、一九九〇年以降、九八人に上り、肺がん二三人、中皮腫二人、石綿肺(最重症)七人、石綿肺と合併した続発性気管支炎六六人、このうち一四人が肺がん、二名が中皮腫で亡くなっているとのことである。
このことについて、防衛施設庁は、アスベストによる駐留軍労働者の健康被害と見なしているのか、当然のこととして確認されているものと考えるがどうか。
7 防衛庁は、七月二十六日に米海軍横須賀基地で働いていた駐留軍労働者四六人に対して、アスベストが原因による疾患であることを認めて補償並びに補償的措置を講じたと聞いている。
これらの労働者は横須賀基地で、艦船の修理等の際、断熱材に含まれた石綿を吸い込み、じん肺になったとして訴訟を起こしたとのことである。訴訟経過と結果及び補償措置について伺いたい。
また、この補償については、米側の責任において支払いがなされたのかどうか、それとも日本側の責任でなされたのか。その支払いの法的根拠と理由を明確にされたい。
この件は、駐留軍労働者のアスベストによる健康被害には該当しないのか。
8 那覇労働基準監督署に、キャンプ・キンザーで働いていた元駐留軍労働者(肺がんで死亡)の遺族が、アスベストによる原因で亡くなったとして、労災認定の申請を行った。
この方は、一九五〇年代から那覇基地などで勤務し、一九八二年から一九九八年の退職までキャンプ・キンザーで、ボイラー補修などで石綿の取扱作業に従事したという。
医師は、CT画像を分析し「石綿を吸い込んだことを示す胸膜肥厚斑あり」、「アスベストが原因による可能性の強い」との見方を示しているが、防衛施設庁の認識を伺いたい。
二 在日米軍基地における施設等のアスベストの使用状況の把握について
1 在日米軍基地施設等のアスベストの使用状況について、駐留軍労働者はもとより基地周辺の住民への曝露防止・安全対策のために、政府として把握すべきと考えるがどうか。
2 防衛施設庁が、「石綿による健康被害の防止に係る協力を必要に応じて(米側に)要請する」としているのは問題である。
政府は、在日米軍施設のどこにアスベストが使用されているのかを把握する必要はないという判断なのか、その理由と根拠を伺いたい。
3 日米合同委員会の下にある環境分科委員会においては、駐留軍労働者の健康被害実態の調査及び基地施設のアスベスト使用状況の把握について議題とされたことはあるのか。
4 在日米軍基地における環境保全等は、米国防総省の「日本環境管理基準」に基づくとされている。アスベストを使用している施設の管理、新たな施設のアスベストの使用の禁止、施設の改築・解体、施設の除去又は撹乱、アスベストの廃棄物の廃棄処分は、どのような基準と手順によって行われることになっているか、その概要を明らかにされたい。
右質問する。
政府答弁書
一の1、6及び7について
防衛施設庁において、駐留軍等労働者に対して毎年実施している労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)等に基づく健康診断及び駐留軍等労働者、過去に駐留軍等労働者であった者(以下「退職者」という。)等を対象とした石綿による健康被害等の相談に応じるために防衛施設庁等に開設した健康相談窓口(以下「健康相談窓口」という。)を通じて把握した限りでは、平成十七年十月二十一日現在、石綿による健康被害を確認することができた者はいない。
他方、防衛施設庁としては、石綿による退職者の健康被害に関し、いわゆる「米海軍横須賀基地石綿じん肺損害賠償請求事件」において健康被害があったとされた者、石綿による健康被害を受けたとして裁判外で損害賠償請求があり日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定(昭和三十五年条約第七号。以下「地位協定」という。)第十八条5の規定による手続がとられた者及び横須賀防衛施設事務所において雇用の手続がとられた駐留軍等労働者で石綿による健康被害があったとして平成十六年度以前に労働者災害補償保険法(昭和二十二年法律第五十号)に基づき保険給付の支給の決定(以下「労災認定」という。)をされたもの(厚生労働省が平成十七年七月二十九日及び同年八月二十六日に公表した労災認定の件数に係るもの)がいることを把握している。
いわゆる「米海軍横須賀基地石綿じん肺損害賠償請求事件」については、第一次訴訟から第三次訴訟まで、合計三件提起されている。
第一次訴訟は、平成十一年七月に提起され、平成十四年十月に、駐留軍等労働者の雇用主である国の安全配慮義務違反を理由として原告らの請求を基本的に認容する第一審判決が言い渡され、国は、同判決において国による消滅時効の援用が権利の濫用に当たるとされた一部の原告らの請求に係る部分については控訴したが、それ以外の部分については、同判決に従って同年十一月に総額約一億九千五百万円を支払った。控訴審においては、平成十五年五月、国が控訴した部分につき第一審判決を取り消して原告らの請求を棄却する旨の判決が言い渡され、平成十六年四月、同判決が確定した。
第二次訴訟は、平成十四年五月に提起され、平成十六年十一月に訴訟上の和解が成立し、国は、これに従って同年十二月に総額三億五百万円を支払った。
第三次訴訟は、平成十五年七月に提起され、平成十七年五月に訴訟上の和解が成立し、国は、これに従って同年七月に総額約二億千六百万円を支払った。
また、石綿による健康被害を受けたとして平成四年から平成十一年までの間に損害賠償請求があり、地位協定第十八条5の規定による手続がとられた者に対し、国は、平成十七年八月までに総額約九千二百万円を支払った。
これらの支払については、国が一括して支払った後、同条5の規定に基づきアメリカ合衆国(以下「合衆国」という。)に請求すべき部分については、その負担を求め、償還を受けているところである。
社団法人神奈川労災職業病センターの調査結果として、横須賀海軍施設における石綿による健康被害が明らかになった旨の報道があったことは承知しており、その内容について同センターに問い合わせたが、詳細については確認することができなかった。
一の2及び3について
石綿に係る健康診断については、労働安全衛生法及びじん肺法(昭和三十五年法律第三十号)に規定された検査等を実施しており、また、この検査等の結果、他覚症状が認められる者、自覚症状を訴える者その他異常の疑いがある者で、医師が必要と認めるものについては、更に詳細な検査等を実施することとしている。
一の4及び5について
防衛施設庁においては、石綿による退職者の健康被害等に対応するため、労働安全衛生法に基づく健康管理手帳の制度、労働者災害補償保険法に基づく補償の制度等について退職者に対し周知するとともに、健康相談窓口での相談を通じて石綿による退職者の健康被害の有無等について把握することとしている。
これまでに健康相談窓口に相談があった者のうち、医師による診断書等により石綿による健康被害を確認するに至ったものはいない。
一の8について
防衛施設庁としては、沖縄県に駐留する合衆国軍隊が使用する施設及び区域内に勤務し、その後亡くなった退職者の遺族から、当該退職者につき石綿による健康被害があったとして、平成十七年十月十三日、那覇労働基準監督署に労災認定のための申請手続がとられたと承知している。
これについては、現在、同署において調査が行われているところであり、防衛施設庁としては、同署から調査への協力の要請があれば、積極的に協力してまいりたい。
二の1及び2について
政府としては、合衆国政府に適切な情報の提供を求めるなど、合衆国軍隊が使用する施設及び区域の周辺の住民への石綿の粉じんのばく露防止のため適切に対処してまいりたいと考えている。
また、防衛施設庁においては、合衆国軍隊に対し、石綿による健康被害の防止に係る協力を必要に応じて要請することとしているが、この要請には石綿の使用状況に係るものも含まれる。
二の3について
地位協定第二十五条1の規定に基づいて設置された合同委員会の下にある環境分科委員会(以下「環境分科委員会」という。)の議事録は、両国政府の合意なしには公表しないこととされており、環境分科委員会においてどのような事項が議題とされたかについては、これを公にすることにより合衆国政府との信頼関係が損なわれる等のおそれがあることから、答弁を差し控えたい。
二の4について
お尋ねの「日本環境管理基準」においては、石綿に関することとして、石綿の管理計画を策定し及び実施することとされており、当該管理計画の中で石綿含有物質の定期的な観察、新たな建設における石綿含有物質の使用防止のための手順等が定められていると承知している。また、施設の取壊し又は改築に際しては、事前に当該作業が石綿含有物質を除去し又はかく乱するものか否か判断すること、石綿含有物質を飛散させるおそれのある場合は当該石綿含有物質を除去しなければならないこと、石綿廃棄物については合衆国の国防再利用販売事務所を通じて処分されるか、それ以外の部局を通じて我が国の法令に従って処分されること等が定められていると承知している。
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