ことばで探す › 衆議院 第170回
米印原子力協定およびNSG総会、日本政府の対応に関する質問主意書
衆議院 第170回 第136号
質問本文
去る九月六日、NSG(原子力供給国グループ)の総会は、NPT(核拡散防止条約)非加盟国のインドに対し米国の核輸出解禁を、日本も含む全会一致で承認した。これを受け、米印原子力協定が締結された。
米印原子力協定は、インドの核保有を事実上容認し、国際的な核軍縮・核不拡散の流れに逆行するばかりでなく、NPT未加盟のパキスタンやイスラエル、そしてNPT脱退を宣言して核開発を進めた北朝鮮、NPTに加盟しながらウラン濃縮活動を続けるイランに対し、誤ったメッセージを送りかねない。
我が国は、唯一の被爆国として、あらゆる場において核拡散に反対し、世界の非核化を推進すべき立場をとってきた。今回のインドに対する「例外」扱い承認は、「核のない社会」を目指す我が国平和外交から大きく逸脱するものである。
去る七月三十日には、長崎と広島の市長が連名で、米印原子力協定は「世界の核兵器廃絶の取り組みに大きな支障となる」と指摘し、日本政府に対応を要請したことは、ご案内のとおりである。
インドに原子力協力を行うのであれば、インドの核保有・核開発・核技術移転の禁止、NPTとCTBT(包括的核実験禁止条約)への早期加盟を強く求めるべきであったにもかかわらず、我が国がそういった主張をすることもなく、無条件に例外扱いを承認するに至ったことは大きな問題である。
今回の日本政府のNSGへの対応、米印原子力協定に対する姿勢は、NPT体制の形骸化・空洞化につながるものであり、将来への禍根が懸念される。
よって、政府の認識および対応について質問する。
一 米印原子力協定およびNSGガイドラインの変更によりインドの国産ウランが核兵器に回され、インドの核兵器増産に利用される可能性はないのか。ないとすれば、その根拠を示されたい。
二 核兵器の生産を続けるインドに、ウラン濃縮やプルトニウム再処理などの技術の輸出を明確に禁止しないNSGガイドラインの修正に、日本政府が賛成したのは何故か。核兵器生産に利用される可能性はないとするなら、その根拠を示されたい。
三 今後、日本政府がインドに原子力協力をすることを考えているか。考えているのであれば、インドがNPTに加盟し、CTBTに署名することを条件にすべきだと考えるが、どうか。
四 NSGの総会において、日本政府が示した見解はどのようなものか。
総会に、日本政府は「National Statement(国の見解)」を提出したと伝えられているが事実か。
提出したのであれば、その内容を公表すべきではないか。ちなみにアイルランド、ニュージーランド、ノルウェー、オーストリア等は公表している。
五 NPTを維持するためには、包括的な核軍縮についての枠組み議論が重要であると考えるが、どうか。
六 藪中外務省事務次官は、去る九月八日の記者会見で、インドが核実験をした場合について「当然今回の合意は基礎をなさないということは日本の考えである」と述べているが、どのように対応するのか。
またインドとの原子力取引停止をNSGで決めるルールはどうなっているのか。再び全加盟国の一致は必要条件か否か。
七 中国がパキスタンで二基の原子力発電所建設に協力することに合意したと報じられているが、日本政府は、このことを確認しているのか。この合意について、日本政府はNSGでどのように対応するのか。
八 一九九五年のNPT再検討・延長会議で確認した『核不拡散と核軍縮のための原則と目標』は、核関連輸出にあたり「必要な前提条件として、IAEA(国際原子力機関)の包括的保障措置を受諾し、かつ、核兵器その他の核爆発装置を取得しないという国際的に法的な拘束力のある約束を受諾することを要求すべきである」とされている。
今回のNSGガイドラインの変更にあたって、日本がそれを要求したのかどうか。しなかったとすれば、その理由は何か。
右質問する。
政府答弁書
一について
インドは、平成二十年九月五日に発表されたムカジー・インド外務大臣の声明(以下「ムカジー外相の声明」という。)において、核実験モラトリアムの継続を改めて明確に打ち出すとともに、核兵器を含む軍備競争への不賛成等を表明している。また、今回の原子力供給国グループ(以下「NSG」という。)第二回臨時総会における「インドとの民生用原子力協力に関する声明」(以下「NSG声明」という。)の採択も、核実験モラトリアムの継続を含むインドのコミットメント及び行動を前提としている。
インドは最小限の核抑止力を保持する政策をとっており、また、従来から無差別の核軍縮を主張してきていることから、このようなインドのこれまでの立場と矛盾するような核戦力の増強がなされることはないと考える。
二について
NSG声明において、ウラン濃縮、使用済燃料の再処理及び重水製造のような機微な資機材・技術(以下「機微な資機材及び技術」という。)については、NSGガイドライン・パート1の第六項及び第七項の規定に従う旨、特に明記されており、これらの規定に従って移転は抑制されることになる。
また、NSG声明に関する議論を通じて、NSG参加各国は機微な資機材及び技術の移転を行う予定はないと理解している。
NSG声明については、ムカジー外相の声明においても述べられたインドの核実験モラトリアムの継続を始めとして、民生用の原子力施設への国際原子力機関保障措置の適用、NSGガイドラインの遵守を含む厳格な輸出管理の実施等のインドのコミットメント及び行動に基づくものであることが明確にされ、また、これらのコミットメント及び行動を通じて、インドに対する不拡散措置が現在より強化され、インドの原子力活動の透明性が高まるとともに、国際的な核不拡散体制の外にいるインドによる更なる不拡散への取組を促す契機となると考えられたこと等から、我が国としては、ぎりぎりの判断として、同声明に関するコンセンサスによる採択に加わった。
三について
現時点において、我が国としては、インドとの間で原子力協定の締結交渉を行う具体的な予定はない。
四について
NSGにおける議論の詳細については公表しないこととなっているが、NSG声明の採択に際して、我が国は、特に唯一の被爆国として、インドによる核実験モラトリアムの継続を重視しつつ議論に参加し、仮にインドによる核実験モラトリアムが維持されない場合には、NSGとしては例外化措置を失効又は停止すべきであること、また、NSG参加各国は、各国が行っている原子力協力を停止すべきであることを明確に表明した。
また、インドに対し、非核兵器国としての核兵器の不拡散に関する条約(昭和五十一年条約第六号。以下「NPT」という。)への早期加入、包括的核実験禁止条約(以下「CTBT」という。)の早期署名・批准等を求めるとの我が国の立場に変わりはないことを表明した。
五について
NPTを基礎とする国際的な核軍縮・不拡散体制の維持・強化のためには、核兵器のない平和な世界に向けた、具体的かつ着実な取組を一歩一歩進めていく必要がある。このような考えに基づき、二千十年NPT運用検討会議に向けた議論に参加していく考えである。また、我が国は、この考え方を示した核軍縮決議案を国連総会に提出し、圧倒的多数の支持を得てきている。
六について
NSG声明は、一又はそれ以上のNSG参加国政府が協議を要する状況が生じたと考える場合には、参加各国政府は、NSGガイドライン・パート1の第十六項の規定に従って、会合し、そして行動するとしており、同項は、供給国は、当該受領国への原子力移転の終了を含み得る適切な対処及び可能な行動について合意しなければならない旨規定していることから、万一インドによる核実験という重大な事態が生じた場合には、同項に基づいて行動することとなると理解している。
今次NSG総会において、我が国は、仮にインドによる核実験モラトリアムが維持されない場合には、NSGとしては例外化措置を失効又は停止すべきであること、また、NSG参加各国は、各国が行っている原子力協力を停止すべきであることを明確に表明した。
我が国としては、インドがNSG声明採択の趣旨を重く受け止め、国際的な核不拡散体制の維持・強化のために責任ある行動をとるよう引き続き強く求めていく考えである。また、インドに対し、非核兵器国としてのNPTへの早期加入、CTBTの早期署名・批准等を求めるとの我が国の立場には変わりはない。
七について
御指摘の報道については承知しており、事実関係等につき情報収集に努めているが、正確な情報は確認できていない。
八について
今次NSG総会において、我が国は、インドに対し、非核兵器国としてのNPTへの早期加入等を求めるとの立場に変わりはないことを表明したものである。
似た質問主意書
件名と質問本文の冒頭の意味が近いものを、前もって計算しておいた表から近い順に8件並べました(multilingual-e5-large)。同じ言葉を使っていなくても出ます。論点が少しずれていることもあります。