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米先物取引の誘導に関する質問主意書
衆議院 第177回 第296号
質問本文
本年三月、東京穀物商品取引所及び関西商品取引所は農林水産省に対し、米先物取引の試験場の認可申請を行い、鹿野農林水産大臣は今月一日、認可すると正式に発表した。この問題は最初に結論ありきであり、十分な検討がなされぬまま認可されると、まさに国民や国会不在の議論になりかねない。民主党政権が昨年行われた参議院選挙の帰趨の鍵となる農村票獲得に向けての選挙対策として導入した戸別所得補償制度は、食糧法の下、需給と価格の安定を図るため、生産調整の基本である生産数量目標の達成を要件としており、また制度自ら米価格を低下させ、その恐怖感から仕方なく加入率が増加している。無理に先物取引によって、ばら撒き政策である戸別所得補償と連動した価格ヘッジを可能とする理由はなく、現行の米政策と矛盾するものである。
農林水産省の見解は、現物渡しの割合が一割以下とし、投機家によって先物価格が米価格の指標にされるというが、日本国民の主食である米を、米価格の乱高下を招くとも限らない賭博性の高いマネーゲームの対象とすること自体大きな問題であるとともに、生産現場が大混乱する恐れがあり、生産者に及ぼす影響は計り知れないものがある。さらに、時恰も米の主産地が復旧復興に懸命に取り組んでいる最中であり、感情を逆なでするが如き背徳行為は到底許されるべきものではない。
国が最優先で取り組むべきは商品先物取引法ではなく食糧法であり、生産調整を機軸として米の需給と価格の安定を図り、麦や大豆、米粉・飼料用米、飼料作物などの生産拡大のための総合的な農業政策を支援し、様々な視点から日本における農業の未来図を明示することが求められていると考える。
従って、次の事項について質問する。
一 現行の戸別所得補償制度は、食糧法の下、需給と価格の安定を図るため、生産調整の基本である生産数量目標の達成を要件としており、また制度自ら米価格を低下させ、その恐怖感から仕方なく加入率が増加している。無理に先物取引によって、ばら撒き政策である戸別所得補償と連動した価格ヘッジを可能とする理由はなく、現行の米政策と矛盾するものと考えるが、菅内閣の見解如何。
二 一に関連し、現行の戸別所得補償制度における米価変動補填交付金は、産地銘柄や販売方法が違っても全国一律の交付のため、所得ヘッジがなされている。今回の先物取引による価格ヘッジを二重に実施することは制度上矛盾するものと考えるが、菅内閣の見解如何。
三 農林水産省は、米取引の客観的な指標価格が存在しない中で、先物市場は生産者に取引の目安となる価格を提供するとしている。現物渡しの割合が一割以下とし、投機家によって先物価格が米価格の指標にされ、日本国民の主食である米を、米価格の乱高下を招くとも限らない賭博性の高いマネーゲームの対象とすること自体大きな問題であるとともに、生産現場が大混乱する恐れがあり、生産者に及ぼす影響は計り知れないものがあると考えるが、菅内閣の見解如何。
四 民主、公明、我が党三党が本年四月末まとめた合意文書は、「復興のための国債は従来の国債と区別し、その消化や償還を担保する」と明記している。然るに米先物取引については、時恰も米の主産地が復旧復興に懸命に取り組んでいる最中であり、ばら撒き政策と連動した価格ヘッジを可能とすることは筋違いである。感情を逆なでするが如き背徳行為は到底許されるべきものではないと考えるが、菅内閣の見解如何。
五 一〜四に関連し、米先物取引の問題は最初に結論ありきであり、十分な検討がなされぬまま認可されると、まさに国民や国会不在の議論になりかねない。反対を表明している生産者の意見を尊重し、その必要性と与える影響について十分見極めることが重要と考えるが、菅内閣の見解如何。
六 国が最優先で取り組むべきは商品先物取引法ではなく食糧法であり、生産調整を機軸として米の需給と価格の安定を図り、麦や大豆、米粉・飼料用米、飼料作物などの生産拡大のための総合的な農業政策を支援し、様々な視点から日本における農業の未来図を明示することが求められていると考えるが、菅内閣の見解如何。
右質問する。
政府答弁書
一について
近年の米政策は、平成十五年の主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律(平成六年法律第百十三号。以下「食糧法」という。)の改正において、国による計画的な流通を確保するための措置を廃止するとともに、米穀価格形成センターにおいて先物取引を行うことを可能とするなど、民間事業者による自由な流通を原則とする仕組みとしてきたところである。その上で平成二十二年度から、農業者戸別所得補償制度として、生産者に対し米穀の所得補償交付金及び米価変動補填交付金を交付し、生産者が米穀の生産に要する標準的な費用(以下「標準生産費」という。)と同等の収入を確保することを可能としている。また、米穀の需給調整については、生産数量目標に即した生産を行う者をこれらの交付金の交付対象者とし、需給調整への参加は生産者の主体的な経営判断に委ねている。一方、米穀の先物取引は、このような現行の米政策の下で、価格変動に伴う経営リスクを生産者自らの経営判断により、更に軽減させることができるものであり、「現行の米政策と矛盾する」との御指摘は当たらないと考えている。
二について
米価変動補填交付金は、全国一律の単価によって算定した当年産の米穀の販売価格が標準的な販売価格を下回った場合に、その差額を補填するものであり、生産者は、米穀の所得補償交付金と併せることにより、標準生産費と同等の収入を確保することが可能となっている。一方、農業者戸別所得補償制度の下で、米穀の先物取引は、それぞれの生産者が生産する米穀ごとに、その価格変動に伴う経営リスクを更に軽減させることを可能とするものであり、「価格ヘッジを二重に実施することは制度上矛盾する」との御指摘は当たらないと考えている。
三及び四について
米穀の試験上場を行うための株式会社東京穀物商品取引所及び関西商品取引所の定款又は業務規程の変更の認可については、両取引所から申請書が提出されたことから、農林水産大臣が審査を行い、商品先物取引法(昭和二十五年法律第二百三十九号)第百五十五条第三項又は第百五十六条第五項の規定に基づき、同法第百五十五条第三項第四号又は第百五十六条第五項第四号に定める基準に適合していると認め、認可をしたものであり、「生産者に及ぼす影響は計り知れない」、「感情を逆なでするが如き背徳行為」との御指摘は当たらないと考えている。
五について
平成二十三年三月八日、株式会社東京穀物商品取引所及び関西商品取引所から農林水産大臣に対し、米穀の試験上場を行うための定款又は業務規程の変更の認可の申請書が提出されたため、同月二十五日に官報にその旨を公示し、同年六月二十五日までの三か月間、周知を図るとともに、関係者の御意見も伺ったところである。また、商品先物取引法第百五十五条第六項第二号及び第百五十六条第七項第二号において準用する同法第十五条第十項の規定に基づき、同年七月二十五日までに、申請者に対し認可又は不認可の通知を発しなければならないこととされている。その上で、農林水産大臣としては関係者の御意見も踏まえつつ審査を行い、同年七月一日に認可をしたものである。
六について
従来から、米穀の需給及び価格の安定を図るため、食糧法に基づき、米穀の需給の適確な見通しを策定し、これと整合性をもって、生産調整の円滑な推進等を図っているところである。また、「食料・農業・農村基本計画」(平成二十二年三月三十日閣議決定)において、水田を有効活用して食料自給率の向上を図ることを明記し、農業者戸別所得補償制度の実施等により、麦、大豆、飼料作物、米粉用米、飼料用米等の生産拡大を推進している。
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