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林政一般に関する質問主意書

衆議院 第2回 第6号

提出者
衆議院
提出日
1948年4月26日
内閣転送 1948年4月30日
答弁書受領日
1948年5月6日
提出から9日
答弁の項目数
0
質問 2,851字/答弁 2,722字

質問本文

森林資源の枯渇による國土の荒廃が極めて著しいことは、昨年発表の「経済実相報告書」にも指摘せられており、政府自らの認めるところである。しかも昨夏の東北水害、昨秋の関東水害と相次ぎ、その惨禍は正に目を蔽わしめるものがあつた。さらに本年と雖も風水害を未然に回避することは保し難く、このままに放置するときは、國破れて僅かに残つた山河さえもが失われんとする事態にある。

これ戰時中の山林に対する濫伐、過伐が大いなる原因をなしているのであるが、今後林産物需要の増加は林木成長率を遙かに超えて、いわゆる植伐の不均衡に一層の拍車をかけるのであろう。一方現下の経済事情にあつては、造林に対する幾多の障害が存在し、殊に濫過伐の烈しかつた民有林において造林意欲の沈滞せる点は憂慮に堪えない。

さきに三党政策協定は、その一項に治山治水対策を掲げ、政府又これを実行する責務を有するのであるが、今や植樹の季節を迎えて、國土�拷サの声は澎湃として起り、國民運動の展開にまで高まりつつある。

しかしながら幾多困難なる條件に遮られ、政府自らこれが打開につとめない限りは掛声だけに終る懸念が充分である。よつて取りあえず左記各項について、速かに政府の所信を明かにせられ、以て民間林業人の不安と困難の打開につとめられたい、ここに政府の決意と善処とを要望して、本質問書を提出せんとする次第である。

記

一、三党政策協定はその重要項目の一として、農地改革の徹底的推進を掲げ、世上これを第三次農地改革と受け取り、山林に対しても農地同様これを開放の対象として考えられる懸念よりして、造林意欲の低下は固より幼齢林の伐採が相次いで行われる現状である。前内閣以來農林当局はこれを打ち消し、根拠なきことを声明しているが、まだ全く解消されたというには至つておらない。この際改めて政府の見解を積極的に発表して載きたい。

二、杭木、薪炭等の原材確保のため、林野の全面的國家管理説が流布されている向もあり、ために立木の賣急ぎの現象もなしとしない。これがため林地の所有に不安を來しているが、この点についての所信如何。

三、林業の経営適正規模は農業とは自らその性格を異にするものであり、大面積経営の優越性は欧米においても立証済である上、わが國にあつても大経営が優れていることはあまねく認められている。林地を徒らに分割零細化することは、決して生産力の発展にならないと思料するが、政府の見解如何。

四、林業は林産物の收穫を目的とする経済性のかたわら、國土保安、治山治水という公共目的を有することは論をまたない。從つて單なる経済合理主義にのみ委ねる訳にゆかず、國家の保護助成が要請されるゆえんである。いわんや戰時中経済外的強制力を以て供出せしめられた伐採跡地に対し、インフレ高進の今日、長年月にわたる資本投下は困難であり、民間の力にのみ造林を期待することは不可能に近いと考えられる。政府はこれに対して如何なる助成対策を有せられるか。

五、今日造林を困難ならしめている一つの理由として樹苗の不足がある。これは苗圃が食糧作付と競合関係にある上、戰時中縮小したままで、これを拡張する場合は農地調整法によつて拘束を受けるのである。苗圃に対しては旧墾地と雖も食糧供出の対象たることを免じて可及的拡張の余地を認められたいが如何。また國営圃場を設置して苗木の増産に当られる意図ありや、さらに竿頭一歩を進めて苗木の國による無償交付にまでも及ぶ用意ありやを伺いたい。

六、林木伐採に当つては必ず造林を前提とする意味において伐採跡地の造林について法的強制力を持たしめる考えはないか、これがため造林法ともいうべき單行法の制定を準備せられる意思ありやを伺いたい。もちろんこのためには國家よりする相当額の財的裏付乃至金融的措置を必要とすると思うが如何。

七、森林による所得に対する現行所得税は、既往に要した必要経費をのみ控除する建前となつているが、インフレ高進の現下にあつてはその控除額は僅少に失し、伐採跡地の再造林を不可能ならしめている。森林所得税において再造林費を考慮に入れた特別な方式を採用されたいと思うが、この点所見如何。

八、農家の自家用薪炭林、放牧地、採草地については、使用権の復活乃至開放の途が開かれているが、使用希望者と森林所有者との協議を前提としている。しかしてこの際森林組合や薪炭林等委員会に諮問することになつているが、実際は農地委員会の行き過ぎが多く、随所に問題を惹起している。政府はこの点末端に徹底せしめ、無用の摩擦をなくするよう善処ありたいが、所見を問う。

九、緊急開拓計画に基く未墾地開拓事業は買上げをめぐつて至るところ森林所有者と入植者若しくは増反希望者との間に紛爭を起している、開墾適地の選定に当つては科学的、技術的観点に立つて、絶対的林地と相対的林地の区別を明確にすべきである。防風林を開墾したため既耕地の收穫が減少したり、上流傾斜地の開墾が下流美田を流失せしめたような例は枚挙に暇がない。又單に所有権だけを目的に開墾に便乘しようとする奸策もなしとしない。かかる土地利用区分に当つては、綜合的國土計画の見地からすべきであり、農地委員会の攻勢による林地不安に対しては、是正を要望するものであるが、政府の考を問う。

十、政府は昨年國有林野の統一を完成多年の懸案を一挙に解決したが、その結果國有林はある一地方に偏在し、必ずしも全國的分布において均衡を得ていない。由來國有林制度は明治維新草創の際、地方民の利害を度外視して設定せられた例が極めて多い。特殊な歴史的沿革的事情を有し、且つ経済的にも理由を持つ地方においては、これが開放の要望に應えてしかるべしと考えるが政府にその用意があるか。

十一、奥地林分の開発には林道網の整備が絶対に必要であり、これによつて未利用林木に経済的價値を生ぜしめる。しかも林道工事は労力が主であつて、資材を多く要しないので、失業対策事業としても極めて適切である。公共事業費等を思い切つてこの方面に活用して欲しいが本年度の予算的見透し如何。

十二、民有林の保続経営に当つては施業案に基く計画施業が絶対に必要である。しかしてわが國の民有林の所有形態は極めて小規模なるを以て、これを協同化した森林組合をもつて経営の任に当らしめるの外ない。森林組合の育成強化に対し政府の所信を問う。又そのため森林法の改正を企図せられるか。

十三、林業の特殊性に鑑み、長期低利の金融が絶対に必要である。農林復興金庫の設置はこの点からも要望せられるのであるが、その用意があるか。

十四、第九十議会において制定せられた林業会法は、今日死文に等しい状態に置かれ、本法に拠る日本林業会はすでに解体一歩手前にある。地方林業会又帰趨に迷つている現状であるが、政府は本法を廃止する意思であるか、又その時期如何。さらに本法に代るべき何らかの立法を用意しておられるかを伺いたい。

右質問する。

衆議院の原文・経過

政府答弁書

一、農地改革の進行につれて、山林についても同様な措置がとられるのではないかというような懸念から、造林意欲が低下し幼令林の伐採が行われているのは遺憾ながら事実であり、政府としてもこれに対しては前内閣以來あるいは新聞であるいは議会において度々発表しているように山林の特殊性に鑑み、山林自体を農地改革と同様な方式で開放するということは全然考えていない。この点については今後機会あるごとに発表して造林意欲の向上につとめたい。

二、杭木、薪炭材の原材確保のため、林野の全面的國家管理説が流布されているとのことであるが、これは全くの流説であり、前号の問題と連関をもつているものと考えられるが、当局としてはかかる考は全くない。

三、林業の適正規模が農地とはその性格を異にし、より大面積な規模においてその優越性を示すことは御説の通りであつて、現在の所有形態を分割し、これをより零細化するようなことは林業生産力高度化の見地からは全然考えられないと思う。現在において林地は相当に零細化しており、大経営の利を攝取するためにはどうしてもそこに協同組合による協同作業が必要であり、森林組合が組織されている所以もそこにあるのであつて、今後とも森林組合の如き協同組合組織より大経営の利をとつて生産力の発展をはかりたい。

四、現在の如きインフレ昂進期において造林を單なる経済合理主義にのみ委ねておくことは、その資本の回轉率の長期なることに鑑み非常に無理であり、当局としてもでき得る限りの保護助成をはかりたいのであるが、國家財政窮乏の折柄、意の如くならないのは誠に遺憾である。しかしこの乏しき財源を以て造林單價の引上(約五倍平均一町歩八三八〇円)をはかつたが、それとともに山林所有者の造林意欲の向上により造林の促進につとめたいと念願している。

その具体策としては、造林五箇年計画により昭和二十三年から二十七年まで約一九三万町歩の造林をする計画であるが、昭和二十三年度約三十八万町歩を予定している。

五、苗圃の拡張は必要であるので、造林計画に應じた必要面積をそれぞれ各都道府縣に割り当て、食用作物の作付との調整の下に既耕地えも拡張させる方針である。この際苗圃地には食糧供出の義務はない。なお、苗圃経営の特殊性に鑑み、既耕地以外の土地をあらたに開墾し、苗圃としたものは自作農創設特別措置法に規定する制限を超えて所有することを認めて拡張を容易ならしめた。なお、民有林造林用苗木の需給を調整するために、國営を以て二十二年度は約一億五千万本、二十三年度は二億一千万本の苗木の養成を行つている。苗木の無償交付は今のところ考えていない。

六、伐採跡地の造林について法的強制力をもたせることは諸般の事情を考慮して決定したい。したがつてこのため造林法というが如き單行法を制定するか、森林法に所要の改正をするか否かもまだ決定していない。もし法的強制力をもたせるとすれば当然相当額の財的裏付乃至食糧的措置を必要とすると思う。

七、山林の伐採所得に対する再造林費の控除については、現在の如きインフレーシヨンの段階において山林の伐採所得が再造林費を償わない現状から、造林の必要性に鑑み当局としても山林の伐採所得に対する所得税の財源にあたつては、経費を控除するのでなく、再造林費を控除するよう努めたのであるが、これは所得税体系全般にわたる問題であり、現在の所得税体系では困難ではないかと思われる。

八、農家の自家用薪炭林、放牧地、採草地の利用権あるいはその開放については、御説の如く林地と関係するところ極めて多く、林業関係者の意見をきく必要があるので、森林組合の意見を反映させ、あるいは薪炭林等委員会の構成員として森林組合の代表者をいれる等の措置をとつているので、この点なお末端まで徹底するように努力したい。

九、未墾地開拓がその進展とともに各地において種々の紛爭をおこしていることは遺憾ながら事実である。これに対しては國土の綜合的利用という見地から、農林畜の調整をはかることに閣議決定をみたので、この閣議決定の線にそつて、林地については林業関係者の意思が開拓適地の選定にあたつて充分反映するように措置している。

十、國有林の偏在に関しては、御説のように一地方に偏在していることは事実である。國有林を、特殊な歴史的沿革的事情を有し且つ経済的にも理由ある地方には開放せよということであるが、現在國有林はあるいは地元施設(委託林、部分林等)としてはあるいは農地又は放牧地、採草地として、可能な限り開放して、それは全面積の六二%に及んでいる。今後とも地元の要望にこたえてでき得る限り開放したい。しかし國有林の立地的な地方的な偏在を、今後全國的に均衡を得た分布にすることは、國有林の保安的使命に鑑み考えられることであるが、現在その用意はない。

十一、奥地林分の開発のため林道施設に対しては、民有林の奥地林九十五万町歩蓄積三億六千万石を対象として、昭和二十一年以降十年間一七、四一七粁の計画を樹て、二十三年度は一、七四二粁六億七千万円の予算を要求しているが、現在の見透しは一億四千四百五十万円程度なので、現在復活要求中である。

十二、民有林の計画施業は絶体必要であるので、そのにない手として森林組合は今後とも育成強化してゆくつもりであるが、森林組合の組織、運営については今後の産業全体のあり方と関連するところが多いので、その点も充分考えて善処したい。しかし現在は森林法を改正して森林組合を改組する考はない。

十三、林業については、その資金の固定が長期にわたる等のため、特殊の金融機関が必要なことはいうをまたないところで、その成立につき研究中である。農村復興金庫については、目下関係方面と接衝中で、これが設立については林業方面においても大いに関心をもち、その急速な実現を希求している。

十四、林業会法制定時と今日とではその社会的、経済的基盤が変化したため、林業会が当初意図した事業の主要なものを行い得なくなつたことは事実であり、又日本林業会が昭和二十二年安本訓令第三号に基く指定團体として解体一歩手前にあることもお説の通りである。そこで政府としては、地方林業会についてもその成立の経緯に鑑み、同法に基く特別法人としての重要性が失われたことを認め、その開散については、地方林業会の意思にまかせようと考えている。そうなれば林業会法は当然改正をみるわけで、そのあとにくる林業團体に関する法制は森林法に基く森林組合と林業会法に基く林産組合のみとし、その提携協力については、これら團体の任意の意向に基づくものとしたい意向である。

衆議院の原文

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