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エネルギー基本計画見直しにおける原発の発電コスト検証に関する質問主意書
衆議院 第204回 第115号お答えすることは困難 ×2趣旨が明らかではない ×1
質問本文
経済産業省は、「エネルギー基本計画」の見直しに向け、総合資源エネルギー調査会基本政策分科会に「発電コスト検証ワーキンググループ」(WG)を設置し、発電コストの検証を進めている。
発電コストは、分母に発電電力量を、分子に資本費、運転維持費、燃料費、社会的費用を置いて、建設から廃止までのコストを実在しない「モデルプラント」を使って試算するとしている。このモデルプラント方式では、恣意的な数値を入れれば、発電コストを高くも低くもできるとの指摘がある。
ここでは想定の恣意性に問題があると指摘されている原子力発電の発電コストに限定して、以下質問する。
一 モデルプラント方式では、分母に試算される設備稼働率等を上げる一方、分子に置く資本費(建設費+追加的安全対策費)、事故リスク対応費用を圧縮した上で、事故発生確率を下げれば、原発の発電コストを恣意的に低く見積もることが可能である。そうした場合、二〇一一年三月に起きた福島第一原子力発電所(以後、一F)事故を踏まえない「安全神話」へと逆戻りするおそれがあるのではないか。
二 設備稼働率等について
1 WGにおける二〇一五年の検証では、原発の「設備稼働率が七〜八割を想定」していたが、再稼働原発九基の運転開始から二〇一九年末までの設備利用率平均は七十%を切っている。さらに、原子力委員会発行の「令和元年度版原子力白書」(百二十四頁)によると、原発事故の翌年二〇一二年度から二〇一八年度に至るまで設備稼働率が二割を超えた年度はない。設備稼働率の試算は過大評価ではないか。
2 二〇一五年の検証では、原子力については四十三基の稼働を想定していたが、二〇二一年四月現在、定期検査中で停まっているものを含めて稼働可能な原発は九基のみである。その他に新規制基準に適合した原発は、不祥事などで稼働の見込みがない柏崎刈羽原発を含めたとしても七基で、合計十六基である。二〇二一年の検証では、この現状を反映するのか。
三 建設費について
国際的に見て建設費は上昇しているにもかかわらず、WGの検証では建設費の上昇に関する数々の論文や報告書が無視されている。
日本の原子炉メーカーによる英国、トルコ、ベトナム、リトアニアへの原発輸出事業も、建設費用の増加を背景にして、ことごとく失敗した。また原発の建設コストが右肩上がりになった米国では、東芝が傘下に収めたウェスチングハウスが巨額損失で破たんし、建設計画から撤退した。
日本国内でも、一F事故後に規制が強化されたことから、米国と同様、新規原発の建設費が高騰する可能性が高いのではないか。
四 追加的安全対策費について
1 追加的安全対策費は、電力各社が多額の投資を行っている実態があるにもかかわらず、多くの項目で費用を除外しているので、発電コストの過小評価になってしまう。�@「意図的な航空機衝突への対応」における敷地造成費用の約一割、�A「格納容器破損防止対策」費用の約五割、�B「炉心損傷防止対策」費用の約五割、�Cその他、「緊急時対策所の設置、各項目に含まれない給水・電源等の配置」などの約一割、�D配管漏えい検知や拡大防止装置の設置など内部溢水に対する対策費の約八割、�E防火帯の設置や竜巻飛来物対策、飛散防止対策、火山対策など自然現象に対する対策費のすべて、�F「感知器や消火設備」など火災に対する対策費の約五割、�G非常用ディーゼル発電機燃料油貯蔵タンク増設などの約二割、�H耐震裕度向上工事や周辺斜面安定化対策などの約六割、�I防潮堤の設置費のすべて、についてなぜ除外するのか、それぞれ具体的に根拠を明らかにされたい。
2 追加的安全対策費のうち、四1の除外は再稼働済みの九基を基にした試算だが、新設の場合はどのように試算するのか。
たとえば、欧州や米国では、新設時には航空機の衝突対策や、原子炉の溶融事故対策のためにメルトダウンした燃料を受けるコアキャッチャー整備が要求される。
一方、日本では、格納容器の二重化やコアキャッチャーは二〇一三年に施行した新規制基準では要求されていない。しかし、二〇一七年十二月六日の原子力規制委員長の記者会見で、その必要性を問われ、更田委員長は、「仮に新設炉に関しての検討をしなければならない状況に至った場合には」考えると回答した。
仮にも「新設炉に関しての検討をしなければならない」対策費を試算に入れなければ、発電コストの恣意的な過小評価と言わざるを得ないのではないか。
3 追加的安全対策費には、災害対策基本法第三十四条に基づく国の防災基本計画の策定に必要なコストや、原子力災害対策特別措置法に基づく原子力災害対策指針に沿って「地域防災計画」(原子力災害対策編)を作成することを義務づけられた自治体の行政コストが含まれていないが、試算に入れなければ、安全対策費の過小評価となるのではないか。
五 事故リスク対応費用について
1 二〇一一年のエネルギー・環境会議「コスト等検証委員会」では事故リスク対応費用を一兆円と見積もり、原発の発電コストを〇・一円/キロワットアワー(kWh)増加させたが、二〇一五年のWGが約十分の一の〇・〇一〜〇・〇三円/kWhに圧縮したのは、恣意的ではないか。
2 日本経済研究センターは事故リスク対応費用を三十五〜八十兆円と試算しているが、WGでは二〇一六年の東京電力改革・一F問題委員会が示した二十一・五兆円を試算に使っている。しかし、一Fの廃炉費用八兆円は根拠が乏しく、これを含んだ二十一・五兆円からは、�@燃料デブリの処理費、最終処分費用、�Aその他の放射性廃棄物。例えば、原発(PWR)一基の廃炉で生じる放射性廃棄物の千四百倍に達するとされるL1廃棄物を含む各種の廃棄物処分費用、�B除去土壌の最終処分費用が除外されている。なぜか、具体的に明らかにされたい。
六 高レベル放射性廃棄物処分のコストについて
資源エネルギー庁は、第三回WG資料二で高レベル放射性廃棄物処分費については、「直近において、国(経済産業省)が算定している処分費を反映」としている。
しかし、現時点で、高レベル放射性廃棄物処分場の「安全の確保の規制」は、特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律第二十条に基づき、「別に法律で定める」とされているだけで未策定である。二〇二〇年十二月三日の衆議院原子力問題調査特別委員会で、更田原子力規制委員会委員長が、「高レベル放射性廃棄物の最終処分に係る規制基準、これは原子炉等規制法に基づいて原子力規制委員会規則で定めることとされておりますけれども、この基準についてはまだ定めておりません」と答弁したとおりである。
高レベル放射性廃棄物処分場に求められる「安全の確保の規制」基準がないままで、どのように、処分費を試算するのか。過小評価になり得るのではないか。
七 事故発生確率について
政府は「世界一の規制基準」という虚構を振りかざしてきたが、地震大国日本における原発の耐震基準の基となる基準地震動は、近年の地震の実績を下回っていることが近年明らかになってきている。従って炉心損傷頻度や大規模放出頻度など事故発生確率は上がっていると考えるべきだが、検証ではどのような想定を行っているのか。
八 二〇一五年の発電コストの検証では、原発はすべての電源の中で最も安いという試算結果を打ち出したが、今回は、モデルプラント方式を止めて、右に指摘した恣意性を排除し、現実のデータに基づいた試算を行うべきではないか。
右質問する。
政府答弁書
一について
政府の発電コスト検証において、各電源の発電コストについては、専門家による議論に基づき、モデルプラント方式を採用し、試算の考え方や織り込む費用を整理しており、「原発の発電コストを恣意的に低く見積もる」との御指摘は当たらないものと考えている。また、政府としては、「エネルギー基本計画」(平成三十年七月三日閣議決定)に記載されているとおり、「東京電力福島第一原子力発電所事故の経験、反省と教訓を肝に銘じて取り組むことが原点であるという姿勢は一貫して変わらない。」という方針であり、「「安全神話」へと逆戻りするおそれがある」との御指摘は当たらないものと考えている。
二の1について
平成二十七年の総合資源エネルギー調査会基本政策分科会長期エネルギー需給見通し小委員会発電コスト検証ワーキンググループ(以下「平成二十七年発電コスト検証ワーキンググループ」という。)において、原子力発電の設備利用率を七十パーセントと設定しているが、これは、発電所が通常の運用をした時の発電コストを検証するという趣旨で、過去三十年間の実績の平均を踏まえて設定された数値であり、専門家による議論がなされた結果、妥当とされたものであることから、「過大評価」との御指摘は当たらないものと考えている。
二の2について
政府としては、令和三年三月から、総合資源エネルギー調査会基本政策分科会発電コスト検証ワーキンググループ(以下「令和三年発電コスト検証ワーキンググループ」という。)において、各電源の発電コストについて審議中であり、その結果が出ていないため、現時点でお答えすることは困難である。
三について
原子力事業者は、東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故の発生を契機とした規制強化に対し迅速かつ最善の安全対策を講じており、これに係る追加費用が発生している。このため、令和三年発電コスト検証ワーキンググループにおける原子力発電の発電コストの試算でも、平成二十七年発電コスト検証ワーキンググループの結果を踏襲し、こうした状況を踏まえ、安全対策に係る費用については、原子力事業者の直近の見積りを基に、追加的安全対策費として、モデルプラントの建設費に算入する。
四の1について
追加的安全対策費については、平成二十七年発電コスト検証ワーキンググループが平成二十七年五月に取りまとめた「長期エネルギー需給見通し小委員会に対する発電コスト等の検証に関する報告」(以下「平成二十七年報告」という。)において、追加的安全対策費の内訳の各項目に共通して「既存の配管設備の改造や防潮堤の設置など、新規制基準があらかじめ明らかであれば、設計・計画の最適化によっては省くことができる費用がある。そうした費用については、モデルプラントに計上する必要のない費用として慎重に特定し、計上する費用の対象から除く。」とされている。令和三年発電コスト検証ワーキンググループにおいて、経済産業省が示した当該各項目の考え方は、平成二十七年発電コスト検証ワーキンググループの結果を踏襲し、原子力事業者から聴取した結果を基に示したものである。
四の2について
政府の発電コスト検証においては、専門家による議論に基づき、合理的な見積りが可能な費用を用いて発電コストの試算を行っており、東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故後の新規制基準(核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号)及び同法の規定に基づく原子力規制委員会規則等に定める基準)を踏まえて、原子力事業者が行う安全対策に係る費用を基に発電コストの試算を行っている。
四の3について
政府の発電コスト検証は、各電源間の比較等を目的として行われているが、専門家による議論に基づき、各電源の発電コストに共通して、地方公共団体の予算は計上しておらず、「過小評価」との御指摘は当たらないものと考えている。
五の1について
平成二十七年発電コスト検証ワーキンググループにおいて、専門家による議論に基づき取りまとめられた平成二十七年報告において、「共済方式の算定根拠については、追加的安全対策によって事故発生頻度が低減することとなるため、各国規制機関や国際機関における安全目標の相場や、安全対策実施後のリスク評価の改善幅(五千二百炉・年に一回→一万二千百炉・年に一回:約二・四分の一に低下)を総合的に勘案し、十分に保守的に見積もって、二千十一年コスト等検証委員会の「二千炉・年」の半分の「四千炉・年」とする。」とされており、「恣意的」との御指摘は当たらないものと考えている。
五の2について
お尋ねの「二〇一六年の東京電力改革・一F問題委員会が示した二十一・五兆円」は、政府が、被災者・被災企業への賠償、除染・中間貯蔵施設事業、廃炉等のための所要資金について、一定の蓋然性を有するものとして示したものである。
「二十一・五兆円」に、廃炉における燃料デブリ等の取り出し以降に生じる廃棄物の処分、中間貯蔵後の除去土壌等の最終処分等に要する資金は含まれていない。これは、燃料デブリの性状や分量等、最終処分される除去土壌等や処理後の濃縮物の性状、放射能濃度等が明らかでない段階では、費用を合理的に見積もることは困難なためである。
六について
高レベル放射性廃棄物の最終処分に係る費用については、研究開発の結果、高レベル放射性廃棄物の最終処分の概念の検討成果等を踏まえて、現在の知見に基づき、最終処分の標準的な工程や技術的な条件をもとに合理的に算定したものである。
なお、御指摘の「安全の確保の規制」については、「特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針」(平成二十七年五月二十二日閣議決定)において、「原子力規制委員会は、概要調査地区等の選定が合理的に進められるよう、その進捗に応じ、将来の安全規制の具体的な審査等に予断を与えないとの大前提の下、概要調査地区等の選定時に安全確保上少なくとも考慮されるべき事項を順次示すことが適当である。」と明記している。
七について
御指摘の「政府は「世界一の規制基準」という虚構を振りかざしてきたが、地震大国日本における原発の耐震基準の基となる基準地震動は、近年の地震の実績を下回っていることが近年明らかになってきている。従って炉心損傷頻度や大規模放出頻度など事故発生確率は上がっている」の意味するところが必ずしも明らかではないが、平成二十七年発電コスト検証ワーキンググループの検証では、事故リスク対応費用の算出に当たって、国際的な安全目標として炉心損傷頻度や大規模放出頻度が一万炉・年から百万炉・年に一回と設定されていることや、確率論的リスク評価を総合的に勘案し、十分に保守的に見積もり四千炉・年に一回事故が起きた場合に対応することを想定した試算を行っている。今回の検証の想定については、令和三年発電コスト検証ワーキンググループにおいて、各電源の発電コストについて審議中であり、その結果が出ていないため、現時点でお答えすることは困難である。
八について
モデルプラント方式は、事業開始から終了までのライフサイクル全体を評価するものであり、将来稼働を開始するプラントの発電コストを評価するのに適した方法として、国際社会において広く用いられている試算方法である。
このため、令和三年発電コスト検証ワーキンググループにおいても、将来のエネルギーミックスを検討するという目的に適したモデルプラント方式の試算を採用している。
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