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原子力発電所の経済性及び支援策に関する質問主意書
衆議院 第187回 第28号お答えすることは困難 ×1
質問本文
小渕優子経済産業大臣は平成二十六年十月二日の参議院本会議において、競争環境下における原子力事業の在り方、具体的には差額決済契約(CfD)等の原子力事業支援策の検討に関する質問に対して、「経済産業省として御指摘のような制度の導入を提案したわけではなく、現時点で何らかの措置を決めたわけではありません」としつつ、「原発の発電コストは、その他の主要電源のコストと比較しても遜色なく低廉な電源と考えています。しかし、事故対応費用も含め、全体を平均したコストは安かったとしても、個々の事業者から見れば、例えば想定外の廃炉を迫られた場合など、財務的に多大な影響が生じ、事業の実施が困難となるケースもあり得ます」と答弁し、同八日の参議院予算委員会では、CfDを導入するか等は決めていないとしつつ、これを排除せず議論するとし、原子力事業へのさらなる優遇・支援策を講じる可能性を否定していない。ここで掲げられている「原発は安い」との前提には検証すべき点がある上に、右の答弁に示された認識には看過できない矛盾が存在する。
よって、以下質問する。
一 �@ 小渕経産相の前掲答弁を含め、政府は二〇一一年十二月の「コスト等検証委員会」試算を引用して、「原発のコストについてはキロワットアワー当たり八・九円以上となっておりまして、その他の電源に比べて低廉なものと認識をしています」(十月八日参議院予算委員会)としているが、同試算はその後の原発事故損害の再計算や原発の新規制基準を踏まえた追加安全対策費用等の状況、稼働原発数や発電電力量等の想定の検証等を踏まえ再計算をする必要があり、そもそも右記試算はあくまで「八・九円以上」とある通り、最低限の試算であるため、現時点で「原発のコストが低廉である」と断言することには問題があると考えるが、政府の認識はいかがか。
�A さらに、今後コストが低減していく再生可能エネルギーとは逆に、原発のコストは上昇することはあっても低減することはないと考えられる。このような傾向を捨象して、「原発のコストが低廉である」とすることには意味がなく、恣意的であると考えるが、政府の見解を示されたい。
二 電力事業に限らず、事業の採算性やリスクを評価する際には、総費用や単位コストあるいは運転費用だけでなく、初期投資の規模やその回収期間及び回収可能性、除却費用等を総合的に勘案する必要があるところ、特に原発の場合は、その初期投資もバックエンド費用も多額に上ること及び万が一事故が起こった場合の対応費用が巨額となることから、右記答弁のように単位コストの観点のみで「原発は安い」とすることは適当ではないと考えるが、政府はどのように考えているか。
三 �@ 政府は「原発は安い」との建前に立ちつつ、前掲答弁のごとく「個々の事業者」の視点を導入する。しかし、事業である限り、事業一般として採算性や将来性があることと当該事業を営む個々の事業者にとってリスクが存在することとは両立するのであり、特定の事業者において多額の損失が生じたとしても、不公正な競争等の特別の事情がない限り、その損失は当該事業者が引き受けるものであって、当該事業者において経営責任、株主責任等が問われるのが当然の前提である。しかしながら、原子力事業の場合は、国による研究開発費用及び立地対策費用等の負担、原子力損害賠償に対する支援、税制・会計制度上の配慮・優遇措置、電力料金算定上の配慮・優遇等、事業の計画段階からバックエンドに至るまで既に幾重にも他の事業にない支援・優遇策が講じられている。国策民営と言われる原子力事業は右記の点からも既に一般の事業に係る原則を逸脱した特殊な事業であることは明白であるが、政府の認識はいかがか。
�A 政府は�@に掲げたものを含む原子力事業に対する公的な支援、優遇又は配慮の措置としていかなるものが存在していると認識しているか、その全てを示すとともに、各措置に係る国の予算額又は保証額及び歳入における減収額、電気料金に算入され国民が負担する額並びに電力会社が享受する会計上及び税制上の効果を算出し、政府としての評価を示されたい。
四 �@ 一般の事業において個々の事業者は、発生し得る損失に対して保険契約締結又は引当金設定等によってリスクをヘッジしている。これに対して、原子力事業の場合は、数十兆円単位(最低限の見積もりとしての兆円単位)の事故対応費用への備えが必要であると考えられるところ、そのような保険契約には引き受け手が存在し得ず、仮に引き受けられるとしてもその保険料は競争力又は採算性を確保できる水準足り得ない。引当費用についても同様である。即ち、原子力事業は競争市場下における事業としての成立条件を欠いていることは明白である。政府としても同様の認識であるのか、明確に答えられたい。
�A 個々の事業者のリスクをヘッジする保険類似又は代替の方策としては、同一の事業を営む者の間の相互扶助の仕組みも想定されるが、枝野幸男経済産業大臣(当時)は平成二十三年十二月六日の衆議院東日本大震災復興特別委員会において、原発事故の損害賠償に対する備えに係る質問に対して、原子力損害賠償支援機構法に基づく原子力事業者の相互扶助の仕組みを挙げ、「(起こり得る原発事故に対して)万全の賠償を行うという一応の枠組みはつくられていると思っております」と答弁している。現在同機構法附則第六条に基づく原子力損害賠償制度の見直し作業がなされているとは承知しているが、以上の答弁に対して、現政権の立場はいかなるものであるのか。また、総額が確定していない東京電力福島第一原発事故の賠償費用を完全に精算してもなお、今後想定すべき原発事故に対する完全な備えとなる持続可能な仕組みであり、各事業者の負担水準が事業としての成立性を将来にわたって確保できるものであると考えるのか否か、政府の見解及び方針を示されたい。
�B 原子力損害賠償支援機構法(現・原子力損害賠償・廃炉等支援機構法)は「政府の援助」を定めている通り、原子力事業者間の純粋な相互扶助の仕組みであるとは言えず、やはり原子力事業は競争市場下における事業としての成立条件を欠いていると考えるが、政府の認識はいかがか。
五 �@ 資源エネルギー庁は平成二十六年八月二十一日の総合資源エネルギー調査会電力・ガス事業分科会原子力小委員会に提出した資料「競争環境下における原子力事業の在り方」(その後の同小委各回「参考資料」に再掲)において、「原子力事業の必要性」に係り「(原子力の)メリットについて、事業者が享受するものもあるが、むしろ、国民全体が享受するものもある(原子力事業の外部経済性)」と主張しているが、極めて一面的かつ恣意的である。外部経済性を持ち出すのであれば、当然に外部不経済をも示し、その全体を比較衡量しつつ、原子力のメリット又はデメリットを評価すべきであると考えるが、政府の見解を示されたい。あわせて、外部経済性及び外部不経済を含めて政府は原子力のメリット及びデメリットをどのように評価し、その必要性の程度を認識しているのか明確に答えられたい。
�A 政府は原発を「重要なベースロード電源」と位置付けるが、最近の電力会社による再生可能エネルギーの系統接続申込みへの回答保留などを受け、再生可能エネルギーの導入拡大が抑制される懸念が抱かれている中、出力調整が困難な原発をベースロード電源とすることのデメリットも認識する必要がある。政府は原発を「安定供給」の観点から優れているとするが、ベースロード電源の考え方あるいはその重要性の認識を改めることを含め、評価の前提を見直す必要があることは、再生可能エネルギーの飛躍的拡大を実現し、かつさらに進めている欧州の経験からも明白である。このように、�@の資源エネルギー庁資料などに示される原子力のメリットとされるものもその前提から再検討する必要があると考えるが、政府の見解を示されたい。
�B 一乃至五�Aの観点を踏まえつつ、原子力事業に対する現行の支援、優遇又は配慮の措置及びそのさらなる拡充がいかにして正当化されると政府は考えるのか、明確に示されたい。
右質問する。
政府答弁書
一及び二について
政府としては、東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故後の平成二十三年に、各電源の発電コストについて試算を行っている。当該試算において算出した原子力発電の発電コストは、初期投資額、廃止措置費用、燃料費、バックエンド費用、原子力発電所の事故のリスクへの対応費用、東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故を受けた追加的安全対策の費用等を含んでいることから、妥当であると考えている。
当該発電コストは、他の電源の発電コストと比較しても遜色なく低廉であると考えており、仮に、当該試算における原子力発電所の事故のリスクへの対応費用を、当該試算において算出した費用の二倍とした場合においても、原子力発電の発電コストは、石炭火力発電の発電コストよりも低い。
また、現在、原子力事業者が実用発電用原子炉及びその附属施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則(平成二十五年原子力規制委員会規則第五号)等への対応も含め、原子力発電所の安全対策を行っているため、追加的安全対策の費用が増加する傾向にあることは承知しているが、個々の発電所の事情に応じて追加的安全対策の内容が異なるため、この費用の全てを、当該試算における原子力発電の発電コストに上乗せすることは必ずしも適当ではない。さらに、こうした安全対策の実施により、原子力事故の発生確率は抑えられ、かつ、万が一事故が発生した場合の被害は小さくなるということにも留意する必要があると考えている。
三及び五の�Bについて
政府としては、バランスの取れたエネルギーミックスや電源構成の実現に向けた政策措置を講じているところであり、それぞれの電源の状況に応じて適切な政策措置を講じていることをもって、原子力事業が「一般の事業に係る原則を逸脱した特殊な事業」であるとは認識しておらず、また、御指摘の「原子力事業に対する公的な支援、優遇又は配慮の措置」及び「さらなる拡充」の意味するところが必ずしも明らかでないため、お答えすることは困難である。
四について
原子力事故について一定金額以上の保険が成立していない背景には、事故の発生確率が低く、原子力事業者数が少ないことなどから、保険事業者がリスクプレミアム、すなわちリスクに対する対価を見込むことが難しいことがあると認識している。
また、原子力損害賠償については、原子力損害の賠償に関する法律(昭和三十六年法律第百四十七号)第三条において原子力事業者の無過失責任等を規定するとともに、同法第六条において損害賠償措置を講ずべき義務を規定している。また、同法第十六条において原子力事業者が同法第三条の規定により損害を賠償する責めに任ずべき額が同法第七条第一項に定める賠償措置額を超えたときは、政府は、原子力事業者が損害を賠償するために必要な援助を行う旨規定している。同法第十六条を具体化した原子力損害賠償・廃炉等支援機構法(平成二十三年法律第九十四号)においては、原子力損害賠償・廃炉等支援機構(以下「機構」という。)が、原子力事業者から負担金を徴収するとともに一定期間をかけて国庫に納付することを前提に、原子力損害の賠償のための資金を交付する等の仕組みが整備されているところであり、政府は、このような仕組みを通じて、原子力事業者による賠償等が円滑に行われるよう取り組むこととしている。なお、機構が原子力事業者から負担金を徴収するに当たっては、各原子力事業者の収支の状況、事業の円滑な運営等も考慮される。このように、現行法の制度の下でも、今後万が一事故が発生した場合も含め、迅速かつ適切な賠償がなされるよう措置している。
御指摘の「事業としての成立条件を欠いている」、「事業としての成立性を将来にわたって確保できる」及び「原子力事業者間の純粋な相互扶助の仕組みであるとは言えず、やはり原子力事業は競争市場下における事業としての成立条件を欠いている」の意味するところが必ずしも明らかでないが、国と原子力事業者とが役割に応じてそれぞれ事故リスクに対応しているものと認識している。
五の�@及び�Aについて
政府としては、安定したエネルギー需給構造を確立するためには、エネルギー源ごとにサプライチェーン上の特徴を把握し、状況に応じて、各エネルギー源の強みが発揮され、弱みが補完されるよう、各エネルギー源の需給構造における位置付けを明確化し、政策的対応の方向を示すことが重要であると認識している。「エネルギー基本計画」(平成二十六年四月十一日閣議決定)に記載されているとおり、原子力については、「優れた安定供給性と効率性を有しており、運転コストが低廉で変動も少なく、運転時には温室効果ガスの排出もないことから、安全性の確保を大前提に、エネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源である」と認識しており、また、エネルギー基本計画を策定した本年四月以降に当該認識を見直すべき状況変化は認識していない。
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