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女性が安心して起業に挑戦できる環境の構築に関する質問主意書
衆議院 第219回 第136号趣旨が明らかではない ×1検討してまいりたい ×1
質問本文
スタートアップは、イノベーションや明日の大企業の創出など、経済の活性化を担う重要な存在である。日本ではスタートアップに対してこれまでさまざまな促進策が講じられてきたにもかかわらず、いまだ世界におけるスタートアップ後進国の地位から脱することができていない。二〇二四年における世界のスタートアップ投資額に占める日本のシェアは一・二%にすぎなかった。同年の世界全体の名目GDPに占める日本のシェアは三・六%であり、経済規模に比べてスタートアップのプレゼンスが小さいことが示唆される。
起業家の少なさには複数の要因が考えられるが、その一つが、人口の半分を占める女性がスタートアップの起業にほとんど乗り出していないことである。米欧諸国でも女性のスタートアップ起業家の少なさが問題になっているが、日本の少なさは突出している。金融庁の調査によると、二〇一九年に資金調達を行った上位五十社のうち創業者に女性が含まれるスタートアップは一社のみ、二〇二一年に新規株式上場した企業に占める女性社長の割合も二%にすぎなかった。民間企業が公表した二〇二四年の数字においても、資金調達額と企業評価額におけるそれぞれ上位十社のスタートアップに女性創業者は一人も含まれない。
日本では、スタートアップを巡る環境が大きく改善したのはここ十年余りであり、男性起業家であっても増加傾向がみられるようになったのは最近になってからである。それ以前は、スタートアップの起業に乗り出す男性は極めて少なく、大卒であれば大多数は新卒で就職し、往々にしてそのまま定年まで働き続けるというライフコースを歩んでいた。
日本でも、スタートアップの事業環境の改善とともに社会的な認知が進み、雇用の流動化や働き方の多様化と相まって、従来であれば一般的なライフコースを歩むようなタイプの男性でも、スタートアップに就職・転職したり、スタートアップを自ら起業したりするようになった。一方で、女性はスタートアップに就職・転職するようにはなったものの、起業にはほとんど至っていない。理由は多岐にわたるが、とりわけ大きい要因として「たとえ起業を決意したり起業に踏み出したりしても、男性中心のなかで少数派としてさまざまなハードルに直面する」ことが女性起業家の誕生を妨げていると理解している。
これらのことについて次の質問をする。
一 東京都の研究・教育機関が女性起業家ら百九十七人を対象にした調査(二〇二四年七月公表)によると、五十二・四%が過去一年間にセクハラ被害を受けていたことが公表されている。加害者は投資家やベンチャーキャピタリストが最多で、投資家やベンチャーキャピタル(VC)担当者の中に、立場の強さを悪用し加害行為をする人物の存在が指摘されている。ハラスメント被害への懸念は、女性が起業を思いとどまる大きな要因となっている。また令和七年四月十八日の経済産業委員会において、当時の武藤大臣より「ハラスメント防止を含めたコンプライアンスの確保、これは責任ある企業であるための前提でありますので、スタートアップエコシステムの健全な発展に向けては、官民で連携をしながらハラスメント防止に取り組んでまいりたい」との答弁がなされたが、現時点の政府におけるスタートアップ業界向けのハラスメント防止の取り組み内容を示されたい。
また経済産業省はスタートアップの起業家やVCでのハラスメントについての実態調査を始める予定であると理解しているが、開始時期や調査対象を可能な限り示されたい。
二 政府が二〇二六年度に新設する予定の独立行政法人「男女共同参画機構」では、専門人材のデータベースを整備することで各地に専門家を派遣する仕組みをつくるものだと理解している。女性起業家へのハラスメント被害が出た場合、支援する投資会社などに対しハラスメント防止研修を実施するものだと理解しているが、政府の見解を示されたい。
また欧米では、起業家に対するハラスメント問題への対処として、民間団体による問題を匿名で通報することが可能なプラットフォームの形成、VCにおける倫理ガイドライン作成、投資家及び起業家を対象とした研修などが行われるようになっている。日本でも既に、日本ベンチャーキャピタル協会がハラスメント根絶に向けたガイドラインの作成と、会員各社への対応要請などの取り組みを始めている。これに呼応して、政府は国策としてもう一歩踏み込んだ対策に打って出てもよいのではないか。見解を示されたい。
三 世界銀行は、女性の就労や起業を阻害する差別的な法律や慣行を撤廃すれば、世界のGDPを二十%押し上げることが可能だとするレポートを出している。女性がより一層活躍できる社会となれば、日本経済の復活にも大きく寄与すると理解している。他方、現行のハラスメント規制は雇用や請負などの契約関係が前提となっており、起業家の被害は適用対象外にされていると認識している。そのため、起業家へのハラスメントを禁止する旨などを盛り込んだ起業家新法制定に向けた取り組みが重要だと考えるが、政府の見解を示されたい。
右質問する。
政府答弁書
一の前段について
お尋ねの「現時点の政府におけるスタートアップ業界向けのハラスメント防止の取り組み内容」については、投資実務に関する専門的知見を有する有識者等で構成される「ベンチャーキャピタルに関する有識者会議」が令和六年十月十七日に取りまとめた「ベンチャーキャピタルにおいて推奨・期待される事項」(以下「推奨・期待される事項」という。)において、「関連法令、ファンドに関する契約等を遵守するため、・・・コンプライアンス管理の責任者の明確化や非公表情報の取扱いその他業務運営に必要な規程を整備し、コンプライアンス管理の体制を確保することが推奨される」とされたところ、これを踏まえ、例えば、一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会の総会その他の投資家が参加するイベントにおいて、金融庁及び経済産業省から、推奨・期待される事項の説明を行うことなどを通じ、御指摘の「ベンチャーキャピタル」における、ハラスメントの防止を含めた当該コンプライアンス管理の重要性等について機関投資家等に周知している。また、御指摘の「スタートアップ業界」の関係者を含め、ハラスメントなどの人権侵害に直面した者は、法務省の人権擁護機関が行っている人権相談が利用可能であることを、同省のウェブサイトへの情報掲載等を通じて周知している。
一の後段について
御指摘の「ハラスメントについての実態調査」のお尋ねの「開始時期や調査対象」については、社会科学等の専門家と共に調査項目を設計し、令和七年十月から、創業十年以内の起業家を主な対象として、起業環境やハラスメントを含む起業活動上の経験等に関するアンケート調査を開始したところである。
二の前段について
お尋ねの「専門人材のデータベースを整備することで各地に専門家を派遣する仕組み」については、令和八年四月に設立を予定している独立行政法人男女共同参画機構において、今後、「女性活躍・男女共同参画の重点方針二〇二五」(令和七年六月十日すべての女性が輝く社会づくり本部・男女共同参画推進本部決定。以下「女性版骨太の方針二〇二五」という。)に記載された「女性の視点に立った起業支援やコーチング等のスキルを有する外部専門人材」のデータベースを整備し、地方公共団体が設置する男女共同参画センター(令和七年六月に成立した独立行政法人男女共同参画機構法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(令和七年法律第八十号)による改正後の男女共同参画社会基本法(平成十一年法律第七十八号)第十八条第二項に規定する男女共同参画センターをいう。)における取組を始めとした地域における女性の起業支援に対し、適切な人材を派遣する仕組みを構築することを想定している。また、お尋ねの「ハラスメント防止研修」については、女性版骨太の方針二〇二五において、「地域ごとに構築する女性起業家支援ネットワークに参加するベンチャーキャピタル等の支援機関に対し、女性起業家へのセクシャルハラスメントを含めたハラスメントの防止に関する研修を実施する」とされたことも踏まえ、「女性起業家へのハラスメント被害が出た場合」に限らず、当該女性起業家支援ネットワークに参加する御指摘の「支援する投資会社」に対して、ハラスメントの防止に関する研修等を行ってまいりたい。
二の後段及び三について
お尋ねの「国策としてもう一歩踏み込んだ」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、「起業家に対するハラスメント問題への対処」を行うことは重要であると考えており、一の後段についてで述べた「ハラスメントについての実態調査」の結果も踏まえ、起業家に対するハラスメントの防止及び救済のために必要なお尋ねの「対策」について、「起業家へのハラスメントを禁止する旨などを盛り込んだ起業家新法」の必要性も含め、引き続き、適切に検討してまいりたい。