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成田暫定パイプラインの安全問題に関する質問主意書
衆議院 第71回 第17号
質問本文
衆議院議長 前尾繁三郎 殿
成田暫定パイプラインの安全問題に関する質問主意書
成田本格パイプラインの完成遅延の責任を、千葉市以外での事態を隠ぺいしたまま、千葉市住民の反対運動に転嫁し、パイプラインの安全性に対する千葉市住民の素朴な不安や疑問になんら論理的、技術的に対応しえないまま、当事者能力を失つたといわれている新東京国際空港公団は、「千葉がだめなら成田があるさ」とばかりに、なりふりかまわず成田暫定パイプラインの建設を今まさに強行せんとしている。千葉市住民との間でパイプラインの安全問題を未解決にしているがゆえに、成田市においてもパイプライン反対の住民運動が、安全性を課題として当然のことながら発生した。
しかし、成田市のパイプラインの反対運動は、安全性を課題としながらも実際には、これを本質的に解決するという形ではなく、政治的取り引きによりその決着がつけられようとしている。この中にあつて、パイプラインの安全性をあくまでも追求し、日本国憲法のもと、自らの生命・生活を守ろうとしているのは、パイプラインの沿線地域の住民たちである。しかし、このパイプラインの安全保持のためには、パイプラインによる災害防止を目的とする石油パイプライン事業法は作用しない。
成田暫定パイプラインの安全確保に寄与すべき法律は、消防法である。しかるに、これだけその安全性が社会的問題となつているにもかかわらず、パイプラインに関する具体的な規定は消防法にはないのである。消防法第十条に危険物の規制についての規定があり、その技術上の基準は、政令(危険物の規制に関する政令)により定められるとあるが、このいずれにもパイプラインという言葉すらでていない。
その成立以来、福祉優先を号乎してきた田中内閣としては、住民生活の安全を守る、基本的人権を守るのはなおさらのこと憲法上の義務でもあろう。そこで、私は、成田暫定パイプラインの安全問題にかかわる諸点について、自らの良心に誠実に従い、社会正義を追求するという立場から、次に若干の質問を提起する。
一 成田暫定パイプラインの安全を保証する法的根拠について
成田市では、危険物一般取扱所に関する規定を準用して消防法第十一条に基づき、空港公団に対し、パイプライン送油施設の設置の許可を発出した。しかし、この一般取扱所に関する規定は、パイプラインの存在を前提としたものではなかろう。田中通産相(当時)は、石油パイプライン事業法の審議に際して、パイプラインのもつ危険性に対して法制を整備して国民の生活を守るのは政府の責任であると主張している。
(1) 田中首相は、現在石油パイプライン事業法の適用にならないパイプラインのもつ危険性に対して、国民の生活を守るに足る法制が整備されていると考えるか。もし整備されているとするならばその根拠、とくに危険性に対する技術的な安全保証の具体的な内容を明らかにされたい。
(2) 災害防止のため石油パイプライン事業法を制定したにもかかわらず消防法を整備する必要がないとするならば、その理由は何か。
(3) 消防法を整備する必要があるならば、現在に至るも整備されていない理由は何か。責任の所在を含めてこの間の経過と事情を明らかにされたい。
(4) 消防法第十一条第二項による許可において、成田市では、パイプライン送油施設にかかわる件につき、危険物一般取扱所の規定を準用しているが、パイプラインの安全保持の面からいつて適当であると考えるか。根拠をそえて明らかにされたい。
(5) 適当であるとするならば、例えば、石油パイプライン事業法にかかわる技術基準が告示されても、とりわけ消防法令の規定を変える必要がないということなのか。
(6) 適当でないとするならば、成田市へはどのような行政指導がなされたのか。この件に関して成田市から照会があつたのか。各々の内容を具体的に明らかにされたい。
(7) 道路法による道路占用許可は道路管理者の自由裁量であるのに、消防法による許可は覊束裁量である。成田市へなされた行政指導の内容の根拠及び責任の所在を明らかにされたい。とりわけ、政府の責任と成田市長の責任との関係を明示されたい。
(8) 成田市が空港公団との間でかわされたパイプラインの安全性にかかわる協定書は、あくまでも、成田市と空港公団との私的な関係であつて、国民の生活を守るための政府の法制整備の義務の一環とは考えられないと思うがどうか。逆に、政府がその責務を十分果たしていないがゆえにかかる協定書が存在するとは考えないのか。各々理由をつけて明らかにされたい。
(9) パイプラインを敷設するには技術基準が必要である。石油パイプライン事業法にも定められている。あらゆる面からの技術批判に耐えうる技術基準、しかもその安全性に対する配慮が完全であつて、世界にも範たりうるような立派な技術基準ができるまで空港公団による成田暫定パイプラインの着工を中止させる考えはないのか。もし中止させないとしたら、先の国会での田中通産相(当時)の発言(パイプラインによる災害から法制を整備して国民の生活を守るのは政府の責任である。)と成田暫定パイプラインの周辺に居住する日本国民の守られるべき生活との関係はどのように説明されるのか。
二 地元との合意のとりつけ方及びそのための条件についての疑義
暫定パイプラインを敷設するに当たつて、空港公団による成田市及び同市沿線地区との合意のとりつけ方及びそのための条件について、次の諸点につき具体的に明らかにされたい。
(1) 成田市寺台区との合意の条件として、イ 街路灯の設置(旧道) ロ 寺台付近の道路の整備(四地点) ハ 公民館の設置及び成田市吉倉区との合意の条件として、共同利用施設(鉄筋コンクリート造五十坪)の設置がとりきめられた。このような処分を空港公団が行える法的根拠及びその限度額について。
(2) (1)の処分にかかわる必要経費のそれぞれの概算値について。
(3) パイプラインの安全性が問題とされているのに、このような条件により、パイプライン埋設の合意がとりつけられたが、このことを適当であるとするならばその理由について。
(4) 例えば、寺台区(区長及び評議員)との合意をもつて、寺台区内の暫定パイプライン沿線住民の合意としたが、このことを適当とするならばその根拠について。
(5) 寺台区の住民は、暫定パイプラインの危険性に関してそれぞれ同程度の発言権(保全権)を有すると考えるか。もし考えるならその根拠について。
(6) 寺台区の住民は、暫定パイプラインに関して同程度の危険性にさらされていると考えるか。もし考えるならその根拠について。
(7) 同程度の危険性にさらされるものが、その危険性に関して同程度の保全権を有すると考えるのは誤りであるか。誤りとするならその理由について。
(8) 成田市が暫定パイプライン敷設のために、市道占用許可を出した四日後に、空港公団から一億百万円ほどが成田市へ空港関連成田市道整備事業費として支払われたが、この支払いの法的根拠について。
(9) この支払いが、新空港建設資材輸送に伴う道路維持補修費であるとするならば各道路ごとの算定根拠について。
(10) 資材輸送により維持補修を必要とされた市道に対してのみ算出されているとしてよいか。
(11) 例えば、成田市道の久米吉倉線で吉倉、久米野地区で、およそ二キロメートルの工事が行われているが、この道路は、遠山小学校、同中学校への児童の通学路と聞く。この道路を用いて、いかなる資材が、いかなる形で輸送され、その結果、道路にどのような維持補修を必要とさせたのか。
(12) 空港公団による市道整備事業と、成田市長の意見も反映しているはずの空港周辺整備計画に基づく市道整備事業との関係を述べよ。
三 成田市の水源について
成田市水道の水源は、地下水を用いており、この地下水源の上を暫定パイプラインは通過する。又、暫定パイプライン周辺の地区では、浅井戸が各戸別に水源として用いられている。次の諸点につき具体的に明らかにされたい。
(1) 空港公団と成田市との協定書では、無過失責任のようなことがうたわれているが、万一パイプラインからの漏油により、成田市の地下水源が汚染された場合、地下水源を放棄して、あくまでも金銭的に処理させるつもりなのか。
(2) 水資源に赤信号の出ている南関東地域、その一部である千葉県の水資源を考えてみても、この北総台地の地下水源を放棄することを適当であると考えた上でのことであるのか。
(3) パイプラインによる給油方式を前提とした成田空港の位置を決定するとき、この水資源問題は、どの程度真剣に考慮されたのか。
四 タンクローリーによる輸送について
暫定輸送用として、土屋及び空港に設置される給油施設には、タンクローリーとのジェット燃料油の授受装置も計画され、その一部が着工されているようである。これはタンクローリーにより空港ヘジェット燃料油(又は、ジェットBだけとか)を土屋、京浜地区あるいは京葉地区から輸送することが、場合によつてはありうるとの前提のために、用意されるものか、又は単に、血税の浪費に麻痺した空港公団の趣味的な作意にすぎないのか、その他その理由を明らかにされたい。
右質問する。
政府答弁書
一について
(1)から(7)まで 石油パイプライン事業法の適用を受けない自家用又は小規模事業用の石油パイプラインについては、現行法上消防法により危険物施設として規制されることとなつており、危険物の規制に関する政令に定める技術上の基準によることとなつているが、石油パイプライン事業法に基づく関連告示の制定後は、早急に同法の技術基準に準拠して消防法令の技術基準を整備することにより、その安全性を確保してまいりたい。
なお、石油パイプライン事業の事業用施設の技術上の基準を定める省令は、昭和四十七年十二月二十五日に制定され、同省令により告示で定めることとされている事項については、通商産業省、運輸省、建設省及び自治省の協議により設けられた「技術基準検討専門委員会」において鋭意かつ慎重に検討を進めてきた結果成案を得たので、近く告示する予定である。
また、成田市長は、消防法第十一条第二項の規定によりいわゆる機関委任事務として本件成田暫定パイプラインの許可をしたものであり、この許可に際し国は、新東京国際空港公団(以下「公団」という。)の事業実施に当たつては予定される石油パイプライン事業法の技術基準に準じた措置をとることを確認すべき旨の行政指導を行つた。
(8) 新空港に係る暫定パイプラインの安全性は、消防法令の整備により十分確保されるものと考えるが、御質問に係る協定書は、成田市における新空港のパイプラインに対する住民感情を考慮して、特に成田市と公団との間で締結されたものである。
(9) 新空港に係る暫定パイプラインは、石油パイプライン事業法の適用が除外されているので、石油パイプライン事業法の技術基準ができなくとも諸条件が整えば、着工する方針である。この場合において、万一、制定される技術基準に合致しない部分があれば、送油開始前に公団に所要の措置を講じさせることとしている。従つて、このパイプラインの安全性は十分確保されると考える。
二について
(1)から(7)まで パイプラインの安全性については、特に万全を期しているところであるが、なお地区住民の理解と協力を得るため、寺台区の多数の住民の意見を代表しているものと考えられる同区三光区長及び保目区長と公団との間で協議が重ねられ、両者の間で本件パイプラインの敷設に関して了解に達したものと承知している。この了解に基づく措置については、公団の業務としてなし得る範囲内で行うこととさせる方針である。吉倉地区においても同様である。
(8)から(10)まで 公団から成田市へ支払つた一億百万円は、新空港建設資材である山砂等のトラック輸送及び建設工事用車両の通行によつて破損した道路の維持、補修費として成田市に対して、道路破損の原因者である公団が支払つたものである。
なお、その算定根拠は次の表のとおりである。
空港関連成田市道整備事業費調書
(11) 成田市道久米吉倉線は、県道成田成東線にほぼ平行しており、交通量の少ない道路であつたが、資材輸送のトラックが県道の混雑をさけて利用し、特に吉倉地区のパイプライン工事においては、主要な資材輸送道路となり、トラックや重機械の反復通行により道路を破損したので、公団が原因者として、必要な費用を負担したものである。
(12) 新東京国際空港周辺地域整備計画には成田市の市道整備事業としては、「新東京国際空港周辺整備のための国の財政上の特別措置に関する法律」に基づき市が実施している市道整備事業の外、新空港の敷地のため分断される道路の機能回復を図るため、公団が行う市道付替事業が定められている。
三について
(1)から(3)まで 新空港に係る暫定パイプラインは、石油パイプライン事業法の技術基準に準拠した次の措置を講ずることにより、石油パイプラインの設置により地下水源の汚染が生じる虞はないものと考える。
(イ) 石油パイプラインの設置に当たつては、一定規格以上の材料を用い、設計上十分な安全率をとるとともに外面腐しよくを防止するための防しよく被覆及び電気防しよく措置を講じること。
(ロ) 万一の漏えい事故の発生に備えて、漏えい検知装置、警報装置、緊急しや断弁等を設置するとともに、必要な箇所に漏えい拡散防止措置を講じること。
(ハ) 導管は、耐圧試験及び全溶接部の非破壊試験に合格したものでなければ使用してはならないこと。
四について
新空港への航空燃料暫定輸送は、鉄道とパイプラインにより行う計画で準備を進めている。しかし、不測の事態によりこれらの方法による輸送が途絶した場合等において国際線の運航を確保するため、新空港内にタンクローリー受入施設を建設し、新空港内に精油所等から直接タンクローリーにより航空燃料を搬入する途を開くこととしている。
右答弁する。
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