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議院の国政調査権と公務員の守秘義務等との関係に関する質問主意書
衆議院 第77回 第3号個別の事案 ×3
質問本文
衆議院議長 前尾繁三郎 殿
議院の国政調査権と公務員の守秘義務等との関係に関する質問主意書
一 日本国憲法第六十二条は、議院が「国政に関する調査を行い、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる」ことを定め、これを受けて国会法第百四条は、「各議院又は各議院の委員会から審査又は調査のため、内閣、官公署その他に対し、必要な報告又は記録の提出を求めたときは、その求めに応じなければならない」ことを定めるとともに、議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律は、国政調査のため、証人として出頭又は書類の提出を求められた場合の応諾義務等を規定し、出頭、記録提出の拒否、宣誓、証言の拒否、偽証に対しては罰則を設けて調査の実効性の確保を図つているところである。
国政調査権は、以上のように憲法及び右法律によつて強力な強制権限が与えられ、その有効適切な行使が保障されているものであり、議院又は委員会から審査又は調査のため、必要な報告又は記録の提出を求められた内閣、官公署等は全力を傾注して課せられた義務を果すことはもちろん、進んで国政調査に協力すべきものであると考えるがどうか。
二 国政調査権が、国政と全く関係のない個人や企業の私事に及ぶことがないことは言うまでもないが、調査権は広く立法、行政、司法各分野の国政全般にわたるものである。
ただ、狭義の司法権である裁判については、国会と裁判所との間において多くの事実関係を通じて国政調査権の限界を示す慣行が生れていることもうなづけるところであるが、これをもつて国政調査権の制限とみることはできない。
従つて、内閣等から公務員の守秘義務によつて、国政調査権の要求に応じられないとの申立がなされ、あるいは公務の適正な遂行に障害になるから国政調査権の要求に応じられないとの主張がなされたとしても、そのことによつて当然資料提出等の義務が解除されるものではないと考えるがどうか。
三 議院証言法第五条においても、公務員が職務上の秘密に関する証言又は書類の提出について、公務所等の承認が得られず、また議院及び委員会が当該公務所等のその承認を拒む理由の疏明を受諾することができないときは、「その証言又は書類の提出が国家の重大な利益に悪影響を及ぼす旨の内閣の声明を要求することができる」ことになつており、従つて国政調査権による要求に対しては、「国家の重大な利益に悪影響を及ぼす」旨の内閣声明が発せられない限り、職務上の秘密である旨を主張して、証言又は書類の提出義務を免れることはできないと解するがどうか。
四 以下、公務員の守秘義務に関し、各事項について政府の所見を求める。
(一) 国家公務員法第百条第一項により一般の公務員に守秘義務を課し、別に所得税法第二百四十三条は税務職員の守秘義務及び厳しい罰則を規定している。
これらの法によつて、公務員の守秘義務に保護される行政庁側の秘密とは、本来、合理的、客観的な基準によるべきで、行政庁側の主観によつて便宜的に定められてはならず、知る権利を有する国民全体の納得を得るために、その範囲を限定的にとらえなければならないものと考えるがどうか。
また、所得税法が特に税務職員について守秘義務の条項を設けたのは、これらの職員が特にその職務遂行上知り得る機会の多い納税者個人のプライバシーを保護するためであり、極めて狭義に解すべきと思うがどうか。
(二) また、所得税法は第二百三十三条の規定により、高額所得者の申告所得額の公示の制度が設けられているが、これは納税者の利益のために課税の公平等を監視、確保しようとするもので、特殊な税法上の守秘義務を根拠にして、税務資料の公開を拒否する理由は極めて乏しく、税務資料提出拒否は国民の税務行政に対する不信を強めるのみで、税務署側の主観的判断、便宜主義に基づくものとの批難をうけてしかるべきものである。
国会の調査要求の有無にかかわらず、むしろ納税申告に対しては、進んでその調査結果を発表し課税の公正さを証明することこそ、税務職員の義務であり、適正、公平な税務行政の展開について国民の理解を深め信頼を得る途であると考えるがどうか。
(三) 刑事訴訟法第四十七条に公判開廷前における訴訟書類の非公開をうたい、同条但書において、公益上の必要その他の事由があつて、相当と認められる場合には公開するものと規定されているが、国政調査権の発動による資料要求等があつた場合には、これに応ずることはもちろん、むしろ国民全体の利益のために公開されるべきものと思うがどうか。
右質問する。
政府答弁書
一及び二について
1 いわゆる国政調査権は、憲法第六十二条に由来するものであり、国政の全般にわたつてその適正な行使が保障されなければならないことはいうまでもないところである。
一方、憲法第六十五条によつて内閣に属することとされている行政権に属する公務の民主的かつ能率的な運営を確保するために、国家公務員には守秘義務が課されている。
2 そこで、国政調査権と国家公務員の守秘義務との間において調整を必要とする場合が生ずる。国政調査権に基づいて政府に対して要請があつた場合、その要請にこたえて職務上の秘密を開披するかどうかは、守秘義務によつてまもられるべき公益と国政調査権の行使によつて得られるべき公益とを個々の事案ごとに比較衡量することにより決定されるべきものと考える。
3 個々の事案について右の判断をする場合において、国会と政府との見解が異なる場合が時に生ずることは避け得ないところであろうが、政府としては、国会の国政調査活動が十分その目的を達成できるよう、政府の立場から許される最大限の協力をすべきものと考える。
(昭和四十九年十二月二十三日参議院予算委員会における三木内閣総理大臣答弁参照)
三について
国政調査権と守秘義務との関係については、「一及び二について」で述べたところによるべきものと考えるが、その場合にいわゆる内閣声明が発せられない限り証言をし又は書類を提出しなければならないのは、議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律に基づき証言又は書類の提出が求められる場合であつて、同法第五条により議院等から証言又は書類の提出の承認を拒む理由を受諾することができないとして内閣声明の要求があつたときに限られるものと解する。
四について
(一) ある事項が国家公務員法第百条第一項の職務上知ることのできた秘密に当たるかどうかについては、それが個人の秘密であると行政庁側の秘密であるとを問わず、法の趣旨、目的に即した客観的、合理的な判断が要求されることは当然であるが、個々の事案については、右のような原則に照らしそれぞれの行政機関において判断すべきものであると考える。
また、所得税法が国家公務員法とは別に税務職員の守秘義務違反について特に規定し通常より重い罰則を定めているのは、税務職員がその職務の性質から納税者の財産上、一身上の秘密に広く接する立場にあり、その際知り得た納税者の秘密を他に漏らすことがあれば、納税者との間の信頼関係が損なわれ、ひいては、適正、公平な課税の実現が阻害されることとなることに対処するものであり、お説のように、殊更秘密の範囲を狭義に解すべきものではない。
(二) 所得税法第二百三十三条の規定は、誠実な自主申告の慣行の醸成に資することを目的として一定額以上の所得を申告した者の住所、氏名、申告所得金額という極めて限定された事項について例外的にその開披を定めたものであり、御指摘のように納税者の秘密にかかわる事項を公表することは、申告納税制度の円滑な運営を図る観点から適当でないと考える。
(三) 刑事訴訟法第四十七条本文が訴訟関係書類の公判開廷前における非公開の原則を定めているのは、訴訟関係人の人権を保護し、また、捜査及び裁判に対し不当な影響が及ぶことを防止しようという公益上の必要によるものである。
同条ただし書が、公益上の必要その他の事由があつて相当と認められる場合に訴訟関係書類の公開を認めているのは、非公開とすることによつて保護される公益に優先する他の公益上の必要があると認められる場合に例外的取扱いを許したものと解される。したがつて、国政調査権の発動による資料の提出要求に応じて訴訟関係書類を公開できるのは、刑事訴訟法第四十七条本文によつて保護されるべき公益より国政調査権の行使によつて得られるべき公益が優先する場合に限られるものと考える。
右答弁する。
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