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報道機関の報道及び取材の自由に関する質問主意書

衆議院 第68回 第8号

提出者
衆議院
提出日
1972年4月20日
内閣転送 1972年4月22日
答弁書受領日
1972年4月28日
提出から8日
答弁の項目数
0
質問 1,123字/答弁 1,203字

質問本文

衆議院議長 ※(注)田 中 殿

報道機関の報道及び取材の自由に関する質問主意書

憲法第二十一条は表現の自由を保障している。そして最高裁判所は報道機関の報道及び取材の自由がこの表現の自由に含まれることを、つとに判示している。

しかしながら、今回国家公務員法第百十一条との関係で、この報道機関の報道及び取材の自由について若干の疑義を生ずるようになつた。

そこで、問題の焦点を特に取材の自由にしぼつた上で、次の事項につき政府の見解を問う。

一 報道機関が取材を行なう場合、国家公務員法第百十一条との関係で問題となるのは「取材の対象」及び「取材の方法」である。

最初に、取材の対象に関して質問する。憲法第二十一条は表現の自由を保障しているが、これは、民主主義政治の下において、国政に関する国民の知る権利に奉仕するための報道機関の報道及び取材の自由を保障するものである。

ところが、具体的に、報道機関が国政に関する報道のための取材をしようとする場合において、政府が「表現の自由も公共福祉による制限がある」との理由によつて、その取材対象について制限を加えるとするならば、国民は、国政の正確な動きを知ることができず、国政についての国民の知る権利は封殺され、民主政治の根幹がゆさぶられることになる。

これはゆゆしき一大事である。

しかも、この取材対象の制限が「秘密」という名目で随意に各官庁担当官が指定できることに起因するのが現状である事実にかんがみれば、その弊害はさらに深刻である。

ゆえに、政府は、報道機関が取材する場合に、その取材対象について絶対に制限を加えるべきではないと考える。取材対象につき制限を加えることこそ、逆に、国政に関する国民の知る権利を封殺するものであつて、公共の福祉に反するものである。

もちろん、取材対象には長期的観点からみて、短期的には公表しないほうが国益に合する場合のものもあろう。しかし、これは報道機関の自主的な判断に委ねるべきではないか。

二 次に、取材の方法について質問する。国家公務員法第百十一条は「そそのかし」を処罰対象にしているが、もしも、これを機械的に適用すれば、報道機関の取材方法(取材行為)はすべて新たに決意を生ぜしめるに足りる慫慂行為として、「そそのかし」となり、処罰対象となろう。

これは、取材対象の制限とともに、国政に関する国民の知る権利を全く封殺するものであつて、まさに民主政治の危機、崩壊に通ずるものである。

ゆえに、国家公務員法第百十一条の規定は、憲法の根本原理である民主政治の維持のためにも、報道機関の取材行為について適用すべきではないと考えるが、この点政府はどのように考えているのか。

右質問する。

衆議院の原文・経過

政府答弁書

一 報道機関の報道が「国民の「知る権利」に奉仕するもの」であり、「報道のための取材の自由も憲法第二一条の精神に照らし、十分尊重に値いするものといわなければならない」ことは、最高裁(昭四四・一一・二六大法廷決定)の明言するところであり、政府としても、報道機関が国政に関して取材しようとすることそのことを制限するようなことは、全く考えていない。たゞ、質問が「その取材対象について絶対に制限を加えるべきではない」とし、報道機関が取材の対象としたことがらについては、国家機関はすべてこれに応ずべきであり、その公表の可否はもつぱら「報道機関の自主的な判断に委ねるべき」であるとしている点については、首肯しがたい。けだし、国家機関がその任務を遂行していくうえにおいて、あることがらを「秘密」として秘匿することが国益に合致する場合があることは否定できないところであつて、さればこそ、議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律(第五条)、民事訴訟法(第二七二条)又は刑事訴訟法(第一四四条)が職務上の秘密についての公務員の証言拒絶の制度を認めているものと解されるからである。

したがつて、報道機関が取材の対象としたことがらについて、それが「秘密」として秘匿されるべきものに当たる場合に政府がその取材に応じなかつたとしても、そのことが報道機関の取材の自由を不当に制限したり、又は国民の「知る権利」を封殺するものであるというのは当たらない。

二 国家公務員法第一一一条に規定する「そそのかし」とは、同条に定める一定の「違法行為を実行させる目的をもつて、他人に対し、その行為を実行する決意を新たに生じさせるに足りる慫慂行為(昭四四・四・二最高裁大法廷判決(国家公務員法違反等被告事件)参照)をいうものと解されるところ、報道のための取材の自由が、一に述べたとおり、憲法第二一条の精神に照らし、十分尊重に値いするものであることはいうまでもないとしても、それは、もとよりなんらの制約を受けないものではなく(昭四四・一一・二六最高裁大法廷決定及び昭三三・二・一七最高裁大法廷決定参照)、また、国家公務員法第一一一条は、その規定の文言に徴しても、その対象を国家公務員のみに限定することはしていないのであるから、報道機関の取材行為であつても、その手段方法のいかんによつては、国家公務員法第一一一条の適用をみることとなることは当然であろう。このことは、報道機関の取材のための「手段方法は、法秩序のもとに他の法益を侵さないように行なわれなければならないことは当然である」(昭四四・三・一八東京高裁判決(確定))とされていることからも明らかである。

もとより、報道のための取材の自由は、十分尊重されるべきものであり、右の限度を越えない限り、報道機関の取材行為に対して国家公務員法第一一一条が適用されることはありえないと考えられる。

右答弁する。

衆議院の原文

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