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国民への治療内容と診療報酬に関する質問

参議院 第104回 第49号

提出者
参議院
提出日
1986年5月16日
内閣転送 1986年5月17日
答弁書受領日
1986年5月23日
提出から7日
答弁の項目数
8
質問 2,324字/答弁 1,501字

質問本文

国民への治療内容と診療報酬に関する質問主意書

有病率が戦後最高に達している現在、国民の健康にたいする不安と関心が高まつており、国民はよりよき医療を求めようとしている。また、医療の担い手である医師・医療機関は国民要求に沿つて治療内容の向上をめざそうとしている。しかるに、最近、中曽根内閣のもとで進行している事態はこうした願望にことごとく逆行することばかりであり、国民・医師の双方ともが、政府の施策にきびしい批判の声を集中させているのである。例えば、大気汚染の下で多発しているぜんそくに関する治療法(テオフィリン系薬剤の内服量)には問題があるといわれているし、また老人保健法案や一般医療にたいする改悪など、国民の間に大きな不安を呼んでいる。そして、これらは厚生省の原案の下に中医協で審議されて設定されている診療報酬と密接な関係をもつているといわなければならない。

以下、国民のための医療の向上をめざす立場から、国民への治療内容と診療報酬に関して、具体的に質問をする。

一 テオフィリン系薬剤の内服量と血中濃度測定料について

(1) 医薬品の用法を示す添付書類は、厚生省の承認に基づいて作成され、これに即して治療をおこなうことが当然に求められている。ところが、ネオフィリンの添付書類では、一回一〇〇ミリグラム服用することとなつており、これを添付書類の「体内薬物動態」にあるグラフに基づき計算すると血中濃度は、四・四マイクログラムということになり、同添付書類に掲載されている表「テオフィリンの血中濃度と効果及び副作用の関係」では五マイクログラム以下は「非有効域」となつているので、これでは適切な治療はおこなわれないおそれがあると考えられるが、どうか。

(2) ネオフィリンの添付書類掲載の「主要文献」には、臨床の項目として国立医療センター臨床薬理室の石崎室長の論文が紹介されているので、同論文の原文に当たつて、内服量の求め方に従つて計算をしてみると、その用量は添付書類掲載の用量の約二倍になつたが、この食い違いについての見解はどうか。添付書類に誤りがある場合には、用法・用量の再々評価をおこなつたうえで、添付書類の訂正を至急おこなうべきと考えるが、どうか。

(3) 現在の用量では、テオフィリン系薬剤(たとえばネオフィリン)は無効であり、ぜん息の発作をおさえることはできないし、発作を防ごうとして、医師からわたされている交感神経刺激剤の吸入薬を指示より頻繁に用いることによつて、薬害をひきおこす原因にもなる。これは、管理体制のない自宅療養の場合に多く、問題はきわめて重大であるので、外来の場合でもテオフィリン系薬剤の治療が適切におこなわれるようにすべきであると考えるが、どうか。

(4) 今回の診療報酬の改定では、テオフィリン系薬剤の適量投与を可能にする血中濃度の測定料が、入院時のみ認められたが、外来では認められなかつた。これでは、前記医療事故を未然に防止することができず、至急に改善すべく措置をとるべきではないか。

二 老人病院と診療報酬について

(1) 元厚生省老人保健部長の吉原健二氏が、特例許可外老人病院について「特例許可を受けないまま七〇歳以上の老人を六割以上常時収容している病院」(「老人保健法の解説」中央法規発行)と説明しているのは、「毎年一月から三月までの間の老人収容比率の平均値が六割以上である一般病院」としている現行法とは明らかに食い違つているが、「一月から三月まで」をして「常時」と表現するのは妥当ではなく誤解を与えるものと考えるが、どうか。

(2) 「一月から三月まで」の期間は、脳卒中、心筋梗塞、肺炎など老人の健康状態にとつては最悪であり、この時期に老人の入院が困難になることは、適切ではないと思うが、どうか。

(3) 老人医療に関する診療報酬の低さが目立つており、これが治療にどのような影響を及ぼしたかを調査する必要があると思うが、どうか。その場合、特例許可外老人病院を調査することで結果がでるとおもわれるので、特例許可外老人病院の名称、所在地を明らかにされたい。もし、明らかにできないというのであれば、その理由を説明されたい。

三 一般医療と診療報酬について

(1) 病院の給食については、「入院患者の夕食時刻が早すぎる」などの問題を主な理由として、厚生省「通知」が出され、病院の施設を用いれば外注に出してもよい、ということになつたが、病院の給食というのは、本来、治療の一環であり営利会社にゆだねることは妥当ではない。給食に関する診療報酬を引き上げることによつて、給食関係の人員を増加させ、夕食時刻を遅くするなど適正な措置が可能だと考えるが、どうか。

(2) 日本人の平均寿命は世界最高に達しているが、その反面、有病率は戦後最高に達しているのが現状である。長寿を保つことと、健康を維持しつづけること、の両面があいまつていなくてはならないことは自明であるが、自己負担を増加させることによつて受診を抑制しようとする政府の方針は正しくないと考えるが、どうか。

(3) 日本人の平均寿命が諸外国に比べて長いのは、重病の際、国民の全てが入院できるという点と関係が深いと考えられる。例えば、米国では入院費が高く、一般の人が入院するのは困難であるという現状が伝えられている。米国と比べてべット数が多いというだけでべット数の削減が図られたのでは、平均寿命が短くなるのではないか。また、老人の入院に関する診療報酬が、特に低いのは、経済的に病院をしめつけることによつて、老人の入院を困難にさせている、ということになるのではないか。

右質問する。

参議院の原文・経過

政府答弁書

一の(1)から(3)までについて

テオフィリン系薬剤は治療域が狭く、可能な限り低用量とすることが必要であつて、お尋ねのネオフィリンの内用剤については、一日三百から四百ミリグラムを三又は四回に分割して反復投与し、年齢及び症状により適宜増減するものとして承認されたものであり、承認されている用法、用量により、有効域内の血中濃度の維持及び治療に必要な薬剤の投与ができるものと考えている。

一の(4)について

昭和六十一年四月の社会保険診療報酬の改定において新たに加えられたテオフィリンの血中濃度測定は、喘息重積状態等重症な喘息患者に対して血中有効濃度の急速な確保を必要とする場合を想定している。

この測定方法は、長時間にわたり一定時間ごとに血中濃度を測定しながら最適投与量の維持及び管理を行うためのものであり、入院を前提に行われる必要がある。

二の(1)について

御指摘の点は、「老人保健法の解説」(吉原健二編著)の総論における概括的な説明の箇所(七十八頁)であろうと思われるが、同書の各論中四百十八頁から四百二十二頁までにおいて特例許可外老人病院の要件について更に詳細かつ正確な説明が行われていること、及び年間の老人収容比率に代えて毎年一月から三月までの期間の老人収容比率の報告をもつて、翌年度一年間の特例許可外老人病院としての取扱いを行うこととしていることから、同書の表現が不適切なものとは考えていない。

二の(2)について

特例許可外老人病院については、医療の適正化を図る観点から診療報酬算定において必要な措置をとつているところであり、これによつて老人の入院が困難となるようなことはないと考えている。

二の(3)について

老人診療報酬は、老人の心身の特性を踏まえ、適切な老人医療の確保を目指して設定されたものであり、これによつて治療に悪影響が出ているとは考えていない。

また、「特例許可外老人病院」はあくまで診療報酬算定上の概念であり、当該医療機関が診療報酬以外の面で影響を受けることは好ましくないため、その名称及び所在地の公表は差し控えたい。

三の(1)について

先般の病院給食業務の一部委託についての健康政策局長通知の趣旨は、近時における食品加工技術及び調理技術の進歩、衛生水準の向上等にかんがみ、病院の管理者が業務遂行上必要な注意を果たしうるような体制と契約内容の下で、給食の質が確保される場合には、当該業務の一部を第三者に委託しても差し支えないこととしたものである。

また、診療報酬については、昭和六十一年四月の改定においても、適正な給食の実施を図るため、給食料の引上げ、基準給食加算の引上げ等の改正を行つたところである。

三の(2)について

老人医療における一部負担については、本格的な高齢化社会の到来を控え、健康に対する自覚と適正な受診を促すとともに、増大する老人医療費を世代間で公平に負担するという観点から改定を提案しているものであり、高齢者世帯の所得の実態、年金の給付水準等からみて必要な受診を抑制するものとは考えていない。

また、医療保険の給付率については、将来にわたり公平かつ安定した制度として国民に必要かつ適切な医療を確保していくために、昭和六十年代後半のできるだけ早い時期に八割程度で統一することとしているものである。

三の(3)について

米国と比べて病床数が多いという理由のみにより病床数の削減を図ることは考えていない。

また、老人診療報酬は、老人の心身の特性を踏まえ、適切な老人医療の確保を目指したものであり、これによつて老人の入院が困難になつていることはないと考えている。

参議院の原文

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