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最低資本金制度の適用猶予に関する質問

参議院 第134回 第5号

提出者
参議院
提出日
1995年12月11日
内閣転送 1995年12月13日
答弁書受領日
1996年1月19日
提出から39日
答弁の項目数
7
質問 1,557字/答弁 2,633字

質問本文

最低資本金制度の適用猶予に関する質問主意書

平成二年の商法改正によって、株式会社及び有限会社の最低資本金がそれぞれ一千万円、三百万円に引き上げられ、最低資本金額に満たない会社は、来年三月三十一日までに増資をするか、合名又は合資会社に組織変更しなければ解散したものとみなされることになっている。

会社の資本金が、万一の場合の債権者保護のために確保されていなければならない重要なもので、その額が多いほど経営の安定化にもつながるものであることは十分に理解している。

しかし、最低資本金引上げの改正は、バブル経済の真っ盛りの時期に立案され、実施されたものであり、現在の経済情勢はこの制度の導入時とは一変している。しかも経済の不況は長期化し、今なお回復の兆しは見えていない。最低資本金の引上げによって増資が義務付けられるのは、中小企業とりわけ零細な企業であり、現在の不況の中で最もしわ寄せを受けている企業である。中小零細企業のほとんどは企業の存続自体に汲汲としている状態で、増資を行うにも余裕のない企業が多い。適用猶予期限が間近となったこの時期になっても、今なお対象会社の約三分の一が基準未達成といわれている状況は、このことを証明するものである。

このような状況下において、強制的に増資を義務付け、それができなければ会社を解散させる措置をとることは著しく酷といわざるを得ない。

よって、次の諸点について質問したい。

一、法改正当時、最低資本金額に満たない会社数は、株式会社が約八十三万五千社、有限会社が約七十万社と推計されていたが、現時点において、なお最低資本金額に達していない会社数はどのくらいあると把握しているか。

二、増資ができず会社が解散となれば、経営者はもちろんのこと従業員、取引先等に与える影響は大きく、失業や不況をさらに拡大することにもなりかねない。経済の活性化のため、あらゆる施策が必要とされているこの時期に、あくまでこのような措置をとることは政策的に問題であると思うがどうか。

三、株式会社及び有限会社の最低資本金に関する改正商法附則の適用猶予期間については、阪神・淡路大震災の影響を考慮して適用猶予期間を一年間延長する措置がとられた地域も含め、経済情勢が回復するまで延長するよう法改正が必要だと思うがどうか。

四、改正商法附則によると、法務大臣がみなし解散の旨の官報公告をしなければならない時期は、猶予の「期間が満了したとき」となっている。仮に三で述べたような新たな法改正を行わない場合でも、みなし解散公告を当分の間見合わせる考えはないか。

五、増資ができない会社には、合名会社又は合資会社への組織変更が認められるが、物的会社から人的会社への組織変更は、無限責任社員を生み出さなければならないという甚だ難しい問題が横たわっており、営業活動の継続の面からいっても取引先の信頼を失うなど弊害も多い。組織変更の措置ではそれらに対する有効な手当にはならないのではないか。

六、会社存続の便法として人的会社に組織変更をした場合、将来、増資の条件が整うに至ったときには、再び物的会社である株式会社や有限会社に組織変更することを認める措置を講ずるべきではないか。

七、来年三月三十一日までの猶予期間内に資本増額の登記をすると、登記に要する登録免許税が軽減されるが、解散会社とみなされた後、総会で会社継続の特別決議をして三年以内に増資をした場合には、この優遇措置はどうなるのか。

八、建設業、宅地建物取引業、風俗営業など、営業に当たって官公庁の免許、許可を受けている業種の場合、会社が解散とみなされたとき、これらの許認可はどうなるのか。また再び営業を開始する場合でも、許認可を取り直さなければならないのか。

右質問する。

参議院の原文・経過

政府答弁書

一について

商法等の一部を改正する法律(平成二年法律第六十四号)により改正された商法(明治三十二年法律第四十八号)及び有限会社法(昭和十三年法律第七十四号)によれば、株式会社又は有限会社の最低資本金の額は、それぞれ千万円又は三百万円とされているところであるが、この最低資本金に達しない株式会社及び有限会社の数は、平成七年十月三十一日現在、株式会社が約四十四万社、有限会社が約六十万社の合計約百四万社であると推計される。株式会社及び有限会社の全体の数に対する割合は、約三十三パーセントであり、前記商法等の一部を改正する法律が施行された当時のその割合が約六十三パーセントであったのに比べ相当に減少している。

なお、商法の一部を改正する法律(昭和四十九年法律第二十一号)により一定期間登記をしていない株式会社を解散したものとみなす、いわゆる休眠会社の整理の制度が導入されたが、昭和四十九年の最初の制度の実施により約二十五パーセントの株式会社が、その後五年ごとの実施によりそれぞれ約七パーセントの株式会社が解散したものとみなされてきたこと、及び有限会社についてはこのような制度がなかったことからすれば、最低資本金に達しない株式会社及び有限会社の中には、既に営業を廃止しながら解散の登記をしていない、いわゆる休眠会社が相当数あるものと推定される。また、今後、相当多数の会社が最低資本金制度の適用猶予期間の満了日である平成八年三月三十一日までに所要の増資又は組織変更をするものと見込まれる。

二について

最低資本金制度は、株式会社の株主又は有限会社の社員が有限責任とされていることから、会社の債権者を保護する等のため、これらの会社としてふさわしい財産的基盤を確保することを目的として導入されたものであり、これにより、会社の財産的基盤が確保され、我が国の株式会社又は有限会社の社会的信用と経済的地位の一層の向上が図られることになる。また、最低資本金に達しない株式会社又は有限会社は、他の種類の会社に組織変更をすることにより、解散したものとみなされることを免れ、会社として営業活動を継続することができる。

三及び四について

最低資本金制度は、二についてにおいて述べたとおり、株式会社又は有限会社としてふさわしい財産的基盤を確保するため必要なものであり、また、その制度の導入に当たっては、制度の円滑な実施を図るため、導入時に現に存する株式会社及び有限会社について、制度の適用を五年間猶予するとともに、合名会社又は合資会社への組織変更を特別に認めることとしている上、猶予期間の満了後解散したものとみなされた場合においてもその後三年内に限り所定の決議により会社を継続することができることとするなど、相当の手当てがされている。さらに、最低資本金に達している会社は、既に七割近くに達している上、猶予期間が満了するまでに更に相当多数の会社が所要の増資又は組織変更をするものと見込まれているところであり、猶予期間の延長等をすることは、制度の趣旨を損なうだけではなく、これまでに増資等を行った会社との間に不公平を生ずることにもなる。したがって、猶予期間の延長等をすることは適当ではないと考えている。

五について

最低資本金に達しない株式会社又は有限会社は、合名会社又は合資会社に組織変更をすることにより、会社として営業活動を継続することができる。また、二についてにおいて述べた最低資本金制度の趣旨に照らし、最低資本金に達しない財産的基盤の弱い会社にあっては、無限責任社員を有する合名会社又は合資会社に組織変更をすることにより、会社の取引先その他の債権者に対する債務の履行がより確保されることになる。

六について

株式会社又は有限会社と合名会社又は合資会社との間の組織変更は、商法及び有限会社法の本則では認められていないが、最低資本金制度の導入に伴う経過措置として、最低資本金に達しない株式会社又は有限会社については、その存続を図るため、特に、合名会社又は合資会社に組織変更をすることが認められたものである。

合名会社又は合資会社が株式会社又は有限会社となるには、株主又は有限会社の社員が有限責任しか負わないことから、会社の財産的基盤を確保するため厳格な払込手続をとることが不可欠であり、このため設立の手続をとる必要がある。このことは、最低資本金に達しなかった株式会社又は有限会社が合名会社又は合資会社に組織変更をした後にあっても、同様である。

七について

株式会社又は有限会社の資本の増加の登記に対して課税される登録免許税の額は、当該登記が合併によるものである場合を除き、増加した資本の金額に千分の七の税率を適用して計算した税額(当該税額が三万円に満たないときは、申請件数一件につき三万円)とされている。

ただし、最低資本金に達しない株式会社又は有限会社にあっては、平成八年三月三十一日までの間に限り、最低資本金の額に達するまでの部分については、その税率が千分の三・五とされている。

八について

最低資本金に達しない株式会社又は有限会社である建設業者又は宅地建物取引業者が解散したものとみなされた場合においては、当該建設業者の許可にあっては建設大臣又は都道府県知事はこれを取り消さなければならないこととされ、当該宅地建物取引業者の免許にあっては建設大臣又は都道府県知事への解散した旨の届出があったときにその効力を失うこととされている。また、許可を取り消された建設業者又は免許の効力を失った宅地建物取引業者が、再び建設業又は宅地建物取引業を営もうとする場合には、改めて建設業の許可又は宅地建物取引業の免許を受けなければならない。

最低資本金に達しない株式会社又は有限会社である風俗営業者が解散したものとみなされた場合においては、当該会社は、清算の目的の範囲内において存続することとなり、風俗営業を営むために必要な行為が制限されることになるが、このことにより、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和二十三年法律第百二十二号)第十条第一項第一号の「風俗営業を廃止したとき」に該当するときは、遅滞なく、許可証を返納しなければならず、許可証の返納をもって許可の効力は失うこととされている。また、許可証を返納した者が再び風俗営業を営もうとする場合には、改めて風俗営業の許可を受けなければならない。

参議院の原文

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