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司法試験問題事前漏えいについての調査、処分に関する質問主意書
参議院 第167回 第1号
質問本文
慶應義塾大学法科大学院の植村栄治教授(以下「植村教授」という。)が事前に司法試験の問題を漏えいしていたとの疑惑(以下「本件疑惑」という。)については、私も既に平成十九年六月二十八日付け「司法試験考査委員による司法試験問題の事前漏えいに関する質問主意書」(第一六六回国会質問第五七号)(以下「前回質問主意書」という。)において指摘したとおり、国民の司法不信を招きかねず、深く憂慮される。ところが、前回質問主意書に対する答弁書や、その後の報道等に接する限り、政府が司法試験の公平性、平等性、開放性を理解、尊重し、本件疑惑についても誠実かつ適正に取り組む意思と能力を持ち合わせているか、疑問である。
そこで、以下質問する。
一 前回質問主意書一において「調査はいつ完了するか」と問い質したにもかかわらず、この点の答弁が脱漏している。本件疑惑に関する政府の調査はすべて完了したのか、明らかにされたい。
二 前回質問主意書二に対する答弁では、植村教授を司法試験考査委員に任命した理由について、必要な学識を有するゆえに司法試験委員会の推薦に基づいて任命したとあるが、この答弁は私が質問主意書において問い質す必要もない手続を答えたにすぎず、不誠実である。ついては、司法試験委員会は、植村教授のいかなる学識ゆえに司法試験考査委員に推薦したのか、明らかにされたい。また、その推薦に当たっては、植村教授の学識のみが斟酌され、同人の人格、識見等の調査等、司法試験の公平性に関する配慮はなされなかったのか、明らかにされたい。
三 前回質問主意書三に対する答弁では、植村教授について司法試験考査委員を解任したとあるが、その解任理由を詳細に示されたい。政府の調査においても本件疑惑を否定することができなかったのであれば、植村教授による漏えいの時期、内容、態様、漏えい対象者の人数と属性(とりわけ慶應義塾大学生らに限られるか、本年度受験生も含まれているか)等、漏えい行為の詳細を明らかにされたい。
四 植村教授の漏えい(あるいは漏えい疑惑)は、本年度の司法試験、特に植村教授から漏えいを受けた受験生らの成績にいかなる影響を与えたのか、明らかにされたい。司法試験に限らず、いかなる試験においても、事前に問題を知らされていた受験生と、そうではない受験生とでは、前者が著しく有利であり、よって試験の公正さを害することは明白である。他の受験生の公平感を阻害しないためにも、司法試験の公平性に対する国民の理解のためにも、誰もが容易に納得できる明快な答弁を示されたい。
五 前回質問主意書十に対する答弁では、「再発防止」のために、すべての司法試験考査委員に対して「試験の公正さに疑念を抱かせかねないような行為」をすることがないよう注意を促したとある。
1 ここに言う「再発防止」とは何か、いかなる事態を再び引き起こしてはならないのか、明らかにされたい。
2 司法試験考査委員らに注意を促した「試験の公正さに疑念を抱かせかねないような行為」とは具体的にはいかなる行為を指すか明らかにされたい。
3 司法試験考査委員らにおいては「試験の公正さに疑念を抱かせかねないような行為」と、そうではない行為との境界を区別することができるのか。「区別できる」と答弁するのであれば、その理由も明らかにされたい。
4 仮に司法試験考査委員が「試験の公正さに疑念を抱かせかねないような行為」に至ったとき、今後政府はどのように対処するか明らかにされたい。
5 政府は「再発防止」を司法試験考査委員らに対する注意のみに依存するのか、明らかにされたい。
六 慶應義塾大学は、植村教授に対して「懲戒免職処分相当」との結論に達したものの、植村教授の反省を理由に辞職願を受理したと報道されている。
1 政府はこの事実を確認しているのか明らかにされたい。仮に確認していないのであれば、なぜ確認していないのか、政府は確認する必要がないと考えているのか、単に政府の情報収集能力が劣っているのか、それぞれ明らかにされたい。
2 政府はこの事実を確認しているのであれば、「懲戒免職処分相当」との結論に至った理由を承知しているか。承知しているのであれば、懲戒事由を明らかにされたい。
七 植村教授以外の司法試験考査委員あるいは慶應義塾大学以外の法科大学院において、事前に司法試験の問題が漏えいしていた事実はなかったか、結論及びその結論に至った調査の委細(対象、方法等)を明らかにされたい。この点、植村教授と同様の疑惑を指摘されている十人弱の司法試験考査委員に対してだけ、しかも自己申告を求めたにすぎないとの報道もあるが、そのとおりであれば極めて不徹底であると考えるが、政府の認識を示されたい。
右質問する。
政府答弁書
一について
植村栄治元司法試験考査委員(以下「植村元考査委員」という。)が行った不適正な行為については、法務省職員が、本人及び関係者からの事情聴取や関係資料の収集を行い、その調査結果を平成十九年六月二十九日に公表した。
これに加え、植村元考査委員が行った不適正な行為が平成十九年新司法試験に与えた影響について、司法試験考査委員において、検討・協議が行われ、同人による行為が、有利な結果をもたらしたとは言えないと判断され、その結果を踏まえ、平成十九年八月二日、司法試験委員会において、平成十九年新司法試験について特段の措置をとらない旨の決定がなされ、同月三日にその旨を公表した。
政府としては、植村元考査委員が行った不適正な行為については、必要な調査を遂げたものと考えている。
二について
司法試験委員会においては、植村元考査委員が、大学卒業後、行政法の研究者・教員として大学に長年在籍し、研究・教育活動に従事してきたものであり、司法試験考査委員への任命当時、法科大学院教授の職にあったものであること等を総合的に考慮して、同人を、司法試験を行うについて必要な学識経験を有する者として法務大臣に推薦したものである。
三について
植村元考査委員については、以下の不適正な行為が判明したことから解任した。
植村元考査委員は、平成十八年十一月一日、司法試験考査委員(公法系・行政法担当)に任命された後、同年十二月ころから、慶應義塾大学法科大学院の三年生と同大学院修了生の司法試験受験生に対し、行政法の「勉強会」と称する答案練習会の開催を知らせた上、これらの司法試験受験生のうち、希望者を対象に、平成十九年二月五日ころから同年三月十九日ころにかけて、週一回、合計七回にわたり、学内で、自ら行政法の論述問題等を出題して解答させ、これを添削・指導する方法で、答案練習会を行い、また、その内容や、自ら判例の要旨を学習用に取りまとめたもの等を同大学院の三年生と同大学院修了生の司法試験受験生に送付するなどして、担当科目について新司法試験の受験指導をした。
植村元考査委員は、新司法試験実施直前の平成十九年五月六日ころ、同大学院修了生の司法試験受験生に対し、「本試験の論文の解答を試験直後に再現し、八月二十七日以降に送ってくれれば、それを採点してあげる。」などと通知した。
なお、植村元考査委員が試験問題を事前に漏えいした事実は認められない。
四について
植村元考査委員が試験問題を事前に漏えいした事実は認められない。
なお、司法試験考査委員において、植村元考査委員が行った不適正な行為が平成十九年新司法試験に与えた影響について、専門的立場から、同人が作成した答案練習問題や配布資料等の内容と平成十九年新司法試験の試験問題を精査・比較するなど、慎重に検討・協議を行った結果、同人による行為が、有利な結果をもたらしたとは言えないと判断され、その結果を踏まえ、司法試験委員会において、平成十九年新司法試験について特段の措置をとらない旨の決定がなされたものである。
五の1について
三についてで述べた植村元考査委員の行為は、従前から差し控えるよう要請していた受験指導であって、司法試験の公正さに疑念を抱かせかねない行為であり、このような行為の再発を防止することが必要であると考えている。
五の2及び3について
司法試験の公正さに疑念を抱かせかねない行為か否かは、司法試験の公正な実施の確保という観点から、具体的な事実関係に即して判断されるべきものと考えている。
例えば、司法試験考査委員が、答案練習の指導等により担当科目についての受験指導を行うことは、試験の公正さに疑念を抱かせかねない行為であると認められるため、従前から、司法試験考査委員に対し、差し控えるよう要請しているところである。
五の4について
具体的な事実関係に即し、司法試験の公正な実施の確保という観点から、適切に対応したい。
五の5について
司法試験委員会において、今後の司法試験考査委員体制について、検討を進めているところである。
その検討状況を踏まえつつ、法務省と文部科学省において、連携・協議をしながら、再発防止のための必要な措置を講じてまいりたい。
六の1について
慶應義塾大学からは、同大学大学院法務研究科委員会が、同研究科教授の植村元考査委員について「懲戒処分(解職)」が相当であると、同研究科運営委員会に上申し、最終的には、平成十九年八月三日、学校法人慶應義塾長が同人の辞職願を受理するに至ったと聞いている。
六の2について
慶應義塾大学からは、同大学大学院法務研究科委員会において、植村元考査委員について「懲戒処分(解職)」が相当という結論に至ったのは、同人の行為、同人が司法試験考査委員を解任されたこと等の事実が慶應義塾賞罰規程における「義塾の信用を傷つけまたは体面を汚す行為」及び「職務上の義務に違背し、または職務を怠った」に該当することが理由であると聞いている。
七について
御指摘のような「事前に司法試験の問題が漏えいしていた事実」は認められない。
政府としては、すべての司法試験考査委員に対し、司法試験考査委員の任期中、勉強会、答案練習会等の受験指導をしたことがないかという点について報告を求めたほか、法科大学院における教育の実施状況に関する調査等を行ったところであり、また、報告等があったものを始め、その他必要に応じ、司法試験考査委員からの事情聴取や関係資料の収集を行うなどして、十分な調査・検討を行ったものと考えている。
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