ことばで探す › 参議院 第170回
農作物への鳥獣被害と対策に関する質問主意書
参議院 第170回 第64号承知していない ×1
質問本文
近年、特に中山間部の農山村では、イノシシ、シカ、カモシカ(地域によってはサル、クマ、エゾシカ)等による農作物への鳥獣被害が深刻になっている。各農家や地域レベルで防除用ネットを設置するなどの対策は行っているが、そのような対処ではおいつかないのが現状である。
第百六十八回国会では、このような現状に対して「鳥獣被害防止法」が成立したが、この法律に基づいて実際にどのような具体的施策を実施するかが今後、重要な課題となる。特に、被害の深刻な中山間地の農山村では、他方で高齢化が進む中での地域振興という課題を抱えており、このふたつの課題をあわせて考えることが求められている。そして、いずれの課題も地域の主体的取り組みによってのみ、解決が図られ、中山間地の農山村の持続に結びつくと考えられる。
よって、以下質問する。
一 現在の鳥獣被害は、全国でどの程度発生しているか、被害を起こしている鳥獣ごとに、被害件数、駆除数、被害額、被害地点などについて、経年変化を含めて示されたい。また、鳥獣被害についての調査態勢はどのようになっているかについても説明を求める。
二 鳥獣被害に対しては、二〇〇七年に成立した「鳥獣被害防止法」に基づいて、国としても被害防止に向けて努力しているものと認識しているが、実際にどのような実施態勢を組んでおり、また法律が成立してからの一年間でどの程度の効果があったのか説明を求める。なお、駆除数を示す場合には、狩猟免許の甲乙別の数値も示されたい。
三 鳥獣被害対策については、単に完全に駆除すれば問題が解決するわけではなく、生息数の調査・管理を前提に、駆除圧を調整するフィードバック方式による駆除が望ましいと考えるが、このような生息数管理による駆除圧の調整について考えを示されたい。
四 鳥獣被害防止法の第十五条では、被害防止に係る人材の育成について明記している。この点は評価できるが、法に基づいて実際に有効な具体的人材育成策が展開されなければ意味はない。ここで求められるのは、鳥獣被害の防止による農業環境の維持のみならず、地域の環境、特に生物多様性の持続性をも視野に入れ、駆除と共存を同時に行えるような人材であるべきと考えるが、国としてはどのような人材を想定しているのか示されたい。
また、同法では「人材の育成を図るため、研修の実施その他必要な措置を講ずる」としているが、その研修は、単に学識経験者による机上の講習会ではなく、スキルを持つ経験者が、実践的な指導を行うことが必要であると考えられる。近年、猟師の高齢化などが指摘されているが、そのような実践指導できる経験者がどの程度おり、また人材育成においてそのような猟師をどのように指導に関与してもらっているのかを明示されたい。
五 同法第十条では、処理するための施設の充実や処理方法の指導について言及しているが、ここでいう処理とはどのようなことを指しているのか説明を求める。また、処理のなかで最も重要なものは、解体であると考えられるが、そのような技術については、同法第十五条にある人材の育成に含まれているのか確認したい。さらに、処理施設の充実については、どの程度の施設をどのように整備するのか、そして整備された施設をどう運用するつもりなのか、イニシャルコスト、ランニングコスト双方の費用的な面を含めて明示されたい。
六 同法第九条では、「鳥獣被害対策実施隊」の設置について定めている。この設置状況について示されたい。また、現場レベルにおいて実施隊を設置したとしても、形式的な設置では意味がない。特に実施隊の隊員については、地方財政が厳しく、多くの自治体が人員削減を伴う行財政改革に取り組む中で、自治体職員を隊員とすることが現実的であるのかどうか、考えを示されたい。
また、同法では「被害防止計画に基づく被害防止施策の実施に積極的に取り組むことが見込まれる者」も実施隊員としてあげている。これは各地の猟友会の会員と考えられるが、乙種(猟銃)による捕獲の効率性と、高齢化していると言われる猟友会の現状を考えると、実際の鳥獣被害軽減の効果には疑問が残る。この点についても認識を示されたい。
七 農業への鳥獣被害を軽減するためには、実際の被害に苦しんでいる農家自身が狩猟免許を取得し、甲種(ワナ)による捕獲を行うことが最も有効であり、また、そのような農家が、鳥獣被害の原因となっているイノシシ、シカ、カモシカ等を地域資源として活用していくことが、地域間交流を含めた地域活性化にも結びつくと考えられる。特に地域資源としての経済的活用については、持続可能性を視野に入れた個体調整が求められるが、その持続可能性を確保するためにも、その地域に生きる農家が関わることが最も有効であると考える。そこで、そのような政策展開の可能性について、国としての考えを示すとともに、そのような具体的事例をどのように把握しているのか、示されたい。
右質問する。
政府答弁書
一について
鳥獣による農作物の被害金額については、毎年度、都道府県から報告を受けており、平成十九年度でイノシシは約五十億円、シカは約四十七億円、カラスは約二十六億円、サルは約十六億円、鳥獣全体で約百八十五億円となっている。それぞれ平成十四年度と比較すると、イノシシは約一・〇倍、シカは約一・二倍、カラスは約〇・六倍、サルは約一・一倍、鳥獣全体で約〇・九倍となっている。なお、被害件数、農作物に被害を及ぼしている鳥獣の捕獲数及び被害地点については把握していない。
二について
国においては、鳥獣による農林水産業に係る被害及び農林水産業に従事する者等の生命又は身体に係る被害その他の生活環境に係る被害(以下「農林水産業等に係る被害」という。)に対応するため、平成二十年八月一日から、鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止のための特別措置に関する法律(平成十九年法律第百三十四号。以下「法」という。)を所管する農林水産省に鳥獣被害対策室を設置し、関係省庁が連携して鳥獣被害防止対策を実施している。
また、法は、平成二十年二月二十一日に施行され、法第四条第一項に定める被害防止計画は、平成二十年八月末現在で三百二十五市町村において作成されているところであり、その効果については今後明らかになるものと考えている。
三について
鳥獣被害防止対策においては、鳥獣の生態や生息状況等の科学的知見を踏まえて個体数調整、被害防除や生息環境管理の対策を適切に組み合わせるとともに、対策の実施効果を踏まえ、被害対策の柔軟な運用が図られることが重要であると考えている。
四について
法第十五条に規定する鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止に寄与する人材としては、行政機関の職員や研究機関の研究者等法第四条第一項に定める被害防止計画の作成及び鳥獣の保護管理に関する専門的知見を有する者、農業改良助長法(昭和二十三年法律第百六十五号)第八条に規定する普及指導員等被害防止対策に関する専門的知見を有する者、狩猟免許を受けた者等捕獲等に関する専門的知見を有する者等を想定している。
また、人材の育成を図るための研修については、狩猟免許を受けた者に関しては、狩猟免許の更新に際して受けることとされている管轄都道府県知事による講習において、併せて実施することとしており、当該講習の講師に、狩猟免許を受けた者の中から特に指導力の卓越した者を充てるなどしているところである。
五について
法第十条に定める鳥獣の処理とは、捕獲現場での埋設、処理施設での焼却、肉としての利活用、鳥獣の保護管理に関する学術研究への利用等である。
法第十五条においては、鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止に関する事項について専門的な知識経験を有する者の育成を図ることとしており、鳥獣の処理に関する技術は、ここでいう専門的な知識経験に含まれる。
また、処理施設の充実に関しては、被害防止計画に基づき捕獲等をした鳥獣が適正に処理されるよう、地方公共団体等において処理施設を整備することとされている。国としては、この整備及び処分経費に対する財政支援を行うことにより、処理施設の充実に努めているところである。
六について
法第九条第一項に定める鳥獣被害対策実施隊については、都道府県からの報告によると、平成二十年八月末現在で、九市町村において設置されている。
鳥獣被害対策実施隊の隊員については、地域全体で被害防止対策に取り組む体制を早急に確立することが重要であることから、猟友会の会員、市町村や農林漁業団体の職員が主な対象となり得るものと考えているが、鳥獣被害対策実施隊の構成は地域の事情に応じて異なるものと考える。
七について
地域全体で被害防止対策を持続的に実施するためには、猟友会の会員、市町村や農林漁業団体の職員のみならず、農業者自らが狩猟免許を取得することが期待されていると考えている。また、捕獲した鳥獣を地域資源としてとらえ、安全性を確保しつつ、肉等の加工、販売等を通じて地域の活性化につなげる取組を推進する必要があると考えている。農林水産省においては、都道府県等の協力を得て、地域資源としての活用を含めた地域の鳥獣被害防止に関する各種取組の把握に努めているところである。
似た質問主意書
件名と質問本文の冒頭の意味が近いものを、前もって計算しておいた表から近い順に8件並べました(multilingual-e5-large)。同じ言葉を使っていなくても出ます。論点が少しずれていることもあります。