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平成二十三年度税制改正案に関する質問主意書
参議院 第177回 第135号
質問本文
一 税制改正案全般について
すべての税制改正は、経済成長戦略が確立され、今後三年間、五年間の経済成長を前提とした上で、財政再建と社会福祉改革をセットにして行うべきだと考える。しかしながら、今回の税制改正案については、成長戦略なき税源あさりの場当たり策と言わざるを得ない。例えば、民主党政権は「国民の生活が第一」といいながら、相続税の課税強化、成年扶養控除の縮減などによって、国民の生活に深刻な打撃を与えるような政策を講じようとしている。このような理念なき税源あさりによって、さらに内需が縮小することになり、そうなれば、特に中小企業は、設備投資も雇用も先送りしてしまいかねない。このような状況で、法人税を下げたとしても、経済活性化にはつながらないと思われるが、政府の見解を示されたい。
二 法人税減税について
中小企業庁によれば、現在、いわゆる中小企業は全国で二百六十万社あるということだが、このうち利益計上法人はわずか二十八・三パーセントにとどまるという。すなわち、法人税を三パーセント減税するとしても、この恩恵を受ける中小企業は四社に一社に過ぎない。また、私が住んでいる札幌市では、九割以上が中小企業という産業構造である。つまり、私の地元では、法人税減税によって恩恵を受ける企業はほとんどないということになる。それどころか、政府は減税の財源として、減価償却費の大幅圧縮を講じるなどとしており、実質的には増税になる恐れがある。こんな税制改正案では、経済の活性化どころか、地方の中小企業はますます経営が苦しくなると考えるが、政府は、中小企業を苦しめるためにこのような税制改正を行おうとしているのか、見解を示されたい。
三 雇用促進税制について
政府は、一定の条件を満たす法人に対して、法人税額の二十パーセントを限度として当期中に増加した雇用保険の一般被保険者一人当たり二十万円の税額控除ができる雇用促進税制を創設しようとしているが、雇用促進が期待できると本当に考えているのか。
企業が設備投資をしたり、従業員を増やしたりするのは、その後の経済成長が見込まれる時点で決定するのであって、たまたま増員がすでに決まっている企業がこの制度を利用するに過ぎず、この制度を目当てに増員するとは到底考えられないが、政府の見解を示されたい。
四 現場経理担当者の負担増加について
法人税減税の一方、減価償却費の定率法の償却率をわずか二年ほどで圧縮したり、中小企業の主宰役員給与の損金不算入制度を廃止すると同時に、給与所得控除の千五百万円上限制度の導入や消費税免税事業要件を見直したりするなど、中小企業会計担当者の事務負担の増加に全く配慮がされていない。このような中小企業の現場の悲鳴について、政府の見解を示されたい。
五 社会保険料負担の軽減について
中小企業がパートや派遣社員に頼る理由の一つに、正社員には給与のほかに社会保険料の企業負担がかかり、負担が重いということがある。現在、給与支給額の十二パーセントから十三パーセントの社会保険料の企業負担があるが、これが正社員を雇用しない大きな理由である。したがって、減税をするよりも、むしろ企業が負担する社会保険料負担の軽減を図る必要があると考える。菅首相は雇用の増大を第一に考えると明言しているが、雇用の増大に資するためには、法人税の減税よりも、社会保険料負担の軽減策を考えるべきだと思われる。政府の見解を示されたい。
六 地域活性化について
現在、地価が減損し、中小企業では多額の含み損失を内包している。しかし、固定資産税は全く下がらず、固定資産税負担の軽減を図る必要がある。また、建物評価についても再調達価格を前提として課税され、中小企業にとって重い税負担となっている。地域の活性化のためには、中小企業の固定資産税や、いわゆる償却資産税の負担の軽減を図る必要がある。菅内閣による税制改正案では、地域活性化に資することはないと考える。地域活性化のために、真に必要な税制とは何か、政府の見解を示されたい。
七 ペイアズユーゴー原則について
財政健全化を目指す上で、重要な考え方の一つに、ペイアズユーゴー原則がある。すなわち、歳出増又は歳入減を伴う施策の新たな導入・拡充を行う際は、原則として、恒久的な歳出削減又は恒久的な歳入確保措置により、それに見合う安定的な財源を確保することを求めるものである。これは、菅内閣が昨年六月二十二日に閣議決定した「財政運営戦略」に明記されている。
それにもかかわらず、閣議決定からたった半年後の本年一月二十一日の「平成二十三年度における財政運営戦略の進捗状況の検証」において、法人税減税に関し、「「ペイアズユーゴー原則」との関係では今回の税制改正による財源の確保は十分ではありません」と書かれている。閣議決定された原則を、たった半年でころころ変えてもいいのか、政府の見解を示されたい。
八 子ども手当の財源としての増税措置について
昨年度、子ども手当の捻出のために十六歳未満の扶養控除が廃止された。この点につき、国民に全く理解されていない。政府による周知が不十分で、本年一月からの源泉徴収額の変更により初めて知った人が多いと聞くがこんなことが許されるのか、政府の見解を示されたい。
バラマキ政策を講じた結果、その財源確保のために、国民に十分な周知をすることなく増税措置を講じることは、民主主義を軽視するものであり、不当と考える。その上、今年になってから、さらに成年扶養控除まで縮減しようとしている。国民生活に悪影響を及ぼす政策はただちに廃止し、本当に必要な政策は何かを真剣に議論する必要があると考えるが、その点につき政府の見解を示されたい。
九 理念なき税制改正について
今後数年間の経済成長率を何パーセントと見込んで、税収がどの程度となるのかや、また税収不足、税収オーバーをどのように見込み、税収が見込みをオーバーした場合にその使途についてどのような歯止めをかけておくか等、今後の基本的な税体系やその考え方が全く見えない。理念の全く見えない税制は、国民の信頼を得ることができない。国民の信頼が得られない税金など、徴収する権利はないと考えるが、政府の見解を示されたい。なお、我々自民党は、このような税制改正案に断固として反対である。
十 現場の声に耳を傾ける必要性について
私の地元では、中小企業の指導を行う事業などが活発に行われている。例えば、経済産業省による「創業塾」は、これまで長年の間、商工会議所や商工会、北海道等で開催され、かなりの受講者がいる。しかし、この事業にかかる予算が、行政事業レビューで廃止された。これによって、今後この事業は、期間をこれまでの十日間から六日間に短縮し、受講料を三倍にするなどして対応するという。やる気のある若者を指導するために設けられたこの事業は、現在も非常にニーズが高いものであり、これを廃止することは不当と考える。政府は、事業仕分けの前に、現場の声にもっと耳を傾けるべきだと考えるが、政府の見解を示されたい。
右質問する。
政府答弁書
一及び九について
平成二十三年度税制改正においては、「平成二十二年度税制改正大綱」(平成二十一年十二月二十二日閣議決定)で示した改革の方向性等との整合性を確保しつつ、所得・消費・資産等にわたる抜本改革の実現に向けて、経済活性化と財政健全化を一体として推進するという枠組みの下で、特に、現下の厳しい経済状況や雇用情勢に対応して、経済活性化や税の再分配機能の回復、地球温暖化対策などの課題に優先的に取り組むとともに、納税者・生活者の視点などに立った改革に取り組み、全体として、税制抜本改革の一環をなす、緊要性の高い改革を実施することとしている。このうち、法人実効税率の引下げは、デフレから脱却し、日本経済を本格的な成長軌道に乗せていくため、国内企業の国際競争力強化と外資系企業の立地を促進し、雇用と国内投資を拡大する観点から実施することとしている。
二について
平成二十三年度税制改正においては、中小法人に対しても適用される法人実効税率の引下げを行うことに加え、中小法人の八百万円以下の所得に対する十八パーセントの軽減税率を十五パーセントに引き下げることとしている。これに加え、新たに導入する雇用促進税制の適用要件を緩和する、欠損金の繰越控除制度における控除限度額について、現行の控除限度額を存置するといった措置も講じ、中小企業に対しては十分な配慮を行っている。
三について
平成二十三年度税制改正において創設することとしている雇用促進税制については、雇用の受け皿となる成長企業を支援するものであり、一定の雇用の増加を後押しする効果が期待できるものと考えている。
四について
税制については、経済・社会状況の変化に対応し、毎年度所要の改正を行う必要があると考えている。なお、税制改正の実施に当たっては、その内容について、ホームページの活用、パンフレットの作成及び配布等を通じて十分な周知を行うよう努めているところである。
五について
社会保険料負担の軽減策を講ずることについては、保険料収入が減少することとなり、これに対応するため、年金の給付水準の引下げや医療保険の給付削減といった措置が必要となる可能性があることから、慎重な検討が必要であると考えている。
六について
固定資産税は、資産の保有と市町村の行政サービスとの間の受益関係に着目し、個人・法人の別や所得の多寡に関わりなく、客観的な資産価値に応じて課税されるものである。中小企業に対する固定資産税を含め、地域の活性化のために必要な税制の在り方については、今後も税制調査会等において検討を行ってまいりたい。
七について
法人実効税率については、「平成二十三年度税制改正大綱」(平成二十二年十二月十六日閣議決定)において、「デフレ脱却と雇用拡大を最優先して、「ペイアズユーゴー原則」との関係では今回の税制改正による財源の確保は十分でありませんが、思い切った引下げ措置を講ずる」こととしたものである。なお、平成二十三年度予算においては、歳出・歳入両面において最大限の努力を行い、新規国債発行額について「財政運営戦略」(平成二十二年六月二十二日閣議決定)に定める水準を上回らないものとする等財政規律を堅持したところである。
八について
十六歳未満の扶養親族を控除対象とする、いわゆる年少扶養控除については、平成二十二年度税制改正において、子ども手当の創設とあいまって廃止し、所得税については平成二十三年分からその廃止が適用されているところである。年少扶養控除の廃止を含む平成二十二年度税制改正については、その内容について、ホームページの活用、パンフレットの作成及び配布、各国税局等による源泉徴収義務者への説明等を行ってきたところであり、引き続き、適切な広報に努めてまいりたい。
二十三歳から六十九歳までの扶養親族を控除対象とする、いわゆる成年扶養控除については、本来、成年者は基本的に独立して生計を立てるべき存在であること等を踏まえ、平成二十三年度税制改正において、その対象を見直すこととしており、当該改正内容を含む「所得税法等の一部を改正する法律案」(第百七十七回国会閣法第二号)を平成二十三年一月二十五日に国会に提出したところである。現在、同法案は国会において審議されているところである。
十について
行政刷新会議ワーキンググループによる事業仕分けは、「「事業仕分け」の基本原則の確認」(平成二十二年三月十一日行政刷新会議了承。以下「基本原則」という。)に示されているとおり、「予算執行の現場への徹底したヒアリングや調査等に基づき」実施しているものである。
また、各府省自らが自律的に実施する行政事業レビューは、「平成二十三年における「国丸ごと仕分け」(行政事業レビュー)について」(平成二十三年三月二日行政刷新会議決定)に示されているとおり、事業仕分けの内生化・定常化を図るものであることから、基本原則を踏まえ実施しなければならないものとしている。
なお、創業支援の重要性の観点から、経済産業省としては、「中小企業支援ネットワーク強化事業」等により創業希望者からの個別の相談にきめ細かく対応することとしている。
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