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ワーク・ライフ・バランス実現に向けた施策に関する質問主意書

参議院 第193回 第121号

提出者
参議院
提出日
2017年6月7日
内閣転送 2017年6月12日
答弁書受領日
2017年6月16日
提出から9日
答弁の項目数
12
質問 3,310字/答弁 4,627字

質問本文

昨年提出した、「ワーク・ライフ・バランス実現に向けた施策に関する質問主意書」(第百九十一回国会質問第一八号)に対する答弁書(内閣参質一九一第一八号。以下「前回答弁書」という。)が閣議決定されてから、約一年が経過している。この間のワーク・ライフ・バランス実現に向けた施策に関する取組みを踏まえ、以下のとおり質問する。

一 時間外労働時間の上限規制について

働き方改革において、労働者の健康確保の観点から、「臨時的な特別の事情」がある場合であっても、時間外労働時間の上限規制を設けるとしたことは重要である。その重要性に鑑み、当該上限規制については、健康確保のための基準と位置付け、①上限規制については、全ての労働者を対象とし、適用除外を認めない。また、年間上限(七百二十時間以内)には、休日労働を含むものとする、②「「特別条項」を適用する場合でも、上限時間水準までの協定を安易に締結するのではなく、月四十五時間、年三百六十時間の原則的上限に近づける努力が重要である」、との考え方の下で合意に至った「時間外労働の上限規制等に関する労使合意」の趣旨を労使に周知徹底し、かつ、労働基準法の改正により新たに定められる指針は、当該趣旨の実現に向けた内容とするべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。

二 労働時間の確実な実態把握について

長時間労働を是正するためには、前記時間外労働時間の上限規制とあわせて労働時間の実態を確実に把握することが重要であることから、二〇一七年一月二十日に策定された「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に基づいた対応を周知徹底するべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。

三 取引慣行の見直しについて

長時間労働の要因は様々であり、官公庁を含む取引当事者間での受発注プロセスや納期設定が、結果として長時間労働の要因となっている場合もある。その一例として、診療報酬改定に伴う病院システムの更新作業がある。公的な健康保険によって医療機関で治療・療養を受けた場合に医療機関に支払われる対価である診療報酬は、中央社会保険医療協議会が厚生労働大臣の諮問に応じ、具体的な診療報酬の改定案を答申(二月中旬)し、同答申を踏まえた詳細な診療報酬の改定事項は、厚生労働省の告示等で提示(三月上旬)される。そのため、医療現場では、三月以降、医事会計システム等病院内のシステムを変更しなければならず、システムエンジニアが数カ月に渡る過重な労働によってこの変更に対応している実態がある。二〇一八年度の診療報酬改定は、診療報酬と介護報酬との同時改定であることから、さらに過重な労働となることが予想される。したがって、労働者の健康とワーク・ライフ・バランス確保の観点から、①診療報酬改定に係る厚生労働省告示を行う時期の前倒し、②診療報酬改定に係る疑義解釈資料の送付時期の前倒し、③新診療報酬の適用時期の繰り延べを含む診療報酬改定プロセス全体の見直しについて、喫緊の課題として検討するべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。

四 高度プロフェッショナル制度について

政府が提出した労働基準法等の一部を改正する法律案(第百八十九回国会閣法第六九号。以下「労働基準法改正案」という。)により創設することとしている高度プロフェッショナル制度の対象業務については、すでに裁量労働制等の対象となっており、高度プロフェッショナル制度は特段必要ないと考える。また、一般労働者については、時間外労働時間の上限規制等、長時間労働の是正が強化される一方で、高度プロフェッショナル制度については、労働時間、休日、深夜の割増賃金等の労働基準法の規定を適用除外とするものとされている。しかし、労働者の健康確保の観点からは、一般労働者と高度プロフェッショナル制度の対象となる労働者を区別するべきではなく、たとえば、年七百二十時間以内、一カ月百時間を基準値とする等の時間外労働時間の上限規制については、全ての労働者を対象とするべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。

五 裁量労働制について

1 労働基準法改正案では、企画業務型裁量労働制の対象業務として「課題解決型提案営業(ソリューション営業)」を追加することとしているが、現在の営業職の業務内容の実態に鑑みると、営業職一般にまで企画業務型裁量労働制を拡大して運用される可能性があり、そのようなことは認めるべきではないと考えるが、政府の見解及び取組みについて明らかにされたい。

2 裁量労働制については、現行制度においても過重労働等の懸念があるため、労働者の健康確保や創造性発揮の観点から、柔軟な働き方が過重労働につながらないための措置が必要である。たとえば、裁量労働制において導入されている「健康・福祉確保措置」について、各職場における措置が実効的な内容となるよう再検討・見直しが必要と考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。

六 勤務間インターバルについて

働き方改革実行計画を踏まえ、今後法制化される予定の「勤務間インターバル」については、労働者の健康確保の観点から、適用除外(職種・業務)を原則として設けることなく、全ての労働者に対して導入するべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。

七 病児・病後児保育の充実について

子育てをしながら安心して働ける環境づくりのためには、「病気」または「病気の回復期」等により普段通っている保育施設に子どもを預けられない場合に、一時的に子どもを預けられる病児・病後児保育施設の充実は不可欠である。現状、病児・病後児保育施設が不足しており、就労継続の観点から社会的なニーズは極めて高い。

1 二〇一六年度から市町村が行う病児保育事業の施設整備に対する財政支援を行うことができるよう予算措置がなされたが、その執行状況の概要を明らかにされたい。

2 小児科が少ない地域においては、医療機関併設型保育施設の整備が困難なため、保育所等における安静室、看護師、担当保育士を確保した病児・病後児保育体制を早急に整備することが必要と考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。

八 障害児の保護者の仕事と家庭の両立支援について

障害児の通学等に関する移動支援の実施は、市町村の判断に委ねられ、個別給付(義務的経費)化されていない。障害児の移動支援を実施している市町村は六割弱に留まり、かつ、ほとんどの市町村では一時的な利用のみ認め、通年の利用を認めていない。障害児の通学等に関する移動支援について、個別給付化に向けた検討を進めることが必要と考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。また、前回答弁書において「障害児の通学等に関する訓練を児童福祉法第六条の二の二第一項に規定する障害児通所支援において実施することも含め検討する」とあったが、その後の政府の見解及び取組みを明らかにされたい。

九 柔軟な働き方について

1 柔軟な働き方が労働者の健康被害等につながらないよう、雇用型テレワーク(在宅勤務、モバイルワーク、サテライトオフィス等)の在り方について、①安全衛生管理、②適正な労働時間管理、③セキュリティ保護の観点を徹底し、また、働き方改革実行計画の工程表で二〇一七年度中に刷新するとされた労務管理に関するガイドラインにおいては、在宅勤務、サテライトオフィス等の形態ごとの働き方と就業環境に応じた留意点(労働時間管理及び就業環境整備のためのポイント)を明確にし、周知徹底を図るべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。

2 非雇用型テレワーク(クラウドワーク等)については、現状において取引や働き方について問題が少なくないことから、非雇用型テレワークに係る取引や働き方の適正化に向けた諸措置を講ずるとともに、家内労働法の適用拡大あるいは新法の制定について検討するべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。

右質問する。

参議院の原文・経過

政府答弁書

一について

お尋ねの①について、「時間外労働の上限規制等について(建議)」(平成二十九年六月五日労働政策審議会建議。以下「平成二十九年建議」という。)において、時間外労働の上限規制の法制度の整備を行うことが適当とされ、新技術、新商品等の研究開発の業務は、業務の特殊性が存在することから、その適用除外とし、「当該業務に従事する労働者の健康確保措置として、一週間当たり四十時間を超えて労働させた場合のその超えた時間が一か月当たり百時間を超えた者に対し、医師による面接指導の実施を労働安全衛生法上義務づける」ことが適当とされたところであり、時間外労働の上限規制の適用除外となる者も含め、全ての労働者の健康確保に努めてまいりたい。

また、平成二十九年建議においては、「時間外労働の上限規制等に関する労使合意」(平成二十九年三月十三日。以下「労使合意」という。)を踏まえ、「特例として、臨時的な特別の事情がある場合として、労使が合意して労使協定を結ぶ場合においても上回ることができない時間外労働時間」は、休日労働を含まず、年七百二十時間とされており、政府としては、法制度の整備に当たっては、当該労使合意を尊重することが適切であると考えている。

お尋ねの②について、平成二十九年建議において、「可能な限り労働時間の延長を短くするため、新たに労働基準法に指針を定める規定を設け、当該指針の内容を周知徹底するとともに、行政官庁は、当該指針に関し、使用者及び労働組合等に対し、必要な助言・指導を行えるようにすることが適当である」「当該指針には、特例による労働時間の延長をできる限り短くするよう努めなければならない旨を規定するとともに、併せて、休日労働も可能な限り抑制するよう努めなければならない旨を規定することが適当である」とされたところである。政府としては、労使合意の趣旨を踏まえて、厚生労働大臣が労働時間の延長を適正なものとするための指針(以下「指針」という。)を定める規定を新たに設けること等を内容とする労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)の改正案を国会に提出し、当該改正案の成立後、当該規定に基づいて指針を作成するとともに、その周知徹底を図ることが重要であると考えており、今後、適切に対応してまいりたい。

二について

お尋ねの「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドラインについて」(平成二十九年一月二十日付け基発〇一二〇第三号厚生労働省労働基準局長通知)の別添「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(以下「労働時間適正把握ガイドライン」という。)については、あらゆる機会を通じて幅広く周知を図ることとしており、労働相談、集団指導等における周知、厚生労働省ホームページへの掲載、パンフレットの作成及び配布、使用者団体等への傘下企業等への周知について要請等を行うとともに、監督指導時においても、労働時間適正把握ガイドラインに基づく適正な労働時間の把握が行われていないと認められる事業場に対して労働時間適正把握ガイドラインについての指導を実施する等して、広く周知している。

政府としては、労働時間適正把握ガイドラインの周知を行うことは重要であると考えており、引き続き、こうした取組を通じて、その周知徹底に努めてまいりたい。

三について

診療報酬改定のスケジュールについては、年末の予算編成過程を通じて決定された改定率に基づき、中央社会保険医療協議会において、個々の診療行為に係る診療報酬点数等について審議を行う必要があること、診療報酬において評価する診療行為は、高度化・多様化しており、診療報酬の改定自体が膨大な作業であること、保険医療機関の経営等を考慮すると、施行時期を会計年度に合わせる方が合理的であること等から、御指摘のように見直すことは難しいと考えている。

四について

政府としては、時間ではなく成果で評価される働き方を希望する労働者のニーズに応えるため、いわゆる高度プロフェッショナル制度を創設する必要性があると考えており、一定の要件の下、労働基準法第四章で定める労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定を適用しないこととする当該制度を創設すること等を内容とする労働基準法等の一部を改正する法律案(以下「労働基準法改正法案」という。)を第百八十九回国会に提出した。当該制度の対象者は、業務の遂行手段や時間配分を自らの裁量で決定し、自律的で創造的に働く者であり、一律の時間外労働の上限規制になじまない。しかしながら、当該制度の対象者の健康の確保を図るため、労働基準法改正法案による改正後の労働基準法第四十一条の二第一項第四号に規定する措置(以下「健康確保措置」という。)を講ずることとしている。労働基準法改正法案の成立後、健康確保措置がきちんと実施されるよう、その周知徹底に努めてまいりたい。

五の1について

労働基準法改正法案により、いわゆる企画業務型裁量労働制の対象業務として追加するもののうち、「法人である顧客の事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析を行い、かつ、これらの成果を活用した商品の販売又は役務の提供に係る当該顧客との契約の締結の勧誘又は締結を行う業務」については、「今後の労働時間法制等の在り方について(建議)」(平成二十七年二月十三日労働政策審議会建議。以下「平成二十七年建議」という。)において「店頭販売やルートセールス等、単純な営業の業務である場合や、そうした業務と組み合わせる場合は、対象業務とはなり得ない」とされており、これを踏まえ、今後、適切に対応してまいりたい。

五の2について

いわゆる企画業務型裁量労働制の対象者に講ずる健康・福祉確保措置(労働基準法第三十八条の四第一項第四号に規定する「対象業務に従事する第二号に掲げる労働者の範囲に属する労働者の労働時間の状況に応じた当該労働者の健康及び福祉を確保するための措置」をいう。)については、平成二十七年建議において、「企画業務型裁量労働制の対象労働者の健康確保を図るため、同制度の健康・福祉確保措置について、一定の措置を講ずる旨を決議することが制度上の要件とされている。この健康・福祉確保措置について、現行の法定指針に例示されている事項(代償休日又は特別な休暇の付与、健康診断の実施、連続した年次有給休暇の取得促進、心とからだの健康窓口の設置、配置転換、産業医の助言指導に基づく保健指導)を参考にしつつ、長時間労働を行った場合の面接指導、深夜業の回数の制限、勤務間インターバル、一定期間における労働時間の上限の設定等を追加することも含め検討の上、省令で規定することが適当である」とされており、今後、適切に対応してまいりたい。

六について

いわゆる勤務間インターバルについては、平成二十九年建議において、「労働時間等設定改善法第二条(事業主等の責務)を改正し、事業主は、前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息の確保に努めなければならない旨の努力義務を課すとともに、その周知徹底を図ることが適当である」とされたところである。政府としては、いわゆる勤務間インターバルは、労働者の生活時間や睡眠時間を確保し、健康な生活を送るために重要であると考えており、平成二十九年建議に沿って労働時間等の設定の改善に関する特別措置法(平成四年法律第九十号)の改正案を国会に提出し、労使の自主的な取組を促進してまいりたい。

七の1について

お尋ねの病児保育事業(児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第六条の三第十三項に規定する病児保育事業をいう。以下同じ。)の施設整備に対する財政支援の執行状況については、平成二十八年度に子ども・子育て支援整備交付金の交付決定を行った件数は三十九件で、交付額は二億三百二十八万四千円である。

七の2について

病児保育事業は、病児、病後児等について、安静室、看護師、保育士等を確保した上で、適切かつ円滑に行われる必要がある。

政府としては、病児保育事業は、子育てしながら就労する保護者への支援として非常にニーズが高い重要なものであると認識しており、保育所等における病児保育事業の実施を支援するため、市町村(特別区を含む。)が行う病児保育事業の施設整備に対する補助を通じて、引き続き、病児保育事業の体制整備に努めてまいりたい。

八について

政府としては、障害児が通学等をできるような支援を行うことは重要であると考えており、先の答弁書(平成二十八年八月十五日内閣参質一九一第一八号)二の2の(5)の③についてでお答えしたとおり、障害児に対して個別に通学等の移動支援を給付することについては、障害児の通学等に関する訓練を児童福祉法第六条の二の二第一項に規定する障害児通所支援において実施することも含め、現在、検討を行っているところである。

九の1について

政府としては、いわゆる雇用型テレワークにおける労務管理及び情報セキュリティ対策の留意点を示すことが重要であると考えており、「働き方改革実行計画」(平成二十九年三月二十八日働き方改革実現会議決定。以下「実行計画」という。)において、「これまでは自宅での勤務に限定されていた雇用型テレワークのガイドラインを改定し、併せて、長時間労働を招かないよう、労働時間管理の仕方も整理する」及び「Wi-fiやクラウド環境、スマートフォンやタブレットの普及など近年のICT利用環境の進展や、サテライトオフィス勤務やモバイル勤務の実態を踏まえ、テレワーク導入時に必要なセキュリティ面の対応に関するガイドラインについても改定する」とされていることから、平成二十九年度中に、「情報通信機器を活用した在宅勤務の適切な導入及び実施のためのガイドラインの改訂について」(平成二十年七月二十八日付け基発第〇七二八〇〇一号厚生労働省労働基準局長通知)の別添「情報通信機器を活用した在宅勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」及び「テレワークセキュリティガイドライン(第三版)」(平成二十五年三月総務省作成)の内容の見直し及び周知啓発を行ってまいりたい。

九の2について

情報通信機器を活用した雇用契約に基づかない就労(以下「非雇用型テレワーク」という。)のうち、請負契約に基づきサービスの提供等を行う在宅形態の就労(法人形態により行っている場合、他人を使用している場合等を除く。以下「在宅ワーク」という。)については、厚生労働省として、「「在宅ワークの適正な実施のためのガイドライン」の改正について」(平成二十二年三月三十日付け雇児発〇三三〇第十四号厚生労働省雇用均等・児童家庭局長通知)の別添「在宅ワークの適正な実施のためのガイドライン」(以下「在宅ワークガイドライン」という。)において、在宅ワークの注文者が契約締結時に守るべき事項等を示し、その周知啓発を行っている。

非雇用型テレワークについては、仕事内容や契約形態の多様化が見られるため、政府として、実行計画を踏まえ、トラブルの実態等を把握した上で、在宅ワークガイドラインの改定を行い、その周知啓発及び遵守を図るとともに、法的保護の必要性を含め、中長期的に検討を行ってまいりたい。

参議院の原文

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