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沿岸漁場整備開発事業の実施に当たつての構造物設計指針に定められたコンクリートの抗張力強度に関する質問主意書
衆議院 第112回 第22号
質問本文
衆議院議長 原 健三郎 殿
沿岸漁場整備開発事業の実施に当つての構造物設計指針に定められたコンクリートの抗張力強度に関する質問主意書
世界第一を誇つた我が国の漁業は、遠洋漁業においては、米国、ソ連及びその他関係沿岸国による厳しい漁業規制のもとで、外国二百海里水域での漁獲の権利を失い、漁獲の著しい減少を余儀なくされており、また、我が国沿岸水域においても水質の汚濁、埋立ての進行等により貴重な漁場を失つてきた。
政府は、このような状況に対処するため、昭和四十九年に沿岸漁場整備開発法を施行し、沿岸漁場整備開発計画に基づく人工魚礁設置等の事業を実施することとした。
その後、この計画は更新されたところであるが、私はこの間、人工魚礁構造の科学的・技術的発展を願い、また、安全性、耐久性、機能性、経済性等の面においても、国の補助事業に使用されるに足りる十分な人工魚礁が開発・普及されるよう願つてきた。
このため、日頃から人工魚礁に関する技術的知見を有する専門家等との交流を進めてきたが、最近、専門家の間から、また設置現場から、人工魚礁の耐久性・安全性に関して疑問が提起されている。
昭和六十三年度からは、第三次の沿岸漁場整備開発計画に基づく事業が実施されることとされており、緊急を要すると考える。
従つて、次の事項について質問する。
一 沿岸漁場整備開発計画に基づき、現在まで沿岸漁場の整備のために投じられた総事業費、そのうち、人工魚礁設置のために投じられた事業費、並びに国と事業主体等が支出したそれぞれの経費の総額を明らかにせよ。
二 人工魚礁設置に関する計画の具体的内容とその実施状況を示せ。
三 第一次・第二次沿岸漁場整備計画に基づく人工魚礁の具体的設置場所及びその効果を明らかにせよ。
また、この間に人工魚礁に関し会計検査院による査察が行われたか。行われたとするならばなにが指摘され、どのような改善措置を講じたか明らかにせよ。
四 国の予算支出の対象となる事業については、その事業に関し統一的な基準があるべきと考えるが、基本的な考えはどうか。
五 沿岸漁場整備開発事業の実施に関し、「沿岸漁場整備開発構造物設計指針 ― 昭和五十九年版 ― 」がある。これは、現在における水産土木技術の最高水準の知識を集めたもので、同事業の実施に当たつては、すべてこれに準拠すべきであると考えるが、本指針の性格と評価はどうか。
六 同指針の第四編、各論第一章、魚礁の一 ― 六部材強度�Dは、コンクリートを部材とする人工魚礁の設計に当たつての強度計算として「コンクリートの抗張力計算」を記している。
このことについて、人工魚礁の専門家は次のような見解を持つている。
「コンクリートは、圧縮に強く、抗張力は小さい。特に海中で使用される人工魚礁のような製品は、設置時の衝撃力並びに海中に於ける外力を受けるため、コンクリートの抗張力計算がなされていないものについては、当然コンクリートのひび割れが発生し、海水により鉄筋が腐食膨張して、そのために人工魚礁が崩壊してしまうことは火を見るより明らかなことである。よつて、コンクリート強度の計算時においては、指針�Dで規定しているように、最低限圧縮の十分の一の引張り強度を遵守すべきものである。」
「コンクリート部材の設計法には、許容応力度設計法と終局強度設計法とがある。許容応力度設計法では、コンクリートなどの使用材料の許容応力度をこえることを許していない。換言すれば、部材の応力度がコンクリートなどの使用材料の許容応力度に達したときをもつて部材の破壊とみなしている。従つて、この方法で設計を行つた場合、コンクリートの引張許容応力度が圧縮許容応力度の十分の一のときに、部材の引張側にひび割れが発生するということになる。これは、非常に大変な計算ではあるが、海中の構造物に対しては、この位の設計は必要である。」
「たとえ、鉄筋入りのコンクリート製品であつても、魚礁のような、大きな衝撃を受ける海中構造物は鉄筋にその働きを頼ること自体が無理で、まず、コンクリートの破壊を防ぐことが先決である。」
以上のような見解に対し、農林水産省ほどのような考え方を持つているか。また、人工魚礁に係るコンクリートの抗張力問題についていかなる指導を行つてきたか示せ。
七 現在設置されている人工魚礁はすべて十分な抗張力強度が確保されているのか。設置されている人工魚礁にはコンクリートが崩れ落ち、錆びた鉄筋・鉄板等がむき出しになつているものがあるといわれている。万一、このような事態があるのであれば予算執行上問題があると考えるが、その改善策を示せ。
右質問する。
政府答弁書
一について
沿岸漁場整備開発計画に基づき昭和五十一年度から昭和六十二年度までに支出された沿岸漁場整備開発事業の総事業費は、三千八百一億円である。そのうち、御質問の人工魚礁設置のために支出された事業費は、千七百五十八億円であり、国が千六十四億円を、事業主体等が六百九十四億円をそれぞれ支出した。
二について
人工魚礁の設置に関し、昭和五十一年度から昭和五十七年度までを計画期間とする第一次の沿岸漁場整備開発計画においては、事業量を七百五十億円とし、昭和五十六年度までの実績は、六百六十七億円であつた。また、昭和五十七年度から昭和六十二年度までを計画期間とする第二次の沿岸漁場整備開発計画においては、事業量を千四百億円とし、昭和六十二年度までの実績は、千九十一億円であつた。
三について
第一次及び第二次の沿岸漁場整備開発計画に基づき、天然礁の分布の状況、水域の底質、地域における沿岸漁場の利用の方向等を考慮しつつ、人工魚礁の設置を進めてきたものであり、その結果、漁業生産量の増大等の成果が得られたところである。
また、この間、会計検査院から人工魚礁に関し、指摘を受けたことはない。
四について
沿岸漁場整備開発事業の実施に当たつては、個別の事業計画の審査等を行う際に、社団法人全国沿岸漁業振興開発協会の発行に係る「沿岸漁場整備開発事業構造物設計指針」(以下「設計指針」という。)を考慮する等、十分な機能を有する施設の整備が図られるよう措置しているところである。
五について
設計指針は、沿岸漁場整備開発事業における構造物の設計等が適正かつ円滑に行われるよう、社団法人全国沿岸漁業振興開発協会が示したものであり、現在の水産土木技術に関する高度な知見が集約されたものであると考えている。
六について
人工魚礁は、海底への着底時等に受ける強い外力に抵抗するため、その材料としてコンクリートを用いる場合には鉄筋コンクリート製とされている。このような人工魚礁については、一般的に、圧縮力に対してはコンクリートで、引張力に対しては鉄筋で抵抗するという設計方法が採られているが、着底時の衝撃による外力に対しては、その作用時間が瞬時であること等を勘案すれば、十分な抵抗力を有すると判断される場合には、引張力に対して鉄筋及びコンクリートの双方で抵抗するという設計方法を採ることも考えられる。
これが設計指針の第四編第一章一 ― 六の�Dの記述の趣旨であると理解しており、このことを踏まえ、人工魚礁の適切な設計が行われるよう事業主体を指導しているところである。
七について
人工魚礁の耐久性については、設計指針等に沿つて慎重に検討されており、人工魚礁は十分な強度を有しているものと考えている。
なお、人工魚礁のコンクリートが崩れ落ちた事例についての報告は受けていない。
今後とも、予算の適正な執行がなされるよう事業主体を十分指導してまいりたい。
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