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奥只見発電所増設工事に関する質問主意書
衆議院 第141回 第8号
質問本文
奥只見発電所増設工事等に関する質問主意書
阪神淡路大震災による高速道等公共施設の倒壊の事実は、わが国の建造物の設計基準の見直しをせまるものとなり、特に安全性についての見直しが各省により行われてきたところである。ところで、既設のダム事業についても、同様に安全性について疑問が生じているところである。そこで、以下のとおり質問する。
一 只見川・阿賀野川の既設ダムについて
1 只見川および只見川合流地点から新潟市の日本海までの阿賀野川に設置されているダムの名前と、ダム設置管理者名、目的、その立地点、各貯水量をダム別に示されたい。
2 奥只見ダムが決壊した場合の被害予測は行っているのか。行っていない場合にはその理由を示されたい。また、予測している場合には、その被害予測の内容を記されたい。特に、奥只見ダムが満水時に決壊したと想定した場合、新潟市までの間にあるダムが被る被害予測と、流域で想定される被害内容、ならびに、決壊した奥只見ダムからの流出水が各ダムに到達する時間等を予測している場合には、これも併せて示されたい。
二 既設ダムの再工事について
1 国内で、満水の既設ダムに堤体部地下を掘削したような事例について承知しているか。それはどこのダムで、どのような事業か示されたい。
2 既設ダムの地下部掘削行為について、その安全性は現行法でどのような審査が行われるのか。根拠法および審査基準を示されたい。
3 奥只見ダムで一九九四年から実施されている堤体部地下掘削工事は、河川管理上の安全性について審査を行ったのか。行った場合にはその内容を示されたい。行っていない場合にはその理由を示されたい。
三 奥只見ダム増設工事について
1 奥只見ダム増設関連工事において、ダム堤体部地下のトンネル掘削工事現場で一九九五年七月に二回、一九九七年七月までに数回の落盤事故が二箇所で発生したと聞いているが、事実か。事実とすれば、その事故の起こった年月日と地点、内容について示されたい。また、事故の報告を受けているとすれば、それはいつ、誰が、誰から報告を受けたのかも併せて示されたい。
2 1の落盤事故の原因、およびなされた対策について具体的に示されたい。
3 このような事故発生が、ダム崩壊につながる危険性について、事業者および河川管理者は検討しているか。検討していない場合にはその理由を、検討している場合にはその検討内容につき示されたい。また、1の事故発生によってもダムは安全であるという判断は、どのような理由に拠ったのかも併せて示されたい。
4 奥只見ダムの本体建設当時における地盤災害についての記録があると聞いているが、事実か。事実とすればそれはいつ、どのような原因で、どんな事故が発生したのかを示されたい。
5 わが国において既設ダム堤体部を掘削し、かつ堤体に穴開け、発電機を設置するような事例は過去に存在したのか。存在する場合には、ダムの名称と設置した年月日を示されたい。
6 奥只見ダム本体建設時に行った構造計算時(ダムの安全性の確保)に、現在同ダムで実施されているような、新たな堤体掘削、大規模な空洞設置、およびダム本体の穴開けを想定していたのか。していた場合には、その想定内容を示されたい。
7 そうした追加工事が、ダム本体のおよびダム堤体地下部の安全性を脅かさないとする、科学的な根拠はあるのか。あるとすれば、どのような根拠かを示されたい。このような工事で、ダム崩壊の危険性がないとの報告があるとすれば、どのようにしてダム工事における安全性を確保したのかを示されたい。
8 奥只見ダムの増設工事において発生した一九九五年七月の落盤(トンネル天井部の崩落)事故は、七月十五日、十七日の二回にわたり幅約八メートル、高さ七メートル、長さ二十メートルに渡って天井部が落下したと聞いているが事実か。また、その原因はトンネル内部のハンレイ岩と粘板岩に挟まれた蛇紋岩部分が、そっくり落盤したと聞いているが事実か。
当該落盤事故現場では、ハンレイ岩と蛇紋岩の接地点天井部で毎分三十リットル程度の湧水があり、付近の天井部にはヘアクラック沿いに遊離石灰の融出が確認されていたと聞いているが事実か。また、この事故が起こった時期は、奥只見ダムが満水時期であり、地下水圧も相当高く、その圧力で落盤が誘発されたと聞いているが、事実か。加えて、当該落盤事故の報告を受けたとすれば、いつ、誰が、誰から報告を受けたのかを示されたい。
9 8で述べた崩落現場の復旧はいつ、どのような方法で行ったのか。復旧を行った理由についても併せて示されたい。当該復旧では、崩落現場を放置したままでは、何か危険性があったのか。
その想定された危険性の内容について報告を受けているか。受けているとすれば、それはいつ、誰が、誰から報告を受けたのかを示されたい。また崩落現場を放置したままにしておいた場合に想定された危険性とはどのようなものであるかについても示されたい。
10 8および9で述べた、想定された危険性については、誰が判断し、その復旧許可をどのような根拠法に基づいて、いつ誰に対して行ったのかを示されたい。
11 奥只見ダム満水時に、新たな発電機格納地下空間部分にかかる圧力はどの程度になるのかを示されたい。
四 ダム災害について
1 世界各地で発生したダム災害について、どのようなものが発生していると認識しているか。ダム災害の内容と、その評価について示されたい。
2 国内においてダムが崩壊するような災害は、生ずることがあるのか。ないとすればその理由を、あるとすれば、災害の内容を示されたい。
右質問する。
政府答弁書
一の1について
只見川及び阿賀野川の只見川との合流点から河口までの区間に設置されているダム(河川管理施設等構造令(昭和五十一年政令第百九十九号)第三条各号に掲げるダム以外のダムをいう。四の1を除き、以下同じ。)の名称、設置者及び管理者、目的、ダムの堤体部(ダムの堤体、洪水吐き及び減勢工をいう。以下同じ。)の所在する町村名並びに有効貯留量は、別表第一のとおりである。
一の2について
奥只見ダムが決壊した場合の被害予測は行っていないが、ダム建設時において、旧電気事業法(昭和六年法律第六十一号)及び旧河川法(明治二十九年法律第七十一号)に基づき、十分な審査を行った上で許認可を行ったものと認識している。
二の1について
我が国において、貯水池の水位が常時満水位以上である場合に堤体部の水平投影部の地下(以下「堤体部地下」という。)において掘削工事が行われたダムの事例について、そのダムの名称、所在する市町名
及び当該掘削工事の内容は、別表第二のとおりである。
二の2について
既設ダム(建設が完了し、管理中のダムをいう。以下同じ。)の堤体部地下の掘削行為が電気工作物(電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)第二条に規定する電気工作物をいう。以下同じ。)の設置又は変更の工事に当たる場合には、通商産業大臣が、電気事業法第四十七条及び第四十八条に基づき、当該工事の工事計画が、発電用水力設備に関する技術基準(昭和四十年通商産業省令第五十九号)に適合しているかどうか審査を行っている。
また、既設ダムの堤体部地下の掘削行為が行われる場合には、河川管理者が、河川法(昭和三十九年法律第百六十七号)に基づき、当該行為が行われても既設ダムの安全性が確保されることを河川管理施設等構造令等により確認することとしている。
二の3について
お尋ねの工事は、奥只見発電所の増設計画に基づき建設される予定の地下発電所周辺の地質状況を把握する等のため事業者が行っている調査に係る工事であると考えられるが、当該工事は奥只見ダム堤体部から約百三十メートル以上離れた区域で行われたものであり、当該区域は河川区域外であるため、河川法に基づく許可に係る審査は行われていない。
三の1について
崩落の発生した調査横坑は電気工作物に該当しないことから、電気事業法等に基づく報告義務はないが、奥只見発電所増設工事に関連するものであり、電気事業者を一般的に監督する観点から、通商産業大臣が当該事業者から聴取したところ、以下のとおりである。
本工事は、ダム堤体部地下のトンネル掘削工事ではなく、奥只見発電所の増設計画に基づき建設される予定の地下発電所周辺の地質状況を把握する等のため事業者が行っている調査に係る工事である。崩落は、工事を中止していた平成七年十一月から平成八年七月にかけての間に、奥只見ダム堤体部から約二百六十メートル離れた本調査横坑内部で発生したものである。
崩落箇所は一か所であるが、発生回数及び日時は特定できていない。崩落範囲は、長さ約二十メートル、幅約七〜八メートル、高さ約六〜七メートルである。
崩落に関する報告については、事業者が、平成八年七月二十二日福島県生活環境部環境保全課に対し、同年七月二十六日新潟県環境生活部環境企画課に対し及び同年八月九日建設省北陸地方建設局に対し、それぞれ連絡をするとともに、同年九月二十日山口営林署に対し届出を行っている。
三の2について
お尋ねの件については、事業者から聴取したところ、以下のとおりである。
本調査横坑の地質は、水を含むと膨張する脆弱な蛇紋岩が崩落箇所に局所的に分布しているものの、全体的に良好であり、崩落箇所は、掘削当時は安定していた。しかしながら、平成七年十一月から平成八年七月にかけて工事を中断した際に本調査横坑内の排水を停止したことから、横坑が水没し、横坑周辺の緩んだ蛇紋岩が水を含み横坑内部に膨張して強度が低下したため、崩落が生じたものであると考えられる。
また、対策については、崩落箇所の空洞をモルタル等で充てんした後、崩落した岩石を除去し、鋼製支保工と吹付コンクリートで補強し復旧したものである。
三の3について
事業者においては、本調査横坑の位置がダム堤体部から約百三十メートル以上と十分離れた位置にあること、横坑規模が小さいこと、地質が全体的に良好なこと、崩落箇所がダム堤体部から約二百六十メートルと十分離れた位置にあり、かつ、崩落が小規模であること等に照らし、今回のような崩落が、ダム崩壊につながる危険性はないものと判断したと承知している。
なお、本件調査横坑工事は河川区域外の土地において行われたものであるため、河川法に基づく許可に係る審査は行われていないが、河川管理者は、崩落の発生後、事業者から崩落の状況及び復旧対策の内容につき報告を受け、河川法第七十八条に基づくダムの立入検査等の必要はないものと判断したものである。
三の4について
お尋ねの件については、事業者から聴取したところ、以下のとおりである。
工事記録によれば、奥只見ダム基礎岩盤の掘削工事中の昭和三十四年八月二十六日に、ダム右岸上部斜面の掘削面から約百五十立方メートルと推定される崩壊が発生し、同年九月十三日まで断続的に続いた。また、昭和三十五年三月十五日にダム右岸上部斜面で崩壊が発生し、同月二十一日まで断続的に続いた。これらの崩壊の主な原因は、掘削勾配が急であったこと、雪解けの水が浸透したこと等と考えられる。
三の5について
既設ダムにおいて、堤体を掘削して穴を開け、発電機を設置したものの事例について、そのダムの名称と発電機を設置した年月日は別表第三のとおりである。
三の6について
奥只見ダム本体の工事計画認可に当たっては、お尋ねのような工事は想定していない。
三の7について
追加工事に伴う穴開け部周辺コンクリート及び地下空洞周辺の応力状態についての構造上の安全性並びにダム堤体の安定性につき、追加工事の工事計画が、発電用水力設備に関する技術基準に適合しているかどうか、通商産業大臣が工事計画の認可に先立って審査している。
三の8について
崩落の発生した調査横坑は電気工作物に該当しないことから、電気事業法等に基づく報告義務はないが、奥只見発電所増設工事に関連するものであり、電気事業者を一般的に監督する観点から、通商産業大臣が当該事業者から聴取したところ、以下のとおりである。
崩落の発生日時については特定されておらず、事業者が崩落箇所を目視確認した日付としては、平成八年七月十五日及び十七日である。
崩落箇所については、ハンレイ岩と粘板岩に挟まれて局所的に分布する蛇紋岩部分が崩落したものである。
お尋ねにある崩落箇所の規模、湧水量、湧水箇所、遊離石灰の融出については、おおむね事実である。
崩落の発生した日時が不明のため、崩落が満水時期であったかは不明であるが、ダム下流の地下水位は奥只見ダムの水位にかかわらず年間を通じてほぼ一定であることから、崩落の誘発の原因がダムの満水に伴う高い地下水圧であるということは考えにくい。崩落の原因は、平成七年十一月から平成八年七月にかけて工事を中断した際に本調査横坑内の排水も停止したことから、横坑が水没し、横坑周辺の緩んだ蛇紋岩が水を含み横坑内部に膨張して強度が低下したためであると考えられる。
崩落に関する報告については、事業者が、平成八年七月二十二日福島県生活環境部環境保全課に対し、同年七月二十六日新潟県環境生活部環境企画課に対し及び同年八月九日建設省北陸地方建設局に対し、それぞれ連絡をするとともに、同年九月二十日山口営林署に対し届出を行っている。
三の9及び10について
本件調査横坑工事は、電気工作物の設置又は変更の工事に該当せず、また、河川区域外の土地において行われたものであるため、事業者は、本調査横坑の復旧工事を実施するに当たって、電気事業法及び河川法による許認可を得る必要がない。
なお、本件復旧工事の事実関係について、事業者から聴取したところ、以下のとおりである。
復旧は、平成八年八月八日から同年十月二十一日までの間と、平成九年七月一日から同年九月三十日までの間の二回にわたり実施している。
復旧方法は、崩落部分の空洞をモルタル等で充てんした後、崩落した岩石を除去し、鋼製支保工と吹付コンクリートで補強している。
復旧を行った理由は、本件の崩落によって、ダムの安全性が損なわれる恐れが生じたためではなく、本調査横坑を保全する必要があったためである。
三の11について
事業者の解析結果によれば、奥只見発電所増設計画において増設される地下発電所にかかる圧力は、天井コンクリート部において最も大きく、三トン毎平方メートル程度である。
四の1について
過去五十年間に発生したダムの損壊事故として把握している事例について、損壊したダムの名称、損壊の内容及びそれについてなされている評価は、別表第四のとおりである。
四の2について
我が国において建設されるダムについては、河川管理施設等構造令等により構造上の安全性の確認を行うとともに、河川管理者による定期検査、ダムの設置者による管理主任技術者の設置等により、安全性の確保が図られているところである。
別表第一
(注)有効貯留量の単位は千立方メートルである。
別表第二
別表第三
別表第四
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