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徳山ダムに関する質問主意書

衆議院 第143回 第18号

提出者
衆議院
提出日
1998年10月1日
内閣転送 1998年10月5日
答弁書受領日
1998年11月6日
提出から36日
答弁の項目数
10
質問 4,347字/答弁 3,413字

質問本文

徳山ダム建設予定地域の河川管理に関する対策は、緊急を要すると考える。

従って、次の事項について質問する。

一 徳山ダム水没地への強制収用準備と確認書について

本年六月十日、水資源開発公団(以下「公団」という)が徳山ダム建設事業において土地収用法に基づく事業認定申請を行った。

1 一九七一年十二月二十七日付の「徳山ダム実施計画調査申入書に関する確認書」(以下、確認書という)は、「徳山村長ならびに徳山ダム対策委員長(以下、「甲」という)と建設省中部地方建設局徳山ダム調査事務所長(以下、「乙」という)とは、岐阜県知事立会いのもとに、昭和四十六年十月十六日徳山村民大会における下記説明事項について相互に確認する」として三者が署名捺印したものであり、第九項には「乙は、本事業が水資源開発公団等第三者に継承された場合は乙の責任において、本確認書を継承する第三者に引継ぐ(後略)。」とある。

ア 建設省は確認書の「乙」として、また公団を監督する官庁として、確認書の条項遵守の義務があると考えるが、いかがか。

イ 公団徳山ダム建設所は、徳山ダム建設中止を求める会(以下「中止を求める会」という)が、本年六月十七日に同所副所長と交渉を行った際、またそれ以降六月二十四日まで、この文書の存在を確認しなかった。また同副所長は、六月十七日に「強制収用なる言葉は、存在しない、使用しない。」と述べて、強制収用という言葉を使用している確認書の存在を実質的に無視した。建設省は上記第九項の責任を十分に果たしていないのではないかと危惧されるが、いかがか。

2 また、確認書と同日に徳山村長ならびに徳山ダム対策委員長から建設省中部地方建設局徳山ダム調査事務所長に提出された差入書には、「徳山ダム実施計画調査申入書に関する確認書は、建設省の要望により条項の削除、字句の修正、表現の変化によって徳山村住民の真意が大きく阻害され、その内容は、徳山村住民にとって必ずしも納得のゆくものではなく、このまま実施調査に入ることについては、住民はかなりの不満と不安を残している。このことについては、昭和四十六年十二月二十五日徳山区の集会において、徳山ダム工事事務所長及び岐阜県開発局長との懇談の中でも討議したものであるが、そのうち特に住民の不安とする事項を列記して確認書の交換にあたり、確認書に添付して差入するものである。」とある。この経緯からすると、差入書には建設省職員の押印はないものの、道義的に、建設省及び公団には差入書の条項を最大限尊重する義務が存在すると考えるがいかがか。

3 確認書第八項には「乙は、(中略)本確認書第一項の趣旨にかんがみ、みだりに強制収用は行わないものとする。」とある。また、上記差入書の第二項には「昭和四十六年十月十六日徳山村民大会において、中部地方建設局徳山ダム調査事務所長及び岐阜県知事の言及した、ダム建設用地取得における土地収用法の見解の趣旨にかんがみ、いかなる段階においても、住民の犠牲となるような強制収用を行わないこと。」とある。

今般、強制収用への手続きとして公団が事業認定申請を行ったことは、確認書第八項及び差入書第二項といかなる関係にあるか、ご説明願いたい。

4 事業認定申請の時点で、確認書及び差入書の当事者でもある地権者に対して、「3」に言及した説明がきちんとなされていないことは、甚だ遺憾であると考えるが、いかがか。

5 一九七一年の確認書及び差入書作成から三十年近く経過して、まだ事業者が用地取得を終えていないのは、地権者の側からの信頼を得られていない事業者の側の責任であると考える。事実、その理由をもって「中止を求める会」会員に水没地の権利の一部を贈与した地権者もいるときく。

ア 現在、公団を監督する立場にある建設省として、これをどのように考えられるか。

イ 「中止を求める会」会員等新たな地権者に対して、どのように対応する考えか。

6 建設省は、本年七月十四日公表のいわゆる建設白書において、「国民との対話を重視する」と述べている。徳山ダム建設事業における強制収用手続き開始は、この姿勢に逆行するものと考えるが、いかがか。

二 徳山ダム建設予定地域の河川管理についての再質問

五月十九日に質問主意書を提出し、六月十九日に答弁書を頂いた件について、疑問な点等を再度質問する。

なお、当該地域における河川法の運用については、六月十八日付「建設省河政発第六十号、建設省河治発第三十三号、建設省河開発第六十九号」通達(以下「六月十八日付通達」という)によって、是正される見通しとなったことは多とするところである。また全国的に河川法二十四条運用についての「基準作り」を進める旨耳にしている。他省庁も含めて、余りにも大幅な裁量による弊害を指摘する国民の声が強くなっている昨今、これをなくす上からも喜ばしいことと受け止める。その上で、当該の問題に表れた建設省職員の対応について、以下の質問をする。

1 答弁書の「1について」によると、昨年七月二十五日の時点で、建設省中部地方建設局職員が徳山ダム建設中止を求める会(以下「中止を求める会」という)の会員に対して「治水上問題はない旨及び河川一時使用届出書が提出されている旨を口頭で回答している。」とされている。しかし、「中止を求める会」会員によると、その時点では中部地方建設局職員笛田俊治氏は「治水上問題はなく、法的にも適切に処理されている」と述べ、河川一時使用届けについては一切言及はなかったという。「中止を求める会」会員は、その後約四ヶ月間、何度も笛田俊治氏に電話して「法的にも適切に処理されている旨の法的根拠、法の条項」を尋ねたのに対七て、笛田氏は答えなかった。故に「中止を求める会」会員は、十二月になって木曽川上流工事事務所揖斐川出張所職員に電話したのであり、ここで初めて「一時使用届け」が過去において出された(平成七年四月に届け出され、期限は翌年三月までであった)旨を耳にしたと述べている。

ア 仮に平成九年七月二十五日時点で、笛田氏が「河川一時使用届けが出ている」旨を「中止を求める会」会員に伝えたのであれば、同時に笛田氏は一時使用届けの期限が切れてから一年三ヶ月以上経っていることも知っていたのであり、そのことを正確に回答すべきであった。これ以降の中部地方建設局が繰り返した「法的に適切に処理されている」旨の回答は、不正確・不適切なものであると考えられるが、いかがか。

イ 「中止を求める会」会員は、本年五月十九日の質問主意書に対する六月十九日答弁書まで、中部地方建設局職員からは、「法的に適正であった」という回答しか得ていない。アに述べた状況により、結果として、中部地方建設局における河川法二十四条運用の問題点が明らかにされ、その是正措置がとられるのが約一年の長期にわたって遅れたということを指摘したい。市民による検証の機会を奪い、必要な是正措置を遅らせたという意味で、アの職員の対応は、公務員として甚だ不適切な対応であると考えるが、いかがか。

ウ 「中止を求める会」会員は、上記のような対応は、当該の件で河川法二十四条を適用していないことを隠蔽するためではなかったか、との強い不信感を抱いている。こうした職員の不適切な対応が、建設省全体の公正さ、公明さに疑念を抱かせるものであったと考えるが、いかがか。

エ 今後の職員の市民への対応についていかが考えるか。

2 答弁書の「5から8までについて」及び六月十八日付通達によって、有限会社オヅリンサンに河川法二十四条に定める河川管理者の占用許可の手続きをさせていなかったのは、法の運用として不適切であったことが明らかになった。

ア 一九九七年十二月二十二日、中部地方建設局特定プロジェクト室からのFAXには、「ご指摘の作業道ならびに作業ヤードは、雑木及び用材の伐採、搬出、整理を目的としたものであり、河川予定地内の行為として禁止あるいは制限されるものではありません。(後略)」とあり、これは建設省としての見解であると口頭で述べている。建設省の組織としての法律の運用について意思統一が図られていなかったことの原因と責任は、どこに存在するのか。

イ 磯谷においては、一九九七年七月、有限会社オヅリンサンによる保安林不法伐採(無許可伐採)が発覚している。建設省が法を適用せずに、有限会社オヅリンサンの作業道敷設と使用を認めたことが結果として他の不法行為を惹起したことになるが、この責任はいかに考えるか。

3 「中止を求める会」会員は、一九九七年十二月に建設省監察官室に、上記職員の対応が公務員の信用を失墜させるものであったと考える旨を提出したところ、中部地方建設局の主任監査官に、文書を回された。主任監査官は「磯谷の作業道・作業ヤードなど河川関係の法律についてはよくわからないので笛田から答えさせる。」とのことで、本年二月に他の中部建設局職員名で、本年六月十八日付通達、及び六月十九日答弁書とは明らかに内容の異なる回答があった(上記2)。しかし、その後、肝心の「職員の対応が公務員の信頼を失墜させるものであったかどうか」の監査官としての見解については、未だ何ら返事がない。六月二十二日、「中止を求める会」会員がその旨主任監査官に再度要求したところ、本年七月三日付で、六月十八日付通達の写しとともに「本件に関しては、『徳山ダム予定地域の河川管理に関する質問主意書』に対する答弁書のとおりであります。なお、組織としての法律の運用について、意思の統一が図られていなかったものであり、別紙、平成十年六月十八日付三課長通達により、今後においては遺憾なきようとりはからうものであります。以上のことから、本件に関しては、所要の措置が講じられたものと、判断しております。」との回答があった。

昨年十二月以来、半年間、監査官としての調査もなく、見解も出さず、国会提出の質問主意書とその答弁書をもって「所要の措置が講じられた」というのは、(1)監査機能の放棄であり、(2)国会提出の質問主意書に拠って監査官としての回答の代わりとするのは、質問主意書及び答弁書の性格が歪められるおそれもある、と考えるが、いかがか。

4 本年度版建設白書で強調している公共事業における「国民との対話」重視の姿勢を実のあるものにするためにも、建設省職員は、市民に対して、誠意ある情報開示、説明責任の全うを心がけるべきだと考える。そのことにかんがみ、上記のような状態を、改めるべき具体的な方策について、ご説明願いたい。

右質問する。

衆議院の原文・経過

政府答弁書

一の1、3及び4について

建設省は、昭和五十一年十月一日に、昭和四十六年十二月二十七日付け「徳山ダム実施計画調査申入書に関する確認書」(以下「確認書」という。)記9に基づき、確認書を水資源開発公団(以下「公団」という。)に引き継いでおり、建設省中部地方建設局(以下「中部地方建設局」という。)及び公団は、確認書の趣旨を遵守して徳山ダム建設事業を実施してきたところである。

確認書の趣旨である藤橋村との合併前の徳山村(以下「旧徳山村」という。)の住民の生活再建を図るため、公団は、徳山ダム建設事業の実施に伴い住居の移転が必要となった旧徳山村の全世帯である四百六十六世帯(以下「旧徳山村全世帯」という。)について、各世帯の意向に沿った代替地を数か所に用意する等により各世帯の生活再建のための話合いを進め、平成元年三月三十一日までに建物等移転補償契約の締結並びに移転補償金等の支払及び代替地を求めた世帯への代替地の提供を終えたところであり、これにより旧徳山村全世帯は旧徳山村内から代替地等に住居を移転している。

建設省は、こうした経緯等に照らして、旧徳山村全世帯の生活再建が図られたものと考えており、徳山ダムの事業用地のうち、隣接地との境界確認等の問題から建物等移転補償契約締結時に住居の存する土地等と一括して用地買収契約を締結することができず現在も買収が完了していない山林等の早期取得を図るため、公団が徳山ダム建設事業について土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)第十六条に基づく事業の認定(以下「事業認定」という。)を申請したことは、確認書記8並びに昭和四十六年十二月二十七日に旧徳山村長及び徳山ダム対策委員長から建設省中部地方建設局徳山ダム調査事務所長に提出された差入書(以下「差入書」という。)記2の趣旨に反するものではないと考えている。

一の2について

差入書は、旧徳山村長、徳山ダム対策委員長及び建設省中部地方建設局徳山ダム調査事務所長が合意して作成された文書である確認書とは性格が異なるものであるが、差入書の趣旨も踏まえ、旧徳山村全世帯の生活再建のための措置を既に講じたところである。

一の5について

徳山ダムの事業用地の買収が現在もなお完了していないのは、旧徳山村の住民の生活再建を図るための措置の内容の決定に時間を要したこと、徳山ダムの事業用地が約千四百ヘクタールと極めて大規模であること、事業用地の約四割を占める共有地は隣接地との境界の確認に相当の期間を要した等により住居の存する土地等と一括して用地買収契約を締結することが著しく困難であったこと等の理由によるものと認識している。また、未買収の用地の取得に際しては、正当な損失補償がなされるべきであると考えている。

一の6について

中部地方建設局及び公団は、旧徳山村及び旧徳山村全世帯と対話を重ね、また、揖斐川流域住民に対しても理解及び協力を求めつつ徳山ダム建設事業を進めてきたところである。今回の公団による事業認定の申請は、こうした経緯も踏まえて行われたものであり、国民との対話を重視する姿勢に逆行するものではないと考えている。

二の1のア及びイについて

建設省中部地方建設局河川部(以下「河川部」という。)は、木曾川水系磯谷川に係る河川予定地等における有限会社オヅリンサンによる作業道路の設置(以下「本件作業道路の設置」という。)については、徳山ダム建設事業に係る立木移転補償契約に基づく水没地の立木の伐採のために行われるものであること等から、河川区域内の土地においても河川法(昭和三十九年法律第百六十七号)第二十四条に基づく許可を受ける必要がないと判断していたものであるが、当該判断は、河川法に照らし、結果的に不適切なものであったと考える。

御指摘の河川部担当職員は、こうした河川部の判断に従い、平成九年七月二十五日に徳山ダム建設中止を求める会(以下「中止を求める会」という。)の会員に対し、本件作業道路の設置について、治水上問題がない旨及び河川一時使用届(以下「一時使用届」という。)が提出されている旨を口頭で回答し、その後も法的に適切に処理されている旨の回答を行ったものであるが、河川法上の根拠を有しない任意の届出である一時使用届の期限が切れていたことを告げなかったことをもって、当該職員の対応が、御指摘のように「市民による検証の機会を奪い、必要な是正措置を遅らせた」とまではいえないと考えている。

二の1のウについて

二の1のア及びイについてで述べたとおり、河川部は、本件作業道路の設置について河川法第二十四条に基づく河川管理者の許可を要しないとの判断を行っていたものであり、当該判断に基づいて中止を求める会の会員への対応を行った職員には、本件作業道路の設置に当たり河川法第二十四条に基づく河川管理者の許可がなされていないことを隠ぺいする意図はなかったものである。

二の1のエ及び二の4について

建設省所管公共事業の実施に当たっては、国民に対する説明責任を果たすため、分かりやすく丁寧な情報の提供を行うことが重要であると考えており、この点における職員の一層の意識向上に努めてまいりたい。

二の2のアについて

河川区域内における土地の占用の許可に係る建設大臣の権限は、河川法施行令(昭和四十年政令第十四号)第二条第三号の特定水利使用に関するものを除き、河川法第九十八条及び同令第五十三条第一項に基づき地方建設局長に委任されている。本件作業道路の設置については、河川部は、建設本省に意見照会をする必要があるような特別の内容を有する事例ではないと考え、河川部の判断で、河川法第二十四条に基づく許可を必要とする行為ではないとしたものである。

建設省においては、このような事例が発生したこと等を踏まえ、平成十年六月十八日に建設省河川局水政課長等名で通達を発して、ダムによる水没予定地内の占用許可手続に関し地方建設局等の間の取扱いの統一を図ったところであり、今後とも、行政実務の積重ね及び組織間での情報の共有化に努め、法令の統一的運用に努めてまいりたい。

二の2のイについて

御指摘の「有限会社オヅリンサンによる保安林不法伐採」(以下「本件不法伐採」という。)は、磯谷川に係る河川区域等の外で行われたものと承知している。

河川法第二十四条に基づく許可は、河川管理上の支障の有無等を判断することによって行われるものであり、河川管理者は、本件不法伐採について責任を負うものではないと考える。

二の3について

建設省大臣官房監察官は、平成九年十二月二十二日の中止を求める会からの問い合わせに係る案件(以下「本案件」という。)は中部地方建設局で取り扱うべきものと判断し、建設省中部地方建設局主任監査官(以下「主任監査官」という。)に対応を指示したものである。主任監査官は、本案件について、事実確認のための調査を行い、改善すべき点があるか否かを自ら検討するとともに河川部に対しても再検討を促したところ、河川部は本件作業道路の設置は河川法第二十四条に基づく許可を必要とする行為ではないとした判断に疑義を生じ、建設本省に当該判断の是非について照会をした。これに対し、建設省河川局は当該判断とは異なる見解を示し、二の2のアについてで述べたとおり、通達によりダム水没予定地内の土地の占用許可手続に関する河川法第二十四条の運用の適正化を図ったものである。

また、中部地方建設局は、中止を求める会の会員への対応を行った担当職員の対応について、当時の経緯を慎重に検証しつつ検討を行ったが、当該職員は河川部の判断を基に対応を行ったのみで河川法第二十四条に基づく河川管理者の許可がなされていなかったことを隠ぺいする意図はなく、公務員の信頼を失墜させるような行為はなかったとの判断に達したことから、本案件に対する回答としては河川行政の在り方に関する判断を示すことで足りると考え、本案件については御指摘の答弁書のとおりである等の回答を主任監査官名で行ったものであるが、当該回答は回答方法としては必ずしも十分なものでなかったと考える。

本案件については、主任監査官の指摘を契機に中部地方建設局における業務の改善が図られていることから、御指摘のような監査機能の放棄というのは当たらないと考える。

衆議院の原文

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