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米軍岩国基地滑走路の沖合移設事業に関する質問主意書

衆議院 第147回 第12号

提出者
衆議院
提出日
2000年3月2日
内閣転送 2000年3月6日
答弁書受領日
2000年3月31日
提出から29日
答弁の項目数
6
質問 4,232字/答弁 3,321字

質問本文

在日米軍岩国基地滑走路の沖合移設事業は、瀬戸内海でも数少なくなった藻場・干潟の消滅を伴うため、瀬戸内海の環境を保全し、次世代に豊かな海を残していくためにも、その対策は、緊急を要すると考える。

従って、次の事項について質問する。

一 藻場・干潟の消滅の問題性に関して

本埋め立て計画が、瀬戸内海でも残り少ない藻場・干潟の消滅を伴うため、環境庁は、消滅する「藻場・干潟の回復措置について研究、実行することを条件」に埋め立て認可に同意した。事業主である広島防衛施設局は、環境庁の意見を踏まえて、一九九六年一一月、専門家による藻場・干潟回復調査検討委員会(以下、委員会)を設置した。そして「回復」が実現可能かどうかの保障は何一つないまま、一九九七年六月、工事は始まった。

1 委員会の検討結果がでる着工から四〜五年先まで、藻場・干潟を埋める工程には入らないということになっていると聞くが、それは事実か。

2 藻場・干潟の消滅と回復に関わる検討をするうえで、背景として瀬戸内海の浅海の状況、水質、生物生息環境の変化や現状について、どのように認識しているか。特に、藻場や干潟の現状、過去から現在までの変遷と、その将来に向けての意味についてどのように捉えているか。

3 2を踏まえて、わずかに残存した藻場や干潟をつぶす代償として、藻場などの回復措置をこうずる努力をするという考え方についてどのように思うか。近年、環境修復技術としてのミチゲーションなることばをよく見かけるが、ミチゲーション技術が、埋め立てや開発の免罪符として機能しかねない現状があるように見えるが、この点についてどう考えるか。

4 藻場の回復、特に移植技術については、若干の事例があるが、技術的に確立された段階といえるのか。広島市出島の例などを見ても試行錯誤が続いている段階である。しかも、これまでの例は、せいぜい数ヘクタール程度だが、岩国の事例では、少なくとも四〇ヘクタール以上もの広大な藻場の回復が問われている。岩国のような広い領域の藻場の回復措置がそもそも可能なのかどうか見解を示してほしい。

5 4とも関係あるが、藻の移植技術や人工干潟の造成などによって、天然の藻場・干潟が持つ機能能力(自然浄化機能、産卵・成育などの機能)を、そのまま回復・補償することは可能なのか。それが実証できる技術的・科学的な蓄積はあるのか。

6 藻場回復委員会が作られたのは一九九六年一一月一五日である。そして委員会がまだ何の検討も始めていない一一月二八日、埋め立ての免許申請に認可がくだされた。4、5の回答とも関わるが、四〇ヘクタール強もの広大な藻場の代償措置がどのように可能なのか具体的には何も示さないまま、工事そのものが始まっていったあり方について、どのように思うか。どう見ても順序が逆であり、少なくとも代償措置の見込みがつき、具体的な案が提示されるまでは、工事は凍結するべきものと考えるがどうか。

7 防衛施設局は、本気で各々四〇ヘクタール強の藻場と干潟(合計約八五ヘクタール)を回復し、代償措置を取る覚悟はあるのか。仮にある場合、それはどのように可能なのか具体的に示して欲しい。

二 これまでの工事による藻場の消失に関して

この二年半の工事は南工区において行われてきたが、一九九八年五月一一日に始まった護岸の基礎工事用の捨て石投入が、アマモ場にかかっていた点について質問する。

1 投石部分では、一九九八年二月から四月にかけて五一〇〇m2にわたってアスファルトマットを打ち、その上に投石を始めたが、これによって消失したアマモ場の面積と、株数はどのくらいの量になるか。

2 上記の消失したアマモは、どのように扱われたのか。例えば、そのままつぶしてしまった、あるいは一部について移植を行ったなど具体的に示して欲しい。仮にそのままつぶしたとすると、一m2に五〇株として、五〇〇〇m2の藻場をアスファルトマットで固めたとすると、それだけで二五万株ものアマモを消失させたことになるが、その工事によって何株のアマモがなくなったことになるのか。

3 検討委員会では、二〇〇二年まで「検討を続け、しかる後に研究結果を出す」予定のようだが、一年目の工事で既に幾ばくかのアマモをつぶす工事が行われてしまったことについて、どう考えるか。そして、どう対処したのか。

4 南工区の工事は、今後どのくらいの期間で、どのように行う予定か。南工区には、一九九七年度の監視調査報告書の中でも、約九・〇七ヘクタール、計六四四・三万株ものアマモがあることになっているが、これらの藻場は、工事の中でどのように扱うのか。現在南工区では、水深一三m岸壁用の巨大なケーソンが日々設置されており、二月末からは土砂を入れ始めているが、これは問題である。まだ研究中という中で、実際に藻場を消失させざるを得ない工事が始まっていくことは、論理的に矛盾しているが、この点についての見解を示してほしい。

南工区の九ヘクタールは、埋め立て全体で消失する藻場の約二〇%にも相当しているのであるから、この代償措置をどのようにするかは極めて重要なので、具体的な案を提示すべきである。

ちなみに広島市の出島においては、たったの二・二ヘクタールのアマモをつぶす埋め立て計画について、まがりなりにも、そのすべてを別の地点に移植する事業が行われた。ちなみに出島の場合、必ずしも移植に成功しているわけではないが、少なくとも消失するアマモの代替措置になるべく努力していることだけは確かである。それと比べれば、南工区において消滅する九ヘクタールの藻場をどう扱うかは極めて大きな問題である。

三 回復調査研究委員会の検討状況について

1 上記の問題も含めて、二年半にわたる委員会の検討状況について、検討に用いた資料、検討の結果などを公開し、市民に縦覧するよう求めたい。あくまでも、市民の税金を使用して委員会が行われている限りにおいて、検討状況を公開することは当然のことである。とりわけ二のような問題が起こり、委員会が造成の検討をしている最中に、一方で工事が始まって藻場の一部をつぶしていることを鑑みると、検討状況の公開は公共の利益を確保するためにも不可欠のことと考える。

2 報道によると、一九九五年から「基地沖のアマモ場の裸地に約四五〇株のアマモを移植する実験」を行ってきているとのことだが、どこのアマモを、どの地点に、どのように移植し、活着状況の把握をどのように行ってきているのか。一九九八年四月二二日頃の報道では防衛施設局の発表として、「移植したアマモが順調に成長、周囲の天然アマモ場と同じか、それを上回る速さで増えていることがわかった」などと、いかにも移植がうまくいっているといった一面的な情報だけ公開しているが、検討状況の公開は、全面的に行うのが筋ではないか。

3 仮に移植実験がうまくいっているとしても、わずか約四五〇株の試験をするのと平行して、他方で、既に一部の工事によって、その数百倍にも当たるアマモがなくなってしまった可能性があることとは、どのように関連していると考えるか。移植実験は、消失する藻場を、何らかの形で、別の場所でもいいから生かしていきたいとの想いから行っているはずであるが、その一方で、既に実験で行われているのとは桁違いに大きいアマモが無くなっていっているとすれば、黙認できない問題である。一時、工事をストップしてでも、再検討すべきではないのか。

4 着工から初年度の環境監視報告書の表2−1−4「各ブロックの被度別藻場面積、推定株数の総括表」によると、埋め立て区域内の藻場面積は、北側地区三四・四七ヘクタール、中央地区一・五八ヘクタール、南地区九・〇七ヘクタールとあり、合計すると四五・一一ヘクタールになる。この間、環境アセスメントにおいては、埋め立てで消滅する藻場の面積を四一ヘクタールとして議論してきたと認識しているが、今回の環境監視調査では、その数字が約四ヘクタール、約一〇%も大きくなっていることがうかがえるが、この点についての事情をどう解釈するか。藻場調査の方法や綿密さが異なるデータであるのか、または、特に北側地区において、藻場が広がったということなのか。

いずれにせよ、これら四五ヘクタールの藻場にあるアマモの株数は、実に三二五四万株にもなるが、これらの全体の損失を補償する膨大なエネルギーを注ぐよう努力すべきと思うが、この点についてどのように考えているのか。もし、そうなら、既に始まってしまった南工区の護岸工事に伴う藻場の消失には、どう対処されるのか。

5 当初の工事計画では、着工から三年次の半ばからは、北工区における工事を始めることにもなっているが、計画はどうなっているか。北工区には、南工区以上に広大な藻場があり、この区域においても、消滅する藻場・干潟の具体的な代償措置なしに、工事が開始されることは、許されざることと考えるが、この点についてどう考えているのか。

6 委員会が形成された経緯からして、各々四〇ヘクタール強の消滅させる藻場と干潟の代償措置を全面的に行う具体的な提案が、委員会の検討結果として出てくることが期待されるが、仮にそれが不可能な検討結果が出た場合、どのように対処される計画か明らかにして欲しい。検討結果によっては、埋め立て工事そのものを凍結する覚悟はあるのかどうか明確にしていただきたい。私は、検討結果の如何によらず、藻場・干潟はつぶしても仕方がないとの判断がなされることを強く危惧する。

7 これだけ広大な藻場・干潟は一度つぶしてしまったら、その同じ場所に人為的に回復させることは不可能であり、長い時間的見通しで見ると極めて大きな損失である可能性があることは政府としても十分承知されていると思うが、それでもなおかつ埋め立てをして、基地を拡張せねばならない正当な理由はあるのかどうか明確にしていただきたい。

8 そもそも、激減してしまった藻場・干潟を、更につぶしていく埋め立てが、瀬戸内海環境保全特別措置法の見直しを行っている現在、まかり通っていること自体が、「埋め立ては厳に抑制すべし」とする瀬戸内海環境保全特別措置法の精神を踏みにじっていることになると考えるが、この点について政府としてどう考えているのか。

右質問する。

衆議院の原文・経過

政府答弁書

一の1及び3から7まで並びに二の3及び4について

(一) 岩国飛行場の滑走路を沖合へ千メートル程度移設する事業(以下「岩国沖合移設事業」という。)については、広島防衛施設局において、平成八年十一月二十八日、山口県知事から公有水面埋立法(大正十年法律第五十七号)に基づく埋立承認を得て、平成九年六月から工事に着手している。

岩国沖合移設事業の計画地のうち南地区については、現在実施している敷地造成工事に引き続き飛行場施設等の整備を行うこととしており、現時点において、着手から十年程度で完了することを目途に工事を進めているところであり、同地区における工事の実施により、埋立部分の一部に存在する藻場は消滅することとなる。

政府としては、このような埋立て等の事業の実施により、藻場及び干潟が消滅することとなる場合に、その回復のための措置を採ることは重要なことであると考えている。このため、広島防衛施設局において、同地区を含む岩国沖合移設事業の実施により消滅することとなる藻場及び干潟について、その回復を図ることとし、平成八年十一月十五日、学識経験者による「岩国飛行場藻場・干潟回復調査研究委員会」(以下「藻場等回復委員会」という。)を設置したところである。

現在、岩国沖合移設事業の埋立承認の際の山口県知事の「専門家の指導、助言を得て、本埋立計画地周辺海域において、最大限、新たに藻場及び干潟の造成に努める」こととの意見も踏まえ、藻場等回復委員会において、岩国沖合移設事業に伴う藻場及び干潟の回復場所、範囲等の検討が進められているところであり、広島防衛施設局において、その検討結果を得て、最大限回復が可能となるよう、新たな藻場及び干潟の造成に努めることとしている。三の7についてで述べる岩国沖合移設事業の必要性を踏まえれば、これが現実的な選択であったと考えている。

なお、藻場等回復委員会の検討結果が出るまで藻場及び干潟を埋める工程には入らないということになっているわけではなく、また、岩国沖合移設事業を凍結する考えはない。

(二) 藻場及び干潟の機能を回復するための造成については、現在、各地でその事例が見られるなど、個々の環境に応じた実証的な調査及び研究が進められていると承知している。

なお、現在、我が国において、ミティゲーションについて一般的に確立した考え方はないが、環境影響評価法(平成九年法律第八十一号)等に基づくミティゲーションの考え方は、環境保全措置の検討に当たっては、事業による環境への影響を回避し、又は低減することを優先するものとし、この検討結果を踏まえ、必要に応じ当該事業の実施により損なわれる環境要素と同種の環境要素を創出すること等により、損なわれる環境要素の持つ環境保全の観点からの価値を代償し、全体として環境への影響を低減するというものである。政府としては、ミティゲーションについては、環境保全という観点から重要なものであると認識している。

一の2について

政府としては、瀬戸内海環境保全特別措置法(昭和四十八年法律第百十号)に基づき、瀬戸内海環境保全基本計画(昭和五十三年総理府告示第十一号)、化学的酸素要求量に係る総量削減基本方針(瀬戸内海)等を策定し、これらにより瀬戸内海の環境保全を図ってきたところである。

その結果、化学的酸素要求量に係る環境基準の達成状況は、従前に比べ改善されたが、近年は横ばいに推移していることから、引き続き、その改善に努めていくこととしている。

また、藻場及び干潟については、その消失速度は鈍化しつつあるものの、藻場は魚介類の産卵及び生育の場として、干潟は魚介類、鳥類等の生育及び生息の場として重要な役割を果たしており、引き続き、その保全に努めることとしている。

二の1及び2について

御指摘のアスファルトマットの敷設面積約五千百平方メートルのうち、藻場部分の面積は約千五百平方メートル、アマモの株数は約十一万六千株と推定しており、これらアマモは消滅したものと考えている。

なお、岩国沖合移設事業の実施により消滅することとなる藻場については、一の1及び3から7まで並びに二の3及び4についてで述べたとおり、藻場等回復委員会の検討結果を得て、岩国沖合移設事業の計画地周辺海域において、最大限回復が可能となるよう、新たな藻場の造成に努めることとしている。

三の1から3まで及び6について

藻場等回復委員会の検討結果等については、報道機関の求めに応じ、審議の要旨を公表しているほか、第一回(平成八年十一月十五日)から第八回(平成十年七月八日)までの同委員会の取組及び検討結果を取りまとめ、岩国市基地対策課等において平成十年十一月二十六日から一か月間公開したところであり、これは、現在も広島防衛施設局において閲覧可能である。今後とも、同委員会の検討結果等の公開に努めてまいりたいと考えている。

また、広島防衛施設局において、平成七年度に、学識経験者の助言を得て、岩国沖合移設事業の計画地に近接する同海域の水深零メートルから二メートルのアマモが生育していない裸地に、水ごけを主原料としたポットに入れて植え付ける方法等により、岩国飛行場地先海域において採取したアマモ四百五十株を移植し、平成八年二月以降、その活着状況についてモニタリング調査を実施しているところであり、今後とも同調査を継続し、アマモ場の回復措置に関する基礎資料とすることとしている。

岩国沖合移設事業の実施により消滅することとなる藻場及び干潟については、一の1及び3から7まで並びに二の3及び4についてで述べたとおり、藻場等回復委員会の検討結果を得て、岩国沖合移設事業の計画地周辺海域において、最大限回復が可能となるよう、新たな藻場及び干潟の造成に努めることとしており、岩国沖合移設事業を停止又は凍結する考えはない。

三の4及び5について

御指摘の環境監視報告書に記載している約四十五ヘクタールは平成九年十一月に、一方、岩国沖合移設事業に係る環境影響評価書に記載している約四十一ヘクタールは平成三年五月に、それぞれ撮影した航空写真を基に求めた数量であり、藻場の分布範囲については、経年又は季節により変動するものである。

また、岩国沖合移設事業の北地区の工事開始時期については、現在実施している南地区の工事の進ちょく状況を踏まえつつ判断することとしている。

岩国沖合移設事業の実施により消滅することとなる藻場及び干潟については、一の1及び3から7まで並びに二の3及び4についてで述べたとおり、藻場等回復委員会の検討結果を得て、岩国沖合移設事業の計画地周辺海域において、最大限回復が可能となるよう、新たな藻場及び干潟の造成に努めることとしている。

三の7について

岩国飛行場の北側の進入表面下には工場群があり、アメリカ合衆国軍隊等は、航空機がこれを避けて飛行しなければならないため、運用上及び安全の確保上大きな制約を受けており、また、同飛行場には市街地が近接し、航空機による騒音問題が生じている。このような状況から、地元岩国市等の要望を受け、これらの問題を解決し、アメリカ合衆国軍隊の駐留を円滑にするとともに、岩国飛行場の安定的使用を図るため、岩国沖合移設事業を実施することとしたものである。

三の8について

瀬戸内海における公有水面埋立法に基づく埋立承認に当たっては、関係府県知事は、瀬戸内海環境保全特別措置法第十三条第一項の規定により、瀬戸内海の特殊性につき十分配慮しなければならないこととされている。また、同項の運用に関する基本方針においては、埋立ては厳に抑制すべきであり、やむを得ず埋立てを認める場合においても環境保全に十分配慮することとされているところである。

岩国沖合移設事業については、飛行場運用における安全確保上の問題や航空機騒音問題への対処、埋立て等に伴う瀬戸内海の環境への影響等を総合勘案してやむを得ないものと判断されたものであり、公有水面埋立法に基づく埋立承認に際しては、環境保全に十分配慮がなされたものと考えている。

衆議院の原文

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