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米軍岩国基地滑走路の沖合移設事業に関する再質問主意書
衆議院 第147回 第28号お答えすることは困難 ×4承知していない ×2
質問本文
在日米軍岩国基地滑走路の沖合移設事業は、瀬戸内海でも数少なくなった藻場・干潟の消滅を伴うため、瀬戸内海の環境を保全し、次世代に豊かな海を残していくためにも、その対策は緊急を要すると考える。そこで、私は、質問第一二号(平成一二年三月二日)により、一九項目にわたる質問主意書を提出したところ、三月三一日付で答弁書を送付されたところである。答弁書は、多くの箇所において、私の質問の趣旨を無視するか、または誠意のない回答になっている。
従って、次の事項について再度質問する。
一 藻場・干潟の回復に関する問題
1 答弁書のエッセンスは、以下の文章に込められている。「藻場等回復委員会の検討結果を得て、岩国沖合移設事業の計画地周辺海域において、最大限回復が可能となるよう、新たな藻場及び干潟の造成に努めることとしており、岩国沖合移設事業を停止又は凍結する考えはない。」(五ページ)
このような記述は、肝心な質問(一の6、7、二の2、三の4、5、6)への答弁として四回も出てくる。例えば一の7「防衛施設局は、本気で各々四〇ヘクタール強の藻場と干潟(合計約八五ヘクタール)を回復し、代償措置を取る覚悟はあるのか」に対しては、直接的には答えていない。間接的に「最大限回復に努める」としているだけで、「四〇ヘクタール全体の代償となる措置を取るとは決して言明していない」と受け止めていいのか。
これらを全体的にまとめると、以下のようなことになると判断するが、これで正しいか。
<藻場・干潟を消滅させようが、埋め立ては凍結せず、とにかく続ける。並行して、藻場・干潟の回復措置を「最大限」進めることとし、具体的には、「新たな藻場・干潟を造成することとしている」。しかし、その規模や方法は不確定で、「あくまでも最大限」としか言えない。>
2 ということは、現存するアマモは、埋め立てに伴って自動的に消滅していく。その際に、消滅する場に現存する海藻を移植する手法は初めから選択しないということか。代償措置の可能性自体が具体的に示されない中では、現存するアマモを移植するのが、最も現実的な方法と思うが、そのような方法は採らず、藻場・干潟は消滅させ、それと並行して、どこか別の場所に、「人工的に干潟を造成し、そこにアマモ(どこから持ってくるのか)を植えてみる」というわけか。とすれば、なぜ、初めから最も成功への確率の高いと見られる移植という選択を放棄するのか説明してほしい。
3 「新たな干潟の造成」はイメージできる(その実現可能性の如何にかかわらず)が、「新たな藻場の造成」とはどういうことか、具体的に説明してほしい。近隣のどこか別の場所に、人工的に干潟を造成し、そこにどのように手を加えるかという問題になる。例えば、「新たに造成した干潟」にどこかから持ってきたアマモを移植してみる。もう一つは、人工的な干潟を造成し、自然にまかせ、アマモが生育するかどうかを見ていく。
4 ミチゲーションが盛んなアメリカやカナダなどでは、藻場の移植などを検討する場合でも、代償措置を講ずる規模は、消滅させるものの二倍は確保するのが常識といわれているが、これと比べると、岩国で「最大限」としているのは、「消滅面積」に対して、それよりも少ないのか。それとも、アメリカやカナダと同様、消滅面積よりも数倍は大きい規模を想定しているのかのいずれかは明らかにすべきである。最大限とは、例えば、面積という基準だけでみても、消滅面積に対してどのくらいのことを「最大限」と称するのか。四〇ヘクタールの数倍、全部、半分、それとも一割を指すのか。まさか一割というようなことはないと断言すべきであることは当然のことである。
最大限、努力した結果、「消滅するものの一割しか造成しない」ということになれば、回復などというおこがましいことは言えるはずがない。いずれにしても「最大限」の規模についての目安くらいは明らかにすべきである。
5 新たに人工的な干潟を造成してみたところで、そこにアマモが定着し、かつ天然の藻場が持っている役割に匹敵する機能を果たすかどうかの保証はどこにあるのか。これらの問題は、多分に試行してみないと判断できないのではないか。だからこそ、アメリカやカナダなどでは、消滅する面積の二倍などの面積を新たに創造することが常識になっているのであり、この点について政府としてどう認識しているか。政府の行う事業であるにもかかわらず、消滅させる面積に対してどのくらいの藻場・干潟を新たに造成するのかの目安すら示さないまま、「最大限回復」させるなどと曖昧な答弁をすることは、国際的に見ていかに日本政府が環境保全にうとく、また無責任であるかを象徴している。そんなおぼつかない状態にもかかわらず、工事を進めることだけは、頑として変更しない日本政府の姿勢は強く批判されてしかるべきである。
6 山口県知事が出した「最大限、新たに藻場及び干潟の造成に努める」よう求めた曖昧な意見をいいことにして、そのレベルでしか「回復措置」を取るつもりはないという回答と受け止めるが、それでいいのか。藻場は重要なので回復に努めるとしながら、何とも無責任な政府を持っていることが嘆かわしい限りである。政府が率先して、大規模な藻場・干潟の消滅を推進しているとしか言えず、これで瀬戸内海の環境を後世に残していけると考えているのか。
7 <藻場および干潟の機能を回復するための造成>については「各地でその事例が見られるなど、個々の環境に応じた実証的な調査及び研究が進められていると承知している」(二ページ)というが、どのような場所で、どの程度の規模で、どのような事例があり、しかもどの程度成功しているのか(天然の藻場・干潟が持つ自然浄化機能や産卵・成育などの機能を、そのまま回復・補償することはできているのかなど)を具体的に示してほしい。また私は、初めの質問書で、広島市出島の事例を示したが、出島に関する具体的な見解は何も示されていない。とりあえず出島での事例に関する政府としての見解を示してほしい。さらに岩国のように消滅する藻場や干潟の面積が四〇ヘクタール以上もある広さに対応した実例は日本においてあるのかどうかも明確にしてほしい。これらの各地での事例をどのように検討し、岩国に関して「最大限回復」させる道筋についてどのような見通しを持っているのか示すべきである。
8 一九九五年から「基地沖のアマモ場の裸地に約四五〇株のアマモを移植する実験」を行ってきているとのことだが、どこのアマモを、どの地点に、どのように移植し、活着状況の把握をどのように行ってきているのか。実験を行った裸地の面積、水深はどのくらいか。このような具体的な資料をこそ市民に公開すべきである。
9 回復調査研究委員会の検討状況の公開は要旨の公開などで行っているというが、これでは肝心なことは何一つわからない。例えば「現存するアマモの移植はしない」ということが今回の答弁書でわかっただけで、答弁書にある「最大限の回復の可能性」についてどのような視点から検討をしているのかを明らかにすべきである。
二 その他
1 「一の2」藻場や干潟の現状把握などに関する質問では、CODという指標で見る限り、横ばい程度と見えないことはないが、生物相について、元来有していた状況が維持または回復したといえるのかどうか明らかにしてほしい。また藻場及び干潟の問題は、「消失速度の鈍化」ではなく、藻場・干潟の現時点における面積や状態であり、過去から現在までの変遷である。この間に藻場・干潟の多くが消失し、健全な状態で藻場・干潟が残存している海域は、極めて希少になっている点をどう現状認識し、どの程度深刻に受け止めているのかを明らかにしてほしい。例えば広島湾においても、広島県側のアマモ場は壊滅状態であり、まとまって残存しているのは岩国周辺に限られており、岩国周辺の藻場・干潟が、広島湾全域の生態系や生物資源の維持においてどのような位置づけを持っているのかに関する評価を明らかにしてほしい。
2 これだけ広大な藻場・干潟は一度つぶしてしまったら、その同じ場所に人為的に回復させることは不可能であり、長い時間的見通しで見ると極めて大きな損失である可能性があることについて政府としてどのように受け止めているのか。「基地を拡張せねばならない理由」として「北側の工場群との関係の危険性や騒音の低減」をあげているが、これだけであれば、何も広大な埋め立てをしなくてもすむ選択
右質問する。
政府答弁書
一の1について
政府としては、埋立て等の事業の実施により、藻場及び干潟が消滅することとなる場合に、その回復のための措置を採ることは重要なことであると考えている。
このため、広島防衛施設局において、岩国飛行場の滑走路を沖合へ千メートル程度移設する事業(以下「岩国沖合移設事業」という。) の実施により消滅することとなる藻場及び干潟について、その回復を図ることとし、学識経験者による「岩国飛行場藻場・干潟回復調査研究委員会」 (以下「藻場等回復委員会」という。)を設置し、その検討結果を得て、最大限回復が可能となるよう、新たな藻場及び干潟の造成に努めることとしているところであるが、現在、藻場等回復委員会において、岩国沖合移設事業の実施により消滅する藻場及び干潟の回復場所、範囲、方法等について検討が進められているところであるので、現時点で具体的な回復の規模等についてお答えすることが困難であることから、先の答弁書(平成十二年三月三十一日内閣衆質百四十七第十二号。以下「答弁書」という。)のようにお答えしたものである。
一の2について
政府としては、岩国飛行場の北側の進入表面下には工場群があり、アメリカ合衆国軍隊等は、航空機がこれを避けて飛行しなければならないため、運用上及び安全の確保上大きな制約を受けており、また、同飛行場には市街地が近接し、航空機による騒音問題が生じていることから、地元岩国市等の要望もあり、これらの問題について早急に解決を図る必要があるため、広島防衛施設局において、最大限回復が可能となるよう、新たな藻場及び干潟の造成に努めることとした上で、平成九年六月から工事に着手したものであり、御指摘のように、消滅する海藻を移植する方法は採用しなかったが、これは現実的な選択であったと考えている。
なお、藻場の機能を回復するための造成については、現在、各地でその事例が見られるが、その実施に当たっては、個々の環境に応じて、移植の方法以外にも、播種及び苗移植の方法が採られていると承知している。
一の3及び4について
答弁書で述べた「最大限回復が可能となるよう、新たな藻場の造成に努める」とは、岩国沖合移設事業の計画地周辺海域において、アマモが生育できる環境を整え、播種、移植又は苗移植の方法等により、藻場を最大限回復するよう努めることを意味するが、現在、藻場等回復委員会において、回復場所、範囲、方法等について検討が進められているところであり、現時点で具体的な回復の規模や方法についてお答えすることは困難である。
一の5及び6について
現在までのところ、天然の藻場及び干潟が持つ水質浄化機能等と同程度の機能を有するものにまで人工的に回復するための技術については、必ずしも十分には検証されていないものの、各地において個々の環境に応じた実証的な調査及び研究が進められていると承知しているが、岩国沖合移設事業の実施により消滅する藻場及び干潟の機能を回復するための造成については、現在、藻場等回復委員会において検討が進められているところであり、現時点において具体的な回復の規模、方法等についてお答えすることは困難である。
また、アメリカ合衆国においては、事業により消滅する面積より広い面積の藻場を新たに造成した例があることは承知している。
いずれにせよ、政府としては、環境保全の観点から、埋立て等の事業の実施により、藻場及び干潟が消滅することとなる場合に、その回復のための措置を採ることは重要なことであると認識しており、岩国沖合移設事業の実施により消滅する藻場及び干潟については、広島防衛施設局において、藻場等回復委員会の検討結果を得て、最大限回復が可能となるよう、新たな藻場及び干潟の造成に努めることとしており、また、それらの形成状況を計画的に監視することとしている。
一の7について
我が国における藻場及び干潟の機能を回復するための造成としては、御指摘の広島港出島地区の周辺海域における約二・九ヘクタールのアマモ場の造成のほか、例えば、熊本県天草郡松島町の樋合漁港における約○・二ヘクタールのアマモ場の造成、広島港五日市地区における約十七ヘクタールの人工干潟の造成等があり、現在も、これらの場所において、藻の生育状況等のモニタリング調査が実施されていると承知している。
現在までのところ、御指摘の広島港出島地区の事例を含め、天然の藻場及び干潟が持つ水質浄化機能等と同程度の機能を有するものにまで人工的に回復するための技術については、必ずしも十分には検証されていないものの、各地において個々の環境に応じた実証的な調査及び研究が進められていると承知している。
また、我が国における藻場及び干潟の回復面積がそれぞれ約四十ヘクタール以上の広さである事業については、承知していない。
岩国沖合移設事業の実施により消滅する藻場及び干潟の機能を回復するための造成については、現在、藻場等回復委員会において検討が進められているところであり、現時点において具体的な回復の規模、方法等についてお答えすることは困難である。
一の8について
答弁書でお答えしたとおり、広島防衛施設局が実施した岩国飛行場沖合における移植実験において、移植したアマモの採取地は同飛行場地先海域であり、移植地点は岩国沖合移設事業の計画地に近接する三か所の海域であり、移植地点の水深は零メートルから二メートルであり、移植の方法は水ごけを主原料としたポットに入れて植え付ける方法等である。また、移植を行った裸地の面積は、合計二十七平方メートルであり、アマモの活着状況の把握については、潜水夫が移植場所に潜り、目視によって株数の確認を行う方法により実施しているところである。
一の9について
藻場等回復委員会においては、岩国沖合移設事業の実施により消滅する藻場及び干潟の回復について、自然の藻場及び干潟の形成条件を模倣すること、藻場と干潟との一体的な施工を目指すことなどを基本的な考え方として検討が進められているところである。
二の1について
瀬戸内海全体の生物相の変遷については、必ずしも十分把握していないが、漁業生産量については近年減少傾向にある。
環境庁の調査によれば、平成三年現在、瀬戸内海沿岸の藻場は合計約一万七千五百ヘクタール、干潟は合計約一万一千七百ヘクタールであり、そのうち、広島湾の藻場は約二百六十六ヘクタール、干潟は約三百九十四ヘクタールである。昭和五十三年から平成三年までの十三年間に、瀬戸内海において、藻場は合計約千三百ヘクタール、干潟は合計約八百ヘクタールそれぞれ消失しており、そのうち、広島湾では、藻場は約九ヘクタール、干潟は約十五ヘクタールそれぞれ消失している。
政府としては、藻場は魚介類の産卵及び生育の場として、干潟は魚介類、鳥類等の生育及び生息の場として重要な役割を果たしていると認識しており、引き続き、その保全に努めてまいりたい。
岩国飛行場周辺の藻場及び干潟は、広島湾の生物の生息及び生育空間等として重要であることから、岩国沖合移設事業の実施により消滅する藻場及び干潟については、岩国沖合移設事業の計画地周辺海域において、最大限回復が可能となるよう、新たな藻場及び干潟の造成に努めることとしている。
二の2について
岩国沖合移設事業については、岩国飛行場の運用上及び安全の確保上の制約の問題や航空機騒音問題への対処の必要性、埋立て等に伴う瀬戸内海の環境への影響等を総合勘案して、その実施を判断したものであり、また、岩国沖合移設事業の実施により消滅することとなる藻場及び干潟については、岩国沖合移設事業の計画地周辺海域において、最大限回復に努めるなど、環境保全には十分配慮しているものと考えている。
また、平成元年度から平成四年度にかけて、岩国飛行場の現滑走路を東側に千メートル程度移設する案(以下「A案」という。)及び現滑走路に交差する滑走路を増設する案(以下「B案」という)について、調査及び検討を行ったが、B案に比べA案の方が飛行及び同飛行場周辺の安全の確保並びに航空機騒音の緩和の面で改善効果が大きいことが判明し、地元岩国市等もA案での実施を望んだことから、同飛行場の運用における安全確保上及び騒音上の問題を解決し、アメリカ合衆国軍隊の駐留を円滑にするとともに、同飛行場の安定的使用を図るため、A案を採択したものである。
二の3について
政府としては、岩国沖合移設事業については、山口県知事において、飛行場運用における安全確保上の問題や航空機騒音問題への対処の必要性、埋立て等に伴う瀬戸内海の環境への影響等を総合勘案して、埋立てはやむを得ないと判断されたものであり、環境保全に十分配慮がなされたものと考えている。
また、藻場及び干潟の機能を回復するための造成については、現在、藻場等回復委員会において、藻場及び干潟の回復場所、範囲、方法等の検討が進められているところであり、広島防衛施設局において、その検討結果を得て、最大限回復が可能となるよう、新たな藻場及び干潟の造成に努めることとしているなど、政府としても環境保全に十分配慮しているものと考えている。
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