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日本国憲法に関する質問主意書
衆議院 第147回 第15号
質問本文
一 憲法第二十九条第一項で〔財産権は、これを侵してはならない〕とある。
この規定に、米作の減反を国の権限で強制する事は、違反していると考えるが如何か。憲法第十三条の個人の尊重、幸福追求権の規定を考えあわせて回答されたい。
公共の福祉に反するか否かの解釈について、憲法学者の中でも種々の意見があるが政府の統一見解を示されたい。
二 右、憲法第二十九条第一項につき、行政権による薬価の決定に関し疑義を呈する。
日本の製薬業は米国や英国に比し新薬の開発に遅れている現状を認識されたい。原因は色々あるがその一つに薬価の決定に自由のないことがある。何十億とかけて新しい薬効のある薬品を開発しても、この薬品の値段、即ち価格はこの会社が自由に決められない。薬品そのものの審査が国の決定により、安全且つ有効なものと認定されてもその薬品の価格は自社で決定できず、厚生大臣が決定することとなっている。既存の似かよった薬品を厚生省で探し出し、その価格にほんの少々上乗せした程度の価格を決め認可することとしている。
これでは日本の新薬開発が多くの投資をかけて行う意欲は起こらない。これのみを問題にするのではない。私がこれを取り上げたのは一に指摘した憲法第二十九条第一項に違反類似の行為ではないか、との疑問を持つからである。政府の見解を問う。
三 今日の選挙制度につき、憲法上の疑義あるにつき、政府の見解を問う。
1 年齢制限を政党で行った場合、その政党内での都合であって、これを以て、当該者の被選挙権を奪うことは、違憲であると断ぜざるを得ず、当該本人が無所属で立候補する事を禁ずることは出来ないと信ずる。憲法第四十三条第一項の規定は、被選挙権を有する者すべてが、両院の議員として立候補出来ると解釈すべきと考えるが如何か。差別禁止の第四十四条但し書にある「社会的身分」の中には、被選挙権のある者の若年、高年齢を問わないとの問題も入ると考えられ、年齢制限を設ける事は、それぞれ政党内の都合方針と考えるだけで立候補の禁止の法的根拠には出来ぬと思考するが、政府の見解如何。
憲法第四十三条第一項の規定の趣旨からいえば、参議院議員比例区選挙においても当初の全国区の如く、個人が自由に立候補し、得票数の順位により当選者を決定する事が(即ち非拘束制)望ましいのである。
然し、一人の候補者が全国を選挙区とする事は非常に大変な事であるし、費用も大変かかり、残酷区ともいわれていたため、且つテレビで良く出演するタレント候補のみを有利とする批判が強くなり、現行制度になった。
一方衆議院の比例区をみるに、広くて九州、北海道ブロック位のもので、これしも目下の交通網発達の時代では、参議院の比例区と同一に考える必要性は全くない。
現行衆議院の比例区制度で、政党名のみの投票しか有効とせず、個人で立候補出来なくしているのは、少なくとも憲法第四十三条第一項の趣旨にそぐわないものと思考するも政府の所見如何に。
政府は速やかに選挙法を改正し、衆議院比例区選挙では個人名を書いても良いし、政党名を書いても良い制度に改め、憲法第四十三条第一項の規定の趣旨を尊重すべしと愚考する。回答を求める。
2 憲法第七十九条第二項において最高裁の裁判官の国民審査の規定がある。
内閣の任命による最高裁の裁判官を国民の審査に付することを同条に定めたのは、国民主権を明確にした、戦後憲法の特記すべき規定である。ところが、この規定は正に死文になっている。
何故なら如何なる事件で、どの裁判官が如何なる判断を下したのか全く情報開示がなされていない。一般国民は勿論、相当の有識者でもどの裁判官が良いかどうか判断がつかない。私自身も判断しかねる。この憲法の規定とその意義及び、実効あらしめる方策を政府は如何に考えているか回答願いたい。
右質問する。
政府答弁書
一について
主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律(平成六年法律第百十三号)第二条第一項において、政府は、米穀の需給の均衡を図るための生産調整の円滑な推進を図ることとされている。政府は、この規定に基づき、生産調整を実施した者に対し助成措置を講ずること等により、生産調整を推進しているものであり、米の作付けを強制的に制限しているものではない。
したがって、米穀の生産調整が、御指摘のように、憲法第二十九条第一項及び第十三条との関係で問題を生じることはないと考える。
二について
厚生大臣が定める薬価基準は、製薬企業と卸売販売業者又は卸売販売業者と保険医療機関等の取引価格を定めているのではなく、保険医療機関等が保険給付として医薬品を使用した場合に保険者及び患者が併せて保険医療機関等に支払う額を定めているものであること、薬価基準への収載は製薬企業等の希望に基づいて行われるものであること並びに薬価は明確な基準に基づき決定されるものであることから、薬価基準を厚生大臣が定めることが憲法第二十九条第一項との関係で問題を生じることはないと考える。
なお、日本の製薬企業の新薬の開発については、近年では国際的にも評価される医薬品の開発が進み、平成十年における世界の銘柄別売上高上位三十品目のうち、日本の製薬企業が開発した医薬品が六銘柄含まれていると承知しており、諸外国の製薬企業と比べ必ずしも遅れているとは考えていない。
また、新薬の薬価を算定するに当たっては、当該新薬に類似する他の医薬品(以下「類似薬」という。)と比べ高い有効性又は安全性を有することが客観的かつ科学的に実証されている場合等には当該新薬を類似薬より高く評価し、また、類似薬がない場合には当該新薬の製造等に要する原価を基に評価する仕組みとしているところである。
三の1について
公職選挙法(昭和二十五年法律第百号)上、被選挙権を有する者は、重複立候補等の禁止(同法第八十七条)、連座による立候補の禁止(同法第二百五十一条の二及び第二百五十一条の三)等の規定に該当する場合は、立候補が制限されることとなるが、このような規定が憲法第四十三条第一項との関係で問題を生じることはないと考える。
さらに、被選挙権を有する者は、右に述べた立候補を制限する規定に該当しない限り、法律上、立候補を制限されることはない。
憲法は、「国会の両議院の議員の選挙について、およそ議員は全国民を代表するものでなければならないという制約の下で、議員の定数、選挙区、投票の方法その他選挙に関する事項は法律で定めるべきものとし(四十三条、四十七条)、両議院の議員の各選挙制度の仕組みの具体的決定を原則として国会の広い裁量にゆだねている」(平成十一年十一月十日最高裁判所大法廷判決)ところ、現行の衆議院議員の選挙制度は、政党本位・政策本位の選挙の実現を目指すものであり、比例代表選出議員の選挙における「政党等にあらかじめ候補者の氏名及び当選人となるべき順位を定めた名簿を届け出させた上、選挙人が政党等を選択して投票し、各政党等の得票数の多寡に応じて当該名簿の順位に従って当選人を決定する方式は、投票の結果すなわち選挙人の総意により当選人が決定される点において、選挙人が候補者個人を直接選択して投票する方式と異なるところはない」(同判決)ことから、憲法第四十三条第一項の規定との関係で問題を生じることはないと考える。
なお、衆議院比例代表選出議員の選挙における政党名投票を規定する公職選挙法第四十六条第二項等の規定については、長期間にわたる政治改革の論議の結果導入されたものであるが、いずれにせよ、選挙制度の在り方については、議会政治の根幹にかかわる問題であり、各党各会派において議論していただきたいと考える。
三の2について
憲法第七十九条第二項に規定する国民審査は、内閣等が任命した最高裁判所の裁判官について国民が罷免すべきかどうかを決定する趣旨のものであって、重要な意義を有するものである。
国民審査に際しては、最高裁判所裁判官国民審査法(昭和二十二年法律第百三十六号)第五十三条及び最高裁判所裁判官国民審査法施行令(昭和二十三年政令第百二十二号)第二十六条に基づき、審査に付される裁判官の氏名、生年月日及び経歴並びに最高裁判所において関与した主要な裁判その他審査に関し参考となるべき事項を掲載した審査公報を発行しているところである。
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