ことばで探す › 衆議院 第159回
商工ローン問題に関する質問主意書
衆議院 第159回 第15号お答えすることは困難 ×1承知していない ×4
質問本文
日栄の「腎臓売れ」事件をきっかけに平成一一年に社会問題化した商工ローンをめぐって、近年再び債務者、保証人との係争が増加の一途をたどっている。特に一部業者は、特定調停や裁判の場での利息制限法にもとづく債務整理に従わず、被害を深刻化させている。平成一一年の国会で政府が約束した商工ローン対策、中小商工業者保護の施策を実効性あるものにするためにも、商工ローン被害の実態把握と行政官庁の適切な対応がきわめて重要であることにかんがみ、以下について質問する。
一 商工ローン業界全体および上位三社の回収実績のうち、最終的な完済もしくは回収終了の際、主債務者のみから回収できた件数と金額、保証人に請求した件数と金額、保証人に請求したものの中で保証人から回収できた件数と金額を最近五年間について示せ。
二 関東財務局および近畿財務局に寄せられた、貸金業者に対する苦情、相談、行政処分申し立ての総数およびそれらのうち商工ローン業者に関する件数、およびその会社別の内訳の上位三社を、最近五年間について示せ。また、苦情、相談、行政処分申し立ての内容もそれぞれ示せ。
三 報道等によれば、関東財務局はSFCG(旧商工ファンド)に対する債務者、保証人およびその代理人弁護士から行政処分申し立てを再三にわたって受けているが、申し立てを受けた時期と内容、またそれに対する関東財務局の調査および処分、もしくは検討結果の内容を示せ。もし返答できない場合は、その理由を可能な限り具体的に示せ。
四 貸金業規制法は第一七条で適正な契約書面の交付を、第一八条で受取証書の交付を貸金業者に義務づけている。そこで以下二点について質問する。
(一) 関東財務局、近畿財務局が第一七条違反、第一八条違反で貸金業者を処分したことがあるか。あるとすれば、業種は何か(消費者金融、商工ローン、ヤミ金、その他)。それらを最近五年間について示せ。
(二) 商工ローン業者の契約書面や受取証書が第一七条、第一八条に違反するという判例は多数あるが、第一七条違反、第一八条違反を理由として商工ローン業者に対して行った処分を最近五年間について時期と業者名、処分理由を示せ。もしなければ、処分していない理由を可能な限り具体的に示せ。
五 高利で過剰融資を行う貸金業者が無理な回収を行い債務者、保証人を追い詰めることが、自殺の大きな要因になっているとの指摘があるが、保険会社が支払った生命保険金のうち自殺を原因とするものの件数および総額を最近五年間について示せ。
六 一部商工ローン業者は債務者、保証人が弁護士に委任した直後に、弁護士への委任自体を「期限の利益の喪失」とみなし、差押、仮差押などをかけ債務整理を妨げている。これは法的債務整理やそのための弁護士業務を不可能にする暴挙であり貸金業規制法第二一条に抵触すると考えられるが、見解を示せ。また債務者、保証人が弁護士に委任した後の回収や債務整理に関する貸金業者の業務に関連する施行規則、通達、通知を示せ。
七 商工ローンのなかには、利息制限法で計算した債務残高がゼロないしはマイナス(過払い)であるにもかかわらず、私製手形や公正証書等を用いた強制執行によって「回収」を図っている業者がある。最高裁事務総局が作成した『貸金業関係事件執務資料』(財団法人法曹会、一九八五年)が「利息制限法超過分の利息……を強いて取り立てるのは、義務のない行為を強制することになるから許されない」と明記しているように、利息制限法の上限を超える金利は本来違法無効であり、それを強いて取り立てることは利息制限法および貸金に関する判例法理に反する。利息制限法で計算した債務残高がゼロもしくはマイナスになった後、貸金業者が存在を主張する「残債務」は超過金利分に当たるので強制的回収は許されないと考えられるが、見解を示せ。
八 一部商工ローン業者が貸金の回収に公正証書を活用しているが、それにともなって「知らないうちに公正証書を作られ、不意打ちで給与や生命保険、売掛金の差し押さえを受けた」といった苦情、相談が弁護士会等に多々寄せられている。そこで以下二点について質問する。
(一) 公正証書の全体の作成件数とそのうち貸金業者の依頼で作成されたもの、または貸金にかかわって作成されたものの件数を最近五年間について示せ。
(二) 貸金業者の依頼で作成されたもの、または貸金にかかわって作成されたもののうち、債務者本人が公証人役場に出頭せず、代理人が出頭した件数を最近五年間について示せ。
九 公正証書を作成する公証人のなかには検事出身で、民事係争にほとんど携わってこなかった人も多数いると聞くが、公証人になる際の研修期間、研修内容、研修主体について示せ。
一〇 財務省、金融庁、旧大蔵省、旧金融監督庁の職員でこれらの官庁を退職した後、商工ローン業者およびその関連団体に再就職(いわゆる天下り)した者の官庁退職時の所属・役職、再就職先、その時期を最近五年間について示せ。また商工ローン業者の顧問、社外取締役、代理人弁護士、コンプライアンス委員(企業の法令遵守のための外部委員)に就任したケースについて、同様に官庁退職時の所属・役職、再就職先、その時期を最近五年間について示せ。
一一 金融監督庁長官と金融庁長官をつとめた日野正晴氏(現・弁護士)は、現在、SFCG(旧商工ファンド)の利息制限法脱法(みなし弁済の主張)の当否が争点になっている最高裁訴訟で同社の弁護団の筆頭に名を連ねている。そこで以下二点について質問する。
(一) 弁護士法は「職務を行い得ない事件」として、「公務員として職務上取り扱った事件」をあげている(同法第二五条第四号)。金融監督行政のトップとして商工ファンド(現SFCG)をはじめとする商工ローン業者の指導、監督、処分全般の指揮にあたった日野氏が、SFCGが被告となった貸金をめぐる係争を弁護士として受任することが許されるか、見解を示せ。
(二) 官庁退職後、弁護士登録した者が、在職中に指導、監督、処分にあたった業界の顧問や代理人に就くことに関する基準はあるのか。あればその内容を示せ。
一二 日野正晴・元金融庁長官は平成一六年一月二三日、最高裁でSFCG弁護団を代表して弁論に立ち、「商工ローン被害なるものの実体は存在しない。規制違反の処罰もなかったことは商工ローン被害がないからである」旨発言した。
しかし金融庁・関東財務局は平成一二年八月、商工ファンド(現SFCG)に対し、最長九〇日間の業務停止を命令した。同社社員が、保証人が根保証契約を承諾する書面を偽造した事件で「会社の体制、業務運営に問題があった」と判断されたためである。この社員は刑事事件でも有罪判決を受けている(貸金業規制法違反、有印私文書偽造)。平成一一年の国会でも、商工ローンの高利貸付による深刻な被害と対策の必要性が国会と政府の共通認識となり、出資法上限金利を引き下げる出資法改正が行われた。
したがって「商工ローンが処罰されていない」とか、まして「被害が存在しない」といった弁論は著しく事実に反すると考えられるが、見解を示せ。
右質問する。
政府答弁書
一について
お尋ねの主債務者のみから回収できた件数と金額、保証人に請求した件数と金額及び保証人から回収できた件数と金額は、いずれも把握していない。
二について
貸金業の規制等に関する法律(昭和五十八年法律第三十二号。以下「貸金業規制法」という。)第二条第二項に規定する貸金業者及び貸金業者としての登録を受けずに貸金業を営む者(以下「無登録業者」という。)に関して、関東財務局及び近畿財務局に寄せられた苦情、相談等の最近五年間の件数及びその内容は、別表第一のとおりである。このうち、主に事業者向けの貸付けを行っている者に関する苦情、相談等の件数及びその内容は、別表第二のとおりである。なお、貸金業規制法においては、「行政処分申し立て」といった制度はないが、右に述べた苦情、相談等のうちには行政処分を求める趣旨のものも含まれている。
会社別の内訳については、当該会社の正当な利益を害するおそれがあることから、答弁を差し控えたい。
三について
関東財務局が株式会社SFCGの債務者、保証人及びこれらの代理人弁護士から行政処分を求める旨の要請を受けた時期、その内容及び関東財務局における対応については、同社の正当な利益を害するおそれがあることから、答弁を差し控えたい。
四の(一)について
関東財務局及び近畿財務局が、最近五年間に貸金業規制法第十七条又は第十八条に違反するとして、行政処分を行った貸金業者の数及び内訳は、別表第三のとおりである。
なお、無登録業者については、行政処分の対象とはならない。
四の(二)について
財務局が、貸金業規制法第十七条又は第十八条に違反するとして、主に事業者向けの貸付けを行っている貸金業者に対して最近五年間に行った行政処分について、その時期、貸金業者の名称及び処分理由は、別表第四のとおりである。
なお、貸金業規制法第三条第一項により都道府県知事の登録を受けた貸金業者に対して都道府県知事が行った行政処分の計数については、把握していない。
五について
財団法人生命保険文化センターの行っている調査によれば、生命保険会社が死亡保険金を支払った件数のうち自殺を原因とするものの件数については、平成十年度は二万千三百三十八件、平成十一年度は二万七百三十三件、平成十二年度は二万六百二十八件、平成十三年度は一万七千四十六件、平成十四年度は一万七千七百四十七件となっているが、死亡保険金のうち自殺を原因とするものの総額については、把握していない。
六について
貸金業規制法第二十一条第一項は、債権の取立てをするに当たって、人を威迫し又は人の私生活若しくは業務の平穏を害するような言動により、その者を困惑させてはならない旨規定しており、差押えや仮差押えという法的手続をとる場合に、単なる法的手続による権利行使にとどまらず、人を威迫し又は人の私生活若しくは業務の平穏を害するような言動により、その者を困惑させた場合には、同項に違反することとなる。
同項に規定する「人の私生活若しくは業務の平穏を害するような言動」については、同項各号にその行為類型を例示しているところ、同項第六号においては、債務者等が、債務の処理を弁護士等に委託する等し、弁護士等から書面によりその旨の通知があった場合において、正当な理由がないのに、訪問する等の方法により、債務者等に当該債務を弁済することを要求し、これに対し債務者等から直接要求しないよう求められたにもかかわらず、更にこれらの方法で当該債務を弁済することを要求することを挙げている。同号に規定する「正当な理由」として、金融庁の事務ガイドライン「金融監督等にあたっての留意事項について(第三分冊:金融会社関係)3―2―6取立て行為の規制」においては、個別の事実関係に即して判断すべきものであるが、例えば、弁護士等からの承諾がある場合、弁護士等又は債務者等から弁護士等に対する委任が終了した旨の通知があった場合のようなものが該当する可能性が高いとしている。
七について
利息制限法(昭和二十九年法律第百号)第一条第一項及び第四条第一項は、金銭を目的とする消費貸借上の利息の契約及び債務の不履行による賠償額の予定について、その利率又は割合の上限を設定し、これを超えるときは、その超過部分を無効とする旨を定めている。そして、「利息制限法所定の制限をこえる金銭消費貸借上の利息、損害金を任意に支払つたときは、右制限をこえる部分は民法四九一条により残存元本に充当される」と解されている(最高裁判所昭和三十九年十一月十八日大法廷判決、民集十八巻九号千八百六十八頁)。したがって、金銭を目的とする消費貸借契約の債務者が利息制限法の制限を超える利息又は損害金を支払った場合において、当該超過部分を元本に充当した結果、計算上元本が完済となったときは、既に消費貸借上の債務は存在しない。
もっとも、貸金業規制法第四十三条は、貸金業者が業として行う金銭を目的とする消費貸借上の利息の契約に基づき、債務者が利息として任意に支払った金銭の額が、利息制限法第一条第一項に定める利息の制限額を超える場合において、一定の要件を満たすときには、当該超過部分の支払は、出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(昭和二十九年法律第百九十五号)第五条第二項の禁止する利率による利息の支払等に当たらない限り、利息制限法第一条第一項の規定にかかわらず、有効な利息の債務の弁済とみなす旨を定めている。右に述べた規定の適用がある場合には、当該超過部分が元本に充当されない結果、専ら同法に基づいて計算すれば債務残高が零となる場合であっても、なお消費貸借上の債務が残存することとなる。
八について
最近五年間における公正証書の全体の作成件数は、平成十年が四十八万三千五百八十一件、平成十一年が四十六万五千二百四十四件、平成十二年が四十四万九千三百七十二件、平成十三年が三十九万三千九百件、平成十四年が三十七万七千六百五十二件であるが、これらのうち、「貸金業者の依頼で作成されたもの」又は「貸金にかかわって作成されたもの」の件数及びそのうち債務者本人が公証人役場に出頭せず、代理人が出頭した件数は、把握していない。
九について
公証人となる際の研修は、日本公証人連合会の主催、法務省の共催で実施している。研修期間は二日間であり、研修内容は「公証人としての心構え」、「法律行為公正証書について」、「定款認証・確定日付等について」などである。また、各公証人は、その任命前に、前任の公証人の下で数日間の実務研修を受けている。
一〇について
国家公務員の退職後における再就職の状況は、公務を離れた個人に関する情報であり、一般に政府が把握すべき立場にはないことから、お尋ねのすべての事項についてお答えすることは困難である。
過去三年間において、財務省、金融庁、旧大蔵省又は旧金融監督庁の職員で、国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第百三条に基づく人事院の承認を得て、主に事業者向けの貸付けを行っている貸金業者に再就職した者はいない。
一一の(一)について
弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)第二十五条第四号の「公務員として職務上取り扱つた事件」に当たるかどうかは、具体的事件を対象に、公務員としてその事件の事案の処理の実質に関与したかどうかで判断すべきものであり、ある事業者の業務等を監督する行政機関の長であったというだけでは、当該事業者が当事者となっている具体的事件の事案の処理に関与したことにはならない。したがって、一般的には、御指摘のような訴訟は、「公務員として職務上取り扱った事件」には当たらないと解される。
一一の(二)について
お尋ねの点については、弁護士法上は第二十五条第四号のほかに規制はなく、日本弁護士連合会からも、御指摘のような基準を定めた会則等はないと聞いている。
一二について
平成十二年八月三十一日に、関東財務局が株式会社商工ファンド(当時)に対し、行政処分を行ったことは事実であるが、民事訴訟における代理人弁護士の主張の内容の評価については、お答えする立場にない。
似た質問主意書
件名と質問本文の冒頭の意味が近いものを、前もって計算しておいた表から近い順に8件並べました(multilingual-e5-large)。同じ言葉を使っていなくても出ます。論点が少しずれていることもあります。