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経済モデルによるシミュレーションに関する第三回質問主意書
衆議院 第166回 第142号
質問本文
平成十九年二月十三日提出の経済モデルによるシミュレーションに関する質問主意書に対する答弁書(第一次答弁書と略称)を平成十九年二月二十三日にいただき、これに関して平成十九年三月一日提出の再質問主意書(再質問主意書と略称)に対する平成十九年三月九日の答弁書(第二次答弁書と略称)には、「「経済財政モデル(第二次版)」における乗数表は、あくまで計量経済モデルの特性を検討するために作成したものであり、また、計量経済モデルによる計算結果は、誤差を伴うため、相当の幅をもって解釈すべきものである」と記されている。このことに関連して以下の点を再度質問する。
一 内閣府のモデルは誤差が大きくて信頼性を欠くという指摘がある。例えば、平成十七年四月に発表された「日本経済中長期展望モデル」では民間住宅固定資本形成の決定係数は〇.〇六八、それ以外にも決定係数が〇.一を下回るものがある。このような方程式を使うと誤差が大きくなり、信頼性を欠くという指摘を受けるのは当然である。そのようなモデルを使用した結果を引用した経済財政白書や「日本二十一世紀ビジョン」「改革と展望」「進路と戦略」も政府の経済政策を行う上での参考として使われている。
それらと同程度の信頼性で「金融政策とセットにした財政出動が財政を健全化する」という経済財政モデルの結論は参考にされるべきではないのか。何となれば第一次答弁書には、「「経済財政モデル(第二次版)」においては、・・・継続的に・・・景気刺激策を行った場合について、・・・公債等残高の国内総生産比率は、当初の一年目及び二年目は低下するが、三年目以降上昇すると考えられ、中期的にみて財政健全化に寄与しない可能性があることが示されている。」と記されており、ここでは、誤差を問題にしていないからだ。
二 内閣府の試算は、誤差があるにしても金利を低めに誘導しながらの財政出動は、経済成長を加速し、デフレ脱却を助け、財政を健全化する可能性が高いことを示している。仮に、政府・日銀がそれと反対に金利を高めに誘導し、歳出削減をする政策を選択するのであれば、国民経済と国の財政に重大な悪影響を与える可能性があるのであるから、その政策を敢えて選択する理由を国民に納得できるまで説明する必要があるのではないか。
三 第二次答弁書には「政府としては、現在の極めて厳しい財政状況等を踏まえれば、経済成長と財政再建の両立に努め、安易な財政出動に頼らない安定的な経済財政運営を行うことが必要であると考えている。」と記されている。ところで、第一次答弁書では、個人所得税減税又は公共投資増額は公債等残高の国内総生産比率を低下させ、少なくとも当初の一〜二年は財政再建に役立つことを認めている。そこで、再質問主意書で、三年目以降については短期金利引き下げをセットにして行えば、財政再建に役立つことが内閣府の経済財政モデルから結論付けられると指摘したところ、第二次答弁書ではモデルの誤差の問題に言及されている。しかし、モデルでは三年目には公債残高の増大で金利が上昇するため国内総生産に悪影響を与えるとしている部分に関して何故誤差を持ち出すのか。それではモデル全体が誤差で囲まれていて、モデルを使って説明しようとすること自体を否定することになるのではないか。
三年目以降は誤差が大きくなって信頼性が落ちて、あまり参考にならないというのであれば、当初の一〜二年だけのデータを信頼すればよく、「金融政策とセットにした財政出動が財政を健全化する」ということを、この経済財政モデルは一〇〇%支持することになるのではないか。
四 再質問主意書では、日本銀行による短期金利引き上げはGDP成長率を押し下げ、デフレ脱却を阻害し、国・地方の債務残高のGDP比を押し上げるから政府の政策に逆行するものであると指摘した。これに関して第二次答弁書には誤差を考慮するようにと記している。これは、誤差のために符号が反対になる、すなわち短期金利引き上げは経済成長を押し上げ、デフレ脱却を助け、国・地方の債務残高のGDP比を下げる効果があるかもしれないという意味か。そうであれば、乗数の全てが、その符号さえ確かではないほどの深刻な問題を抱えており、シミュレーション全体が信頼に値しないということを意味するのではないか。
そうではなく、符号は正しいものの、その絶対値に誤差があるというだけなら、「日本銀行の短期金利引き上げは、経済成長を押し下げ、デフレ脱却を阻害し、国・地方の債務残高のGDP比を押し上げるから政府の政策に逆行するものである」という結論にいささかの変更をもたらすものではなく、短期金利引き上げは、成長力底上げを目指す政府の方針に逆らうものと言わざるをえないのではないか。
五 日本銀行の長期国債保有に関して日本銀行券の発行残高を上限にしていると、深刻な問題に遭遇する。電子マネーの増加は、必然的に日本銀行券の発行残高を減少させることになるからである。また、インフレ率が上昇し始めると、タンス預金が市場に出てくると大幅に日本銀行券の発行残高を減少させる。そのとき日本銀行は大量の国債を売らざるを得なくなり、それが景気を冷やし、デフレに逆戻りさせる。したがって、日本銀行の長期国債保有に関する自主規制は、日本銀行の重大な金融政策の足かせとなり、日本のデフレからの脱却と財政健全化を極めて困難にするのではないか。
右質問する。
政府答弁書
一から四までについて
「経済財政モデル(第二次版)」(平成十八年三月内閣府公表)等(以下「経済財政モデル」という。)は、経済理論を踏まえ、過去における変数相互の関係を精査した上で作成されたものであるが、これらを含めた計量経済モデルによる計算結果は、御指摘の乗数表の一年目、二年目及び三年目以降の値を含め、誤差を伴うため、相当の幅をもって解釈すべきものである。さらに、経済財政モデルにおける乗数表は、ある変数が独立的に変化した場合に、その変化が他の変数に及ぼす影響を示したものであり、現実の経済においては、様々な要因が複雑に影響し合うこともあり、ある政策が実施された場合に、必ずしも乗数表に示されたとおりの影響が生じるとは限らないことに留意する必要がある。
したがって、経済財政モデルにおける乗数表や「日本経済の進路と戦略参考試算」(平成十九年一月十八日経済財政諮問会議提出)等の計算結果は、いずれも経済政策を検討する際に参考となるものであるが、現実の経済政策を行うに当たっては、その時々の経済状況等を十分に踏まえて総合的に判断することが必要である。
なお、政府としては、極めて厳しい財政状況等を踏まえれば、経済成長と財政再建の両立に努め、安易な財政出動に頼らない安定的な経済財政運営を行うことが必要であると考えており、また、本年二月二十一日の日本銀行による政策金利の引上げは、中長期的に、物価安定を確保し、持続的な成長を実現していくことに貢献するとの考え方に基づいて行われていると承知している。
五について
日本銀行の長期国債保有残高については、日本銀行の長期国債買入額が日本銀行保有の長期国債に係る償還額を下回っていること等から、過去最高であった平成十六年八月末の約六十七兆三千億円から、平成十九年二月末には約五十一兆九千億円に減少している。
一方、この間、日本銀行券発行残高は、約七十一兆六千億円から約七十五兆七千億円に増加しており、これに伴い、日本銀行券発行残高と長期国債保有残高の差額は、約四兆四千億円から約二十三兆七千億円に拡大している。
このような状況に照らせば、仮に日本銀行券発行残高が減少に転じたとしても、御指摘の「長期国債保有に関する自主規制」が制約となることにより、直ちに日本銀行が保有する長期国債を売却せざるを得ない事態にはならないものと理解している。
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