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平成二十年度予算の四十七兆三〇〇〇億円という上限目標に関する再質問主意書
衆議院 第168回 第74号
質問本文
平成二十年度予算の四十七兆三〇〇〇億円という上限目標に関する質問に対する平成十九年九月二十五日の答弁書(以下「答弁書」という)には、極めて深刻な論理矛盾がある。そこで、以下の点について再度質問する。
一 答弁書の「五について」においては、経済予測のシミュレーションは参考にはするが、誤差が大きいので、場合によってはシミュレーションが「経済を停滞させ、国民生活を圧迫し、しかも財政を悪化させる」と予測しているような経済政策を行ってもよいと述べている。一方「八について」では、年金シミュレーションは一〇〇年先までの予測が正確にでき、予測は正確だから、その予測に従って社会保険料は値上げしなければならないと主張している。ところが驚いたことに年金シミュレーションは経済予測シミュレーションの結果を使っている。政府自身が誤差が大きいと認めている経済予測のシミュレーションの結果を使って得られた結果は、当然誤差が一層大きく不正確なはずである。そのような信頼に値しない年金シミュレーションの結果を使って社会保険料の値上げをすべきではないのではないか。
二 もしも年金シミュレーションが信頼に値するのであれば、その基礎となっている経済予測シミュレーションも誤差は小さく信頼に値するに違いない。そうすると答弁書の「五について」に書いてあることが正しくないということになるのではないか。
三 答弁書の「四について」で「景気を支えるために政府が需要を積み増す政策はとらない」こととしている。つまり景気対策のための財政出動は行わないことを政府の方針として示したものである。この方針が日本政府の一貫した方針ではないことは明らかである。添付資料の図一を見ていただきたい。橋本内閣の前期、森内閣、小泉内閣、安倍内閣において財政出動を行わない政策を行ったために、一人当たりの名目GDPの順位が急速に落ちて、日本が著しく貧乏になってしまったが、橋本内閣の後期、小渕内閣のように景気対策のための財政出動を行ったときは、その順位は大きく挽回して日本は豊かになっている。政府はなぜ、日本を豊かにするこのような政策を否定するのか。
四 最近の自由民主党都道府県連に対する日刊紙の調査によれば、財政出動を求める意見は三十二団体、財政出動を否定する意見は僅か八団体であり、自由民主党都道府県連は圧倒的に財政出動を求めている。このことからも、国民の意見を無視した国の政策が支持されず、前回の参議院選挙で与党が大敗したことが理解できる。政府は今後も国民の声を無視し続けるつもりか。
五 国の借金が増えたのは、デフレからのすみやかな脱却を可能とする十分な経済対策を行わなかったためである。デフレが続く限り、税収も伸びないし、そうかと言って赤字を抑えようとしても歳出の大幅な削減はできず、結局財政赤字が続き、国の借金が増え続ける。しかも名目GDPが増えないために債務のGDP比は増え続ける。プライマリーバランスを黒字にしただけでは、国の債務のGDP比は減らないというノルウェーの例を、添付資料の図二、三に示す。この図より明らかなことは、単にプライマリーバランスを黒字化すれば債務のGDP比が下がるわけではないということだ。このことについてどう考えるか。
六 添付資料の図四、五にはチェコ共和国の例、添付資料の図六、七にはスロバキア共和国の例を示した。大幅なプライマリーバランスの赤字にも拘わらず、債務のGDP比は一本調子に上昇しているというわけではない。チェコ共和国の場合、債務のGDP比は三〇−四〇%に留まっており、日本より遙かに低い。スロバキア共和国の場合も同様で二〇〇一年に五十八.九%にまで上昇した後はプライマリーバランスが赤字であるにも拘わらず、債務のGDP比は減少を続けている。これらを見れば日本政府の借金が増え続ける原因は、プライマリーバランスの赤字だけではあり得ないことであり、デフレだから増えているのだという結論が正しいことが証明されるのであるが、このことについてどう考えるか。
七 昭和恐慌の際、財政出動により世界で最も早く日本がデフレから脱却に成功し、経済再建をしたことは、世界的にも高い評価を受けている。このときの経済データを添付資料の表一で示した。一九三一年にはGNPデフレーターは△十四.四%のデフレであったが、財政出動の結果景気は回復し一九三三年には実質GNP成長率は十.一%に達した。債務のGNP比はゆるやかにしか変化をしていないし、一九三三年にやっと七十二%になったにすぎず、現在の日本より遙かに低いレベルに留まっている。この頃の財政出動の規模はGNPの十%近くになり、現在で言えば数十兆円レベルの財政出動であるが、それでも債務のGDP比は現在の半分程度に抑えられているわけで、このことからも、現在の国の借金が増えた原因は景気対策を行ったからではなく、デフレの状態を長期に放置したのが原因であることが、確認できるが、このことについてどう考えるか。
八 このように、プライマリーバランスの黒字化が日本の国の借金問題の解決策になるという考えは、理論的にも経験的にも全く根拠の無い、いわば甘い幻想にすぎないことが結論される。このような甘い幻想にとらわれて、誤った経済政策を行い、その結果、国を貧乏にし、国民を不安に陥れている。こういった指摘についてどう考えるか。
右質問する。
政府答弁書
一について
年金財政においては、人口や経済の長期のすう勢がどのようになるかが重要であり、少なくとも五年ごとに、法律で定められている保険料率を前提に、社会経済情勢の変化に伴う様々な要素を踏まえて、長期的な給付と負担の均衡を図ることができる給付水準の見通しを示す「財政の現況及び見通し」を作成する旨が法律で規定されている。現在、平成二十一年までに行う「財政の現況及び見通し」の作成に向けて、賃金上昇率等の前提(以下「経済前提」という。)について金融や経済の専門家により検討を行っているところである。
平成十六年財政再計算においては、平成二十年度までの経済前提については、「構造改革と経済財政の中期展望−二〇〇三年度改定参考資料」(平成十六年一月十六日経済財政諮問会議提出)を基に算出している一方、平成二十一年度以降の長期の経済前提については、御指摘の「経済予測シミュレーション」によらず、過去の実績を基礎としつつ、長期間における平均的な経済成長の見込み等を推計する際に一般的に用いられる手法を用いて算出している。
二について
一についてで述べたように、平成十六年財政再計算における平成二十一年度以降の長期の経済前提は、御指摘の「経済予測シミュレーション」によるものではない。いずれにせよ、計量経済モデルによる計算結果は、誤差を伴うため、相当の幅をもって解釈すべきものである。
三から五まで及び八について
政府としては、現在の極めて厳しい財政状況等を踏まえれば、経済成長を維持しながら、歳出・歳入一体改革に正面から取り組むことが必要であると考えており、二〇一〇年代半ばに向け、国と地方を合わせた債務残高の対GDP比率を安定的に引き下げることを目指し、まずは二〇一一年度には、国と地方を合わせた基礎的財政収支を確実に黒字化することとしている。
また、「経済財政改革の基本方針二〇〇七」(平成十九年六月十九日閣議決定)等に沿って、成長力の強化等に取り組むこととしており、こうした取組を通じて、安定した経済成長を続け、経済社会の各層に雇用拡大や所得の増加という形で成長の成果を広く及ぼしていくことが必要であると考えている。
六について
プライマリーバランスが一定であるとした場合、一般に、物価の下落は、名目GDP成長率を低下させる一方、長期金利の低下を通じて債務の利払い費を減少させる可能性があることから、日本経済がデフレ状況にあったことが債務残高の名目GDP比の上昇に対してどのような影響を及ぼしたかについては、断定的なことは申し上げられない。
七について
財政支出の増加や減税等を含む累次の経済対策については、日本経済が極めて厳しい状況にあった中で景気の下支えに一定の効果があったが、財政赤字が拡大した結果として債務残高を増加させたものと考えている。政府としては、これまで、各年度の「経済財政運営と構造改革に関する基本方針」や「構造改革と経済財政の中期展望」等に基づき、適切な経済財政運営に努めてきたところである。
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