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マクロ経済運営に関する質問主意書
衆議院 第173回 第98号お答えすることは困難 ×1検討してまいりたい ×1
質問本文
明確なマクロ経済運営の基本方針を確定し、政府・日銀が協調することは、緊急を要すると考える。
従って、次の事項について質問する。
一 マクロ経済政策の目標について
1 十月三十日の日銀の物価展望レポートでは、今後三年間デフレが続くと公言している。また、財務省は十月七日、この日に予定していた一〇年物価連動債(十年債)入札の取り止めを発表した。これはブレーク・イーブン・インフレ率がマイナス一〜二%強という将来のデフレ予測が背景にある。政府は、日銀のデフレ予測についてどう考えるか。また、デフレ状態から日本経済はいつ完全脱却できると考えるか。
2 日本経済の名目GDPを実額で示すと四七九兆円で一九九二年と同じ規模に戻ってしまった。「失われた一〇年」から「失われた二〇年」になろうとしている。菅直人副総理は、二〇〇三年八月十九日の『週刊エコノミスト』で、「実質成長率が上向きだからいいなどというのはまったくのまやかしだ。重要なのは名目成長率」といっているが、これは正しい認識である。日本を背負って立つ世代の方から、「給与が上がらないという現実に、国としてどのようにしていくのか」というご意見が寄せられているが、給与を上げるには名目成長率を上げるしかない。政府は、名目成長率はいつまでに何%にすべきと考えるか。
3 GDPギャップとは「経済の本来の実力」と「経済の現状」の差であり、「経済の本来の実力」を引き下げることでGDPギャップを埋めていくということも考えられる。しかし、それは、失業者の溢れる日本を日本の本来の姿として肯定しようとするものである。日本銀行は現在の潜在成長率を〇%台半ばとしているが、政府はこの認識を共有するか。また、日銀は昨年十月には「一%台半ばないし後半」、今年四月には「一%前後」、今回「〇%台半ば」と認識を急に変えており、日本の「経済の本来の実力」の水準を下げているが、政府はこの認識を共有するのか。
4 政府は、日本銀行が試算するところの潜在成長率〇%台半ばの経済を放任するのか。引き上げるとすればいつまでに潜在成長率を何%まで引き上げるのか。そのための具体的な経済政策は何か。
二 政府・日銀の政策協調について
1 欧米が物価の指標とするコア・コア指数(エネルギーと食料の物価変動を除いた指数)でみると、二〇〇八年後半の半年を除き、一九九八年九月から物価下落は一〇年強となる(九月は対前年比マイナス〇・九%)。そして、民主党がマニフェストに掲げた「高速道路無料化、高校授業料無償化、自動車関係諸税の暫定税率廃止」を実施した場合の随伴的効果として、このコア・コア指数がさらに一%下落するという試算が専門家の間にある。良い物価下落、悪い物価下落の議論を超えて、デフレスパイラルに拍車をかける可能性もある。七〜九月の実質GDP成長率は年率四・八%増だが名目の成長率は年率マイナス〇・三%である。政府は、このプラスの実質とマイナス名目の差の原因と政策的な責任はどこにあると考えるか。日本銀行の責任についてはどう考えるか。
2 十一月五日の「マーケット・アイ・ミーティング」において、勝間和代氏からプレゼンテーションを受けた菅直人副総理は「デフレを退治し、若年雇用を大きく改善するという勝間さんの案は極めて魅力的」「日銀に言えばやってくれるのならば明日にでも言いたい」と述べたと報道されている。政府はこの日の勝間氏の提案をどう評価し、どの部分を取り入れ、どの部分を取り入れないのか。
3 政府は日本銀行の独立性をどう考えるか。日銀には政策手段の独立性はあるが、政策目標は政府と日銀が政策合意を結んで共有すべきであるとの考え方をとるか。
4 政府と日銀はデフレ脱却と一〜二%の「物価の安定」を共通の目標として、日本銀行が一層の金融緩和を行い、政府は財政出動、減税と中長期の財政再建へのコミットメントを行うべきと考える。政府はこのマクロ経済政策についてどう考えるか。
三 雇用対策について
1 デフレの原因は需要不足であり、三〇〜四〇兆円の規模と想定される。それだけの規模の国民にとって働く場所が不足しているということであり、「オーカンの法則」(OKUN'S LAW)が示すように、日本の一九九〇年以降、GDPギャップが三%大きくなると、失業率は一%上がる。雇用対策の王道は、三〇〜四〇兆円のGDPギャップを解消することである。政府が今後編成する第二次補正予算の経済効果とGDPギャップ解消の関係、そして、第二次補正に盛り込まれる対策の経済効果の基本的考え方はどのようなものか。
2 雇用対策としては、デフレの克服と同時に、正規雇用と非正規雇用の壁のないシステムをつくることが求められている。政府は、デフレ克服と同時に、労働組合の連合と政府との「定期協議会」等の場で、オランダの例にみられるような正規・非正規の壁のない新たな労働スタイルの確立を提案する考えはないか。
右質問する。
政府答弁書
一の1、2及び4について
政府は、平成二十一年十一月の月例経済報告において、我が国経済は、持続的な物価下落という意味において、緩やかなデフレ状況にあると判断したところであり、日本銀行との間で基本的な認識に大きな差はないと考えている。
我が国経済を自律的な民需による回復軌道に乗せるとともに、国際的な政策協調にも留意しつつ持続的な成長を確保することは、内閣の最も重要な課題であると認識している。
現在、「予算重点指針」(平成二十一年十一月十七日閣議報告)に基づき、持続可能な経済成長に向けた成長力強化と財政規律との両立、成長戦略の策定などの取組を進めているところであり、経済成長率等の経済の展望については、そうした取組を踏まえ、今後検討してまいりたい。
一の3について
日本銀行の潜在成長率に関する認識を共有するか否かのお尋ねについては、潜在成長率は、推計方法等によってその推計値が大きく異なり得るため、相当の幅を持ってみる必要があること、日本銀行の推計方法等の詳細が公表されていないこと等から、一概にお答えすることは困難である。
二の1について
平成二十一年七−九月期の名目GDP成長率が実質GDP成長率を下回ったことについては、大幅な負の需給ギャップ等を背景に、物価の下落基調が続き、我が国経済が緩やかなデフレ状況にあることを反映したものと考えられる。我が国の景気の現状については、依然として厳しい状況にあることには変わりないが、経済対策の効果等もあり、持ち直してきていると考えている。
日本銀行においては、厳しい金融経済情勢に対し、金融政策面から我が国経済を支えるため、昨年秋以降、政策金利の引下げに加え、長期国債買入れの増額等の金融市場の安定確保のための措置、社債やコマーシャル・ペーパーの買入れを始めとする企業金融円滑化の支援のための措置等、様々な施策を実施してきたものと承知している。
二の2について
平成二十一年十一月五日に内閣府で開催されたマーケット・アイ・ミーティングにおいて、勝間和代氏は、政府と日本銀行が連携してデフレを克服することにより、若年雇用の改善につなげることを提案した。
政府としては、平成二十一年十月二十三日に策定した「緊急雇用対策」の着実な実施に努めるとともに、各界の有識者の御意見にも耳を傾けつつ、雇用・環境等について迅速かつ重点的な取組を行い景気の下支えを図るための経済対策を取りまとめることとしている。また、金融政策の具体的な運営については、日本銀行において、その時々の経済・物価情勢や市場動向を踏まえつつ、適切に行われるものと考えており、引き続き政府との緊密な連携の下で、適切かつ機動的に金融政策を運営していくことを期待している。
二の3について
お尋ねの日本銀行の独立性については、日本銀行法(平成九年法律第八十九号。以下「法」という。)第三条第一項は、「日本銀行の通貨及び金融の調節における自主性は、尊重されなければならない。」と規定し、また、法第四条は、「日本銀行は、その行う通貨及び金融の調節が経済政策の一環をなすものであることを踏まえ、それが政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない。」と規定しており、日本銀行は、これらの規定に従って金融政策を運営していくこととなる。
二の4について
政府としては、当面の景気を下支えし二番底を防ぐために前倒しで実施する必要のある施策を盛り込んだ経済対策を取りまとめることとしており、平成二十二年度予算との間をつなぐ切れ目のない経済財政運営を行う方針である。また、持続的な経済成長の実現のため、成長力強化と財政規律を両立させる必要があり、来年には、複数年度を視野に入れた中期財政フレームを策定し、中長期的な財政再建の道筋を示してまいりたい。
日本銀行に対しては、我が国経済が、物価安定の下での持続的成長経路に復帰するため、引き続き政府との緊密な連携の下で、適切かつ機動的に金融政策を運営していくことを期待している。
三の1について
今般新たに取りまとめる経済対策の柱は、雇用、環境、景気としており、緊急性、即効性の高い施策に絞って経済対策に盛り込むこととしている。これらの施策の実施により、雇用や成長への望ましい効果を期待しており、これにより、景気を下支えすることを目指している。
三の2について
政府としては、非正規労働者の正社員化等の待遇改善は重要であると考え、非正規労働者を含む従業員の解雇等を行わない場合の雇用調整助成金の助成率の引上げによる雇用維持の強化、年長フリーター等への助成制度の活用等による正規雇用化の推進、パートタイム労働者の正社員との均衡待遇の確保や正社員転換の促進等の支援措置を講じているところであり、今後とも取り組んでまいりたい。
なお、具体的な雇用の在り方については、自主的に個々の企業の労使間で十分な協議を行い、労使の納得と合意に基づき、決定していくべきものと考えている。
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