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予防接種健康被害の救済に関する質問主意書

衆議院 第174回 第568号お答えすることは困難 ×2

提出者
社会民主党・市民連合
提出日
2010年6月11日
内閣転送 2010年6月16日
答弁書受領日
2010年6月22日
提出から11日
答弁の項目数
9
質問 3,916字/答弁 2,898字

質問本文

近年、新規ワクチン登場と公費接種、定期化の要望がしきりとなり、新型インフルエンザワクチンの輸入問題などが拍車をかけた「ワクチンギャップ」論と予防接種法改正論議が錯綜するなか、軽んじてはならない副反応、健康被害とその救済の観点から健全な議論に資することを願い質問を行う。

ここでは、予防接種法第一条の理解、救済制度運用上の問題等をめぐって左に質問する。

一 平成六年改正において、予防接種法第一条に「予防接種による健康被害の迅速な救済を図る」ことを法の目的とする旨明記された。これはただ単に救済給付の申請から決定までを迅速に事務処理することを意味するものではないだろう。いかなる背景、考え方から付加された文言なのかを説明しながら、正しい解釈を述べよ。また、その解釈はどこに記されているか。

二 ところで、接種後に死亡、障害や深刻な副反応の症例が予防接種後副反応報告として自治体から厚生労働省に報告されることになったのは、平成六年改正以後であり、それ以前は国として副反応を把握するシステムがなかったという理解でよいか。またこのシステム構築の背景として、予防接種禍集団訴訟およびMMRワクチン薬害事件があった(平成十八年一月二十七日開催の第十一回予防接種に関する検討会における宮崎委員の発言)と理解してよいか。また、システム構築の背景について政府見解を述べよ。ただしこの質問は、健康局の体制を問題にしているのであり、薬事法上の副作用情報収集体制に関する答弁で終わることのないよう付言する。

三 このところ副反応報告など公表の遅れが目立っている。平成六年改正予防接種法が同年十月より施行され、予防接種後副反応報告が始まった。当初は前年度分の全国集計が遅くとも翌年秋には公表されてきたが、たとえば、平成十八年度の集計は、昨年(平成二十一年)一月十四日にウェブ上の公表という実態であり、一年以上も遅れていた。十八年度は、MR二種混合ワクチンが新規に導入された年であり、その副反応報告は国民にとって迅速に提供される必要があった。当初のペースであれば、現時点で、二十年度分がウェブ上に公表されてよいのであるが、十九年度分までにとどまっている。かつて質問した後も改善されていない(平成二十年十月三十一日受領 内閣衆質一七〇第一五〇号)。他にも、疾病・障害認定審査会感染症・予防接種審査分科会の審議結果公表が昨年九月で終わっているなど、予防接種後副反応・健康状況調査検討会の迅速な検討と公表、はては法第一条(目的)でいう「健康被害の迅速な救済を図る」ことまで停滞しているかのように見える。その理由と具体的な改善策を明らかにされたい。

四 前述の通り平成六年改正予防接種法において、第一条(目的)に「健康被害の迅速な救済を図る」と明記されたが、それ以前と現在までにどれほど迅速な救済が実現されているか、審査体制等変更の事実と具体的な処理期間の分析を添えて説明されたい。ちなみに独立行政法人医薬品医療機器総合機構が運用する医薬品副作用被害救済制度においては、受付から決定までの処理の迅速化で八ヶ月をめざし、既に当初の目標を達成、今や六ヶ月をめざしているやに聞いている。

五 被害実態の調査は法施行から五十年後、ようやく平成十年度に厚生科学研究で実施された。二回目は平成二十年度に予防接種リサーチセンターの事業として実施、結果は同センター「手つなぎ」誌上にしか発表されていない。また、伝え聞くところによれば、集団訴訟の過程で、東京大学白木博次氏(神経病理学、故人)、京都大学田中昌人氏(発達心理学、故人)、日本福祉大学二木立氏(医療福祉)らにより、被害者と家族の詳細な調査が行われ、被害実態、家族の状況などが観察され、集団訴訟の法廷に提出された模様である。予防接種後の健康被害とはどのようなものなのか、右の各種調査を厚生労働省はいかに把握しているのか、認定患者の被害実態について数的な実態のみならず、疾病・障害の部位、診断名、重症度、社会復帰の可能性、家族の心身あるいは経済的負担等々について概説されたい。また近年において、認定被害者らから保健福祉等に関していかなる要望があり、厚生労働省はどのような対応をしてきたのか、併せて答弁されたい。

六 平成十九年度予防接種後副反応報告の集計表累計によれば、平成六年十月以来報告された予防接種後の副反応が、基準外報告を除いて五、二七五件ある。また、平成二十一年三月、厚生労働省提供の「平成六年法改正以後の認定状況」によれば、健康被害認定申請件数は一、三五四件であった。後者が前者に占める割合、これを仮に救済制度利用率とすると、利用率はわずか二十六パーセントということになる。また、接種後に異常があったものの、患者家族や担当医が副反応の可能性に思い至らず報告されない場合も相当数あり得る。こうしたことから、救済制度が有効に利用されていない可能性が懸念されるのである。これまで、厚生労働科学研究、もしくは厚生労働省においてこの問題をテーマとした調査研究の実績はあるだろうか。接種医、副反応症例にかかわる医師、市町村など行政にとって給付申請は喜ばしいことではない。制度利用を阻害するものがあるとすれば何か、実態の調査が必要であり、救済されてしかるべきものが漏れなく申請に至ることができるために必要な措置が講じられるべきと考える。政府の見解はいかがか。

七 近年の三件ほどの否認事例について検討する過程で、左に示す通り、認定審査と審査請求に関する問題が懸念される。最初の認定審査請求により厚生労働大臣が諮問、疾病・障害認定審査会が審査結果を答申、大臣から都道府県経由で市町村、そして請求者に通知される不支給決定通知に記載される否認理由が、ほとんど誰にも理解できない表現であることがわかった。現状は、否認理由として次の五種類が用意されていて審査の結果は、その中からどれか一項が選ばれて記載されることになっている。

1 予防接種と疾病との因果関係について否認する明確な根拠はないが、通常の医学的見地によれば否定する論拠があるため。

2 予防接種と疾病との因果関係について否定する明確な根拠がある。

3 疾病の程度は、通常起こりうる副反応の範囲内である。

4 障害の程度は、政令に定められる障害に相当しない。

5 因果関係について判断するための資料が不足しており、医学的判断が不可能である。

次の各項について政府の見解を述べよ。

(一) 古くはパターン化された理由表記ではなく、一応個別具体的な説明の体裁がとられていたが、いつからいかなる理由をもって右のパターン化された表記に変更されたのか。

(二) 1の説明で不支給決定を通知された場合、「通常の医学的見地によれば否定する論拠がある」というものの、その「論拠」は示されない。つまり、その理由説明は説明とは認めがたく、全く理解できないし、承服しがたく、審査請求しようにも否認された理由を推認すらできないというべきである。このような行政処分がまかり通る正当な根拠、論拠があるのか。

(三) 平成十年七月公衆衛生審議会感染症分科会予防接種問題検討小委員会報告によれば、その3の(6)の(5)に「予防接種と健康被害の因果関係の有無の判定は極めて難しい問題であり、専門的観点からの検討が必要であるが、因果関係の有無やその判断理由、蓋然性の程度等について、因果関係を認めた場合と認めない場合のいずれの場合においても、健康被害者やその保護者に対して的確に伝えることが重要である。」というくだりがあり、これに対し現状はまさに逆行している。その報告書作成時の委員の一人は「決定通知が『報告書の考え方との大きなギャップがある』ということになり、委員の一人としての私も、洵に残念に存じております」と述べている。このはなはだしい齟齬について政府の見解はいかがか。

(四) このような行政処分が行われている中、わが子の死や障害に悲嘆し、因果関係を否認された請求者は、傷ついた心をさらに逆なでされつつ、慣れないことに心身ともに苦労しながら認定審査会の議事録を請求することになる。しかし、そこでも大きな壁があり、肝心な部分が「委員の自由な発言を保障するため」と称してマスキングされて否認理由がさっぱりわからないというやるせない現実に再びぶつかるのである。これについては、昨年(平成二十一年)十一月九日、参議院で島田智哉子議員が取り上げたところ、その事例について自ら確認した長妻厚生労働大臣が、マスキングを見直す旨答弁、鳩山総理大臣もそれを追認する答弁をしている。その答弁後、マスキングの見直しがされていると聞いているが、進捗状況はいかがか。

八 前項のマスキングの見直しは、厚生労働省所管の医薬品副作用被害救済制度等類似の制度、及び他の省庁においても健康被害救済制度があり、それらにも適応されるべきと考えるが、見解はいかがか。マスキングの見直しが検討される必要があるやもしれない類似の健康被害救済制度にあたるものは何か、名称と所管省庁及び部局名を列挙されたい。さらに広く情報公開法等の運用上、検討と変更を求められることがないのか、検討すべきではないか。

ワクチンの有効性・有用性・必要性等とまったく同等に負の側面、必ず生じる被害者、その救済問題が論じられなければならない。厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会における論点にはそれらが含まれているものの、さらに認識が深まることを願うものである。

右質問する。

衆議院の原文・経過

政府答弁書

一について

御指摘の予防接種法(昭和二十三年法律第六十八号)第一条の改正は、予防接種法及び結核予防法の一部を改正する法律(平成六年法律第五十一号)により行われたものであるが、法案の提案理由説明においては、感染症の発生の減少、医学医術の進歩、国民の健康意識の向上等の予防接種を取り巻く諸環境の変化の中で、極めてまれにではあるが健康被害が発生する予防接種について、高い接種率を維持していくためには、国民の理解を得られる制度としていくことが重要であるとの認識に立ち、予防接種による健康被害についての救済措置の充実等を図る旨述べられているところである。

二について

予防接種後副反応報告を実施することとした平成六年の改正以前においても、予防接種後に健康被害が発生した場合には、「予防接種の実施について」(昭和五十一年九月十四日付け衛発第七百二十六号厚生省公衆衛生局長通知)に基づき、市町村長から都道府県知事を経由して国に報告がなされていたところである。

平成六年の改正においては、御指摘の予防接種禍集団訴訟を始め予防接種に関する一連の訴訟における司法判断及びこれらの訴訟を通じて形成された世論を踏まえ、極めてまれに健康被害が発生する予防接種について国民の理解を得られる制度としていくため、国民に対する情報提供を充実することとしたところであり、その一環として、予防接種による健康被害の発生状況を把握し、予防接種後の被接種者の健康状況の変化についての情報を広く国民に提供すること及び今後の予防接種行政の推進に資すること等を目的として、予防接種後副反応報告制度を創設したところである。

三について

御指摘の公表の遅れ等は、平成二十一年四月の新型インフルエンザ発生以降、予防接種を含む感染症対策業務全般が繁忙を極めたことによるものである。現在、集計作業等を進めているところであり、終了後、その結果を速やかに公表してまいりたい。

四について

予防接種法第十一条第一項に規定する認定に要する処理期間は、平成十八年度から平成二十年度までの三年間の平均で約十か月となっているが、平成六年の改正以前にした認定については、その申請日時に係る記録を保存していないため、お尋ねのような比較を行うことは困難である。なお、認定の審査体制については、改正前後で特段の変更はない。

五について

御指摘の平成十年度及び平成二十年度に実施された調査については承知している。また、御指摘の三氏らによる調査については、少なくともその一部が、白木博次氏の著作である「冒される日本人の脳−ある神経病理学者の遺言」(藤原書店)に、田中昌人氏の著作である「予防接種被害の発達的特徴と改善措置の基本方向」(障害者問題研究第二十六巻第四号、全国障害者問題研究会)に、二木立氏の著作である「九〇年代の医療と診療報酬」(勁草書房)に掲載されていることは承知している。

また、お尋ねの「数的な実態」としては、平成二十一年度に疾病・障害認定審査会感染症・予防接種審査分科会において認定された四十件のうち主なものを挙げると、BCGによる瘢痕ケロイド及び骨炎・骨髄炎がそれぞれ七件及び六件、急性灰白髄炎の予防接種による麻痺が四件となっている。また、お尋ねの「疾病・障害の部位、診断名」としては、ジフテリア、百日せき、破傷風、日本脳炎、麻しん、風しん及びインフルエンザの予防接種では、アナフィラキシー並びに脳炎、脳症その他の中枢神経症状及びそれらに伴う後遺症等があり、急性灰白髄炎の予防接種では、急性灰白髄炎及びその後遺症等があり、BCGでは、リンパ節の腫脹、接種局所の膿瘍、骨炎等がある。また、お尋ねの「重症度、社会復帰の可能性、家族の心身あるいは経済的負担」については、認定患者ごとに異なることから、一概にお答えすることは困難である。

また、お尋ねの要望としては、平成二十一年十二月に全国予防接種被害者の会から保健福祉事業の充実について要望を受けたところであり、これを踏まえ、「予防接種健康被害者への対応について(依頼)」(平成二十二年六月二日付け厚生労働省健康局結核感染症課事務連絡)において、都道府県を通じて市町村に対し、例えば、介護が必要な予防接種健康被害者に対して介護・福祉制度について適切な情報提供を行うとともにニーズに応じた利用ができるよう支援すること等について協力依頼をしたところである。

六について

お尋ねのような調査研究は、厚生労働省として把握している限りでは、実施されていないものと承知している。

また、御指摘の「利用率」については、予防接種後副反応報告は、「定期の予防接種の実施について」(平成十七年一月二十七日付け健発第〇一二七〇〇五号厚生労働省健康局長通知)に規定する予防接種後副反応報告書報告基準等に基づき医師が予防接種後に一定の症状を認めた場合に行われるものであり、報告事例のすべてが健康被害救済の対象になるとは限らないことから、直ちにその高低を論ずることはできないものと考えている。

また、お尋ねの措置としては、予防接種を実施する際に、予防接種後の通常起こり得る反応及びまれに生じる重い副反応並びに予防接種健康被害救済制度について医師から被接種者又はその家族に説明を行うよう指導してきているところである。

七の(一)から(三)までについて

御指摘のような一般化、定型化した医学的な判断基準を認定拒否処分の理由として提示することとしたのは、平成二十年五月以降のことであり、予防接種と健康被害の因果関係の認定は極めて専門的な知見を要するものであり、簡便な補足的説明を付記すると、かえって一般国民にとって理解が困難となる場合があること等を踏まえたものであるが、認定拒否処分の理由を相当詳細に提示する方が望ましいとの意見があったこと等を踏まえ、平成二十二年三月以降、医学的な判断基準の当てはめについて詳細な説明を加えることとしたものである。

七の(四)について

疾病・障害認定審査会感染症・予防接種審査分科会における委員等の意見について、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十八号)第十二条の規定に基づく開示の請求があった場合には、平成二十二年五月以降、御指摘の答弁も踏まえ、当該分科会の委員の氏名等の個人を識別することができる情報及び第三者の個人情報に係る部分を除き、原則として、すべて開示することとしている。

八について

御指摘のような見直しとしては、医薬品副作用被害救済制度(生物由来製品感染等被害救済制度を含む。厚生労働省医薬食品局所管)における薬事・食品衛生審議会薬事分科会副作用・感染等被害判定第一部会及び同第二部会についても、実施を検討することとしている。また、どのような健康被害救済制度について御指摘のような検討を行う必要があるかについては今後検討していく必要があり、その結果も踏まえて、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成十一年法律第四十二号)等関係法令の適切な運用に努めてまいりたい。

衆議院の原文

この答弁書に出てくる定型句

お答えすることは困難 ×2

語の一致で数えたものです。答弁の評価ではありません。同じ型の答弁が過去にどれだけあるかは、型を押すと出ます。

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