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日本政府のイラク戦争への協力の検証に関する質問主意書
衆議院 第191回 第18号
質問本文
イギリスの独立調査委員会(「チルコット委員会」という。)は、ブレア政権が二〇〇三年にイラク戦争に参戦した経緯や侵攻後の占領政策を検証し、二〇一六年七月に報告書を公表した。この報告書の中では、「(フセイン政権の)武装解除の平和的な方策を尽くす前に侵攻に参加した。軍事行動は当時、最後の手段ではなかった」と示されている。また「開戦に法的根拠があると決断する状態にはほど遠かった」との認識も示されている。このチルコット委員会の報告書は、自国政府の判断や評価の過ちを厳しく指摘するもので、憲法に基づく政治の発祥の地であるイギリスの見識の現れであろう。
毎日新聞(二〇一六年七月七日朝刊)が報じるところでは、ロンドン政治経済学院国際関係学部のストロング研究員は、「イラク戦争は「誤っていた」との認識は広く共有されており、議論終結には「間違った理由を明らかにする必要があった」」と指摘している。
我が国では、小泉純一郎首相は、米国のブッシュ大統領のイラクへの最終通告を受け、二〇〇三年三月十八日、米国の方針を支持することを表明し、武力行使が行われる場合、これを支持すると述べている。さらに、同月二十日、イラクのフセイン政権に対して米英等が武力行使を開始し、同日、小泉純一郎首相は、改めてこれを支持すると表明した。
イラク戦争の開戦から十三年が経ち、各国で当時の政府の意思決定過程の検証が行われているが、我が国においては十分であるとは言えず、日本政府の取り組みには疑念が残る。
このような観点から、以下質問する。
一 二〇〇三年三月二十日、イラクのフセイン政権に対して米英等が武力行使を開始し、同日、小泉純一郎首相は、これを支持すると表明しているが、日本政府が根拠とした国際法、国内法上の根拠は何か。具体的に示されたい。
二 二〇一三年四月三日の衆議院の海賊行為への対処並びに国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等に関する特別委員会で、岸田外務大臣は「イラクの大量破壊兵器が確認できなかった、この事実につきましては、厳粛に受けとめる必要がある」と答弁している。他方、安倍首相は、二〇一五年九月十四日の参議院の我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会で、イラク戦争開戦当時の日本政府の判断に対する今日的評価について、「妥当性は変わらないというのが政府の考えでございます」と答弁している。世界各国でイラク戦争の開戦当時の意思決定過程の調査、研究が進み、さらにイギリスでチルコット委員会の報告が公表された現時点においても、当時の日本政府の判断は妥当であったとする考えは変わらないのか。政府の認識を示されたい。
三 二〇一三年四月三日の衆議院の海賊行為への対処並びに国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等に関する特別委員会における、岸田外務大臣の「イラクの大量破壊兵器が確認できなかった、この事実につきましては、厳粛に受けとめる必要がある」との答弁やチルコット委員会での報告などを厳粛に受けとめるならば、最新の知見に基づいて、日本政府は改めて当時の判断の妥当性を検証すべきではないか。日本政府のかかる判断の是非のみならず、日本における民主主義の成熟に関わる根幹の課題であると思われるが、政府の見解を示されたい。
四 岸田外務大臣は、二〇一五年六月五日の衆議院の我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会で、「政府としましては、既に外務省で行った検証によって、イラク戦争において武力行使を支持するに至った当時の問題の核心について説明をしております。改めてイラク戦争について検証を行う、こういったことは考えてはおりません」と答弁しているが、チルコット委員会の報告が公表された現時点においても、かかる考えに変わりはないのか。政府の認識を示されたい。
五 二〇一六年七月六日、チルコット委員会の報告書の公表を受け、世耕官房副長官は定例の記者会見で、「米国等によるですね、イラクに対する武力行使を支持した我が国政府の判断は、今日振り返っても妥当性を失うものではない」と述べている。かかる発言はチルコット委員会の報告書を詳細に検討した結果のものであるのか、それとも記者からの問いかけに安易に答えたものであるのか。政府の認識を示されたい。
六 一国の政府が設置した独立調査委員会が示した報告書は重い意味を持つ。チルコット委員会の報告書の公表直後、当時の首相のブレア氏の反論は英紙等でも大きく報じられた。我が国の根本的な政治原理である立憲主義とは、権力者の権力濫用を抑えるために憲法を制定するものであり、広く「憲法による政治」のことを意味している。これは、すべての人々が個人として尊重されるために、最高法規として国家権力を制限し、人権保障をはかるという立憲主義の理念を基盤とするもので、機会があるたびに問い続けられなければならない。常に過去の政府の重要な判断を検証し続けることは、一つの政治課題のみならず、我が国の政治体制の根幹に関わるものであろう。かかる事案においては、国家権力を制限する憲法の要請するところは、当時の日本政府の判断を新たな知見に基づいて検証することに他ならない。今次、チルコット委員会の報告書の公表を受け、憲法に基づく政治の発祥の地であるイギリスの姿勢に学び、日本政府は改めて当時の判断の妥当性を検証すべきではないか。政府の見解を示されたい。
右質問する。
政府答弁書
一から四まで及び六について
御指摘のイラクに対する武力行使は、国際の平和と安全を回復するという目的のために武力行使を認める国際連合憲章第七章の下で採択された国際連合安全保障理事会(以下「安保理」という。)の決議第六百七十八号、決議第六百八十七号及び決議第千四百四十一号を含む関連する安保理の決議により正当化されると考えている。
イラクは、十二年間にわたり、累次の安保理の決議に違反し続け、国際社会が与えた平和的解決の機会をいかそうとせず、最後まで国際社会の真摯な努力にこたえようとしなかった。このような認識の下で、我が国は、安保理の決議に基づきアメリカ合衆国、英国等の各国によりとられた行動を支持したものである。
こうした当時の日本政府の判断は、今日振り返っても妥当性を失うものではなく、政府として改めて当該判断について検証を行う考えはない。
五について
御指摘の本年七月六日の総理大臣官邸における世耕内閣官房副長官(当時)の記者会見は、御指摘の「チルコット委員会の報告書」の発表の前に行われたものであるが、いずれにせよ日本政府の立場を述べたものである。
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