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TPP11における酪農および畜産業分野での懸念に関する質問主意書
衆議院 第196回 第115号趣旨が明らかではない ×3仮定の質問 ×1
質問本文
平成三十年一月二十三日、環太平洋連携協定(TPP)十一か国による首席交渉官会合が東京都内で二日間の討議を終え閉幕し、離脱した米国抜きでの新協定「TPP11」(「本協定」という。)の署名式を三月八日にチリの首都サンティアゴで開くことで合意した。署名後、本協定はそれぞれの参加国で国内手続きされることになるが、発効に必要なのは六か国(参加国の約五十%)の国内手続きで、本協定は六か国の国内手続きが完了すれば六十日後に発効する。
政府は、三月八日の署名後、この国会で本協定承認案と関連法案を提出する方針であると承知しているが、農産物の関税削減・撤廃は、米国の参加という前提条件が崩れたにもかかわらず、市場開放水準が米国不在のまま維持されたことで深刻な影響が生じることが予見されている。
米国からの輸入分も含めて七万トン(生乳換算)と設定された乳製品の低関税輸入枠がニュージーランドやオーストラリアなどの酪農大国からの輸入で占められる上に、それとは別に米国との二国間のFTA(自由貿易協定)でも同様の輸入枠を求められた場合、実質的に大幅な輸入枠拡大となり、国内の酪農への大きな打撃は不可避であろう。
牛肉や豚肉で輸入量急増時の歯止めとなるはずのセーフガード(緊急輸入制限措置)も、現在の発動基準は輸入量の約四割を占める米国からの輸入実績を踏まえて設定されており、米国抜きでは基準が高すぎて歯止めの役割を果たさない。本来は十一か国で交渉をやり直すべきだが、交渉の早期決着を優先するため、このような重大な問題点を十分議論していない。
このようなTPP11の酪農および畜産業分野での懸念に関して、以下質問する。
一 三月八日に本協定への署名を行った後、政府はこの国会に本協定承認案と関連法案を提出する方針であるとの理解でよいか。
二 政府の影響試算では、農畜産物の生産減少は約千百億円と公表されているが、最新の影響試算結果ではどの程度であるのか。また北海道における農畜産物の生産減少はどの程度であると見込んでいるのか。政府の見解如何。
三 農林水産省が平成二十九年十二月に示した「農林水産物の生産額への影響について」では、「関税削減等の影響で価格低下による生産額の減少が生じるものの、体質強化対策による生産コストの低減・品質向上や経営安定対策などの国内対策により、引き続き生産や農家所得が確保され、国内生産量が維持されるものと見込む」と示されているが、「生産額の減少が生じる」のであれば、「国内生産量が維持」されることは困難であると考えるが、政府の見解如何。
四 三に関連して、ある地域、例えば北海道では「生産額の減少が生じるものの」、他の地域で「国内対策」により「引き続き生産や農家所得が確保され、国内生産量が維持されるものと見込む」というように、ある地域で生産量の減少が生じても、日本全国でいう国内生産量は維持されるという理解でよいか。政府の見解如何。
五 本協定では、米国からの輸入分も含めて七万トン(生乳換算)と設定された乳製品の低関税輸入枠がニュージーランドやオーストラリアなどの酪農大国からの輸入で占められることが予測でき、高品質で安価な乳製品が大量に輸入されるため、北海道をはじめとするわが国の乳製品の生産現場が壊滅的な影響を受けることは、多くのわが国の酪農家から指摘されている。政府は酪農家の不安を払拭するためにどのような説明を行い、さらには、どのような国内対策を考えているのか。政府の見解如何。
六 本協定が発効すれば、従来、米国からの輸入分も含めて七万トン(生乳換算)と設定された乳製品の低関税輸入枠が米国を除いたニュージーランドやオーストラリアなどの酪農大国からの輸入で占められる。この結果、本協定とは別に米国から二国間のFTA(自由貿易協定)でも同様の輸入枠を求められることが想定されるが、これにより多くのわが国の酪農家は深刻な懸念を抱いている。本協定とは別に米国から二国間のFTA(自由貿易協定)でも同様の輸入枠を求められることはないのか。またその場合の国内対策はどのように行うのか。政府の見解如何。
七 本協定における牛肉や豚肉で輸入量急増時の歯止めとなるはずのセーフガード(緊急輸入制限措置)は、現在の発動基準は輸入量の約四割を占める米国からの輸入実績を踏まえて設定されており、米国抜きでは発動基準が高すぎて歯止めの役割を果たさない。これについても、多くのわが国の畜産農家は深刻な懸念を抱いている。本来、本協定のセーフガードの発動基準は改めるべきではないか。また本協定の発効後、かかる国内対策はどのように行うのか。政府の見解如何。
八 本来、本協定は、十一か国で交渉をやり直すべきだが、交渉の早期決着を優先するため、これらのような重大な問題点を十分議論していない。政府は、この国会で本協定承認案と関連法案を提出する方針であると承知しているが、わが国の酪農家、畜産農家の声を聞き、徹底した国会審議を行い、拙速な承認を行うべきではないと考える。政府の見解如何。
右質問する。
政府答弁書
一について
御指摘の協定(以下「本協定」という。)については、本年三月八日に、チリにおいて署名したことを受け、政府として、関連法律案とともに今国会に提出すべく、速やかに作業を進めたいと考えている。
二について
お尋ねの「農畜産物の生産減少」及び「最新の影響試算結果」の意味するところが必ずしも明らかではないが、農林水産省が平成二十九年十二月二十一日に公表した「農林水産物の生産額への影響について(TPP11)」において、農林水産物の生産減少額を約九百億円から約千五百億円と試算しており、このうち農産物(畜産物を含む。)の生産減少額については、約六百十六億円から約千百三億円と試算している。この試算は、本協定が我が国全体の農林水産物に与える影響を示す目的で行ったものであり、お尋ねの北海道における影響は算出していない。
三について
お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、「農林水産物の生産額への影響について(TPP11)」では、関税削減等の影響で価格低下による生産額の減少が生じるものの、体質強化対策による生産コストの低減・品質向上や経営安定対策などの国内対策により、国内生産量が維持されるものと見込んでいる。
四について
お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、「農林水産物の生産額への影響について(TPP11)」では、本協定が、地域ごとではなく、我が国全体の農林水産物に与える影響を示す目的で試算を行ったものであり、その結果、我が国全体として農林水産物の国内生産量が維持されるものと見込んでいる。
五について
政府としては、国内対策として、「総合的なTPP等関連政策大綱」(平成二十九年十一月二十四日TPP等総合対策本部決定。以下「大綱」という。)に基づき、酪農の国際競争力の強化を図るための体質強化対策を推進するとともに、農業者の懸念と不安を払拭し、本協定発効後の経営安定に万全を期すため、経営安定対策を適切に実施することとしており、このような説明を関係者に行っている。
六について
お尋ねのような仮定の御質問にお答えすることは差し控えたい。
七について
本協定では、環太平洋パートナーシップ協定の特徴であるハイスタンダードを維持する観点から、物品市場アクセスに関するものを含め、各規定の修正は行っていない。
本協定には、環太平洋パートナーシップ協定の発効が見込まれない場合において、いずれかの締約国の要請があったときは、本協定の見直しを行う旨の条文が盛り込まれており、環太平洋パートナーシップ協定の発効が見込まれない事態に至った場合には、この規定に基づき、必要な見直しを求めていくこととなる。我が国として、環太平洋パートナーシップ協定締約国全体を対象としたセーフガードの発動基準等をその対象とすることについては、各国の理解を得ているものと考えている。
また、国内対策については、大綱に基づき、畜産の国際競争力の強化を図るための体質強化対策を推進するとともに、農業者の懸念と不安を払拭し、本協定発効後の経営安定に万全を期すため、経営安定対策を充実することとしている。
八について
お尋ねについては、国会の運営に関することであり、政府としてお答えする立場にはない。
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