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成田空港に関する質問主意書

衆議院 第80回 第18号

提出者
衆議院
提出日
1977年4月14日
内閣転送 1977年4月16日
答弁書受領日
1977年5月27日
提出から43日
答弁の項目数
2
質問 3,013字/答弁 1,170字

質問本文

衆議院議長 保利 茂 殿

成田空港に関する質問主意書

新東京国際空港公団(以下「公団」という)は、新東京国際空港の設置を効率的に行うと称して、昭和四十六年四月一日とされた供用開始の予定期日をはるか六年以上も経過しているにも係わらず、違法行為を積み重ねながら、成田空港の建設を千葉県警察本部の警備の下に行つてきている。しかも現在に至るまで一日たりとて公団が違法行為を犯していない日はないのである。このような公団の存在は、法治国であるはずの日本において極めて奇怪と言わねばならない。

昨年末の会計検査院の指摘(特に掲記を要すると認めた事項)を持ち出すまでもなく、成田空港問題は、現在、国民的な課題として再検討されねばならない時期に到達していると言える。再検討されるべき課題は、次の三点である。

1 新東京国際空港が必要であるとする論拠に瑕疵はないか。(必要性)

2 成田空港は新東京国際空港たり得るのか。(機能性・経済性)

3 成田空港の建設は適正手続きに従つて行われてきたのか。(違法・違憲性)

成田空港の建設を続行するには、右の三点に対し適正な論拠の下に国民的納得の得られる明確な回答がなされた上でなければならないが、ここではまず成田空港の誕生に係わる違法・違憲性を指摘する。

成田空港の建設は、法律上外形的には、公団法第二条の規定による位置を定める政令を制定公布すべく、昭和四十一年七月四日付で「新東京国際空港の位置及び規模について」が内閣法第四条の規定により閣議決定されたことに始まる。翌五日には「新東京国際空港の位置を定める政令」が、公団法第二条の規定に基づき制定公布され、さらに翌六日、「新東京国際空港公団法の施行期日を定める政令」が、同法附則第一条の規定に基づき制定公布された。

同月十一日、若狭得治、友納武人ら十四名が公団法附則第三条第一項の規定により公団設立のため設立委員に任命され、同月十四日に設立の準備を完了したので、翌十五日に同第二項の規定により政府に対し出資金の払込みの請求がなされた。同月三十日に右払込みがあつたので、同日同法附則第四条の規定により公団の設立の登記がなされ、同第五条の規定により公団が成立している。このようにして発足した公団の最初の事業年度は、当然のことながら昭和四十一年七月三十日に開始されたことになる。公団は昭和四十一年度に発足したのである。

ところが、公団法の体系は公団が昭和四十年度に発足すること、従つて、その前提たる公団法第二条の規定による位置を定める政令や内閣法第四条の規定による閣議決定が同じく昭和四十年度に制定されるべきことを要求しているのであるが、それにも係わらず、時の政府はこれらを犯し、よつて公団法を改ざん運用し、行政権による立法権の侵害をもたらし、つまりは三権の分立を否定し、その結果として成田空港の建設が行われてきているのである。

行政府の最高責任者を任ずる福田赳夫首相は、「行政事務の処理が憲法及びその他の諸法令に従つてなされるべきことは当然であり、新東京国際空港に関する諸施策についても関係法令の定めるところに従つて行う」と答弁されている(内閣衆質八〇第二号)が、右事実にかんがみ、憲法と行政権に係わる諸点につき、以下福田首相の御見解を賜りたい。

なお、成田問題は、実は国鉄問題でもあるということを指摘しておく。

一 公共事業と法手続き

(1) 三権の分立ということにより、行政権とその行使にも限界があるということになるが、右限界の内容及びその憲法上の根拠規定は何か。

(2) 行政権又はその行使による立法権の侵害又はさん奪は、それが部分的であれ、三権分立を否定することになるとしてよいのか。しからざれば、憲法上の根拠を添えて、その理由を明らかにされたい。

(3) 行政権が立法権の発動としてある法律を改ざんして運用するのであれば、これは行政権による立法権の侵害又はさん奪であるとしてよいのではないのか。しからざれば、憲法上の根拠を添えて、その理由を明らかにされたい。

(4) 行政権が法律の運用として、その法文を構成する、例えば、数字の一を二とすることも、その法律を改ざんしたことになるのではないのか。法律を構成する用語を他の語に置きかえて運用し、なお法律を改ざんしたことにならないとするのであれば、憲法上の根拠を添えて、その理由を明らかにされたい。

(5) 行政権又はその行使のため、現行法が不適切であるとするのであれば、議院内閣制という政治体制からいつて、行政権の属する内閣が立法権の属する国会に対し、所定の法律又は法律改正案を提起し、国会の議決を待つべきではないのか。しからざれば、憲法上の根拠を添えて、その理由を明らかにされたい。

(6) 通常、法律は本文と附則より構成されるが、本文も附則もその持つ法律上の効果は同じであるとしてよいのではないのか。しからざれば、根拠を添えて理由を示されたい。

(7) 法律の改正については、法律の本文のみならず、附則も改正の対象にしてよいのではないのか。しからざれば、根拠を添えて理由を示されたい。

(8) 公共事業と法手続きに係わる質問に対し、田中※(注)榮首相(当時)は「緊急を要する公共事業であつても、法手続きを無視してよいとする理由はなく、法手続きの簡略化については、明文の規定が必要であることはいうまでもない」と回答し(内閣衆質七二第一九号)、右回答の再確認を求めたのに対し、三木武夫首相(当時)は「政府の見解は従前のとおりである。公共事業であつても、法手続きを無視してよいとする理由はなく、現行法令の定める手続きに従つて行われるべきことは当然である」と回答している(内閣衆質七五第一六号)が、

(イ) 緊急を要する公共事業であつても、法手続きを無視してよいとする理由はなく、現行法令の定める手続きに従つて行われるべきことは当然とする憲法上の根拠規定は何か。

(ロ) 法手続きの簡略化については、明文の規定を必要とする憲法上の根拠規定は何か。

二 公団の成立に係わる法手続き

(1) 「新東京国際空港の位置及び規模について」と題する閣議決定、「新東京国際空港の位置を定める政令」の制定公布及び「新東京国際空港公団法の施行期日を定める政令」の制定公布に係わる年月日及びその法令上の根拠規定をそれぞれ明らかにされたい。

(2) 公団の設立の登記が行われ、公団が成立した年月日及びその法令上の根拠規定は何か。

(3) 右において成立した公団の最初の事業年度は、何時に始まり、何時に終つたか。その年月日を明らかにされたい。

(4) 公団法附則第八条は「公団の最初の事業年度は、第二十五条の規定に係わらず、その成立の日に始まり、昭和四十一年三月三十一日に終るものとする」となつているが、

(イ) 右附則は当時改正することが可能だつたのではないのか。しからざれば、その理由は何か。

(ロ) 右附則にも係わらず、公団が昭和四十年七月三十日に成立したとして、最初の事業年度を昭和四十年七月三十日に始まり、昭和四十一年三月三十日に終るとしたり、又は同じく昭和四十一年一月三十一日に終るとして公団法を運用するとすれば、これは公団法を改ざんして運用したことになるのではないのか。しからざれば、その理由は何か。

右質問する。

衆議院の原文・経過

政府答弁書

一について

(1)及び(2) 憲法第六十五条の規定により行政権は内閣に属するが、憲法第四十一条は国会が国の唯一の立法機関である旨を、また、憲法第七十六条第一項はすべて司法権は最高裁判所及び下級裁判所に属する旨を、それぞれ定めているから、内閣が立法権又は司法権を侵すことは許されない。

(3)及び(4) 行政庁が所管法律の運用上当該法律の規定を解釈するに当たつては、当該規定の法文に即するとともに、当該規定の趣旨をも踏まえて、妥当な解釈を行うこととしている。

(5) 法律案の発案については、国会を構成する両議院の議員に発案権があることは当然とされているほか、内閣も法律案を国会に提出することができる。

(6)及び(7) 法律の本則の規定及び附則の規定は等しく法律としての効力を有し、その改廃は法律によらなければならない。

(8) 法令は、社会生活上遵守されるべき規範として制定されるものであつて、緊急を要する公共事業についても、法令の定める手続に従つて行われるべきことは当然である。

二について

(1) 「新東京国際空港の位置及び規模について」の閣議決定は昭和四十一年七月四日になされ、新東京国際空港公団法(以下「公団法」という。)第二条の規定に基づく「新東京国際空港の位置を定める政令」は同月五日に、公団法附則第一条の規定に基づく「新東京国際空港公団法の施行期日を定める政令」は同月六日にそれぞれ公布された。

(2)及び(3) 新東京国際空港公団(以下「公団」という。)は、設立の登記をした昭和四十一年七月三十日に公団法附則第五条の規定により成立し、その最初の事業年度は、同日に始まり、昭和四十二年三月三十一日に終わつた。

(4) 公団法附則第八条の規定は、公団の事業年度の期間を定めた公団法第二十五条の規定に関する経過措置として、公団の最初の事業年度の期間が一年未満の期間であることを定めている技術的な規定であり、公団の最初の事業年度は、同条及び公団法附則第八条の規定の趣旨を併せて考えれば、公団の成立の日、すなわち昭和四十一年七月三十日に始まり、翌年、すなわち昭和四十二年の三月三十一日に終わつたものと解するのが妥当である。したがつて、公団法を改ざんして運用したとの御指摘は当たらない。

なお、公団法附則第八条は、右のとおり単に公団の最初の事業年度の期聞を明確にする趣旨のいわば確認的な規定であり、公団の設立を昭和四十一年三月三十一日以前に行うべきことまでを義務付けている規定ではないから、同日を経過した後に公団が設立されたからといつてその設立が違法あるいは無効であるとは、もとより考えられない。

また、右のような解釈が成り立つ以上は、同条の改正が公団の設立のための前提要件として必要不可欠なものであるとは考えられない。

右答弁する。

衆議院の原文

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