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会社更生法の運用等に関する質問主意書
衆議院 第87回 第2号
質問本文
衆議院議長 保利 茂 殿
会社更生法の運用等に関する質問主意書
会社更生法(以下「法」という。)の運用いかんは、単に更生会社の債権者、株主、その他の利害関係人に多大の影響を及ぼすばかりでなく、同業他社の経営や、ひいては当該業界の隆替にも重大な影響を与えるおそれがあるので、更生手続が行われるに際しては関係行政庁の意見等が十分に反映される必要があると考える。
ついては、株式会社興人の更生手続に関して、次の諸点につき政府の見解を承りたい。
一 株式会社興人の主たる事業のパルプ、レーヨン、セロハン等の業界は設備過剰のため、その稼動率は低く、業界各社は大幅な自主操短を余儀なくされ、ために構造的改革を必至とする状態にあるので、これらの製造設備の処理については、特に慎重な考慮を必要とするわけであるが、所管庁である通商産業大臣は、裁判所に対し、株式会社興人の更生計画案等につきいかなる意見を述べられたか、また、述べられる考えであるか。
二 更生会社の財産の評定については、法第百七十七条によると、財産の価額の評定は更生手続開始のときにおける価額であつて、会社の事業を継続するものとしなければならないことになつている。即ち、いわゆるゴーイング・コンサーン・バリューによるということになつているが、その内容についてはそれが簿価ではないこと、また、処分価額でもないことを規定している(法第百七十八条、第百八十二条参照)以外何等規定していない。
ところで、株式会社興人の営む事業については平均的に収益性に乏しい業種であり、財産評定に際し、収益還元法に準拠した場合、その評価額は相対的に低いものとならざるを得ない。法的にそれが妥当とされたとしても、常識的な担保能力価値を下まわる場合は、債権者、株主の権利に重大な影響がある。
現在、債権者たる北陸銀行、北国銀行並びに福岡銀行の三行が、株式会社興人の更生管財人の財産評定につき異議申立をしているが、あえて収益性の乏しい事業を基準としてゴーイング・コンサーン・バリューを求むることにより、常識的担保価値と遊離することは、取引の安全性の確保という点で問題となるので、財産評定にあたつては、徒らにゴーイング・コンサーン・バリュー万能ではなく、処分価額も併せて採用されるべきではないか。
三 更生手続における株主の地位は、特に会社に破産の原因たる事実があるときは議決権すら有せず、極めて劣位にあることは当然としても、会社更生法の目的が更生担保権者、更生債権者及び株主の三者の利害を調整しつつ、会社の維持更生を図ることにある以上、更生計画における株主の権利の変更という名目の下に、一〇〇パーセント減資して株主の権利を全部剥奪するが如きは、三者間の公正、衡平な差等の範囲を逸脱するものであり、到底是認されないものと考えるがどうか。
四 株式会社における企業の所有と経営が分離し、株式投資の大衆化が進み、また株式が経済的に見て債権化しつつある現状に顧みるときは、更生計画において、更生担保権者と更生債権者間、更生債権者と株主間の利害を調整する場合に、一〇〇パーセント減資を是認することは、余りにも株主の権利を無視し、冷遇することにならないか。
この点につき、証券取引や投資家保護を所掌事務とする大蔵大臣は、どのように考えるか。また、大蔵大臣は、株式会社興人の更生計画案で定めた一〇〇パーセント減資につき、裁判所に対しいかなる意見を述べられたか、また述べる考えであるか。
五 これを要するに、更生計画において一〇〇パーセント減資を定めることは、会社更生法の法意に合致しないものと考えるので、会社更生法を改正し、株主の権利の変更とは株式の縮減を意味するものであり、一〇〇パーセント減資を含まない旨を明文をもつて規定すべきであると思うが、政府の見解はどうか。
右質問する。
政府答弁書
一について
株式会社興人の会社更生手続については、まだ、更生計画案が作成、提出されるに至つていない。
通商産業大臣が裁判所から更生計画案に対する意見の陳述を求められた場合には、その段階で通商産業大臣において更生計画案を十分検討し、必要とあれば意見を述べることとしたい。
二について
株式会社興人の会社更生手続における管財人の財産の評定の当否については、裁判所の判断に待つべきものであり、政府としてお答えすべきものではない。
ただ、一般論として言えば、会社更生手続は、企業を解体処分する手続ではなく、その維持再建を図る手続である以上、企業の個々の財産は、それぞれ他のものと無関係に存在しているのではなく、組織体の一部として存在し、機能しているのであるから、この場合における財産の評定は、企業の存続を前提としたゴーイング・コンサーン・バリュー(企業継続価値)によることが合理的であり、会社の更生における財産の評定について、会社の更生が失敗に帰した場合に初めて顕在化する処分価額を基準にすることは合理的ではないと思われる。
企業の財産の評定の基準については、従来、種々見解の対立があつたところ、昭和四十二年の会社更生法の改正において、前記のような考慮の下に、第百二十四条の二及び第百七十七条第二項が追加され、財産の評定については、会社の事業を継続するものとしてすべきことが明定されたものである。
なお、会社の存続を前提とする更生手続が継続されている以上、企業を継続するものとして評定した価額は、通常処分価額よりも高くなるはずであつて、それが逆の場合は、企業の継続価値より企業の解体価値の方が大きく、したがつて、企業の更生が無理な程度に企業の収益力の低いことを示すものにほかならず、むしろ右のような会社更生手続を継続するのが相当でない場合が多いと考える。
三及び五について
株主は、会社に対する出資者であり、会社の内部にある者であつて、会社の債権者に対してその出資をもつて責任を負うべきものである。このような株主の責任から考えると、会社が債務超過の状態にあり、しかも会社を更生させるため必要がある場合において、百パーセントの減資を定めることは、必ずしも会社更生法第二百二十八条第一項にいう公正、衡平な差等の範囲を逸脱するものではないと考えられる(百パーセントの減資を是認する裁判例もある。)。
会社が債務超過の状態にあるときにも、株主の権利を百パーセント切り捨てることができず、なお常に株主に何らかの権利を認めるべきものとすることは、現行法制における債権者及び株主の地位から考えて相当ではなく、また、会社の更生を困難にするおそれがあるので、御指摘のような改正を行うことは妥当でないと考える。
四について
大蔵大臣が所掌する証券行政における投資者保護は、証券取引法に基づくものである。更生計画において百パーセント減資を定めることができるかどうかということは、会社更生法に基づく株主の権利の変更の問題であつて、証券取引法上の投資者保護とは観点を異にする問題である。したがつて、この問題について証券行政の観点から意見を述べる考えはない。
右答弁する。
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