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成牛淘汰による牛乳生産抑制に関する質問主意書
衆議院 第89回 第2号お答えすることは困難 ×1検討してまいりたい ×1
質問本文
衆議院議長 ※(注)尾弘吉 殿
成牛淘汰による牛乳生産抑制に関する質問主意書
昭和三十六年、農業基本法に基づく政府の農産物の選択的拡大 ― 酪農近代化政策のもとに静岡県の酪農は、三十五年当時のほぼ八倍の飼養規模となつているように専業化を強め、大幅な資金借り入れによつて急速な規模の拡大、施設の改善を進めてきた。
富士宮市を見ると、農業粗生産額に占める畜産粗生産額は四十五年に六五・七四パーセントに対し、五十二年には六八・〇四パーセントに増大し、酪農はその三分の一を占めている。
こうしたもとで、政府が牛乳の「過剰」見込みに基づき生産者補給交付金に係る加工原料乳の数量を抑え、限度数量超過分への支給打ち切り、乳質改善助成の打ち切り等を押し付けたため、本年四月、中央酪農会議は、成牛淘汰によつて牛乳二十一万トンの生産抑制を各酪農団体の責任において行うことを決定した。
静岡県では成乳牛一万九千頭中八百六十頭、県下の中心的酪農地域富士宮市では同三千八百六十頭中二百四十六頭の成牛淘汰を来年三月までに行うことになつており、八月以来すでに半数が淘汰されている。
富士宮市の実情を見ると、その淘汰は一応各農家の「話し合い」によつて低能力牛を淘汰することになつているとはいえ、生産調整そのものが牛乳生産量を基準としたものであり、なお一定の搾乳能力を持つ乳牛の淘汰も避けることのできないものとなつている。
このため、数千万円の借入金によつて規模の拡大、施設の近代化を行い、まさに、これからというやさきに、たとえ一、二頭でも失うことは、借入金の償還期のはじまりとも重なり、経営に直接困難をもたらすばかりでなく将来の展望にも大きなつまづきを与えるものになつている。また小規模酪農にとつては、いつそうその営業意欲を失わせるものとなつている。
酪農業の帰すうは、ひとり酪農家に対する影響だけでなく広く地域経済と日本の農業の発展に関係するものである。
よつて今回の牛乳生産抑制措置に関連し、政府の酪農政策について次の事項を質問する。
一 二十一万トンといわれる「牛乳過剰」問題は、国内生産量の四二・四パーセントにも相当する輸入乳製品(生乳換算二百五十八万トン)の一割を抑制すれば解決するものである。
しかるに政府は、近来、牛乳過剰が叫ばれるなかでも、国内生産及び消費ののびを上まわつて輸入量を増やし続けてきた。
この際、国内産牛乳・乳製品を基本にした需給政策をとり、不必要な輸入を抑制すべきだと考えるがどうか。
二 更に「偽装乳製品」の輸入(約八十八万トン)の野放し状態を放置せず、確固とした輸入規制措置をとるのかどうか。
三 牛乳を国民的食糧として位置付け、価格も酪農民には採算がとれるようにするとともに、消費者には安い牛乳が供給できるようにし、消費の拡大を図るべきだが、その具体策を明らかにされたい。
当面、先に実施された幼稚園、妊産婦、老人への消費拡大のための補助金の増額とともに保育所、全日制高校などへの補助金の新設などの措置をとるべきだがどうか。
四 酪農家にとつて飼料の安定的生産と供給は、もつとも切実な問題である。配合飼料価格の不当な値上げを抑え、また、配合飼料価格安定基金への援助強化によつて飼料価格の抑制を図るべきであるがどうか。
五 いま、「農用地開発公団法」に基づく「富士西麓地区畜産基地建設」のための調査が進められているが、この実施に当たつては新規入植だけでなく、地元酪農民の規模拡大に利用できるようにすべきであるがどうか。
なお同地域はさきの二十号台風によつて大きな被害を受けており、災害復旧、農地復旧援助(流入土石除去等)を早期に行うとともに、基地建設に当たつては万全の防災対策を講ずべきであるがどうか。
六 いま、農業全体のゆきづまりのなかで、小規模酪農は、農業の複合経営による経営の安定を図るうえで重要な役割を果たすものである。
これら小規模酪農の維持、発展のために、共同の牛乳プラントへの援助を強め、地域の消費団体や生協などと直結し、新鮮で良質な牛乳を安く供給するなど消費の拡大を図ることや、共同草地造成、公共育成牧場などへの積極的助成策を考えるべきだと思うがどうか。
右質問する。
政府答弁書
一について
乳製品については、国内生産により安定的、効率的に供給することとし、不足する分について輸入で賄うことを基本としている。このため、大部分の乳製品は、非自由化品目とされるとともに、主要な乳製品については畜産振興事業団による一元輸入とし、国内乳製品の価格安定制度と関連付け、不足時にのみ輸入・売渡しを行うこととなつている。
現在の国内需給が大幅に緩和している状況にかんがみ、畜産振興事業団による輸入を停止しているほか、飼料用脱脂粉乳等の輸入割当わくについて国内需給等を勘案して設定しているところである。
二について
御質問の「偽装乳製品」は、「ココア調製品」及び「調製食用脂」を指すものと考えられるが、いずれも自由化品目であり、その輸入についての規制は困難である。しかしながら、その輸入量の急激な増加により我が国酪農に悪影響を及ぼすことのないよう、今後とも我が国酪農の動向、乳製品の輸入の状況等を勘案の上、慎重に対処してまいりたい。
三について
飲用牛乳の消費拡大については、従来から学校給食用牛乳に対し助成を行うとともに、飲用牛乳の普及宣伝、消費者啓発等の事業を推進しているところである。更に、昭和五十四年度においては、飲用牛乳の消費拡大の一層の推進を図るため、新たに、農山漁村における消費拡大、幼稚園及び老人ホームにおける集団飲用並びに妊産婦の牛乳飲用の促進等のための助成を行つており、その効果的実施を図つてまいりたい。
なお、保育所及び全日制高校等への補助金の新設等については、種々問題があるので、今後慎重に検討してまいりたい。
四について
配合飼料価格については、適正な価格形成が行われるよう飼料製造業者に対して適宜指導を行つており、今後とも、畜産経営の安定を損なうことのないよう指導に努めることとしている。
また、配合飼料価格の上昇があつた場合には、配合飼料価格安定基金による価格差補てんが行われており、更に、大幅な配合飼料価格の上昇があつた場合には、これに上乗せした配合飼料供給安定機構による価格差補てんが行われているところであり、国は、同機構の価格差補てん積立基金の造成に対し助成を行い、その充実強化を図つているところである。
五について
昭和五十四年度から三か年の予定で、畜産基地建設事業を前提とした調査を実施中であり、この中において、地元酪農家等の意向を十分調査計画に反映していく考えである。
農地、農業用施設に係る災害については、農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律に基づき、早急に復旧を図つてまいりたい。
また、現在行つている畜産基地建設調査計画において、自然環境の保全及び防災等の観点を含め、調査検討中であり、事業実施計画の策定に当たつては、これらについて配慮する考えである。
六について
酪農については、最近の生乳の需給事情にかんがみ、今後は経営体質の強化、合理化を図つていくことが必要であると考えている。
このため、粗飼料基盤に立脚した酪農経営を育成するため、公共育成牧場の開発、整備を始め、草地開発関係事業を積極的に推進しているところである。
なお、農協等が設置する牛乳の処理加工施設については、農業近代化資金及び農林漁業金融公庫資金の融資の対象としているところである。
右答弁する。
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